日本と豪州をつなげたい。世界に技術発信をするメルカリエンジニアの想い

「今、メルカリ社内でもっとも大胆(Go Bold)な挑戦をしていると思うエンジニアは?」という質問に、多くのメンバーがこう答えます。「やっぱり、Tim Oliverじゃないかな?」

Tim Oliver(以下、Tim)は、オーストラリア出身のiOSエンジニア。現在はメルカリのモバイルチームで、メルカリチャンネルの機能開発を担当しています。本業のほか、副業としてコミックリーダーなども開発。さらには、メルカリの技術や知見などの情報発信にも積極的で、さまざまなイベントに参加するために国内外を飛び回っています。そのチャレンジは「海外でのメルカリのプレゼンス向上に貢献している」と評価され、過去(2018年7〜9月期)に「Go Bold賞」を受賞しました。

メルカリでの開発、副業のサービス開発、さらにイベントでの情報発信。息つく暇もなく活動し続ける彼は、なぜメルカリを、日本を活動拠点に選んだのでしょうか。これまでのキャリアを紐解きながら、今後の展望について伺います。

iPhone 3Gの発売をきっかけに、iOSエンジニアへ

ーさっそくですが、Timさんがエンジニアになろうと思ったきっかけを教えてください。

Tim:その前に、この写真を見てもらえますか?
f:id:mercarihr:20190123142317j:plain幼いころのTim OliverとMacintosh SE

ーこれは、Timさんですか!?

Tim:はい、幼いころの僕とMacintosh SEです。ちょうどこの取材の前に、僕の父が「このときからずっとパソコンに向かい続けているね、バカ息子!(笑)」と送ってくれました。父の言うとおり、このころからずっとパソコンを通じて見えてくる世界に夢中だった気がします。次第に「ゲーム開発をやりたい」と思うようになり、社会人になってすぐ、フロントエンドエンジニアとしてゲーム開発を行う会社に入りました。

ーTimさんのエンジニアとしてのキャリアは、ゲーム開発がスタートだったんですね。

Tim:そうなんです。でも、そんな僕の大きな転機になったのがiPhone 3Gの発売でした。

ーiPhone 3Gが大きな転機になった、とは?

Tim:iPhone 3Gの登場は、僕にとってとても衝撃的でした。それまでのiPhoneシリーズやモバイルデバイスにはない動きや感触があり、「手のひらでこんなことができるのか」「こんな動きも可能なのか」と興奮して操作したことを覚えています。僕もこの感動を提供する側になりたいと思い、フロントエンドからiOSエンジニアへキャリアチェンジしました。それからはずっとAppleオタクとして、iOSアプリを開発しています。
f:id:mercarihr:20190123141703j:plainTim Oliver(iOSエンジニア)

ーAppleオタクなのですか?

Tim:もう10年くらい、Appleのファンです。いつもApple製品に囲まれているせいか、ほかのメンバーから「TimはAppleオタク」と言われるようになりました。本業ではメルカリのiOSアプリ開発をしていますし、副業でもiPadで使えるコミックリーダーを開発しています。何かアイデアが浮かぶと、すぐに試してみたくなるんですよね。いつもiOSアプリ開発のことで頭がいっぱいです。

メルカリで驚いたのは「小さなチーム」

ーフロントエンドからiOSエンジニアへ転身。母国であるオーストラリアで働くという選択肢もあったと思うのですが、なぜ日本へ?

Tim:もともと父の仕事の関係で、小学生時代は日本に住んでいました。日本の漫画もアニメも大好きで、当時からよく見ていましたね。日本で働くきっかけになったのは、漫画やイラストのコミュニケーションサービス「pixiv」です。僕の「βテスターを募集中!」というツイートに、運営会社であるピクシブに勤めていた友人が「協力するよ!」と連絡してくれました。その友人にお礼をしたくて、日本へ会いに行ったんです。そこで田面木さん(執行役員メルカリジャパンCEO)と出会い、意気投合。一時はピクシブで働いていましたが、退社後はRealmというサンフランシスコの会社を経て、今に至ります。

ーもともとメルカリのことは知っていたのですか?

Tim:メルカリの存在はRealm時代に知りました。というのも、Realmが当時のメルカリUSオフィスから徒歩圏内だったんです。なので、メルカリUSのエンジニアとは勉強会などで交流がありました。サービスの内容を聞いたとき、「中古品を売買する」という点がとても日本らしいアイデアだと感じましたね。

ー日本で生活していたからこそわかる感覚ですね。

Tim:今だから言えますが、実は当時、メルカリ以外でも入社を検討している会社がいくつかありました。僕がメルカリを選んだ理由は「選考を受けている会社のなかで一番若いから」です。ある程度の歴史ある会社では、使われているコードが古くなっていたり、すでに決められた仕様が多く存在していたりします。そうすると、新しい挑戦が生まれにくい。できたとしても、時間のかかる場合が多いんです。そういった会社を否定しているわけではないのですが、僕は新しい技術に挑戦できる環境で働きたかった。だから、メルカリを選びました。

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ーTimさんは、エンジニアとして常に挑戦し続ける環境を求めていたんですね。

Tim:そうですね。メルカリに入社して衝撃的だったのは、機能ごとにチームが分けられていて、必要以上にメンバーが増えない仕組みになっていること。多くの企業では、iOSとAndroidごとにチームがあり、完全に別々の開発をしています。しかし、メルカリでは機能ごとにチームが分かれているので、iOSとAndroidそれぞれのエンジニアが同じテーブルに座っています。逆に、iOSエンジニアだけで一緒にいることがあまりない。これには驚きましたね。

ーそれは、いい意味での驚きですか?

Tim:いい意味での驚きです。大きなチームだと、どうしても決断などに時間をかけてしまうもの。小さなチームのほうが開発にも集中でき、作業効率も上がります。最近ではiOSとAndroidが1つになった「モバイルチーム」も誕生し、横とのつながりがより強まりましたね。

オーストラリア人として、日本から情報発信する理由

ーTimさんは海外イベントにも登壇し、メルカリでの開発で得た知見などを発信することにも積極的です。それはなぜでしょうか?

Tim:きっかけは、Realm時代から参加していたSwiftに関するコミュニティーが主催するカンファレンス「Try! Swift」でした。ここではさまざまな国のエンジニアが集まり、iOSやmacOSの技術や開発に関する発表が行われています。僕も何度か登壇していたのですが、メルカリで働くようになってから「英語圏のiOS技術や開発に関する情報発信は盛んだけれど、日本国内からの発信はほとんどない」と改めて感じるようになったんです。

ーアメリカなど英語圏の国々による情報発信はあっても、日本からは発信できていないということですか?

Tim:そうです。その原因の1つに、言葉の壁があります。英語は世界中で使われていますが、日本語はそうじゃない。そのため、日本語を理解できるエンジニアは少なく、技術に関しても興味を向けられにくくなっている。また、英語を話せる日本人エンジニアが少ないという現状もあります。僕は英語と日本語の両方を理解できるので、その言葉の壁を破りたいんです。

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ーそこまでしてTimさんが「日本からの発信」にこだわる理由は何ですか?

Tim:日本で仕事をするようになってから「シリコンバレーはすごい」「海外はすごい」とよく耳にしますが、僕自身はそこまで差を感じていません。日本でも、すばらしい技術で開発が進められているところはあります。そもそもシリコンバレーと日本では、開発に対する考え方やバックグラウンド、アプローチが異なります。「どちらがいいのか」を競うのではなく、それぞれで行われている方法を共有すべきなんです。

ー確かに、国ごとでどういったやり方があるのかは気になりますね。

Tim:そういった情報発信ができていないのは非常にもったいない。それに気づいてからは、登壇できるイベントにはできる限り参加し、メルカリでの技術挑戦や知見を発信しています。おかげで、国内外を飛び回ることになっていますが(笑)。ゆくゆくは、母国であるオーストラリアと日本のハブになりたいと思っています。
f:id:mercarihr:20190125104721j:plainオーストラリアで開催されたiOS、macOS開発者向けカンファレンス「/dev/world/2018」に登壇したときの様子

ーそれはなぜでしょうか?

Tim:オーストラリアは日本と同じように素晴らしい技術を使った開発が行われているのに、情報発信が盛んではありません。そういう意味では、英語圏ではあるものの、日本と状況が似ています。また、日本とオーストラリアは時差も近いので、比較的行き来もしやすい。双方をつなぐことでいいシナジーが生まれ、日本で働きたいオーストラリア人、もしくはオーストラリアで働きたい日本人を増やせるんじゃないかと思っているんです。とはいえ、オーストラリアにメルカリはないので、まずはプレゼンスを上げるところからスタートしているわけですが(笑)。

難しい、だから面白い!

ー先ほどTimさんが話していたように、メルカリは事業としても組織としても、さらに拡大しようとしています。Timさんが今後iOSエンジニアとしてやりたいことは何でしょうか?

Tim:もっともやりたくないのは、デッドラインの関係などによって汚いコードを書いてしまうこと。サービスとしてもどんどん大きくなっていくからこそ、今後入社するメンバーが困らないよう、汚いコードは残したくないんです。そしてやりたいことは……いっぱいあります(笑)。

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ーいっぱい(笑)。

Tim:これまでのメルカリはスタートアップとして、サービスも組織も急成長させてきました。今後も同じスピードで成長し続けるため、ほかの企業にはない仕組みをつくろうとしています。プロダクトマネージャーやエンジニアリングマネージャー、テックリードなどが存在するのは、まさにその仕組みの1つです。メルカリにとって大事な部分を変えないために、いろんなメンバーが頑張っています。簡単にできることではありませんが、だからこそ面白い。

ーTimさんが話していた「新しい挑戦」とも言えますね。

Tim:そうですね。僕を含め、開発メンバーは専門分野こそ違えど、みんなが同じ「メルカリ」という巨大なサービスや組織をつくっています。そのスケールの大きな動きにはやはりワクワクしますし、もっともっとお客さまにいい体験を届けたいと思っています。

プロフィール

Tim Oliver(ティム・オリバー)

オーストラリア出身。エディス・コーワン大学でデジタル・メディアを専攻。株式会社ピクシブで勤務後、サンフランシスコにあるスタートアップ・RealmでCocoaの開発を担当。2018年2月に株式会社メルカリへ入社。現在はモバイルチームのメンバーとして、メルカリチャンネルの開発などを担当している。

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