メルカリの「人への投資=People Branding」が生み出した想定外な反響

突然ですが、「メルカン」ってメルカリ社内でどこのチームが運営しているかご存知ですか? 情報を発信しているのだからPR……ではなく、インハウスエディターが集結する「People Branding」チームが運営しています。採用ブランディングを目的に組織化された新しいチームで、まだ定義化されていないことも多いとのこと。ただ、急成長するメルカリにおいては欠かせない存在でもあります。

そこで今回は、People Brandingの福岡夏樹、西丸亮、マネージャーの石黒卓弥に、元メルカン編集部員で現在はPeople Partnersの田中真也がインタビューを実施。新組織の実態やメルカンの運用方法について、「昔のよしみ、できる限り本音でお願いします」と前置きしたうえで、彼らの目指すビジョンを明らかにしてきました。

インハウスエディターが集う「People Branding」とは?

ーでは、まず簡単に自己紹介をお願いします。石黒さんからよろしいでしょうか?

石黒:はい、石黒です。メルカリにはPeople & Cultureという人事や総務、労務など、人材開発や組織に関わる業務を担うグループがあります。そのなかで私はPeople Partnersという組織人事や国内外の採用を担うチーム、採用ブランディングなどを担うPeople Brandingというチームのマネージャーをしています。前職はNTTドコモで、営業、採用育成、人事制度、事業開発などを担当していました。趣味はキャンプ。よろしくお願いします!

西丸:では私が。People Brandingというチームに所属する西丸(さいまる)です。前職はCINRAというクリエイティブカンパニーで記事の企画・編集を担当していました。好きな色は黒。趣味はスケボー(超ビギナー)です。よろしくお願いします!

福岡:では私が(笑)。People Brandingでおもにメルカンの運営をしている福岡です。前職までは紙媒体やWeb媒体の編集プロダクションを経て、ハウツーサイト「nanapi」、書き起こしメディア「ログミー」などのメディアで企画・編集をしていました。メルカリには、メルカンの専任メンバーとして2018年1月に入社しました。

f:id:mercarihr:20181016125840j:plain福岡夏樹

ーありがとうございます。では早速、新しい組織である「People Branding」について教えていただけますか?

石黒:メルカリでは、3年前くらいから採用広報や採用ブランディングに力を入れていまして、今年7月に役割をより明確にしようとPeople Brandingというチームを立ち上げました。社内にはマーケティングチームもPRチームも存在するのですが、「人」を軸にしたブランディングを大切にしたいという想いからPeople Brandingと名付けています。社内外に向けてメルカリで働く人を発信することで、メルカリという企業やプロダクトに関わるストーリーをお伝えしていくこと、そして採用課題にコミットするチームですね。

ーなるほど。People Brandingにはそういう意味合いがあったのですね。

石黒:もちろん採用が目的のひとつでもありますが、組織規模が拡大するなかで、「人」という側面を考えたとき、社外広報だけでなく、インナーコミュニケーションをより強化したいという狙いもあったんです。例えば「People & Culture」のなかには、「Culture & Communications」というチームがあるのですが、そこでは社内のコミュニケーションを円滑にすることで社内の生産性を上げています。仕事において大事なのは「相手を知る」ということ。People Brandingは、その「知る」を後押しする役割として機能していくと思ったんです。決して採用につながらなくても、家族や友人にメルカリを知っていただけるきっかけづくりもPeople Brandingの役割だと思っています。

ーPRチームとは別なんですよね?

西丸:People BrandingはPRチームではありませんが、かなり連携するので、別であることを強く意識したことはありませんね。ただ役割分担はあるかなと。PRは「パブリック・リレーションズ」なので、メルカリという会社やプロダクトと社会のよりよい関係を構築するためのチームだと思っています。今のメルカリのPRチームは「コーポレート」と「プロダクト」に分かれていますが、People Brandingは、あくまで「人」をPRするチームではないかと。

福岡:メルカリには、すでに社会的にある程度の認知を得られている山田(代表取締役会長兼CEO)や小泉(取締役社長兼COO)以外にも、専門性を持つタレントが多い。メルカリで働くさまざまな人をコンテンツとして発信することで、結果的にメルカリという企業やプロダクトを知っていただくことにもつながると思っています。

石黒:PRとの違いという意味では、仕事をする対象も違いますよね。例えば社外(メディアやお客さま)と社内(メルカリメンバー)と分けた場合、People Brandingは、「1 : 9」くらいの割合で社内コミュニケーションが圧倒的に多いんです。PRチームとはなめらかに連携しているので、うまく役割分担できていると思いますね。

ーいずれにせよ、みなさん「人」がお好きなんですね。

西丸:「人が好き」って、ちょっと気持ち悪いですね(笑)。

福岡:でもメルカリは「人に投資する」というカルチャーを大切にしているので、その姿勢に共感できる人はこのチームらしさだと思っています。独特なチームですよね(笑)。

成果指標もキャリアビジョンも0からつくるから面白い

ー少し角度を変えた質問をしたいのですが、このチームの成果指標はどのように設定しているのでしょうか?

石黒:「メルカンのPVがすべて!」というような一元的な成果指標にこだわっていませんね(笑)。

西丸:数字は一つの根拠として見ているだけで、成果でありません。

f:id:mercarihr:20181016125944j:plain西丸亮(左)、石黒卓弥(右)

石黒:(笑)。今の成果指標が将来変わるかもしれないという前提で回答させていただくと、「社内の情報をできる限り透明化し、入社前後のギャップをなくすこと」だと思っています。例えば「メルカン」という私たちが運営するコンテンツプラットフォームがあります。そこで書いた記事を読んだか読んでいないかも大切な指標の一つですが、「正しく伝わっているかどうか」のほうが重要なわけで。

西丸:それは思いますね。社外から見るメルカリと、実際に社内から見るメルカリの印象の差(ギャップ)をできる限りなくしたい。もちろんポジティブなギャップは嬉しいですが、その逆は絶対に避けたいですよね。メルカリの新入メンバーには入社後、カジュアルな面談を実施していて、そこで必ず入社前後のギャップを伺っていますが、今のところネガティブなギャップは少ないというデータも出ているので、いい成果を得られている印象です。

福岡:少し話は逸れますが、メルカンの記事で取り上げたメンバーが、それをきっかけに他社の媒体から取材のオファーをいただくこともあります。例えば育休を取得した男性メンバーに関する記事をつくったんですけど、後日メルカンを通じて取材依頼をいただいたんです。それは嬉しかったですね。メルカリという企業で働くメンバーは、みなさん自分の仕事や働き方に誇りを持っている人が多い。だからこそ、しっかりと私たちが媒介になり、新たなきっかけづくりをサポートしていければと思っています。

ーそれは嬉しいですね。ところで、People Brandingのキャリアビジョンについてはどうお考えですか? 例えば今後メルカリのPeople Brandingチームに携わりたいという方がいたとき、どう答えますか?

西丸:とてもドライな言い方をすると「自分で考えていただきたい」です。何かをお膳立てされたうえで考えたり、行動するという方はフィットしないと思います。これはメルカリ全体に言えることだと思いますが、「何をしたいのか」「何をすべきか」を考えられる人は、自らのキャリアビジョンを描けるはず。People Brandingというチームには、ミッションはあっても決められたキャリアはありません。だからこそ、自由な発想でキャリアをつくっていければと思っています。

石黒:今、西丸さんが言ったことはすごく共感しますね(笑)。理由は、People Brandingというチーム自体が定義化されていないから。なので手探りではありますが、自分たちでつくっていく課程も含めて楽しめる人がフィットすると思いますね。

福岡:私は編集というスキルを持っていますが、それはあくまで土台だと思っています。それを使って新しい何かを創出できるかどうかが大事。企業でプロダクトのブランディングをやっていた方、メディアの運営や編集を経験してきた方であっても、フィットするかどうかはわかりません。重要なのは「そのスキルを活かして(何ができるかではなく)何をしたいか」だと思いますね。

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石黒:少なくとも、前例を真似して仕事をするケースはほとんどありません。新しいフォーマットそのものをつくりたいと思える人にぜひチャレンジしてほしいですね。さきほど、福岡さんも触れていた「まだ社外に認知されていないメンバーに光を当てる」ということと本質は似ているのではないでしょうか。

コンテンツプラットフォーム「メルカン」の想定外な効能

ーでは、ここからはコンテンツプラットフォーム「メルカン」について伺っていきたいと思いますが、そもそも立ち上げた背景には何があったのでしょうか?

石黒:メルカリという企業やプロダクトが世の中から徐々に認知を得るなかで、発信する内容やトーン、文脈などを自らコントロールできる媒体が欲しいという思いからメルカンはスタートしました。例えば、他社の媒体に記事広告を出すことも一つの選択ですが、きちんと情報をまとめてストックできる場所が欲しかったんです。

f:id:mercarihr:20181017120616j:plainコンテンツプラットフォーム「メルカン」

西丸:メルカンを立ち上げたのは、2016年5月ですよね。私は立ち上げメンバーではないのでわからないのですが、当時はどんなモチベーションだったのでしょうか?

石黒:ポジティブな意味で捉えていただきたいのですが、「うまくいかなければその時にまた考えよう」と思っていました。今でこそ「オウンドメディアと言えば……」なんてことを言っていただけるようになりましたが、当時は「まずはやってみよう。続かなければ、またその時に考えればいい」くらいにしか思っていませんでしたね。メルカンのコンテンツや施策もそうであるように、10回打席に立ったら10回ホームランを打てるわけではない。何よりもやってみることが重要だと思っていたので、スピード感だけは早かったですね。その意味で、当時立ち上げに関わったメンバーをリスペクトしています。

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福岡:「オウンドメディア」ではなく「コンテンツプラットフォーム」と呼んでいるのもメルカンらしさですよね。テキストだけではなく、音声や映像、イベントなど、さまざまなコンテンツを通じて情報発信していきたいという思いが込められています。

ーなるほど。メルカンの運営体制ってどうなっているのですか?

西丸:運営は私と福岡さんの2人で行っていますが、メルカン編集部にはPRチームやメルペイHR、Customer Service(CS)など、総勢10名ほどのメンバーがいて、隔週で編集会議を行っています。基本的に記事はメルカン編集部だけではなく、メルカリメンバー全員(全社員)が書き手(ライター)です。実は現場からの持ち込み企画として書いてくれるメンバーも多いんですよ。書いていただいた記事は、すべて私たちが確認・編集をしていますが、あまり敷居を高くしないように心がけています。

ー編集会議ではどんなことを話し合うのでしょうか?

福岡:主に細かな情報共有ですね。今、各チームで何が起きているのか、些細なことでも構わないので共有する時間を設けています。あとは中長期的な企画のブラッシュアップ。今であれば大きな年末企画に向けて動きはじめているところです。

ーそれは楽しみですね。改めて、メルカンが存在する効果はどんなことがありますか?

石黒:あらゆる面でメルカリの理解が深まること、でしょうか。例えば応募者の方が会社を十分に理解している状態で面接に臨んでくださること。私は主に採用を担当しているので強く実感するのですが、これはメルカンが存在するからだと思います。共通の土台があるうえで話を始められるので、今のメルカリではなく、未来のメルカリについて話ができることは嬉しいですね。面接時に、私からメルカリの説明をすることは減ったと思います。

福岡:メルカリの人やチームについてわからないことがあれば、とりあえずメルカンで検索すれば関連記事が出てくるので、ソースとしての機能もありますよね。

西丸:採用、ソース、認知拡大、インナーコミュニケーションなど……結果的にいろいろな効果を生んでいますね。あとメルカンで社内メンバー取材するととても感謝されます(笑)。私としては「いやいや逆に取材させていただきありがとうございます」という感じなのに……。でも、それってメンバー全員が情報発信の重要性を理解しているからだと思うんですよ。経営陣、マネージャー、メンバーの垣根なく、情報発信に対するコミットメントが高いのはメルカリやメルカンの特徴ではないでしょうか。ありがたいことに、いろんなチームから「取材してくださいよ」という声をいただきます。

ー最近では「インハウスエディター」という肩書きが界隈で流行していますが、「インハウスエディター」としての役割を果たせる条件は、やはり経営陣をはじめメンバーからの理解にあるのでしょうか?

福岡:それは確実に大きいと思いますね。そうじゃないと、会社として一つになれないので。

ーなるほど。では最後に今後のメルカンについて伺いたいのですが、展望などあれば教えてください。

福岡:今後ですか……これまではメルカンを運営するメンバーは兼務が多かったのですが、ようやく専任としてコミットできる体制になりました。なので、プラットフォームとしてのクオリティに磨きをかけることは当然のことだと思っています。あとはきちんと継続させること。メディアって立ち上げるまでは簡単ですが、立ち上がってからが非常に難しい……。

西丸:激しく同意です。安易にメディアを立ち上げて「コンテンツをどうつくるか」「継続させるためにはどうするべきか」などに困っているオウンドメディアが多いような気がしていて。でも私たちだって、いつどうなるかわからない。だからこそ、常に危機感を持って運営していく必要があるんじゃないでしょうか。

ーPeople Branding、そしてメルカンの今後が楽しみですね。

福岡:「メルカリの人って〇〇だよね」と社内外から認知される状態を目指したいですね。メルカリには「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」という3つのバリューがありますが、「〇〇だよね」の「〇〇」にバリューに関連する言葉が入っているイメージです。

西丸:メンバーが増え、組織が拡大すると、どうしても言葉が一人歩きして、経営陣とメンバーが同じ物差しや解釈を持ちにくくなる。でも、それを「仕方ないよね」と終わらせたらアウト。どれだけ人が増え、組織が拡大しても、メルカリらしいカルチャーは守っていきたいと思っています。

石黒:こういう人ってメルカリらしいよねって、社内外から認知された状態がブランディングのゴールなのかもしれないですね。

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プロフィール

福岡夏樹(Natsuki Fukuoka)

陸上自衛隊を除隊後、編集プロダクションを経て、2011年に株式会社nanapi(現Supership)入社。ハウツーサイト「nanapi」のほか、起業家向けメディア「The First Penguin」立ち上げなどに携わる。2016年10月よりログミー株式会社でメディア運営に従事。2018年1月よりメルカリに入社。「メルカン」運営を担当。

西丸亮(Ryo Saimaru)

福島県生まれ。大学院修了後、株式会社スマイルズへ入社。店舗運営やWeb社内報の運営・執筆に携わる。その後、株式会社CINRAに転職。クリエイティブ業界の求人サイト「CINRA.JOB」の企画・編集などに従事。2018年7月、メルカリに入社。「人」に関わるブランディング業務全般を担当している。

石黒卓弥(Takaya Ishiguro)

NTTドコモに新卒入社し、営業、採用育成、人事制度を担当。一方で、事業会社の立ち上げや新規事業プロデュースなども手掛ける。2015年1月、株式会社メルカリに入社。現在はPeople Partnersマネージャー。

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