「行って聞いて住んでわかるUK現地の感覚」メルカリプロデューサーのあたまのなかby木下慶

メルカリJPのプロダクトオーナーである伊豫が、メルカリで働くプロデューサーに実際の企画とその結果、そして各々のバックグラウンドに迫る企画第四弾。 今回話を伺ったのは、入社以来US・UK版のメルカリアプリに携わってきたプロデューサーの木下慶さんです。

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【プロフィール】

木下慶 (Kei Kinoshita) ※写真左

筑波大学大学院コンピュータサイエンス専攻修了。NTTデータでのSE職、ランサーズでのエンジニア・プロダクトマネージャー職を経て、2016年6月株式会社メルカリに入社。メルカリのUS版、UK版のプロダクトマネージャーを務める。


伊豫健夫(Takeo Iyo) ※写真右

大学卒業後、松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)、株式会社野村総合研究所を経て、2006年に株式会社リクルート入社。中長期戦略策定および次世代メディア開発等、大小問わず多数のプロジェクトを牽引したのち、2015年3月株式会社メルカリに参画。2016年8月より執行役員。US版メルカリのプロダクトマネジメントを担当後、2017年4月より国内版メルカリのプロダクト責任者を務める。

PMが重視するUXデザインのバランス感覚

伊豫:今日は先日開催されたPM Conference 2017のレポート記事
メルカリは欧州をどう攻める?UKのPMを務めた木下慶が明かす現地開発のウラ側-CAREER HACK
をより深掘りして聞いていこうと思っています。
まず慶さんの入社してからこれまでについて伺いたいんですが、、、なんだかとっても久しぶりに慶さんに会った気がします。

木下:ですね、入社してすぐUS版の開発に携わり出張ベースですが約1年弱USにいました。一時帰国時も、それこそアプリを触るためだけにインドに行ったり、国内を旅行したり、東京にいてもあまりオフィスにはいなかったかもしれません。今年5月頃からロンドンに出張し、約半年UK版メルカリに携わりました。

ロンドンにおける競合環境。CtoCサービスはいくつかあるのですが、〜(中略)〜米国で言う『craigslist』のイギリス版みたいなものとして『gumtree』、『shpock』、この2つがメインプレーヤーと言われてますね。

伊豫:記事でも競合について触れていましたが、特にメルカリが優位だなと思った点はありますか?

木下:メルカリがモバイル特化な点と、配送モデルな点ですね。この点はUSと似ているかもしれません。

伊豫:理由は?

木下:UKでもモバイルでのネット利用が増えているので、モバイルファーストのアプリは使い勝手の面で有利だと思います。配送モデルな点は、メインプレーヤーは2つとも手渡しなんですが、ローカルってマッチングの可能性が低いじゃないですか。配送モデルだと商圏が広がるので、必然的に値段があがる。お客さまは高い値段で売れるほうを選ぶかなと。当然ですがイギリスも1,000以上の島々からなる広い国なので、配送モデルの方が優位だと思っています。

伊豫:結構合理的ですね。なるほど。

「Product」チームにおける「Team1」と「Team2」はお客さまが利用する「フロー」によってチームを分けています。

伊豫:プロダクトチームを2つに分けていたとのことでしたが、慶さんチームのKPIを教えてください。

木下:二つありました。一つは登録ユーザーを母数とした時のアイテム詳細に遷移する率の向上です。やはりオンボーデイングは大事にしようと思っていて、マーケティングと連動した施策は面白かったですね。広告のクリエイティブからストアのキャプチャ、アプリ内のチュートリアルや登録画面までの一貫性を重要視したんですが、本当にこれ絶対大事ですよね。

伊豫:これ僕も昔USでやりましたよ!心あるPMは全員通る道ですよね。
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木下:あとはアプリが伝えたいメッセージを「よく売れる!」(=出品者向け)か「いいものが買える!」(=購入者向け)のどちらに寄せるかはとても考えました。如実に数値が変化したのは、出品者側に寄せた場合ですね。でも、フリマアプリはマーケットプレイスなので、偏りはよくない。そのあたりの感覚は今でも難しいです。

もう一つは初日の購入率(= Day1 Buyer CVR)の向上です。ウェルカムキャンペーンとして2ポンドのバウチャー付与したりなど、CRM向けの施策も結構行いました。UKはCRM専用の担当者が一人いるので、その人と連携しながらやってましたね。

伊豫:UK全体の重点OKRは?

木下:リテンションレートです。具体的な数値は避けますが、数%の向上を目指してやっていました。お客さまに使い続けていただくためには、アプリを自分ごと化してもらうことが大事だと思っています。メルカリにおける自分ごと化とは、欲しい商品があったりワクワクしたりすることだと思っていて、最初に提示するアイテムの抽出ロジックはかなり色々と試しました。一番効果を実感できたのは性別による出しわけで、女性ならコスメ、男性ならメンズスニーカーなどより興味があるであろうカテゴリをルールベースで決めて提示していました。

伊豫:アプリトップに初期表示するアイテム群をどうカスタマイズすると継続率UPにつながるか、については各国様々な取り組みがありますよね。日本だと最近は閲覧履歴などからのレコメンドロジックを組んでいたりしています。

日本生まれ、日本育ち、ヨーロッパに行ったことさえなかった私が、どうやって海外でプロダクトを作っていったか。まず、関わる人たちをみんな巻き込んでプロダクトを作っていくということ。〜(中略)〜決まったことだけをただお願いするのでは、全く納得してもらえない。なぜこれがやるべきなのか。どういったデータやお客さまの声をもとにしているのか。「事実」をちゃんと伝えていく。ここは意識してやっていました。

伊豫:UK現地で働いてみて気づいた、ローカルメンバーの特徴や傾向について教えてください。

木下:スタートアップ好きが多いですね。テクノロジーに対する感度もとても高い。なので新しいテクノロジーを導入する、エンジニアの意見にも耳を傾けることは意識していました。

伊豫:例えば?

木下:iOSエンジニアの一人に元デザイナーキャリアのメンバーがいるんですが、UXへのこだわり強いんですよ。PMのバランスって有名なこの記事にもある通り、「UX、テクノロジー、ビジネス」の三者をどう両立させていくかってことだと思うんですが、ある時そのエンジニアの意見にちょっと傾けたデザインを採用したんですね。

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一覧から商品詳細画面への遷移を滑らかにし、下スワイプで一覧に戻れるようにして閲覧効率を向上

そうすると実際数値もよくなった。

伊豫:順番、バランスってすごく大事ですよね。本来はUXをこだわったあとにビジネスの要件も満たせるとテックカンパニーらしいですよね。

木下:そうそう、それがうまくハマったときは働いていて気持ちがいい瞬間ですね。

行ってみて、聞いてみて、体験してみてわかる現地の感覚

▼ユーザビリティテスト

私たちが実際に行なったユーザビリティテストについてもお話します。1回あたり2日かけて実施しました。ブースを2つに分け、片方はお客さまと質問者、もう片方に私たちが待機。そのようにして操作や回答の内容をモニタリングしていきます。

▼ゲリラインタビュー

これはUXリサーチャーの方と協業をしていた時に教えてもらって面白かったものです。ゲリラという名の通り、街中に出て、急にそこにいる人に話しかけるという方法です。10分くらいで話を聞いていきます。

伊豫:UKではユーザビリティテストを結構行なったんですよね?

木下:毎週水曜日の16時から18時までと時間を決めてユーザビリティテストを設定していました。UKには4人PMがいるんですが、各々、週の前半にテストで聞きたいことを整理しておいて、テスト後の木金に修正するみたいなスケジュールで行なっていたんですが、これがだいぶワークしてたんです。

伊豫:いいですね!テストの頻度ってどの程度が適切か判断が難しいと思うんですが、週1回ってどうでした? 

木下:ちょうどよかったですね。回数と言うより、定期で必ず2時間やるっていうポイントのほうが大事だったなと。

伊豫:内容について。聞ける人数と時間が限られてるなかで、何が正しいかの判断ってどうやって行なっています?ユーザーテストのやり方って結構流派ありますが、どんなタイプですか?

木下:僕の場合、仮説をあらかじめ自分のなかに持っていて、仮説と比べるタイプですね。みなさん言っていることが違っても、よくよく聞くと方向性は同じだったりする。

伊豫:一段抽象化して考えるってことですね。ゲリラインタビューも実践していたようですが、通常のインタビューとの違いは何ですか?

木下:ゲリラインタビューの場合は年齢とか一般的なことから聞いています。メルカリについても知りたいですが、それよりどんな人が実際にこの国、この街に暮らしているかを知りたい、人を理解したいという気持ちが強いです。

現地にいる日本人にもけっこうヒアリングをしました。なぜ日本人なのか。それはロンドン人にきいても「ロンドン人らしさ」がわからないと思ったから。日本に住んでいる私たちに「日本人らしさ」をきいてもなかなか答えづらいですよね。

伊豫:僕もアメリカで仕事していたとき、無意識のうちに日本人にインタビューしてたことあります。この人たちって、客観的なアメリカ人像を説明してくれるんですよね。

木下:言葉で説明してくれるってのはとても大切だと思います。

プロモーションに関しては、ロンドンだとかなりオフラインの広告が使われているんですよね。私たちは最初、オンライン広告をメインにしていたのですが、ユーザー数が増えていくにあたり、地下鉄・駅(現地では「Tube」と総称)の広告なども使うようになりました。

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伊豫:マーケ、プロモーションの施策国ごとに異なりますが、この地下鉄への広告出稿は、慶さんの実体験が基になっているとか??

木下:そうなんです。実は自分が美容院予約アプリを試した際に、美容師さんに集客をどうしているか聞いたら、そのアプリ経由が約半分だ、と話していて。じゃあその人たちはどうやってそのアプリをDLしたかと聞くと地下鉄広告で知った人が多いみたいだと。ロンドンにおける地下鉄広告ってちゃんとした会社がやってるってイメージあるんですよ。それで、地下鉄広告も試してみました。

木下:そういう点では日本人のPMが海外にちょっと住むってのは良いと思いますね。逆にUKのPMが日本に来るってのも全然あり。メルカリには、こういう(下記参照)海外渡航する制度が整っていますが、住んでみるとPMの感覚がより研ぎ澄まされるのでいいと思いますね。

世界で勝つために全額負担します。企画者支援制度「Mercari Tech Research」について

慶さんの頭のなか

伊豫:メルカリ社員の中にもどうやったらUKでの仕事が出来るのか、と疑問をもってる社員が多くいると思うんですが、どういったマインドを持って仕事に取り組むといいんでしょう。
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木下:UKの仕事に携われるかどうかに関わらずなんですが、好奇心はとても大事だと思っています。PMの仕事って『何が課題かを見つける、そしてその課題を解決するための行動に移す』ということだと思っているんですが、全ての行動の根源は好奇心ですよね。

伊豫:代表の山田もたまにに慶さんに最新アプリ事情をヒアリングしていると聞いたことありますが、日常的にプロダクトに触れ続けるコツなどありますか?

木下:一つ決めているのは、土曜の午前中は必ず時間を確保し、この1週間の主要アプリのアップデートを確認するよう習慣づけています。これは本当にオススメです。

伊豫:時間決めて習慣づけるってとってもいいですね!ちなみにメルカリでPMやる魅力って何だと思います??

木下:コミュニケーションコストが低くて、本質的や具体的なはなしに時間をかけられることですね。みんなインターネットが好きだし詳しいので、何かアイディア話した時に、説明が少なくて済む。やりやすいし、居心地もいい。それに全方位的に詳しい人がいるので、Slackのオープンチャンネルを見てるだけですごい情報の量と質だと思います。ちょうど今、これをもっと仕組み化したいよね、って話を取締役CPOの濱田さんとしていたところで、メルカリだったらそれが出来ると思っています。

伊豫:それめちゃめちゃ楽しみです!では最後に今後の展望について教えてください。

木下:今は日本で新規サービスの準備を行なっています。もう一つ、アプリ版だけでなくWeb版は成長の可能性があると思っているので、リニューアルやPWA化も見据えて強化していきます。それにメルカリのサービス自体、海外の違う国への展開もやっていきたいです。個人的にはカナダ、オーストラリア、あとインドのマーケットがいいかなと思ってます。

伊豫:そうですね。やりたいことは無限大です。今日はありがとうございました!

docs.google.com

記事引用:
http://careerhack.en-japan.com/report/detail/896

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