ヒントは「取引時間の短縮」。メルカリのスピード発送バッジ誕生までの記録

こんにちは、Product Developmentチームでプロダクトマネージャー(以下、PM)をしている岡本明朗です。

フリマアプリ「メルカリ」のお客さまのなかにはお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、2019年3月から発送時間の早さが一定基準を満たすと「スピード発送」というバッジが表示されるようになりました。

青い部分が、スピード発送バッジ

僕が所属するCustomer Experience Improvement(以下、CXI)というプロジェクトチームでは、これまで「進化する売買体験」を目標に、出品や購入、取引体験の横断的な改善を担当。今回のスピード発送バッジも、その一環として誕生したものでした。今回のメルカンでは、お客さまからの反響が大きかったスピード発送バッジについて自分なりに振り返ってみたいと思います。

「スピード発送バッジ」誕生の背景に出品・購入継続率の課題

まず初めに、スピード発送バッジの紹介をさせてください。メルカリでのバッジの定義は、一定の条件を満たした出品者へ適用される特別なしるしです。バッジが表示される出品者は、メルカリが定める基準を満たしていることを示し、購入者が安心して商品を購入できる情報の一つになります。

スピード発送バッジは、発送時間(商品が購入されてから発送するまでの時間)の早さが一定の基準を満たしている出品者に表示されます。 お客さまに公開している基準は、以下の通りです。

スピード発送バッジの表示基準・・・売却済み商品のうち、カウント対象となる商品の平均発送時間が24時間以内の出品者
カウント対象となる商品・・・発送までの日数を「1〜2日」で選択している商品

この機能を考えた背景には、出品・購入継続率の改善という課題がありました。CXIチームのミッションは「進化する売買体験を提供」。お客さまがよりメルカリに愛着を持ち、継続して出品・購入している状態をつくること。CXIチームでは、これをお客さま視点でどう実現するかを考える必要がありました。

そこで現状を分析すると、「取引時間の短縮化」が1つのカギであることがわかりました。取引時間と言っても、要素分解してみると「購入〜発送」「発送〜到着」「到着〜購入者評価」「購入者評価〜出品者評価」となります。そこでCXIチームのBusiness Intelligence(データ分析、以下BI)メンバーに相談し、大きなインパクトを期待できる「購入〜発送」(以下、Buy~Ship Time)に焦点を絞った企画に着手しました。

岡本明朗(メルカリCXIチーム、PM)

「購入から発送を短縮する=出品者の体験向上」というヒント

企画を進めるうえで大事なのは、インパクト観点だけでなく、あらゆる情報から仮説を持つこと。そのため、今回はBuy~Ship Timeに関する定量調査から、ユーザーインタビュー、Voice Of Customer(メルカリボックス、Twitter、ブログ上などでの発信からお客さまの声を知るもの。以下、VOC)といった定性調査、B2CやC2Cの国内・海外アプリ調査などを行いました。

まず定量調査から「発送までの日数」が短いほど商品が売れやすく、「発送までの日数」に関係なく多くのお客さまが選択した日数より早く発送していることがわかりました。つまり、Buy~Ship Timeが短い商品に需要があり、供給サイドである出品者も早く発送する努力をしているのです。

定量調査から導き出した結果をまとめた資料

その動向を見て「Buy~Ship Timeの短い商品を購入者に伝えることで商品が売れやすくなり、出品者は売れやすいという体験からさらに商品を出品する好循環が流れるのでは?」という仮説を持ちました。

お客さまの声に耳を傾けると、「遅いよりかは早く手元に商品が届いたほうが嬉しい・安心する」「購入者に少しでも喜んでもらいたくて早めに発送している」など、出品者・購入者それぞれのVOCを発見できました。また、おもに海外アプリを見ていると、発送に関する情報が商品ページに表示されていて、ここからBuy~Ship Timeの短い商品や出品者に何かしらのしるし(最終的にバッジ)を付ける発想に至りました。

「デザイン」「バッジ獲得条件」への強いこだわり

この機能を開発するうえで特にこだわった点は、デザインとバッジ獲得条件でした。

前述のアイデアの方向性が決まってからは、まず表現方法についてデザイナーとディスカッション。しかし、これがけっこう苦労しました。US版メルカリではすでにバッジ機能が存在するものの、JP版メルカリでは存在しなかったため「そもそもバッジとは何か」といった基本的な設計はもちろん、購入者にとって「購入メリットがあるとパッと見てわかるもの」、出品者にとって「他の出品者が持っていて羨ましいと思えるもの」「獲得して嬉しいと思えるもの」を重視してデザインを考える必要がありました。

これらについてはかなりデザイナーと議論しました。提案されたデザインをGoogleスライドに貼り付け、「現状のデザインの課題はAとBとCで、それらを解決するためにはこういった要件を満たす必要がある」「具体的なイメージはこれ」と、お客さま視点を意識してレビューしました。もちろんすべてを実現できたわけではありません。しかし、お客さまが体験するメルカリのフロント部分を妥協したくなかったのです。

またバッジ獲得条件ですが、条件の設計にもかなりこだわりました。出品者の立場では「獲得条件がわかりやすいか」「獲得後のバッジ継続が緩すぎず厳しすぎないか(頑張ってメルカリを利用したらバッジを継続できる水準か)」、メルカリの立場からは「バッジ獲得者が多すぎないか」を双方から意識して設計しました。

「不確実性が多いなか、いかに条件の腹落ち度があるか」がひとつの重要な観点だったのですが、それをサポートしてくれたのがBIメンバーでした。細かい現状数値を出してもらい、「優良出品者が何日程度で条件を達成できるべきか」「そうでない出品者でも頑張れば何日程度で達成できるべきか」などを議論して現在の獲得条件に至りました。今振り返ってみても、この条件設計で進めてよかったと思ってます。

スピード発送バッジのプロジェクトメンバー

そんななか、プロジェクトの障壁になっていたのが開発前のエンジニアリソース調整でした。スピード発送バッジの実現にはバックエンド側の大きな改修が必要だったのですが、その当時CXIチームには専属のバックエンドエンジニアはおらず、ヘルプを依頼する必要がありました。しかし、当時はメルカリでマイクロサービス化がスタートするタイミングでもあり、他チームもバックエンドエンジニアへの依頼があったため、さまざまな人・チームへの交渉も同時に行わなければならなかったのです。

そこで、自チームのマネージャーへ相談することはもちろん、他チームのPMやエンジニアリングマネージャー、テックリード、マイクロサービスを推進するチームと何度も議論・交渉し、最終的にエンジニアをアサインしてもらいました。ここでは、自チームだけでは解決できない問題を、他チームを巻き込んで解決し、施策を前に進めるスキルが求められました。その結果、メルカリに入社したばかりの外国籍エンジニアが担当してくれることに。彼の積極的な質問や「やってやろう」という熱意、そしてエンジニアリングマネージャーやテックリードたちのサポートを得て開発をスタート。実は開発前、仕様上ではPriorityを1〜3(1が高い)まで用意していたのですが、運良く開発をスムーズに進められたため、すべてを実現させることができました。

不安を感じさせず「出品を楽しめる」バッジにしたい

スピード発送バッジをリリースしてからは、たくさんの嬉しい反響がありました。

<お客さまの反応>
・スピード発送バッジをゲットしました! すごく嬉しい!
・24時間以内での発送を心がけていましたが、まさか報われる日がくるとは思いませんでした!
・迅速かつ丁寧な取引を心がけていたら、メルカリからバッジをもらえた!
・メルカリでスピード発送バッジをもらった! 発送が早いことに自信があったから嬉しい!

直樹さん(メルペイ代表取締役、青柳直樹)の個人Slackチャンネルで見られた反応!

さらに嬉しいことに、ビジネス的なKPIにも良い影響がありました。これは、お客さまの満足度が反映されたものでもあるので「大変だったけど、PMとして最後までGo Boldにやりきって本当によかった」と思っています。

スピード発送バッジの今後の展望ですが、良い点だけでなく課題も多くあるのでそれらを改善していきたいです。例えば、当機能の表示を確認できるのはiOSアプリをご利用のお客さまのみのためAndroidやWebにも適用させたいし、さまざまな条件のチューニングも行いたい。また、お客さまによっては「もし購入者から発送を急かされたら嫌だなあ」「変に期待され、発送までの期日を守っても遅いと評価されたらどうしよう」といった不安を覚える方もいらっしゃいます。こういった不安を少しでも減らすアップデートを考えてきたいです。

この「スピード発送バッジ」を振り返ってみて、一番良かったのはデザイナーやエンジニア、BIメンバーなどと深く連携できたことでした。Be Professionalなメンバーたちと挑戦できるこのありがたい環境で、これからもお客さまにとって価値ある体験を提供し続けたいです。

プロフィール

岡本明朗(Akio Okamoto)

同志社大学経済学部卒。レバレジーズ株式会社に新卒入社し、Webディレクターとして転職メディアの開発ディレクションや新規メディアの企画・立ち上げなどを行う。2018年1月、株式会社メルカリにプロダクトマネージャーとして参画。UXチームのプロジェクトオーナーなどを務め、現在はCXIチームにて継続率の改善やロイヤルティ向上を担う。Twitterは@akindoru0922

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