「圧倒的納得感があればABテストも必要ない」メルカリプロデューサーのあたまのなか by 栗林フリッツ幹雄

メルカリJPのプロダクトオーナーである伊豫が、メルカリで働くプロデューサーに実際の企画とその結果、そして各々のバックグラウンドに迫る企画第三弾。

今回話を伺ったのは、サンフランシスコを拠点に80以上のアプリ開発を経験した後メルカリにジョインし、入社後も一貫してUSメルカリのプロデューサーを務める栗林さんです。

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【プロフィール】

栗林フリッツ幹雄(Kuribayashi Fritz Mikio) ※写真右

大学卒業後、マース ジャパン リミテッドに入社。マーケティング・ファイナンス部署に従事後、2010年末より世界一周の旅へ。11年末に創業期の株式会社イグニスに参画、アプリケーション事業部にて数十のアプリのディレクションに携わる。13年よりサンフランシスコに移住、米国支社の立ち上げ・アプリ事業の世界展開を行う。17年3月に帰国、株式会社メルカリに参画。US版メルカリのプロデューサーを務める。


伊豫健夫(Iyo Takeo)※写真左

大学卒業後、松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)、株式会社野村総合研究所を経て、2006年に株式会社リクルート入社。中長期戦略策定および次世代メディア開発等、大小問わず多数のプロジェクトを牽引したのち、2015年3月株式会社メルカリに参画。2016年8月より執行役員。US版メルカリのプロダクトマネジメントを担当後、2017年4月より国内版メルカリのプロダクト責任者を務める。

ドイツの織田信長がメルカリで世界を獲りにいく

いよ:フリッツさんのそもそも本名って?

フリッツ:栗林フリッツ幹雄です。日本とドイツのハーフです。「フリッツ」ってドイツの昔の王様の名前で、日本だと「信長」みたいな古めかしい名前なので、ドイツだとたまに自己紹介で笑われたりします。

いよ:それ自己紹介の鉄板ですよね。ぼくも、珍しい苗字してますけど、名前にアクセントがあるとその後会話が弾むので結構気に入ってます。まずはメルカリ入社前から伺えますか。

フリッツ:最初は外資系のメーカーでマーケティングとファイナンスに従事し、計2年半働いたのですが、やはりまずは広い世界を見たいと思って世界一周の旅に出ました。帰国後は「勢いのあるIT業界、特に世界展開を目指している日本ベンチャーで働きたい」と思い、幸運にもその希望通りのスタートアップで働くことができました。

いよ:それって、今のメルカリともカナリ通ずるところありますよね。

フリッツ:そうですね。4 年間サンフランシスコに赴任し、英語圏での展開を狙って 80 個以上のアプリを作りました。途中から僕のチームは開発の主拠点をマケドニアのパートナー企業に移すようになりました。マケドニアってどこにあるか知ってます?

いよ:いや具体的な位置までは…ヨーロッパのあのへんかなーくらいです。国のイメージもわかないですね。

フリッツ:そうそう。私も一緒に働くようになるまでは行ったことがなかった東ヨーロッパの国です。本社は日本、自分はアメリカ、開発拠点はヨーロッパ、となかなかカオスで楽しかったです。そういった経験も通して、自分としては「日本のIT企業を海外で成功させる」が長年のミッションになっています。そんな中、帰国したタイミングでメルカリを知り、本気で日本から世界を獲りに行ってるな!と思い、入社を決めました。

本当にABテストはすべての機能に必要なのか

いよ:今回は新機能の開発、特に検索保存の機能改善について伺いたいと思いますが、どういった理由からこの機能の開発に至ったんですか?

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フリッツ:「お客さま(Buyer)が望む商品にたどり着けてないんじゃないか」という課題感です。

いよ:なるほど。具体的に取り組んだ企画は?

フリッツ:「検索タブの検索保存キーワードの横に新着アイテム数を表示すること」です。

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いよ:玄人好みの施策ですね(笑)

フリッツ:はい(笑)。

いよ:このアイディアは前からあったと思うんですが、実際開発に至った判断理由は?

フリッツ:検索保存している人としていない人で7daysRR(7日後にお客さまがアプリに戻ってくる率)が約2.5倍と異なることが判明したんです。

いよ:それは大きい。

フリッツ:ただ、せっかく検索保存キーワードから検索結果の画面に飛んでも、実際の新着商品数が増えてなかったらお客様をがっかりさせてしまうだけですよね。タップするたびに結果がそれだと、そもそも検索保存機能すら使われなくなってしまう。なので、検索結果をみなくても新着アイテム数が分かるようにしたんです。

いよ:結果どうでした?

フリッツ:検索保存してくださる方が大幅に増え、検索の実行自体も15%増えました。

いよ:おお、素晴らしい。新着数字を見せることによって検索が減るというリスクは想定しなかったですか?

フリッツ:そこは、最後に見た時から増えた数(未読)という仕様の工夫でカバーしました。日本だと、出品数が1日100万品と多いので、昨日より出品数が増えているのはお客様にとっても「当然」として捉えられているのではないかと。だから日本だとお客様も自分から検索保存キーワードを見に来てくださる。でも、アメリカの場合はまだそのフェーズにはない。そういった目のつけどころが良かったんだと思います。

いよ:確かに日本とアメリカだと検索機能の使い方って意味合い変わってきますよね。
日本でも検索保存通知(保存結果を毎日メールで通知される機能)ありますけど、正直日本では必要?って思う時あります。

フリッツ:検索保存通知はもともともUSで取り入れた仕組みを日本のアプリにも実装しましたよね?

いよ:そうです。でも日本ではもっとリアルタイムだったりしてもいいかもですよね。本当にその商品探している人は、1日に何回もスクロールしているという結果も出ていますし。日本版とアメリカ版とお客さまの使い方によってもっと機能もわけるべきかもしれません。

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いよ:話は変わりますが、メルカリではABテストやることが迅速な意思決定になってるって、この記事も然りいろんなところで言ってますが、今回この機能のABテストはどのように設計しましたか?

フリッツ:ぶっちゃけると、やってません。

いよ:おっ。どういう意思決定したんですか?

フリッツ:ただただ、この新機能の導入は今より確実にアプリを良くするよね、という納得感が全員にあった、というだけです。テストやるほどの余裕も正直なかったので。一気に100%解放しました。

いよ:それくらい自信のある施策だったってことで、こうい決め方もある種ありですよね。

フリッツ:ABテストはあくまで意思決定の手段であって、テストしなくても意思決定ができるならそのほうがいいと思います。

フリッツさんの頭のなか

社内で一番きちんとした仕様を書くという決意。

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いよ:メルカリでは世界をまたいで時差のある中仕事すること多いと思うんですが何が大事だと思います?

フリッツ:PMとしては特にドキュメントにゴール、背景、KPIをしっかりと書いてチームの意思を統一させることですね。ズレをミニマムにするかがポイントかなぁと。そのうえでHOWはエンジニアに任せることが大事だと思います。

いよ:ドキュメントづくりって面倒くさいから手を抜きたくなりますもんね。だからこそ若い頃にドキュメント作りしっかりやると、設計力UPしたという経験が僕にもあるからわかります。

フリッツ:社内で一番しっかりした仕様・ドキュメントを企画の背景から面倒臭がらずに書く、というのは大事にしています。たまにエンジニアさんに甘えて手抜きすることもありますが、そのたびに反省してやり直しています。

いよ:日本とUSと行ったりきたりだと思うんですが、PM的な観点で両国の仕事の進め方の違いってありますか?

フリッツ:主観ですが、USだとMVP(=必要最低限の機能)でのPDCAを日本以上に大事にしていて、とにかくスピード、やってみてから考えようという意識が強いように思います。日本のメルカリも勿論相当速いリリースサイクルですが、もう少し作りこむ傾向がある。一時期は日本の「ある程度完成されたものを出す」ことにこだわっていましたが、メルカリUSで働くようになってからは日本でうまくいったからと言ってそのやり方にこだわらないようにしています。

いよ:今後の展望を教えてください。

フリッツ:とにかくメルカリUSを成功させることしか頭にないです。USオフィスに行くと、どのメンバーもそれだけを目指している、という一体感を強く感じます。いい意味で、日本とは別途組織のプロセス・カルチャー作りがゼロから行われています。

メルカリはよく Poshmark / Letgo 等と比べられたりしますが、アメリカ国内で郵送の CtoC は数が少ないので、ユニークなバリューを提供していきたいな、と思っています。

いよ:まさにアメリカに文化をつくりにいくという感覚ですよね。一緒に文化作って行きましょう!今日はありがとうございました!

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