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【特別対談】サービスを作り続ける2人がインターネットより好きなもの | ブラケット 光本氏×ソウゾウ 松本

いよいよ社員数が50名を超えるソウゾウ。代表松本の考える組織づくりや、経営者とプロダクトの関わり方などについて、親交のあるゲストをお招きしてお話をしてもらいます。

今回のお相手は、オンラインストア作成サービスの「STORES.jp」などを運営する株式会社ブラケット取締役会長の光本勇介さんです。 ブラケットは、2016年10月にスタートトゥデイからMBOしたことでも話題に。また光本さんは2017年2月に、新規事業準備に向け新しい会社BANK, Incを設立されました。

起業や売却など、同じ業界の中でも歩まれている道が近い2人。お互いのことをどう見ているのか、普段から交流のある2人ならではの距離感で、ビール片手にざっくばらんにお話いただきました。 f:id:mercan:20170202170013j:plain

光本勇介 (写真左)

青山学院大学国際政治経済学部卒業。外資系広告代理店オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパン株式会社を経て、2008年10月、株式会社ブラケットを設立、代表取締役に就任。 2013年7月、株式会社スタートトゥデイの完全子会社化。2016年9月、マネジメント・バイアウト(MBO)の実施、同年10月より代表取締役兼会長に就任。

松本龍祐(写真右)

1981年生まれ。中央大学在学中より出版系ベンチャーの立ち上げやカフェ経営などを行う。 2004年より中国企業のSNS立ち上げに参画、2006年にコミュニティ企画・運営に特化したコミュニティファクトリーを設立。2009年以降はソーシャルアプリ開発に特化し、写真をデコってシェアできるスマートフォンアプリ『DECOPIC』が2,800万ダウンロードを記録。2012年9月にヤフー株式会社へ会社を売却。その後同社アプリ開発室本部長を担当後、2015年5月よりメルカリにジョイン。現在はグループ会社の株式会社ソウゾウ 代表取締役として新規事業を担当。

2016年は4年に1度の転機の年だった

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松本:2人でちゃんと話すのって初めてじゃない?

光本:そうだよね!最近は何してるの?

松本:今は採用関連が1/4、今のメンバーとの1on1とかが1/3、残りが施策のMTGとかな。そっちは新しいサービスとか手がけようと思ってるの?

光本:うん!結構絞っていて、まだ決定じゃないけど、割りと決まった気がする。 新しく始めようと思ってるプロジェクトは、1月1日からはデザイナーとエンジニアをアサインしてる。だからすごいプレッシャーはあるね。

松本:お互い色々あったと思うんだけど、2016年はどんな年だった? 僕は2015年の10月からアッテを作り出して、2016年の3月にリリースしてここまで来たから、やっぱりアッテの一年だったかなと思うんだけど、みつもっちゃんは?

光本:僕は2016年はやっぱり独立、スタートトゥデイグループから出たってのが大きかったかな。

松本:どれくらいの期間いたの?

光本:ちょうど3年。今までの人生のサイクルで、4年に1回その後の人生を左右するようなことが起きていて、その1回に当たる年だったの。だから2016年は、絶対でかい変化が起こるっていうのはわかってたんだ。 でもMBOするなんて3ヶ月くらい前まで思ってもみなかったから、実際そうなってやっぱり来たか、って思った。

40歳で結果を出すためのチャレンジ

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松本:なんで3ヶ月前まで思ってもみなかったの?

光本:もともと、そろそろ新しいことやりたかったの。これまでもいろんなサービスを作ってきたし、ZOZOで学んだことも多くて。何よりも、前澤さん(株式会社スタートトゥデイの代表取締役 前澤友作さん)の近くでやってたら「自分でもこれくらいの規模のサービスを作ってみたい」っていう欲がでてきたんだよね。

僕たち同い年じゃん?36歳。 だから次に区切りが良いのは40歳で、その時胸を張って人様に話せるような結果を残すためには、逆算すると今からなにかやらないといけないじゃない? 僕たちの持ってる一番価値のある資産は時間だから、次のチャレンジをしないと間に合わないと思って、それをそのまま前澤さんに言ったの。

松本:なるほどね。この環境でやりなよって言われなかった?

光本:ソッコーで言ってもらったよ。作りたいものがあるならこの環境で好きなことやればいいよ、って。 それって恵まれてるんだけど一回自分の力試ししたかったんだよね。もし成功したとしても100%僕だけの力じゃないから。

でも、STORES.jpは事業の成長観点では僕たちブラケットが引き続きやるほうがいいと思います、って正直に言ったら、そのままやればいいじゃん!って言われて。 MBOが実現したんだよね。

松本:そうだったんだ!でも社長じゃなくて会長なの?

光本:自分の中で、一回新しいことやるから切り替えるっていうのは決めていて。引き続き残ってると自分でやりたくなっちゃうし、STORES.jpはこのまま成長し続けると思うから。 僕は0から1を作るのは得意なんだけど、1から100を作るのが得意な取締役の塚原という役員がいたので、塚原にバトンタッチしたの。

会長っていう役職は一応残してるんだけど、会社に毎日いると新しい社長がやりづらいと思うし、社員もどっち向いたら良いかわからなくなるなと思って、新しい事業にフォーカスするために会社行くのやめた。

経営者兼プロダクトオーナーとしてのこだわり

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松本:ところで、自分のプロダクトオーナーとしての思想とかって、結構プロダクトに反映させたりする?僕はアッテの場合、ちょっと距離ある。

僕はデザインやインテリアが大好きだけど、アッテってすごくきれいにしたいかっていうと違うなぁと思っていて、僕の理想とアッテの最善は別れているな、と思う。 けど仕事の進め方とか、優先順位のつけかたとかチームについては押し付けはしないけど染み込ませたいな、と思ってるかな。

光本:それってどういうこと?

松本:例えば、最近ソウゾウの行動指針(Value)に「Move Fast」っていうのを追加したんだよ。 いかにすばやく、課題と解決方法の仮説の中で効果が良さそうなところにトライしていけるか。そこに集中してものづくりをしてほしいっていう指針なんだよね。そういうことは組織全体に伝えたいなと思ってる。

光本:なるほどね!僕は結構自分の思いと考えを通す方かな。 けど、折れるところは折れる。たとえば、Vimeoみたいにポリシーを曲げずに自分たちの作りたい世界を作って、マスに向けられてるサービスって凄くクールだと思っているんだけど、一方で実際にはYoutubeの方がマスだったりして、なりきれない難しさもある。

作りたい世界の実現と、マスになれるのかのバランスを見つつ世界観をキープするのも大切だし、重要だし、憧れるからまずそこを追求する。 一時期ABテストをしまくってたときがあったんだけど、自分たちの意図と逆の結果ばっかりが出るときがあって。  

松本:わかる!

光本:自分たちの作りたいプロダクトになっていかないなって思って、一気にやめた。 結果として数字も伸ばせているし。

松本:でもこれから会長になってそのジャッジから自分が外れることの怖さはない?

光本:すげーあるよ。でもそれだといつまで経っても抜けられないから。あとは、残っていてもいずれかは人に任せないと行けないタイミングは来るからね。 コアなDNAとか、クールだと思うポイントは会社のカルチャーとして作れたと思ってるから、腹を決めた感じかな。

松本:それはどうやって浸透させたの?

光本:すごく抽象的なんだけど、感覚が合ってる人を採用してる。イケてるイケてないって抽象的なんだけど、みんなの感覚が合ってる気がする。

松本:なるほどね。僕も「プロダクトが好き」とか「サービスに対してこだわりたい」人たちを意識的に集めてる。これから100人規模になると多様性も必要だけど、50人までは、そのほうが仕事しやすいし正解だったなと思う。 技術力が高くても、なんか感覚が違うと思ったら採用しないとか。

光本:それわかる。もう会った瞬間、わかる。一緒に働きたいってすぐわかるから。 2、3回面接しても変わらないなとか思っちゃう!

一番後悔するのは「やりたいことがお金がなくてできない」こと

松本:みつもっちゃんは、BtoCとかCtoCでずっとここまでこれたんだよね。すごいよね。

光本:お金も調達したかったんだけど、リーマンショックもあったし実績もなかったから、どこに行っても全然出資してもらえなかったんだよね。 2009年に「個人間で車を貸し借りするサービスです!」って説明しても「大切な車を貸すわけ無いでしょう!以上!」って言われたりとかしていて。

今でこそSTORES.jpの会社になったけど、STORES.jpをすごいヒットさせてやろうとか1mmも思ってなかったのね。その時5人で5つのサービスをやっていてさ、もう少しエンジニアが欲しかったのね。

松本:すごいね!5人で5つ!

光本:もう1つサービス作って、あと2人くらい雇える規模になりたいなと思って始めたの。そしたらリリースしたら初日からすごいバズって。明らかに今までとは違う規模になっていたからチャンスが来た!って思ったよ。もともと1つのサービスで食べていける会社ってすごいかっこいいと思ってたから。それでその後1年間やって、売却したって感じかな。

松本:なんで会社を売ろうと思ったの?

光本:うち自己資本100%だったから、一瞬でも赤字になったら死ぬわけ。辛いじゃん?お金を稼ぐってまじで辛いじゃん? お金にずっと苦労しながら5年やってきたけど、新しいサービス作るの好きだからやりたいことがたくさんあっても、どうしてもいつも諦めざるを得なくて。

なぜならばお金がないから。やりたいと思ったタイミングでやれない後悔ほど辛いことはなくて。1回余裕のある環境を作りたいっていうのが強かったからかな。

松本:なるほどね。これは僕がメルカリにいる理由でもあるんだけど、サービスを作りたい気持ちと、組織を潰れないように維持したり、お金を稼ぐのって別じゃん?もちろん良いサービスでお金を稼ぐのは理想だけど。ゼロイチでいろんなものを作りたい欲求とずれるじゃん?

光本:そうかも、そうかも。

松本:そういう面で、メルカリの中で作りたいサービスを作れる環境は最高なんだよね。いろんな心配しなくていいから。

僕は本質的にはインターネットが好きじゃない

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松本:僕らの同い年って優秀な経営者がいっぱいいて、けんすう(Supership株式会社 取締役 古川健介さん)とか片桐(株式会社DMM.com 代表取締役社長 片桐孝憲さん)とかね。そういう人たちと話していて正直、俺はあんまり経営者として自信ないんだよね。 

いつも話していて頭いいなって思うし、覚悟がすごいなと思う。 そういうときに自分のバリューってなんだろうって考えると、First Penguinとしてチャレンジし続けてきたことなんだよね。

今の自分がメルカリでチャレンジしていることは、日々めちゃくちゃ勉強になっていて、すごく吸収できてる。 最終的には自分の力でやりたいんだけど、最近自分の中で気づいたことがあって、僕は本質的にはインターネットが好きじゃないんだよね。

光本:へー!そうなの!?おもしろいね。

松本:もちろん好きは好きなんだけど、インターネットビジネスが好きなんじゃなくてインターネットを手段にして、いいユーザー体験を作ることが好きなの。 でもけんすうとか片桐みたいに、インターネットそのものが好きな人いるじゃん?彼らよりもインターネットオリエンテッドなサービスは作れないと思っていて。

既存ビジネスをインターネット化することですごく収益をあげたり、体験をよくするサービスを作りたいなと思っているのね。 だからもっと実績も積みたいし、比較優位のインターネットできっちり成果を出したい。

光本:おもしろいね!似てる気がするんだけど、僕もインターネットで息してない。僕ね、ビジネスが大好きで、いやらしい言い方するとお金を稼ぐ手段が好きなんだよね。 経済として成り立たせるためにはお金を稼ぐしかないし、株式会社である以上は、どれだけイケてるお金の稼ぎ方のしくみを作るか、に一番興味があるんだよね。

松本:なるほどね!

光本:インターネットって、その仕組みをつくる領域とスペースと可能性がいっぱいあるからインターネット業界がすごく好き。

飲みに誘ってほしいけど自分からは言えない!

松本:みつもっちゃんはこれから久々に新しく組織づくりすると思うんだけど、最初ってサービスを成功したい気持ちもありつつ、矛盾しちゃうけど組織の初期の少人数で楽しい時間も長引かせたい気持ちもあるよね。

光本:超わかる。楽しいよね。入社前日に机を買って組み立てたりね。でも組織が大きくなると、どうしても1日に1回も話さないメンバーとかでてくるのは本当に寂しいよね。

松本:寂しい。話したいんだよね。僕は気恥ずかしくてエレベーターとかでも気づかれないようにしちゃうタイプなんだけど(笑)、用もないのに話しかけにいくようなタイプの人は本当にうらやましい!いかに全員と仲良くできるかがポイントかな、と思う。 で、現実的には同じ目線のリーダー7、8人をどう育てるかが大事なんだなと。

光本:そうだね。そしてそういう人を育てるのも大変だよね。 あとは夜ご飯に誘えなくなる!社員も緊張するし、上司と行きたくない人も出てくるし、なのに断れないと思われてたら嫌だから(笑)

松本:わかる〜!わかりすぎる! 向こうで「飲みに行こう」って話が出ている時に、僕も行きたいなって思っても僕がいると嫌かなと思って言えないんだよね!

光本:誘ってほしいよね。どれでも全部誘ってほしい。喜んでお金払う!(笑)

2017年はどんな年にする?

光本:2017年はさ、完全に新しいチャレンジの年だね。それなりのビジネスをつくらないと意味がないし、まずはどれだけ「実現できる可能性」を作れるかっていう年。 ブラケットとしても独立して1年目だし、100%ピュアな自分たちの力でどれだけ飛躍できるか、だね。1年終わった後に「ネタみたいな1年だった」って言えるといいな。 今までの人生最大の振り幅で、年末に「マジで想像つかなかった!」って言ってる一年にしたい。

松本:僕はやりたいことは3つあって、1つはアッテは2017年で1年になるから、ビジネスとしての手応えを感じるっていうノルマ。

2つ目は、ちゃんとアッテを海外に出したい。あとはサービスがポコポコ生まれるような組織を作る。サービスづくりの楽しさを色んな人に味わってもらって、分かち合いたいんだよね。 もちろんうまく行かないリスクもあるとは思うんだけど、そこは自分が担って、リスクを平準化した上で楽しみを多くのメンバーと分かち合いたいかな。

光本:いいね! 今日は、はじまる前はドキドキしてたけどすごく楽しい時間だったよ。

松本:ね!また飲み行こう。