カスタマーサポートとしてプロダクトの健全性をいかに保つか|TOKYO CS JAM#8

こんにちは!メルカリCSグループの高橋です。
去る12月14日にTOKYO CS JAM #8を開催しました。

今回で8回目を迎えるTOKYO CS JAM。おかげさまで過去最速で定員数に達し、盛況の中、2016年最後のCS JAMを締めくくることができました!!

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これまでのCS JAMレポートについてはこちらをぜひご覧ください。

CS JAM カテゴリーの記事一覧 – mercan(メルカン)

プロダクトの「安心・安全」を裏で支える存在

一般的にCS(カスタマーサポート)と聞くと、「商品が届かない」のようなお客さまのお問い合わせに対して案内を行ない、問題を解決するというイメージが強いかと思います。

しかしCSの業務はそれだけではありません。

実は、全てのお客さまに楽しくご利用いただくために、問題が発生する前に「安心・安全な環境を保つこと」もCSの大切な業務の中に含まれています。

今回のTOKYO CS JAMは、そんな知られざる「健全化対応」にスポットを当て、下記2名の登壇者と共にご紹介しました。

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株式会社エウレカ/Pairs Castomer Care総括マネージャー
安信 竜馬(やすのぶ りょうま)氏(写真右)

テレマーケティング会社を経て、主に外資系メーカー・小売業にてCS部門の立ち上げやインハウス化・アウトソージング化を含めたマネージメントを経験。2016年2月にエウレカにジョインし、恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」のCS部門責任者として、現在、インハウス化のプロジェクトを進行中。


株式会社メルカリ/CS部門/Risk&Moderationチームリーダー
稲葉 俊允(いなば としのぶ)(写真左)

2014年7月にRisk&Moderationメンバー第1号として入社。現在はR&Mチームの施策、数字管理、各業務のサポート等、あらゆる業務をこなす。

そもそも、「健全化対応」とは?

「健全化対応」。聞き慣れない言葉ではないでしょうか?

健全化対応とは、知らず知らずのうちに違反行為を犯してしまうことを未然に防ぐための啓蒙対応をはじめとし、お客さまにルールを守って楽しくご利用いただくことを目的としてた行動を指しています。

また、お客さまが金銭的・精神的被害を被るリスクを排除し、企業としての信頼を保つため、サービスが成長していくために必要不可欠な役割を担っています。

どんなサービスにもルールや決まりごとがありますよね。

もちろん、メルカリにも「出品してはいけない物」「やってはいけない行為」があります。

それらの「出品してはいけない物」「やってはいけない行為」が発生した時、私たちCSはどういった対応をすべきでしょうか?

そもそも、お客さまが違反行為を行なってしまうという状況を作らないように、私たちCSは事前に何をすべきでしょうか?

今回は株式会社メルカリと株式会社エウレカの2社の健全化対応について、LT(ライトニングトーク)・パネルディスカッション・質疑応答の3つのセッションにてお届けします。

健全なプロダクトを支えているという使命感と誇り、お客さまや提携先企業から強い期待を受けているという自覚の元に対応している(メルカリ 稲葉)

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メルカリのCSはCX(Customer Experience)とRM(Risk&Moderation)の2つのチームで成り立っています。

  • CX(Customer Experience)… お問い合わせに対して案内し問題を解決する
  • RM(Risk&Moderation) … 違反行為や禁止出品物への対応を行なう

今回のテーマである健全化対応は、RMチーム側の内容です。「リスクとは何か?」「何のために対応しているのか?」「対応しないとどうなるのか?」等の観点から、健全化対応の根本的な意義について説明させていただきました。

メルカリではお客さまに安心・安全にご利用いただくため、下記の対応を行なっています。

  • 違反商品の取り締まり
  • ルール認知度向上のためのご案内
  • タイムラインの状態維持のための出品監視
  • 不適切な投稿の取り締まり
  • 詐欺行為の抑制、啓蒙対応
  • サービス不正利用抑制対応
  • 不正決済防止対応

すでにご利用いただいているお客さまに不快な思いをさせないようにすることは大前提です。それに加えて、これから新しくメルカリを使ってくださるお客さまの新規流入の機会を妨げないこともミッションとなっています。

どんなサービスにおいても、悪意なく知らぬ間にルールを破ってしまうことはゼロではありません。

その際、CSの関わり方として「違反だからダメです」だけではなく、「なぜダメなのか」「どうしてほしいのか」をお客さまにご理解いただき、正しく利用してもらうためのご案内をするまでが健全化対応だと考えています。

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安心・安全に恋愛・婚活ができる環境を保つために全ての投稿をチェックしている(エウレカ 安信)

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恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」を運営している株式会社エウレカ。

「Pairsをご存知の方いらっしゃいますか?」「使っている方いらっしゃいますか?」との問いかけに、会場でも多数の手が挙がりました。

エウレカでは下記2種類のユーザーサポートを行なっています。

  • メールによるユーザーサポート
  • 投稿監視によるユーザーサポート

Pairsの利用条件は18歳以上であり、「クレジットカード決済」と「身分証明書の提出」の2つの方法にて必ず全ての利用者に年齢確認を行なっています。

年齢認証を入り口とし、安心・安全のためにエウレカでは下記対応を行なっています。

  • メッセージのやり取りを始める前に必ず「年齢認証」が必要
  • 24時間365日の投稿監視体制
  • パトロールによる目的外利用者の排除
  • 各種フィルタリングによるアラート対応
  • 警視庁情報技術犯罪対策課との連携
  • ユーザー間トラブルによる違反報告の対応
  • 違反傾向の分析に基づく目的外利用者の判定基準の見直し

実際に行なっている業務の細かい部分まで披露していただき、非常に興味深い内容でした。

実はアメリカでは、既婚者の約3〜4割がマッチングサービスでの結婚なのだそうです。

しかしながら、日本ではいわゆる「掲示板」的な印象が強く、浸透していないのが現実とのこと。

マッチングサービスを日本でも浸透させていくための必須条件として、安心・安全な恋愛・婚活ができる環境を保つことが重要となるのです。

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互いに共感、刺激し合える実情と理念

LTの後、下記5つのテーマを設けてディスカッションを行ないました。

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以下、印象的だった発言のハイライト。

健全化業務ならではのやりがい(メルカリ 稲葉)

  • やりがいと言われてまず初めに出てくるのが、「正義感」「倫理観」「使命感」。
  • お客さまの目に映るもの全てが自分達の成果であり、プロダクトの状態を見るのが自分達の価値を確かめる瞬間である。健全であることを当たり前にしていくのが使命。
  • 一つ一つの取引が健全に無事に完了することが何よりも嬉しい。

内製と委託の良いところ、苦労するところ(エウレカ 安信氏)

  • 委託で苦労するところは、「サービスに対する想い」の浸透。
  • 内製と委託の温度差を埋める為に行なった施策として、Pairsで実際に結婚された方が送ってくださった結婚式の馴れ初めムービーの映像を委託先のスタッフに見てもらったりした。
  • 結果、自分達がやっている業務がどのように繋がっているかという意識付けができ、モチベーションが上がったことが手に取るように分かった。

どんな人がこの業種に向いているか(エウレカ 安信氏)

  • 絶対に持っていてほしいものは「サービスに対しての想い」。
  • 次に必要なポイントとして「正義感」。サービスの社会的意義を考えられること、事象に対して正しい判断ができること。
  • それがユーザー目線であり、事実をきちんと見極められること。一つの事実だけではなく、複数の事実を集めて総合的に判断できる人が向いている。

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双方の言葉の中で出てくる「正義感」や「倫理観」といったキーワードが印象的でした。

健全化の仕事は常にリスクと隣合わせで、時に法的知識・見解が必要となる場合もあります。

リスクと対峙しながらも前例にとらわれない、お客さまのためにベストな決断をしていく。事象に対してどう捉えどのような決断をするのか、その決断の先にあるものは何なのか。

もちろんこの業種に限ったことではありませんが、「正義感」や「倫理観」というキーワードは、健全化対応に強く紐付けられているものだと感じました。

「健全化対応」の未来とは?

ディスカッションテーマの最後に、健全化対応の未来について語ってもらいました。

オンラインデーティングは社会的認知や評価が低い。自社だけが頑張っても地位・存在意義はあがらない。我々が目指しているのは出会いの手段として、合コンや紹介の次に「オンラインデーティングで出会った」と普通に言えるものにしていきたい。そのためにも業界が手を組んで盛り上げていきたい。(エウレカ 安信氏)


水道の蛇口をひねれば水が出てくる事実よりも、その水を綺麗にしている人がいる事実は前に出てきにくい。それと一緒で、利用者が気付かない間にトラブルや違反の芽を摘んでいる。それが当たり前な状態にすることが我々のやるべきこと。今後も拡大していくインターネット業界において、全てのサービスに知識やノウハウを共有していきたい。知見を広めていくことも大きな使命である。(メルカリ 稲葉)

双方に共通していたのは「自社だけではなく業界全体を巻き込んで未来を創っていきたい」という価値観でした。

日々、各サービスが幾多の検証や議論を重ねながら対応や施策を行ない、ツールを開発し、プロダクトを創り続けています。

その中には、自社独自のもの、外から取り入れたもの、双方を融合させて創り上げたものが存在しており、多くの挑戦と失敗を繰り返しながら各サービスが健全なプロダクトを保つことに尽力しています。

それらの挑戦と失敗から得た知識やノウハウを業界全体に広め、手を取り合っていけたら…。

我々の挑戦が健全なプロダクトの未来を創っていくのだと確信しています。

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様々な視点から飛び交う質疑応答

質疑応答のセッションでは、CS目線、ディレクター目線、それぞれ異なる切り口からの質問が挙がりました。

以下、質疑応答のハイライト。

Q.フィルタリングは自社開発なのか?

A.自社開発の専用フィルタリングツールを使っている。ツールの開発・ブラッシュアップに関してはCSと開発側で密に連携を取りながら創り上げている。我々CSが月1回以上のペースで仙台から東京に来て、開発側と対面で話をする機会を設けている。(メルカリ 稲葉)

A.フィルタリング開発は自社でやっている取り組みである。ユーザーの傾向が変わると判断基準が変わるため、傾向に注視しながら開発している。画像フィルターに関しては過去のデータ等を元にアラートが上がってくるようになっており、ワードフィルターに関しても複数のワードにスコアを設定する等、細かく行なっている。(エウレカ 安信氏)

Q.対応の基準はあっても属人的になるのでは?CSメンバーの誰でも判断できるようにしているのか?

A.マニュアルと呼ばれるものにとらわれすぎると、ガチガチに固まりがち。意識しているのは「プロダクトとしてどうあるべきか」。経営陣・開発側は同じ方向を向いている。対応や傾向を分析した結果、文言で表現できるマニュアルについてはブラッシュアップを繰り返している。まだ途上であり、学びながら進んでいく、ユーザーと一緒に作っていくという感覚。(メルカリ 稲葉)

Q.AI等をサービス設計に取り入れているとのことだが、設計はCS側なのか?プロダクト側なのか?

A.オペレーションは傾向等を見て基準の見直しをしていくためCS側で行なっているが、「どう創り上げていくか」というAI等の方向性はCSだけではなく、プロダクト側と連携して進めている。どちらかというとCSがグリップを握っている。(エウレカ 安信氏)

今回登壇いただいたお二人の他、モデレーターとして会場を盛り上げたメルカリの上村(左下)と江川(右下)を交えての4ショット!決まってます。

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プロダクトの向こう側にある笑顔を守るということ

今回のCS JAMは、下記の思いから健全化対応をテーマとして取り上げました。

“プロダクトの裏側にある健全化対応の認知を広めたい”
“業界全体で健全なサービスを創っていきたい”

私自身も日頃、健全化対応に携わっている身ですが、私達の仕事は「お客さまに安心と安全を約束する仕事」だと考えています。

健全化対応はまだまだ世間での認知は低く、歴史は始まったばかりです。

このようなイベントを通じて、今後のインターネットサービス・CS業界・健全化対応の未来が希望に満ちていることを期待します。

「良い取引ができたな」
「素敵な出会いだったな」
「また使おう」

プロダクトの向こう側にいる、そんなお客さまの笑顔を想像しながら2017年もメルカリは走り続けます。

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