野球と経営は似ている? バファローズ吉田正尚選手×メルカリ小泉対談

メルカリが広告スポンサー契約を結ぶ、京セラドーム大阪。そこを本拠地とするオリックス・バファローズ(以下、バファローズ)は、イチロー選手、平野佳寿選手など世界で活躍するスタープレーヤーを輩出してきた歴史ある球団です。

そんなバファローズに、2015年ドラフト1位で入団し、2018年には「パ・リーグ ベストナイン賞」に輝いた若手選手がいます。背番号34番、豪快なフルスイングでファンを熱狂させる吉田正尚選手です。

身長173cm。プロ野球選手としては小柄な体格ですが、そのハンデを物ともしない豪快なフルスイングでチームを牽引。2018年シーズンは打率.321、26本塁打、86打点など好成績を樹立。そんな日本野球界のホープとしても注目を浴びる吉田選手が、なんとメルカリへ初来社。

そこでメルカン編集部は、取締役社長兼COOの小泉と吉田選手による対談を企画。プロ生活4年目を迎える吉田選手のこれまでを振り返りながら、プレースタイルのこだわりや野球哲学について伺いました。

吉田選手の代名詞「フルスイング」はどのように生まれた?

小泉:吉田選手、はじめまして。ようこそメルカリへ。

吉田選手:はじめまして。お会いできて光栄です。

小泉:メルカリ東京オフィスのフロアを見ていただきましたが、いかがでしたか?

吉田選手:みなさん黙々とパソコンと向き合っていて、とてつもない集中力だなと驚きました……。

一同:(笑)

小泉:突然ですが、メルカリにはバリューと呼ばれる3つの行動指針があるんです。1つ目が「Go Bold(大胆にやろう)」、2つ目が「All for One(全ては成功のために)、そして3つ目が「Be Professional(プロフェッショナルであれ) 」。この3つのバリューを愚直に追い求めながら、事業や組織をつくってきました。今回はこの3つの切り口からお話を伺いつつ、吉田選手のプロ生活を振り返っていただきたいと思います。なんか、インタビューっぽいですね(笑)。

吉田選手:はい。すごく緊張します(笑)。

小泉:まずはプロ生活3年間のなかで、もっとも大胆に挑戦したと思えるエピソードをお聞きしたいです。

吉田選手:どれか一つに絞ることは難しいですが、強いてあげるとすれば2017年に行った腰の手術でしょうか。アスリートとして身体にメスを入れることは、大きなリスクを抱えることになります。プロになって1 〜2年目は怪我に苦しめられ、143試合のうち約半分しか出場できませんでした。それがとても悔しかったんです。そこで2017年は腰の手術を選択し、治療に専念することにしました。

小泉:それは大きな決断でしたよね。

吉田選手:はい。結果的に手術は成功し、2018年シーズンは全試合に出場することができました。大胆な選択でしたが、最良の選択だったと思います。

吉田正尚選手(オリックス・バファローズ)

小泉:吉田選手の代名詞と言えば、やはりフルスイングですよね。あのフォームはいつ頃から確立されたのでしょうか?

吉田選手:小学生時代からですね。プロ野球選手の平均身長は180cmですが、私は173cmしかありません。体格が大きい選手はやはりパワーがあって、遠くまで打球を飛ばせることができます。小学1年生から野球をはじめましたが、その頃から大きな選手よりも打球を遠くへ飛ばすためにはどうしたらいいのか、と常に考えていたと思います。その気持ちは今も変わらず持ち続けていますね。

小泉:ということは、昔からフォームは変わっていないんですか?

吉田選手:試行錯誤を重ねながら、少しずつフォームは改善しています。それに関しては、良い指導者に恵まれた影響があると思っています。

小泉:どういうことですか?

吉田選手:「もっとフォームを改善しなさい」など、押し付けられるような指導はされてきませんでした。「自分が良いと思えるバッティングをしなさい」と、選手の背中を押すようなアドバイスをしてくださる指導者に恵まれたのも大きな要因だったと思いますね。

小泉:少しでもバッティングフォームを変えることは、とても勇気がいることだと思います。

吉田選手:確かにそうですが、今日発見できなかったことでも、明日発見できるかもしれません。そういう意味では、バッティングも生き物のようなものです。3割バッターでも、7割は失敗します。結局、良い打球でも、守備に捕られたらアウトですし、変な打球でも落ちたらヒットになります。なので、バッティングには正解なんてないんです。でも、ヒットを打つ確率を上げる方法は必ずあって、そのバッティングを追い求めています。そのためであれば変化は惜しみません。

小泉:All for Oneですね。例えば、ご自身のなかでスランプに陥ったとき、どのような改善をしますか?

小泉文明(取締役社長兼COO)

吉田選手:シーズン中はスケジュールも決まっていて、ルーティンも多いです。でも、すべての時間に対して気を張り続けてしまうと、どうしてもストレスが溜まってしまいます。なので、特にスランプに陥ったときは、あまり自分にストレスをかけず、意識的に時間をつくるように心がけていますね。

小泉:ちなみに打席に入る前は、どのような精神状態なんですか? 決まったプロセスなどあると思うのですが。

吉田選手:打席に入るまでは自分の流れがありますね。野球は「間のスポーツ」なので、自分のリズムや呼吸を大切にしながら、常にプレーするよう意識しています。相手のバッテリーからすると、いかにバッターのリズムを崩せるかが勝負なので、バッターとしては絶対に駆け引きに負けてはいけません。

小泉:記事に書けないと思うんですけど、その駆け引きってどう判断しているんですか? これはいち野球ファンとして伺ってみたく……。

吉田選手:難しい質問ですね(笑)。そもそも何打席目なのか、ランナーが何塁にいるのかなど、シチュエーションによってバッターは何パターンもの球種やコースを考えるんです。なおかつ、キャッチャーの特性にも影響を受けます。なかには「ストレート打ちそうだな〜」と、バッターに話しかけてくるようなキャッチャーもいますからね(笑)。

小泉:なるほど。データ(統計)も活用すると思うんですが、吉田選手はどのくらい参考にしていますか?

吉田選手:私は意図的にあまり参考にしすぎないようにしていますね。例えば「Aというピッチャーの2球目は、ストレート(球種)を投げる確率が50%」のようなデータが揃っていますが、最後は自分の感覚がすべてです。当然ですがデータを参考にしたとしても、データのせいにはできません。なので、意図的に参考にしすぎないことだけ気をつけています。

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指導ではなく、コミュニケーション? 野球と経営の共通点

小泉:先ほど指導者のエピソードがありましたが、これまでの野球人生のなかで、大事にされている言葉はありますか?

吉田選手:高校時代から大切にしているのは、「感謝」と「謙虚」の2つです。プロとして野球を続けられるのは、ファンのみなさんやスポンサーのみなさん、そして裏方として選手を支えていただいている球団関係者のみなさんのおかげです。野球をするのは選手である私たちですが、支えてくださっている周囲のみなさんの力があってこそ成り立つ競技ですので、感謝と謙虚な姿勢は決して忘れていけません。

小泉:少し話が逸れますが、それは経営者も一緒ですね。僕はメルカリの社長ですが、メンバーから「社長」と呼ばれたくなくて。そもそも役職で仕事をしたくないんですよ。「社長」ってどこか距離感のある呼ばれ方だと思うんです。例えば、僕が横柄な態度をとっていたら、絶対に「社長」と呼ばれるようになると思うんです。そうならないように、常に周りとの距離感を意識したり、謙虚さを大切にしたいなと思っています。

吉田選手:経営と現場に壁をつくらないということなんですね。

小泉:おっしゃる通りです。会社の経営は、逐次に正しい情報がないと判断できません。経営と現場に距離があると、必ず情報網は歪みます。本音が言えない状況というか……そうならないように僕たちも常にオープンなスタンスでいたい。

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吉田選手:心の器や余裕があるからなのでしょうか。

小泉:いやいや、そんなことはないですよ……(笑)。

メルカン編集部:(笑)

小泉:野球界は上下関係など、厳しそうですよね。

吉田選手:昔はそうだったかもしれませんが、最近は上下関係を感じる場面はほとんどありませんね。私は年齢的に若い選手ですが、思ったことを何でも意見します。そういう環境の方が選手にとっても球団にとっても運営しやすいと思いますね。

小泉:後輩の選手には、直接指導されるんですか?

吉田選手:自分から指導するというよりも、アドバイスを求めてくる選手に教えるというスタンスですね。逆に私も後輩の選手に「どんなふうに打ってるの?」など、ヒントやアドバイスを求めたりすることもあります。そこは年齢や経験は一切関係ないので、一人の野球選手として対等に向き合うようにしていますね。

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小泉:野球選手として一緒に高みを目指してるんですね。

吉田選手:後輩とはいえ、実力のある選手はたくさんいますからね。ただ、言われたことを鵜呑みにするのではなく、自分が必要だと判断したもののみ取り入れるようにと声をかけています。先ほどのデータの話と同様ですが、アドバイスは参考にして、最終的には自分の意思を信じること。これが大事ではないかと思います。

小泉:僕も多方面の経営者からアドバイスを求められるのですが、あまり真剣に聞いてくれなくてもいいかなと思うんですよ。つまり、僕の視点でアドバイスすることができても、その人の強みや特徴が活かされていない可能性がある……それを無理に押し付けても、成果につながりませんからね。

吉田選手:野球も一人ひとりプレースタイルが違いますし、全員がホームランを打ちたいとは思っていません。なので、僕は最初に「どういうバッターになりたいの?」と必ず聞いて、ゴールや目標を描くようにしています。それからは指導というより、コミュニケーションを図るという感覚ですね。そういう意味で今の小泉さんのお話はとても共感します。

スポーツの醍醐味は観戦。体験価値を高め、ライフスタイルを変える

吉田選手:小泉さんが考える、経営の醍醐味って何だと思いますか?

小泉:ライフスタイルを変えられることが醍醐味だと思います。僕たちがつくるサービスがなかったときと、あったときでは、生活がまったく違うと思ってもらえるかどうかが重要。具体的に言えば、モノを捨てていた生活から、モノを売る生活に変わったことです。ライフスタイルを変えることは、人生を豊かにすることとも言えます。これが経営の醍醐味じゃないですかね。

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吉田選手:僕もユーザーとしていろいろなネットサービスを使いますが、確かにライフスタイルが変わっている感覚があります。今はスマホひとつあれば、何でもできますし。

小泉:「テクノロジーが進化すれば、人間の仕事がなくなる」みたいな議論がありますが、そんな時代のなかで価値が付くのは「体験」だと思っています。スポーツ産業は、そういう意味で大きなポテンシャルがあるのではないかと。

吉田選手:テレビの前ではなく、球場で観戦する体験価値を上げたいですね。選手のプレーの迫力や球場に鳴り響く歓声など、その場で味わえる臨場感はやはり格別だと思います。

小泉:私たちはIT企業ではありますが、お客さまの体験価値を向上させるという意味では一緒だと思っています。これからも一緒に手を取り合って、頑張っていきましょう。

メルカン編集部:非常に残念ですが、終了のお時間が迫ってまいりました。もしよろしければ最後にメルカリへメッセージをいただいてもよろしいでしょうか?

吉田選手:世界を取りにいこうと努力するメルカリさんの姿勢に大変刺激を受けました。僕個人としてもチームとしても、常に高みを目指し、練習を重ねています。フィールドが違えど、ともに挑戦を止めず、一緒に頑張っていきましょう。ありがとうございました。

小泉:ありがとうございます。来シーズンも楽しみにしています!

吉田選手:はい、頑張ります!

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吉田正尚(Masataka Yoshida)

1993年生まれ。福井県出身。敦賀気比高、青山学院大を経て、2015年のドラフト1位でオリックス・バファローズに入団。2018年、セ・パ交流戦MVP、パ・リーグ ベストナイン賞(外野手部門)を受賞。

小泉文明(Fumiaki Koizumi)

株式会社メルカリ取締役社長兼COO。2003年大和証券SMBC(現・大和証券)入社。投資銀行本部にてインターネット企業の株式上場を担当した後、07年ミクシィ入社し、取締役CFOに就任。13年12月メルカリに入社。14年同社取締役に就任。17年4月から現職。

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