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1000万DL突破で躍進中! メルカリ創業者、山田進太郎がピュア”C2C”にこだわる理由

※株式会社リクルート運営『HRナビ』に掲載(2018年9月末にサイトクローズ)
※本稿は2015年2月3日に掲載された記事です

フリマアプリの「メルカリ」は、日本のテック業界ではまだ数少ない連続起業家である山田進太郎氏が立ち上げたスタートアップ企業だ。2013年7月にサービスをローンチして2014年5月にはテレビCMを開始。一気に認知度を上げ、ローンチからわずか1年半の2015年2月時点で1000万ダウンロードを達成し、いまだ急成長を続けている。

2014年3月に14億5000万円、10月には総額23億6000万円もの大型の資金調達を実施し日本のスタートアップ業界の急成長株だ。日本でのマネタイズも早々に、すでにアメリカ進出を開始し、すでに1日の出品数は1万品を超え順調なすべりだしだという。

日本のスタートアップ企業の中から1つでもアメリカ市場でホームランが出てくれば、「日本のスタートアップ企業でも世界で戦える」という成功事例のシグナルとなり、後続企業が出てくるのではないか。大リーグで言えば野茂英雄が、その後に大リーグで活躍する日本人選手に対して先鞭をつけたのと同様に、続々とアメリカ市場、ひいてはグローバルに成功するスタートアップ企業が日本から出てくるのではないか。

こうした「野茂待望論」を語るスタートアップ関係者は日本に多く、そのとき、「スタートアップの野茂」のポジションに最も近い可能性のあるスタートアップ企業の1つとして注目されているのがメルカリだ。

山田氏は2001年に創業したWebサービス企業のウノウを2010年にZyngaへ売却した実績がある。当時の日経新聞の報道によれば、買収額は数十億円。そんな山田氏を動かすパッションは、もはやIPOや買収といった分かりやすい「エグジット」ではない。

なぜC2CのECサービスに取り組むのか? 連続起業家の山田進太郎はC2Cに何を見ていて、何を目指しているのか? 東京・六本木のメルカリ本社で話を聞いた。

自分でコードを書かないとダメと気付いた楽天時代

大学4年生のときに楽天に内定して、インターンでオークションサイトを作っていました。いまの「楽天オークション」ですね。最初は楽天で現在CTOをしている安武さん(取締役の安武弘晃氏)という方と、3人ぐらいのプロジェクトでした。といっても、ぼくは学生なので丁稚みたいもので、eBayの規約を調べたりしたんですけどね。

そのとき、「こういうことをやりたい」「ああいうことをやりたい」と企画みたいなことを言ったんですね。学生なので、今から思うとわがままでしかないないんですけど(笑)。

そうやって何かをやりたいって言ったときに、エンジニアに「それはちょっとできないですね」とか「それは難しいですね」と言われることが多くて。いま考えるとプログラミング的に難しいとか時間がかかるという意味だったと思いますが、結構悔しくて、だったらもう自分でプログラムを書けるようにならないとダメだなっていうことから、PHPを勉強し始めました。そのときに趣味で作り始めたのが「映画生活」というサイトだったんです。

映画のサイトは、当時すでにいくつかありましたが、本格的にユーザーがレビューを書くサイトはありませんでした。それで、いま上映している映画のレビューとかランキングがあったら面白いんじゃないかと。だけど、誰も作ってくれないわけですよ(笑)。それで自分でプログラミングを覚えて作り始めました。

ぼくはこういうのがあったらいいよねという作りたいものがあって、その手段としてプログラミングをやってきています。一応理系で数学専攻なんですけど、映画生活を作るときに初めてプログラミングを学びました。インフラとかコンピューターサイエンスのバックグランドがあるわけじゃなくて暗中模索みたいな感じでしたから、セキュリティ上も問題があったかもしれません。でも、動いたし、すごく使われるようになって、毎月100万人ぐらい来てくれるようになった。映画生活は2009年に、ぴあへ事業譲渡しています。

モノを作るためにプログラミングを始めたので、自分のことをプログラマだとは思っていません。得意でもないです。プログラマとしては自分は才能がないのも知っています。

でも、自分で書いた経験があることによって、サービスの企画をするときとか仕様を作るときに、ロジックをしっかり作れるし、こういう仕様だと実装は30分で済むけど、これをやると1日かかっちゃうよねというように、実装コストのことを考えながら仕様が作れるようになったのは大きいですね。こういうことを実現したければ、こういう仕様をさっ引けば3日間でできますよ、とか。だから企画者としては、速く、シンプルにできるし、エンジニアからすると、ぼくにエンジニアリングの経験があることで、やりやすいと思います。非常に明確な仕様が出てくるので。

買収後のZynga Japanで感じた「説明コスト」のもどかしさ

ウノウをZyngaに売却した後、ぼくはZynga JapanでGMというポジションで仕事をしていました。仕事自体は順調でした。常に評価も良かったです。アメリカからボスが来ていたので、人事評価はAとかBとか評価されるんですけど、彼らがこうしたいという意図を組んでモノを作ることもできるし、マネージメントもできる。組織の中でやっていく能力は悪くはないと思います。

ただ、自分が「こういうことやりたいな」と思っても、説得しなきゃいけないっていうのが、すごくもどかしかったんです。

理由付けをしている時間があるぐらいだったら、小さなチームで作っちゃいたいんですよね。だけど、エビデンス(説得材料)が必要になる。まあ、そりゃそうですよね、アメリカ本社から見ると、日本市場って、よく分かりませんから(笑)。だから、こういうのが流行るはずだっていう説得が必要になるんですよ。

2010年の12月にドリコムの内藤社長と韓国に行って、すごく流行っていたメッセンジャーアプリのKakaoを見たんですね。それで、「これはすごいね」って2人で話をしたりして、すごくやりたいと思いました。それで……、まあこれは、あまり蒸し返したくはない話なんですけど、当時Zynga JapanでLINEみたいなメッセンジャーサービスを作りはじめたんですよ。

ただ、開発開始するまで半年ぐらいかかったんですね。ぼくも立場上はゲームを作るのが主だったので、新しいサービスといっても、どうやって社内を説得するかっていうところで、ちょっと弱かったなって振り返ってみて思います。そこまで確信を持っていたわけでもない、というか。

ゲリラ的にプロダクトを作っていたんですけど、あるとき「なんでゲーム以外のものを作ってるんだ?」ということでお取り潰しになったんです。本社からすればゲーム会社なので、そりゃそうですよね。だから自分としては納得感はあったんですけど、一方で、もうちょっと大きな枠でサービス作りを考えられるフィールドに自分を置いておくのが重要だな、とそのとき思いました。

LINEが出てきたのは2011年6月です。そのちょっと前ぐらいからぼくらも作り始めていて、アプリを出すのは秋の予定でした。どっちみちLINEのほうがリリースが早かったので、ぼくらが出していても勝てなかったのかなとは思います(笑)。でも、結構いいところに着弾してただろうなぁ、悔しいなっていう気持ちがありました。

いまのメルカリでなら、LINE並みのアイデアがあったら、1人か2人のエンジニアを集めて作り始めるっていうのもできるかなって思うんです。実際、ウノウ時代の「まちつく!」って、最初はそんな感じでやり始めたんですよね。もしかしてモバイルゲームって可能性あるのかもっていうことで、1人のエンジニアのリソースの半分と、ぼくのリソース半分とかで作って。それで500万ユーザーというヒットになりました。

Zynga Japan時代、ぼくは人の下ではイノベーティブなことができないタイプかなと感じたんです。それでZynga Japnaを辞めて世界一周旅行をした後に創業したのがメルカリです(旧コウゾウ)。

5年、10年とユーザーに継続して使ってほしい

いまメルカリの社員数は約100名です。半分以上はカスタマーサポートで、60人規模です。仙台にオフィスを作って、そこに40人近く。東京にも20人ぐらいいます。結構な規模感でやっています。後はプロダクトを作ってる側の人とコーポレート側の人が40人くらいです。

カスタマーサポートの規模が比較的大きいのは、メルカリはサポートがいいよね、安心して使えるよね、と思ってもらえることを重視しているからです。メルカリって個人間取り引きなので、どうしてもヘンな出品があったりして通報がくるんですよね。比率としては数千件に1件とかであっても、モノが届かないといったトラブルというもあります。そういう問題を解決するための専任のチームです。

会社として長期的にサービスを考えているんです。5年後とか10年後にもユーザーに継続して使ってほしいとすると、カスタマーサポートってすごく大切です。ちょっとでもイヤな思いをすると「あのサービスはちょっと……」という感じでその後もずっと使ってくれなくなるじゃないですか。

イメージとしては、Zappos(米アマゾン傘下の靴・衣料のECサービス。アマゾン同様にユーザー第一主義で知られる)のような。すごくサポートがいいね、というブランドを作っていきたいと思っています。

フリマアプリはレッドオーシャン? いや、とんでもない

日本だとフリマアプリはレッドオーシャンだよねって言われることもあります。確かにFrilやショッピーズといった独立系だけでなく、楽天やヤフー、LINEもモバイルのフリマ市場に参戦しています。でも、ぼくとしてはシェアエコノミーという大きなトレンドの中での、モノとモノのC2Cと捉えているんですよね。ぼくらがタクシー配車スタートアップのUber(ウーバー)みたいなサービスをやることはないけど、ああいうものは、これから5年ぐらいでもっと出てきて世の中を変えていくと思っているんです。ぼくらはモノのC2Cでスタートしていますが、もっと違うものも出していきたいと思っています。アイデアは、たくさんある。

以前に日本で問題になったベビーシッターのマッチングサイトみたいなものがありますよね? あれも本質的にはC2Cですよね。事件が起こって運用が問題視されましたけど、本質的には求められているサービスだと思います。困っている人の助けになる、あまった時間をお金にするのを個人間でできる。これは広義のシェアエコノミーです。

すでに個人間でスキルを教え合うようなプラットフォームサービスもありますけど、広く使われるサービスにしていくのに大切なのは、そのやり方です。

1つはモバイルにしたほうがいいということです。いまパソコンは普通の人はなかなか使わないので、誰でもスマホで気楽に使えるようにしないとダメだと思います。逆に言えばインターフェイスが普通の人にまで広がったというのは画期的です。例えばヤフオク!に対抗して多くのオークションサービスが出てきて、華々しく散ってきたっていう歴史がありますよね。DeNAのモバオクなんかは、もしかしたらガラケーというデバイス自体の限界だったということもあるかもしれません。

スマホのホーム画面の一角を取れるかの勝負

Zynga Japanを辞めて、世界一周の旅にでました。2012年2月のことです。で、世界を回って帰国したら、みんなスマホ持っているんですね。それまでは新しい人と会うときに連絡情報の交換に赤外線を使っていた。それがみんなLINEになっていた。LINEのIDを教え合ったりフルフルするようになっていて、これはすごいなと思ったんです。

C2Cではユーザー密度が重要です。

PCだとヤフーが勝者で、もう絶対に誰も勝てなかった。これがスマホっていう新しいデバイスの上だったら、C2Cをやることで全然違ったプラットフォームが作れるかなと思うんです。

ユーザーのスマートフォンのホーム画面を取れるか、自社アプリのアイコンを置いてもらうことができるかというのは重要です。枠数が決まったホーム画面ですが、いったんそこにおいてもらうことができれば、そこからいろんなサービスが展開できます。その勝負が遅くとも今年いっぱいで一旦終わっちゃうと思うんです。例えば、LINEはもう当確ですよね。後はニュースサービスが1つ、ショッピングは……、ウチなのか、どこなのか。すでにプレイヤーが限られてきています。

C2Cへのこだわりの根底にあるのはリバタリアン的思想

ぼくは思想的にはリバタリアン的な思想を持っています。国家は最小限で良くて、個々人がやりたいことをいかに実現していくか、という考えですね。誰の助けも要らない。シリコンバレーだと起業家のピーター・ティールがリバタリアンの先鋒みたいに言われてますけど、ぼくも思想的に非常に近いものがある。

そういうところからサービスのアイデアも出てきているので、ぼくが出す仕様はミニマルでシンプル。誰でもすぐに理解ができて扱えるものになっていると思います。

C2Cは中央集権と逆でインターネットそのものですね。ぼくはピュアなC2Cが好きなんです。UberもAirbnbも好き。ああいうネットワーク効果があって、世の中を変えていくサービスが好きなんです。

最近は、間に企業が仲介に入るC2B2Cみたいなサービス、例えば、中古品買い取り販売のTheRealRealみたいなのがありますし、ヤフオクとかeBayはC2Cなんだけども、ブックオフと提携したりしてスモールB2Cを増やしていますよね。LINEのLINE MALLも企業の公式チャンネルを入れてB2Cを入れてますよね。C2Cって、そうは言っても全体のEC市場からすると小さいので、そうやってBを入れていくのはビジネス的には自然なことです。自然ではあるんですが、こうしたサービスとは思想的な違いを感じていて、ぼくはC2Cにこだわりたいなと思っています。

C2Cではユーザー同士の互いの評価というのが資産です。良い評価の人は、その後も信用できる。そういうC2Cサービスには、もっと可能性があると思っていて、個人間で何かやり取りするって言ったら、「とりあえずメルカリを使う」っていう状態になっていればいいなと。

C2Cをシェアエコノミーの広義で捉えると、やりたいことがたくさんあるんですよ。いまのメルカリでは人が足りないなっていう状態です。ちょっとiOSのエンジニアが足りないから1人ほしいとか、そいういうレベルじゃないんです(笑)。エンジニアがいたらいただけいろんなものを作れるなっていう感覚を、今のぼくは持っています。サービスを自分で作れるようなエンジニアであれば、1人とか2人と言わず10人でも20人でもほしい。ベテランも新卒も問いません。一緒に、これから求められるようなサービスを作っていきたいなと思っています。

世界を平準化していくこと

途上国に生まれたっていうだけで、世界一周旅行をするという望みがかなわない人たちがいます。とてもじゃないけど、そんな富を蓄えられない。逆に、日本やアメリカのような先進国の人の中には、ちょっとパラサイトしている人もいるのかなって思えるときがあります。途上国にもし生まれたら無理ですよねという意味で。

こういうアンバランスは何とかしたいなと思ったりするんですよね。

日本は安全で、電気も水もあって豊かです。でも資源は有限です。アフリカやアジアでも日本人と同じような暮らしができるようになるべきだとと思うんです。だけど、日米のような資源の使い方だと、世界中の人がそういう暮らし方はできない。もっと資源を節約して、みんなが少しづつがまんして暮らしていかないといけない。それによって途上国の人たちの生活レベルがあがっていくような、そういう世界観ですね。

実際のところ、先進国のぼくらがちょっとシェアすることなんて何でもないはずだと思うんです。不要なものが多くて、無駄が多い。日本で要らなくなったスマホとかクルマでも、アフリカの人が使えるはず。買えるはず。そういう世界観でサービスを作っていきたいんです。今のメルカリは日本は日本、アメリカはアメリカ、ということになっているんですけど、自動翻訳を提供するとかして、将来的には国境を超えた取り引きもやっていきたいですね。日本人が出した中古車をアフリカのヒトが買うとか、そういうことです。

先進国と途上国で不公平なところがあります。もっと平準化すべき。”新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る”というのがぼくらのミッションです。

1兆円と言われても会社を売る気はない

C2Cにこだわりたいってことのほかにも、価値のあるサービスを作りたいという思いも強いです。どういうことかというと、お金と価値がリンクしていないなということを感じているんです。

例えば、あるベンチャーに参画して、それでストック・オプションもらったとしますよね。それで受付嬢が何億円みたいな話がある一方で、めちゃくちゃ仕事できても、その会社の方向性が悪いがために、失敗したら金銭的には何もないとかね。

何をもって価値とお金をリンクするかっていうと、不公平なところがあるなって感じています。

サービスで言っても、世の中や人々に提供している価値がそこまでなくてもマネタイズがリンクしていて儲かることもあるし、その逆もある。もちろん両方満たしている例もあって、例えばグーグルなんかは価値もあるし、お金も生んでいますよね。

なかには、ぼくが資産的な余裕があり、それで達観していると考える方もいるかもしれませんが、ぼくはもともとリバタリアンで、ぼく自身はそんなにお金に価値を置いていないんです。価値のあるサービスを作るっていうことのほうが大事だと思っています。

ぼくの理想とするサービスはSkypeです。数億人が使っていて、この価値はすごい。そうはいってもそんなに儲かっていない。もちろん稼げてはいますよ。でも、稼げている金額よりも価値のほうがはるかに大きいなっていうことです。アマゾンもそうです。儲けはサービス改善や開発に使って薄利で突っ走っているじゃないですか。そんなやり方のほうが、ぼくは戦略的には好きですね。

極論すると、全然メルカリが儲かっていなくても、C2Cに関連したサービスでナンバーワンになって、多くの人に使ってもらえたなら、それでぼくは満足ですね。いかに世の中に価値を提供できるか、なんです。

だから、今回の起業については、会社を高く売却するとか、そういう成功を目指す話じゃなくて、10年といわず、20年でも30年でもやっていきたいんです。今の会社を売却する気はゼロです。1兆円と言われても売りません。

サービスをどのぐらい大きくできるかというのがぼくには重要です。ぼくがこれ以上この会社で価値を出せないなと思ったら、ぼくからやめると思いますけど、それまでは続けたい。C2Cにはそのくらい可能性があると思っていて、サービスを横にも縦にも広げたい。

いまメルカリがやっている”物(モノ)”のC2C、これをサービスとして良くしていくというのが縦です。そして横としてアメリカの次はヨーロッパ、そして途上国もやっていきたいですね。さらにC2Cは、もっといろんなサービスがあり得ます。と考えると、ヒトが全然足りないんです(笑)

大企業→大手ネットベンチャー→スタートアップという人材の流れ

サービスが作れる人、特にエンジニアは常に募集しています。実際、優秀な人であれば、いくらでもほしいと思っています。そういう人たちがすごいものを作るための環境やアイデアもありますし、やっていって成長する達成感や、ストック・オプションも提供できると思います。

いまどこから人が来るかというと、一番多いのは友だち経由です。社員が紹介してくれるのです。半分ぐらいは経営陣や社員の紹介なんですよね。もちろん求人メディアや人材紹介会社経由もあります。

グリーやDeNA、楽天といった数千人いるところからベンチャー的なものを求めて移ってくる人も多いです。3年とか5年やってから移るような人ですね。ウノウのときは、大企業からの転職組が多かったんですけど、いまは巨大ベンチャーからというのが多いかなと思います。こういう人たちは、やっぱりベンチャーのことが分かっているし、インターネットにも詳しいし、やりやすい。特に最近は人材の質も一段レベルがあがっていると感じています。誰も彼もが「英語できます」みたいな。ベンチャーで実力を発揮できるタイプの人が日本で増えている実感があります。巨大ベンチャーで執行役員一歩手前みたいな人がうちに来てくれたりという流れもありますしね。アメリカだと、ヤフーとかeBayといった企業のVPクラスだと、株とかも入れると年収で1億円とかなんですけど、日本でも巨大ネットベンチャーの執行役員クラスとかだと3000万円とか4000万円とかもらってる人もたくさんいるから、格差が縮まってきてるかなって思いますね。

時代はそうとう変わったなと思いますね。大企業からある程度安定している巨大ベンチャーみたいなところに行って、そこからうちのようなスタートアップに来るっていう流れがあるのかもしれません。

給料の話をすると、スタートアップなのでストック・オプションを出す代わりに給料を抑えめにするという話しもありますよね。でも、最近は来る人のレベルが高いので、抑えめって言っても1000万円を超えることも結構あります。うちの場合は、ケースバイケースですね。ストック・オプションもあるけど、強制でもないし、ちゃんと給料がほしいという人にはお渡ししています。年収600万円が500万になります、というのだと生活費を削るっていう話じゃないですか。でも1500万円から1300万円だと、そこはリスクとってもいいかなって感じるという話です。それぞれの生活がありますよね。お子さんがいらっしゃるとか。だから、それぞれの方が取れるリスクでいいと思っています。その辺はこだわりはなくて、自由で自律している会社ですね。出勤時間も結構フレキシブルですし、みんなそれぞれのスキルで貢献するというカルチャーがある。

これはウノウでもそうだったんですが、プロフェッショナルなヒトが集まって1つのものを作っていくってことです。だからプロフェッショナルな能力とチームワークができるという二つを重要視しています。われわれは長期的な視点で、何かデカいことがやりたい、世にインパクトを出したいと思っていて、そういうのに共感して入ってきている人が多い。だから、チームワークはすごくいいんです。プロフェッショナル同士が仕事することで、一段上の仕事をするのが好きっていうヒトが多いですね。

エンジニアはいくらでもほしいと思っていますが、いろんなタイプのエンジニアがほしいですね。いまでも、横に広く知識を持っていてマネージャー的なことをやりたいエンジニアもいれば、もっとコアにインフラ面なんかを深堀りしていくエンジニアもいます。バラエティに富んでいて、異なる人たちが組み合わさっているのがいいところかなと思っています。ただ1つ共通しているのは、チームで何かをやるのが好きということですね。

いまのメルカリはサービスドリブンと見られてるかなって思うんですけど、風土的には中は自由だし、エンジニアもかなりレベルが高い人が揃ってると思います。すでに1000万ダウンロードなので負荷もすごくて、サーバーもばんばん増やしてるし、ビッグデータも物凄い量がたまってます。解析して、リテンションやLTVを見ながらサービスの方向性を探っていますし、A/Bテストもやっています。表から見ると単純な、キャッチーなアプリを作ってるだけに見えるかもしれませんが、エンジニアリングのレベルは高いです。

ただ、特定の技術にこだわりがあるというわけじゃないです。例えば、AWSも使うし、さくらインターネットのクラウドも使っていたりします。これは、一番初めは専用サーバ1台から始めたからなんですが、とにかくアプリをリリースするのが優先だよねっていうことで1台だけで済ませた。スピード重視だったので1台に全部を詰め込んだ。いまはクラウドを組み合わせたり、専用サーバーも増やしたりしながらやってますけど、こだわりがあるわけじゃないです。サーバーサイドの多くはPHPとMySQLでやっていますが、検索はJavaですし。 言語的なこだわりはなくて、Perlの会社からも何人も来てますし。エンジニアって、一定レベル以上の人なら何にでも対応できるという感じで採用していて、実際そういう形で活躍している人が多いですね。

やりたいことが一致するなら「一緒にやろう」

社員の採用で多いパターンは、一緒にできることがあるんなら、一緒にやろうよと誘うというものですね。典型的なのがメルカリ役員で、いまシリコンバレーにいる石塚亮です。

彼はもともとシリコンバレーで、RockYou!という会社を作って日本の子会社立ち上げをやっていました。その彼が辞めますってメールをくれたとき、メシでも食おうよって誘ったんです。それで何がやりたいのって聞いたんです。そうしたら、「アメリカでベンチャーがやりたい」っていうんですね。

それで、日本は今こういう状況で、スマホだと密度とか重要だから日本で立ち上げてアメリカに持って行くほうが早いんじゃないかっていうメルカリのプランを見せたんです。いろいろ調べてみたらアメリカにもダイレクトな競合はいないし、と言って説得した。それで彼は日本でメルカリにジョインして、1年してアメリカに行ったんですけどね。

無理に口説くよりも、面白いことができるよって言って、やりたいことが合うなら、ぜひ一緒にやろうという風に話をしています。

ぼく自身がアメリカに行きたいっていうのは、そんなにないんですけど、世界で流行るサービスを作りたいんです。例えばSkypeはヨーロッパで生まれてアメリカで成功してメジャーになった。アメリカで成功できれば、ほかの世界にも行きやすいな、とぼくは思ってるんです。だから、日本もまだまだなのですが、すでに役員が2人もアメリカに行ってやっているという(笑)

だから、エンジニアの人で海外と一緒に仕事をしたいという方はうちで活躍できるチャンスがあると思います。特にアメリカ人と一緒に働けるっていうタイプの人であればですね。

メルカリはアメリカで勝てるのか? 世界で勝てるのか?

今はアメリカ進出を始めて手応えを感じ始めているところですが、勝てるかどうかと聞かれれば、勝てると思います。日本のモバイル産業は、ガラケーの経験があるというのもありますが、やっぱりスマホ自体も利用者が進んでいます。iPhoneという結構性能のいいスマホを使っていて、Androidでも良い機種を使っていてその普及率が高いですよね。なおかつ、高速なLTEも定額です。普通の人が普通にスマホインターネットをやる環境がある。アメリカだと、そこまで行っていません。回線は遅いのが当たり前です。だから日本のほうがユーザー密度を高めやすいんです。

C2Cって、地方の若い女性がメインのターゲット層です。そういう人はパソコンとかあまり使わないです。ケータイで初めてネットをヘビーに使い始めたみたいなね。そういうユーザー層が津々浦々にいる状態で、日本のサービスは進んでいるっていうところが結構ある。

出てくるスタートアップも、アメリカのほうが数は多いけど、日本も負けないぐらい面白いサービスが出てきてるかなって思っています。

セオリー通りにやれば、セオリー通りの結果しかでない

アメリカに行って投資家なんかに「テレビCMにお金を使っている」っていう話をすると、クレイジーだって言われます。ヒトを雇うのがスタートアップの予算の8割だろうと、アメリカ人は言うんですね。

アメリカで広まったサービスって、まずエリートが使って、広まるというのが一般的な流れでした。それが今までのセオリーだった。だからメルカリもアメリカ市場では、そうすべきだっていう人が結構いる。

でも最近感じてることなんですけど、アメリカ人って、まあみんな意見が違うんですよ(笑) いろいろ聞くと言ってることがみんな違う。ベンチャーキャピタリストに会っていて、色々言う人がいて、言われるとおりにやったらうまく行かないな、というのが今の気付きですね。

セオリーのようなものがあります。でも、セオリー通りやっても、たぶんセオリー通りの普通の結果しか出ないんじゃないかなって思うんです。上限が知れている。あえてそれを破るというのがアメリカで成功する秘訣になるんじゃなかなって思っていて。グーグルだって、最初は真っ白なスタート画面を用意して検索・ポータル業界を驚かせた。セオリーを破ったわけですよね。

日本でやったように、マス向けに作ってマス向けの広告を打つってことですね。一気にユーザー層を拡大するやり方をアメリカでもやってみる。これは1つの仮説なので、結果を見つつ変えていきますけどね。

特にスマホにおいては、全く新しいサービスの使われ方がされていますからね。例えば、スマホでは、まずダウンロードしてみて、ちょっとでも分かりづらいと二度と使わないということが起こっています。こういう行動パターンがあるので、ここはもうアーリーアダプター層から入っていく手法が通用しない世界です。

メルカリは、アメリカに持っていくとき、デザインはアメリカのスタッフの意見を聞きながら、FacebookとかInstagramみたいな超シンプルなものに変えています。文字の要素も相当削って変えました。まあ、もともとすごく女性向けぽかったので。

そうやって意見を聞く部分がある一方で、聞かないものもある。

例えば、よく言われることですけど、日本の会社にアメリカ人、特に優秀な人なんかは入らないよ、という話があります。でも実際アメリカに行って採用活動をしてみると、そこまで差は感じない。興味はもってもらえるし、実際採用もできている。メルカリが日本で実績があることで安心感を感じてくれてもいるのもあると思います。悪い言い方をすると、最悪日本でIPO出来るだろうというのもあるんでしょうけどね(笑)

奥さんが日本人だとか、日本が好きっていう人も多いですね。日本の会社だからアメリカで良い人材を雇えないってことはありません。これはスマートニュースなど他社の話を聞いていてもそうです。

いま日本のスタートアップでアメリカ進出を目指しているところが出てきていて、それに関して言われてることがいろいろありますけど、真実なのかどうかを見極めて冷静に対応していくのが大切かなぁって思っていますね。

「日本人のネットワークをもっと使うべき」というのも一般に言われることの反対かもしれません。アメリカに行くというとき、完全にアメリカに入って行けという意見がよくあります。そうすべき、とかね。でも、中国人とかインド人とか仲間で助け合ってるんですよ、実際には。だからぼくは同じようにすでにシリコンバレーにいる日本人起業家やスタートアップコミュニティの人たちに、人材を紹介してもらったり、いろいろと助けてもらっています。日本人同士で助け合うのは当たり前だと思うんです。こちらの日本人起業家に弁護士とかVCを紹介してもらったりとか。成功するためだったら何でも使う、というぐらいの気持ちで行ったほうがいいのかなと思います。日本人同士でネットワークを活用する。ぼくらがアメリカで成功できれば、今後はぼくらが助ける側になれるでしょうしね。

狙いやすい台湾や韓国ではなく、アメリカ市場を目指すわけ

ホンダの話が好きなんですよね。ホンダで海外進出するときに、多くの役員が東南アジアに行こうって言う話になったとき、本田宗一郎のパートナーだった藤沢武夫だけが、いやダメだと言ったというんですね。ほかの役員はみんな東南アジアだと言ったのに、「資本主義の牙城、世界経済の中心であるアメリカで成功すれば、これは世界に広がる。逆にアメリカで成功しないような商品では、国際商品になりえない。やっぱりアメリカをやろう」と言ったんですね。

それで2代目の副社長になる川島という方に、お前アメリカ行ってこいっていうんですよ。成功するまで帰ってくるなって感じで送り込んで、成功した。それで世界ブランドになったので結果的にアジアでもうまくいくことになった。

メルカリも台湾とか韓国のほうが絶対やりやすいんですよ。地理的にも文化的にも近いし、マインドセットも近いから。でも、それをやっちゃうとアメリカに行くのが遅くなる。例えば1年かけてアジア制覇とかやってると、もう後からでは勝てなくなる。だから、とにかくアメリカなんです。eBayとヤフオク!を比較したりして、アメリカ国内だけ見ても日本の5倍ぐらいの市場規模です。最悪日本市場で負けてもアメリカで勝てば、それでいい。そういう例はこれまでないかもしれないですけど、日本でスタートしてアメリカだけで成功しても、それでも4、5倍の市場があるし、ヨーロッパとか、ほかの市場に行ける可能性が高い。

だから、すでにメルカリではカスタマーサポートを除くと半分くらいはアメリカのことをやってます。ぼく自身も半分はアメリカに行ってますし、社内のアメリカシフトがすでに行われてます。

日本でめちゃくちゃ流行っていて、アメリカでもイケてるっていうサービスを作りたいですね。それに「日本の」とか「アメリカの」とかって、もうないと思うんです。ソニーのウォークマンだってパッケージが英語だからソニーはアメリカの会社と思っているアメリカ人も多いわけじゃないですか。Skypeだってアメリカの会社だったと思ってる人は山ほどいるはず。サービスは、どんどん無国籍化していくと思うんですよね。

山田進太郎氏

株式会社メルカリの創業者で代表取締役社長。早稲田大学在学中に、楽天株式会社にて「楽オク」の立上げなどを経験。卒業後、ウノウ設立。「映画生活」「フォト蔵」「まちつく!」などのインターネット・サービスを立上げる。2010年、ウノウをZyngaに売却。2012年退社後、世界一周を経て、2013年2月、株式会社メルカリ(旧コウゾウ)を創業。(2015年2月当時のプロフィール)

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