なぜ、モビリティから決済へ? 元JapanTaxi 金高恩がメルペイに懸けた理由

「娘が生きる未来をより良いものにしたい。」

そう話すのは、決済サービス「メルペイ」でセールスや事業開拓をリードする、執行役員Head of CEO Officeの金高恩(以下、ゴオン)。サイバーエージェント、ネットプライス、ヤフーなどで新規事業の立ち上げを経験した後、独立。2015年にはJapanTaxiに参画し、常務取締役CMOとして、ネット決済機能「JapanTaxi Wallet」をリリースするなど、レガシーなタクシー業界に一石を投じてきました。そんな彼女が次なる挑戦の場として選んだのが、メルペイです。

「移動(モビリティ)」の常識を疑い、業界内に変化を起こしてきた彼女が、メルペイを選んだ理由とは。そして今、抱える経営目線での課題とは。これまでのキャリアを紐解きながら明かしてもらいました。

娘の出産、そしてJapanTaxiでの経験が、今につながっている

ー本日は、ゴオンさんに「メルペイでの挑戦」について伺いたいと思いますが、そもそも決済事業に取り組もうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

ゴオン:話が遡るのですが、一つは娘の出産、そしてもう一つはJapanTaxiでの経験です。

ーぜひ、一つずつ聞かせてください。

ゴオン:私は35歳で娘を出産したのですが、それまでは24時間365日、仕事のことばかりを考えているような人間でした。それが出産を機に、考え方が180度変わったんです。これまでは「インターネット業界の今をどう変えるか」「今の生活をどう変えるか」という視点でしかサービスを考えられていませんでしたが、娘を出産してからは、急に未来のことを考えはじめたんです。1歳になる娘はiPadを自ら使いこなし、音声検索でYouTubeを楽しんでいるわけです……この子が大人になった時の社会はどうなっているのだろうか、と純粋に関心を持つようになっていって。それから私の人生の目標は「娘が生きる未来をより良いものにしたい」に変わったんです。

金高恩(メルペイ執行役員Head of CEO Office)

ー娘さんの「未来」をつくる仕事がしたいと。

ゴオン:そうです。当時、自分のなかで、未来を変えるキーワードは二つ。「移動」と「お金」でした。人間、生きている間は、必ず移動する。移動するとお金が必要になる。ただし、IT業界に比べて、それらはレガシーな側面があるため、その概念はほとんど変わっていませんでした。IT業界で得た私の経験を使い、「移動」と「お金」の未来を変えることができたら、きっと娘の未来も変わるかもしれない。そんなことを思っていた矢先、知人からご紹介されたのが川鍋さん(日本交通株式会社代表取締役会長)だったんです。

ーそんな幸運な出会いがあったんですね。

ゴオン:本当にラッキーだったと思います(笑)。「ITを通じて移動の未来を変えたい」と思っている私に対して、川鍋さんは「ITを通じてタクシー業界を成長させたい」と考えていて。すぐに意気投合し、タクシー配車用アプリを手がけるJapanTaxiに参画することになったんです。

ーそれから、なぜ決済サービスへ?

ゴオン:アプリを開発し、順調にDL数は伸びていたのですが、そもそもアプリがあろうとなかろうと、タクシーを利用するユーザー数を増やさないと、業界自体を変えることができないということに気づいたんです。「日常的にタクシーに乗る人だけが利用するサービス」に留まってしまうと。お客さまの新たなニーズを発見し、タクシーでの体験価値を高めないと業界の未来はない。そこで2018年に開発したのが、キャッシュレス降車体験を提供する「決済機付きタブレット」でした。これはクレジットカードから交通系IC・電子マネーまで、複数決済が可能なカードリーダー端末と、従来の広告タブレットが一体化されたもの。これがお客さまにすごく喜ばれたんですよ。

ー例えば、どういうことですか?

ゴオン:タクシーを呼ぶお客さまは、お金を支払ってでも早く目的地に着きたいわけです。それなのにタクシーは目的地に到着してから30秒から1分くらい、精算処理のため停車し、お客さまを待たせてしまいます。早く降りたいのに……。それが「決済機付きタブレット」を導入したことによって、10秒くらいで降車できるようになりました。これまでの決済は乗務員さんがするものでしたが、それをお客さまに変えた。決済の「主語」が変わったんです。

ー現金商いが慣習で、IT化が遅れていたタクシー業界にとって、革新的な取り組みですよね。

ゴオン:レガシーな業界ゆえ、なかなか加盟店に理解されなかったり、数多くの失敗をしてきましたが、やっぱり決済を変えたことによる影響力は大きかった。その時、老若男女問わず、すべてのお客さまに携わることができる「決済」というフィールドに、これからの人生を懸けてみたい。そう思うようになって、転職を考えていた矢先、メルペイに出会ったんです。

目指す未来が一緒であれば、どんな苦悩や失敗も乗り越えられる

ー未来を変えるキーワードに「移動」と「お金」を掲げていましたが、その二つ目に挑戦することになるわけですね。決済サービスのなかでも、メルペイを選んだ理由は何だったのでしょうか。

ゴオン:メルペイを選んだのは「信用を創造して、なめらかな社会を創る」というミッションそのものが、私の想いと重なっていること。そして直樹さん(メルペイ代表取締役)に共感したことの二つですね。

ー共感ですか?

ゴオン:まったく転職を考えていなかった頃、直樹さんと偶然ランチをする機会があって。その時に直樹さんから「ゴオンさんは、将来何をしたくて、今の仕事をしているんですか?」と聞かれたんです。私は「娘の未来のために、『移動』と『お金』の未来を変えたいと思い、JapanTaxiで働いています」と答えました。そしたら、直樹さんもメルカリ・メルペイで実現したいこと、そして次世代への想いについて話してくださったんです。それにすごく共感して。

ゴオン:こんなに共感するなんておかしい(笑)、と思っていたのですが、それから小泉さん(メルカリ取締役兼COO)や曾川さん(メルペイ取締役CTO)、マークさん(メルペイ執行役員CBO)たちと話を重ねていくうちに、「この人たちは本気でミッション達成を目指しているんだな」と思ったんです。みなさんに別々で会っているのに、未来の話をする目が一緒だったんですよ(笑)。目指す未来が一緒であれば、その過程でどれだけ揉め事や失敗をしても、成功するために頑張れるなと。成功の数より失敗の数の方が明らかに多いですからね。この人たちと一緒なら変えられそうだと思い、メルペイに決めました。

ー「成功の数より失敗する数の方が明らかに多い」……これは本当にそうですよね。では、実際にメルカリに入社してからのお話を伺っていきたいと思います。入社前後で、ギャップなどはありましたか?

ゴオン:一つは情報の透明性ですね。人事に関する情報を除き、基本的に議事録はオープンですし、誰でも知りたい情報にアプローチすることができる。意欲の高い人はどんどん成長できる環境だなと思いました。それに、会社にはメンバーを受け入れるためのオンボーディングが用意されている。噂には聞いてはいましたが、想像以上に恵まれている環境でした。

ーでは、あえてネガティブギャップがあるとすると……?

ゴオン:そうですね……会社そのもののオンボーディングが整っている一方で、チーム内で活躍するための受け入れ体制が整っていない気がしています。メンター制度はあるものの、メンター自身もプレイヤーなので、細かいケアができていないのが現状で。これは私自身の課題でもあるのですが、組織全体に余裕を持たせて、新しいメンバーが活躍できるような後押しをしなければならない。

ー本人の問題ではなく、組織の問題によって、本来のパフォーマンスを発揮できていないと?

ゴオン:そうです。本人には何も問題があるわけではない。むしろ力がある。でも当の本人は自分に問題があると思ってしまう……そういうケースは個人としても、組織としても非常にもったいないと思っていて。改善していきたいポイントの一つですね。常に新しいことが動きはじめ、常に情報がアップデートされていく社内に、急に飛び込むことは非常に難しいですから……これは早急に取り組みたいと考えています。

メルペイは新たな道をつくっている。「キャッシュレスの大本命」の勝算は?

ー2019年3月に入社して以降、主にセールスを担当していたと伺いました。これまで特に力を入れて取り組んできたことについて教えてください。

ゴオン:入社後は、加盟店さまを増やすための営業施策、そしてよりアクティブに使っていただけるための営業施策、この二つを実行してきました。無事に最初のクオーターに立てた目標は両方達成できたので、幸先の良いスタートを切ることができたと思います。その一方で、セールス部門のメンバーが一気に増えたことにより、それぞれの役割が不明確だったり、細かな数字の可視化ができていなかった。クオーターの終わりに差し掛かると、駆け足で数字を追いかける習慣があったので、もっと計画的に進捗を追えるようにするための整備を行いました。しかし、まだまだ道半ば。正直、3割くらいしか完成されていないのが現実なので、今クオーターも強化していきたいですね。

ー今後は、よりキャッシュレスを促進するための役割も加盟店アライアンスなども、ゴオンさんがリードするようになるのでしょうか。

ゴオン:その一端を担うことにはなると思います。例えば、6月27日に発表したLINE Payさんとドコモさんとの加盟店アライアンス 「Mobile Payment Alliance(MoPA)」は、その一例です。決済サービスが乱立するなか、お客さまは常に「このお店は何ペイが使えるの?」と気にしてしまう現状があります。お客さまの目的は食事や買い物をすることなのに、手段で悩んでいるなんて、まったくなめらかではありませんよね。今回のMoPAでは、「LINE Pay」、そして「d払い® (ドコモ)」をつなぐことによって、いずれか一つのQRコードを設置するだけで、支払いが可能になるんです。お客さまの利便性が上がるだけではなく、加盟店さまにとっても、導入の負担軽減や潜在的利用者の獲得につながる。決済サービスは使われなければ意味がありません。他の決済サービスも、同じ思想を持った仲間として、ともにキャッシュレス社会を促進していけたらと思っています。

メルペイ、LINE Payが設立した加盟店アライアンス 「Mobile Payment Alliance」(MoPA)にNTTドコモが参画

ーそれでは、ずばりゴオンさんの目標を聞かせてください。

ゴオン:リソースが本当に不足しているので、やりたいことが十分にできていないという現実はありつつも、日本のキャッシュレス業界を先頭に立ってリードしていく存在でなければいけないと思っています。なので、「キャッシュレスの大本命」になるということが目標ですかね。それを実現するためには、常識を覆したり、時には「これってあり?」みたいな想定外なチャレンジをすることも求められる。私は前職でCMOをしていた経験もあって、マーケティングの定義をよく聞かれるのですが、一貫して「マーケットを動かしていくための仕事、役割、人」と答えています。ビジネスを変えるというよりも、大きなマーケットを変えるくらいの大きなチャレンジをしないと、成長もできませんからね。

ゴオン:でも、この組織、このメンバーなら必ず実現できるんじゃないかな。私たちが取り組んでいることって「今」をつくっているわけではなく、本気で「未来」をつくっていると思っているんですよ。「僕の前に道はない、僕の後ろに道は出来る」という私の好きな言葉があるのですが、まさに私たちがやっていると真剣に思っていて。その道をつくっている自負心、そして次世代に渡せる素敵なサービスをつくっていけたらいいなと思います。

ー次世代、つまりはゴオンさんの娘さんが生きる未来に影響を与えることにもなるんですね。

ゴオン:もちろん! 娘の生きる未来をよりよくするために頑張りますよ!

金高恩(Goeun Kim)

執行役員Head of CEO Office。株式会社サイバーエージェント、株式会社ネットプライス、ヤフー株式会社などで事業立ち上げ・開発を行う。2012年4月、株式会社HUGGを起業し代表取締役に就任し、2年半後に事業譲渡。2015年からJapanTaxiに参画し、常務取締役CMOに就任。Forbes Japan WOMEN AWARD 2017 ヒットメーカー賞、第6回Webグランプリ Web人大賞を受賞。 2019年3月にメルカリ参画、2019年7月より現職。

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