収益性のみを突き詰めるのではなく、お客さま体験も考慮した与信をデザインするおもしろさ。あと払い利用を支えるエンジニアたちの情熱と矜持

2019年2月に「メルペイ」をリリース後、同年4月に「メルペイスマート払い(旧メルペイあと払い)」」をローンチし、2022年11月に「メルカード」の提供がスタートするなど、次々に新しいサービスを展開してきたメルペイ。それは、「信用を創造して、なめらかな社会を創る」をミッションのもと、「新しい与信の仕組みと信用のデザイン」に挑戦してきた歴史でありました。

この「新しい与信の仕組みと信用のデザイン」は、どのようなメンバーが、どのような思想(あるいは哲学)を持ってつくられているのでしょうか?

メルカンでは「私たちはいかにして信用と与信のあり方を変えていくのか」と題して、全5回にわたって与信事業とそれに関わるメンバーをさまざまな角度から探っていきます。

最終回となる第5回は「あと払い利用を支えるエンジニアの思い」についてフォーカスします。与信管理マイクロサービスの運用と開発を担う上原衛(@mitu)、惣郷顕哉(@sogo)、与信モデルなどにおけるMachine Learningの開発・運用に取り組む福知侑也(@fukuchan)にお話しをうかがいました。淀みなく言葉が出てくる3人からは仕事への情熱と矜持を強く感じられました!

この記事に登場する人


  • 上原衛(Mamoru Uehara)

    スマホ向けゲームのバックエンドエンジニアとしてキャリアをスタートし、新規タイトルの立ち上げ等の開発業務に従事した後、2019年にOrigamiへ入社。2020年からはメルペイへ転籍し、現在はRepayable Creditチームで与信・債権回収領域の Engineering Counterpartを務める。


  • 惣郷顕哉(Kenya Sogo)

    銀行におけるDWH/与信系システムやSaaS事業者におけるクラウド会計システムの開発に従事した後、2021年にメルペイに入社し、与信関連システムの開発、運用に取り組んでいる。


  • 福知侑也(Yuya Fukuchi)

    大学院やインターンシップで機械学習やシステム開発を学び、2022年4月にメルペイのCredit modelingチームに新卒としてjoin。現在は「機械学習やデータサイエンスの技術を用いて、あらゆる人に価値を届けられる与信ビジネスを作ること」をミッションに与信モデルなどの開発、運用に取り組んでいる。


収益性を確保しつつ最大限与信していくため、仕組みの高度化を法令遵守しながらやりぬく

――ここまで4回にわたって、「新しい与信の仕組みと信用のデザイン」について、さまざまなメンバーのお話しをうかがってきました。最終回で深掘りしていくのは、「あと払い利用を支えるエンジニアの思い」についてです。まずはみなさんの役割やミッションから聞いていきたいと思います。

@sogo:私はCredit lineチームのメンバーとして、メルペイにおける与信領域のバックエンドマイクロサービスである、与信管理マイクロサービスの開発および運用を担当しています。与信管理マイクロサービスは、fukuchanがリードするCredit modelingチーム所管のMachine Learning(以降、ML)によって求められた結果をもとに、お客さまの与信枠を計算しています。

チームとしてはおもに、メルペイの事業全体の成長とともに収益性を確保しつつ最大限与信していくため、与信モデルにおけるバックエンド機能の改廃を行っています。これらの開発および運用、さらには仕組みの高度化を法令遵守しながらやりぬくことがミッションです。

惣郷顕哉(@sogo)

@fukuchan:私は大学院やインターンシップで機械学習やシステム開発を学んだのち、2022年4月にメルペイのCredit modelingチームに新卒としてjoinしました。現在は「機械学習やデータサイエンスの技術を用いて、あらゆる人に価値を届けられる与信ビジネスを作ること」をミッションに、Credit modelingチームで与信モデルなどにおけるMLの開発・運用に取り組んでいます。

@mitu:sogoさんやfukuchanがそれぞれに与信領域をリードしてくださっているので、第4回で取り上げていただいた「債権回収」の領域も加えた与信・債権回収領域全体の意思決定を担っています。与信領域は難しい領域ではありますが、「信用を創造して、なめらかな社会を創る」というメルペイのミッションをまさに体現できる領域なので、その価値を最大限お客さまへ提供することがミッションかと思っています。

チーム間の密な連携によって、開発と運用は理想的な状態に近づきつつある

――では、「あと払い」の利用を支えるため、どのような運用と開発を行っているか、という本題に入っていきたいと思います。

@fukuchan:メルペイの与信は、メルカリでの利用実績を基に機械学習を用いて提供していることは、これまでの連載でも語られていますが、私たちCredit modelingチームでは、そこでの与信モデルの開発と運用を行っています。

運用としては、定期的に与信を再計算し、Credit lineチームと連携しながら、与信枠を提供しています。ありがたいことに、近年メルペイはますます多くのお客さまにご利用いただいています。そのため与信枠決定に関わる与信モデルの重要性が以前にも増して高まっています。与信モデルの更新においては、機械学習的な意味合いでの精度・多様な事業KPI・お客さま体験など、多くの観点を考慮・点検しています。

@sogo:高頻度でお客さま全体の与信枠を更新しており、このプロセスをCredit modelingチームと連携しながら運用しています。

Credit modelingチーム所管のMLによって求められた結果をもとに、Credit lineチームで与信枠を求めるという関係性なので、運用プロセスとしても同様にCredit modelingチームの後続フローを我々のチームで回しています。このプロセスについては、ここ半年ほど自動化などのプロセス見直し、および整備を進めており、理想的な状態に近づきつつあります。

@fukuchan:開発としては、おもに与信モデルとそれを支えるシステム基盤の改善・開発を行っています。与信モデルの開発では、新規領域への機械学習適用などを目的に、日々チームで取り組んでいます。システム基盤の開発においては、与信事業として重要な品質を担保しつつも、負荷の少ない運用をできることを目指しています。

@sogo:2022年の「メルカード」のリリースなど、メルペイ全体の方向性や施策に基づく与信モデルの高度化と、与信の“仕組みそのもの”を整備することを並行して進めています。

例えば前者の与信モデルの高度化については、お客さまの声を大切にしながら期待されている「与信体験」を提供できるような仕組みの開発をしています。

後者の与信の“仕組みそのもの”については、与信枠管理に関するロジックが関連マイクロサービスに分散していたところを、単独マイクロサービス化して集約し、開発効率やメンテナビリティの改善などを行ってきました。

@mitu:チーム間の連携という意味では、2人が触れてくれた高頻度な与信更新を支えるCredit lineチームとCredit modelingチームの連携はもちろんですが、 Credit BusinessチームやRiskチームと密に連携が取れているのは大きな特徴かもしれません。

定期的に意見を交換する機会を用意することで、目指すべき事業の状態やお客さま体験をインプットし、技術課題をアウトプットする関係性にあります。

どちらも切っても切り離せない要素だからこそ、それぞれの手札が揃った状態で最善なアクションは何かを議論しあえる状態にあると思っています。

上原衛(@mitu)

与信に対するお客さまの興味関心は非常に高いからこそのジレンマ

――「あと払い」の利用を支えるための、運用と開発の現在地についてはよく理解できました。これからさらに事業成長を目指すなかでの課題や、いままさに取り組んでいる技術的なチャレンジを教えてください。

@sogo:目下取り組んでいるのは、与信の改善のサイクルをより早めていくための仕組みの導入です。現状の仕組みでは、改善のための変更を同時並行的に適用できない制約があり、一回あたりのPDCAに時間がかかっていました。

また変更のためには緻密な効果予測や、想定外の結果が出た場合のリスクシナリオの検討が求められるため、これもボトルネックとなっており、影響範囲を限定したトライをできる仕組みが求められていました。

そこで、個々の改善を加速し、ひいては事業成長のサイクルを加速させるために、種々新たな仕組みの導入検討を進めています。

併せて、アーキテクチャの見直しも行っています。例えば現状のデータ構造は、あと払いサービスがローンチされる前に設計されたものを引き継いでおり、適用履歴などの与信枠の提供状況をトレースしづらいという課題があります。また、メルペイの事業全体の拡大成長に追随し与信モデルに機能追加していく中で、成り行きでは複雑性が増していきメンテしづらくなっていってしまうという面もあります。堅牢性や拡張性、データのトレーサビリティ確保の観点で、アーキテクチャ面の高度化がますます重要となります。

@fukuchan:与信枠決定に関わる与信モデルの更新においては、機械学習的な意味合いでの精度・多様な事業KPI・お客さま体験など、多くの観点を考慮・点検しています。それゆえに、機械学習モデルのPoCやリリースの意思決定に時間を要することもあります。与信事業として、重要な品質は今後も担保しつつも、与信改善サイクルを早めることにもより目を向けていくことが必要です。

そのために、今までもモデル更新マニュアルの作成などを行っていましたが、そのマニュアルの具体化や、機械学習モデルの効果試算のシステム化などを今後推進していきたいです。

福知侑也(@fukuchan)

@mitu:メルペイの「あと払い」のお客さま体験に「与信」はかなり直接的に影響しやすいです。またメルペイに限らず与信に対するお客さまの興味関心は非常に高いので、リリースへ向けた開発やテストは慎重にせざるを得ない状況があります。

一方で、解消すべき課題を発見してから改善までにかかるリードタイムにも改善の余地があります。品質を維持しながらリードタイムを短くすることでお客さまに対してダイレクトに利益を生み出せると思っています。

まだ業界スタンダードはない、だからこそ探求しがいがある

――事業をグロースさせていくうえで、いまが重要な意味を持つフェーズということですね。では最後に、メルペイという会社だからできること、メルペイで「与信」という武器をつくることの醍醐味をうかがえればと思います。

@sogo:「認定包括信用購入あっせん業」のライセンスを持つ事業者は、当社を含めてまだ2社しか存在していません。会社として「信用を創造して、なめらかな社会を創る」というミッションを掲げていて、与信が事業の中核に位置付けられているという点を踏まえると、独自性の高い領域に腰を据えて取り組んでいける良い環境だと感じています。

与信というドメインは、ファイナンス理論やデータサイエンスが背景にあり、無限にマニアックに掘り下げていける面白さがあると思っています。もちろん、複雑性の高いものを扱いつつも、法令やコンプライアンスといった守るべきもののハードルも高い点など、タフさも要求されますが、それゆえにプロジェクトをやりきった際の達成感は大きいです。

@fukuchan:メルペイの与信はAIを使った独自の与信であり、独自の与信だからこそ正解がなく、探求のしがいがあります。また、メルペイの与信は事業成長のみを突き詰めて最適化するのではなく、お客さま体験も考慮したうえで与信をデザインしていくおもしろさがありますね。

加えて、業界でスタンダードが確立されていない技術への挑戦も大きなテーマです。例えば、与信領域における機械学習モデルはQAがすごく重要です。機械学習のQAは方法論としてはあるけれど、事業的にそれをとりいれて運用できている事例はまだまだ少ないと思います。

@mitu:ミッションに直接紐づく「信用を創造する」ドメインであり、MLを活用している技術的にもチャレンジングな領域です。「認定包括信用購入あっせん業」が良い例ですが、お客さまに新しい価値を提供できるライセンスに目をつける動きはメルペイ・メルカリの強みだと思いますし、そもそも新しいことに取り組めるチャンスというのもそうそうありません。まだ、大きな砂場の片隅しか使えてないという感覚もありますし、より良い未来を目指して新しい価値をつくっていきたいですね。

「最後はピースで締めましょう!」という雑なリクエストに笑顔で応えてくれました!

関連記事 サクッと読める!✨

メルペイ初!QAエンジニア育成&インターンシッププログラム「Merpay QA Summer Training Camp 2022」の募集を開始します! #メルカリな日々

「Mercari Summer Internship 2021」の募集を開始しました! #メルカリな日々

「Mercari Summer Internship 2022」の募集を開始しました! #メルカリな日々

関連記事 読み応えアリ✨