メルカリの経営改革を行う「会長室」の1年を振り返る

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「会長室」と聞くと、会長の業務補佐をメインとした、いわゆる秘書的な役割を想像する方も多いかもしれません。しかし、メルカリCEO Office(会長室)は異なります。CEOの意思決定サポートをするため、経営に踏み込み、戦略の策定から組織運営の仕組みづくりなどを行っています。

そんなメルカリCEO Officeは先日、発足からちょうど1年が経ちました。そこで今回のメルカンでは、CEO Officeをリードする執行役員Head of CEO Officeの河野秀治(Shuji)によるブログ記事を掲載。あまりにも特徴的な書きぶりを見て「編集しないほうが会長室の雰囲気をまるごと伝えられる」と判断したため、原文のままお届けします。

※以下、河野本人によるブログ原文です。

  • ・ スケールする経営に必要なこととは? 昨今の事業環境下において、この問に対する答えは得てして抽象的です。バリュー? 性善説? カリスマ性?
  • ・ 新しいことを拒みながら刻々と膨張しようとする組織の本能と、生存競争に勝ち抜き利益を追求していく資本の本能。会社が利益を上げるためには人が必要で、人を使うと利益を潰すという葛藤に、CEOとともに真正面から対峙していくのがメルカリCEO Office(会長室)の役割です。
  • ・ CEO Officeが取り扱う「経営」や「マネジメント」というお題は抽象的ではありますが、その企画(Planning)と実行(Execution)となると、戦略的思考と、広範囲に実践的な知識、経験やリーダーシップ力が求められます。
  • ・ スケールを妨げるような問題を敏感に感知し、先回りして手を打っていく。問題のボトムに降り、一番複雑で大きく見える問題から切り込むあとは芋づる式に問題を体系化し、シンプルでインパクトの大きな打ち手を打っていく。
  • ・ これまでCEO Officeでは、グループロードマップ設計、経営人材育成プログラム推進、M&Aのコントロールタワーとしてマイケル社の完全子会社化、UK事業やソウゾウ社の撤退、メルチャリの分社化らを象徴例として、大小さまざまな打ち手をアレンジしてきました。直近では、万単位の組織規模に耐えられる組織の基本OSの大幅なアップデートに取り組んでいます。
  • ・ これらを有事ではなく、平時に行っていく。病気になってから慌てて手術を行うのではなく、健康な状態のときに平然と手を打っていくのです。と、こんなことを話しているとだいたい怖がられます。
  • ・ メルカリCEO Officeはその名のとおり、メルカリ代表取締役会長兼CEOであるShin(山田進太郎)の直下にあたるチームです。2018年7月に発足し、ちょうど1年経ちました。その振り返りと現在についてお話しします。
  • ・ 表に出る機会もないので、Shinの隠密部隊だとか、Shujiはホログラムだとか思っている人もいるとかいないとか。僕はここにいます。

承:高成長経営の修羅場

  • ・ メルカリの修羅場は、高成長経営から生まれる「連続する不可逆な意思決定」との戦いにあります。
  • ・ 経営陣は日々、組織づくりとその限界に合わせた事業展開のペースづくりに奔走しています。そこでは、事業の「焦点」をますます鮮明にし、戦いの内容をシンプルにしながら成長の維持を行っています。
  • ・ 闇雲にM&Aでの事業拡大などは行わず、本質的な付加価値を伴うものに集中し、新規事業についても会社全体の生産性やイノベーション創出とのバランスを考えながら実施しています。
  • ・ ある種の冷徹な側面を感じられますが、それは「経営」や「マネジメント」が経済的な営みであるからです。ことメルカリにおいては、メンバー一人ひとりが「カネ勘定」に高い関心を持つことが求められます。
  • ・ また、数十人、数百人規模のマネジメントスキルと1,000人規模のスキルは異なります。危機感やダイナミズムはスタートアップと同じものを志向していますが、実態の組織は大企業規模です。魂はベンチャーでもガバナンスは大組織がベースであるのは事実です。そのため、今の移行期をマネジメントする人材には、「スケールする仕組みを導入するスキル」、そして「関係者のコンセンサスを得て前へ進むスキル」が必須となります。
  • ・ 関係者の賛同を得られなければ、当然ながら途中でストップがかかり、進めていたメンバーは疲弊していきます。それが続くと組織に「負け癖」が根付き、弱体化を招く。マネジメントスタイルは洗練が必要だと考えています。

転:経営会議のなかの嵐と規律

  • ・ メルカリへの入社が決まり、これから自身がその参加者となる経営会議に先立って傍聴させてもらったことがあります。そこで見た光景は「嵐」でした。第一印象は「経営陣同士がケンカをしているのか!」「とんでもない会社に来てしまった」ととっさに感じたことを思い出します。けれど会議が終わればみんなで仲良く食事している。河原で殴り合った後に肩を組んで夕焼けに向かって歩いて帰るような、少年時代の清々しさがそこにはありました。
  • ・ 経営会議では、経営メンバーがそれぞれ持ち寄ったアジェンダに対して、忌憚のない議論がくり広げられています。そこには一般的な会社の経営会議にありがちな、「自分の管轄のことを責められたくないから、他の人の管轄のことも責めない」という相互不可侵条約は存在しませんでした。
  • ・ 会議に挑む姿勢にも厳しい規律があります。あらかじめ準備された資料については、会議までにはすべて目を通していることが前提で、質問事項にはすでにコメントが記入されており、さらに回答までもが書かれている。この状態が会議開始までに整っているわけです。明確な論点、現場からの提案やアクション期日がない議案についてはどんどん却下されていく。
  • ・ Shinは経営会議を「みんなの叡智を結集させる場」とよく表現しますが、参加メンバーであるFumi(取締役社長 兼 COO、小泉文明)、Hama(取締役CPO、濱田優貴)、John(取締役CBO 兼 US CEO、John Lagerling)、Naoki(取締役 兼 メルペイ代表取締役、青柳直樹)、Tamo(執行役員メルカリジャパンCEO、田面木宏尚)全員が思考の真剣勝負を行っています。
  • ・ 「ベンチャー事業が当たる・当たらない」は、運がその大部分を左右しますが、仮に同じ事業を当てたとして、それが10に留まるか1,000になるかは経営力が左右すると改めて思い知らされた瞬間でした。
  • ・ また、CEO Officeのメンバーは、「CEOに意思決定させない」ことを目指しています。
  • ・ 一見誤解を生みそうなコンセプトですが、したいことはこういうことです。
  • ・ 意思決定が難しいのは「情報が少ない」ことか、多くても「筋の通った整理がされていない」ことから起きます。たとえ簡単な問題であっても、このコンディションが整っていなければ、その判断はカンに頼らざるを得ません。
  • ・ 難しい問題であったとしても、事実に基づいた現状分析がきちんとあり、論点が整理され、そこに現場の意思が表れている問いであれば意思決定は簡単。その選択肢を選ぶのは当然となり、意思決定は不要となります。
  • ・ CEOが意思決定を行うのは年に1、2回にしたいと考えています。それは情報もなく分析もできないような、暗闇でジャンプするようなBig Betです。
  • ・ 僕自身は人生のBig Betができず、未だ暗闇に鎮座しています。

結:現在取り組み中のアップデート(マンパワーではなくスケーラビリティ)

  • ・ これまでのメルカリの戦略は、「経営力」を高めるために「組織の実行力」を高めること。端的に言うと、有能なタレントを採用することに集中していました。それにより依存関係にある経営の「意思決定力」も高まり、結果として鮮烈な成長を実現しています。
  • ・ ただし、これまでタレントスキルというマンパワーで解決できていた問題も、組織と事業の処理量が拡大する過程で、複数人で組織横断的に解決しなければならなくなりました。そこで必要となってくるのは一人ひとりの力を能力開花する「スケーラブルな仕組み」です。
  • ・ 難しい話をしているようですが、取り組むべきは企業活動の基本的な部分です。
  • ・ 会社のミッションに基づき、ビジョン(ロードマップ)を定め、逆算して今やるべきことを考える。必要な人材を定め、その確保と配置と育成を行い、企業活動を数値化(可視化)させ、リスクを抑えながら、生産性を向上させ、規模を拡大する。そんな基本的な規律に、愚直に向き合っていきます。
  • ・ メルカリの現場はあえてルールをつくらないことから「カオス」と表現されます。ただ、カオスをそのまま受け入れるのではなく、どんどん整理していく必要があります。そのうえで、難易度の高い「カオス」を新たに受け入れていきたいのです。
  • ・ くり返しとなりますが、今の我々が認識すべきは「スケーラブルな仕組み」づくりです。これらの実効性を高めるためにルーチン活動へ織り込んでいく。それを行える人材が、マネジメント人材の重要な役割の一つとなってきます。
  • ・ 「戦略」や「カネ勘定」を経営だけのものにせず、メンバー一人ひとりの武器にしていく。
  • ・ その結果、厳しい意思決定を迅速に行っていく。そのためには根本的な取締役会のあり方から組織ストラクチャーまでデザインするという、ハイレベルな取り組みに発展していきます。
  • ・ これらビジネスプロセスを変革していく主目的は、生産性の向上にあることが多いですが、実はガバナンスの向上に直結するのです。
  • ・ 次のステージのメルカリに向けて、みなさんの叡智を結集させましょう!

河野秀治(Shuji Kawano)

執行役員Head of CEO Office。ライブドアの投資銀行部門、ゴールドマン・サックス証券とSBIホールディングスによる合弁の投資ファンドを経て、戦略コンサルティング会社である経営共創基盤(IGPI)に入社。その後、起業も経験。さらにGunosyの経営戦略室長として上場を経験したのち、2018年7月メルカリ入社。写真のイラストはSlack用アイコン。

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