メルペイ開発は初めてづくし。エンジニアリングマネージャーらが語る舞台裏

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メルカリグループ初の決済事業、開発手法の一つであるマイクロサービスでの初めての開発、採用を含めた組織体制の構築ーー。これらはすべて、スマホ決済サービス「メルペイ」リリースに向けて同時に進められていたものでした。

メルカリのグループ会社としてメルペイが設立されたのは、2017年11月。まさにすべてが垂直立ち上げの状態のなか、メルペイ開発チームではリリースに向けてどのようなサービスづくりが行われていたのでしょうか。

そこで今回のメルカンでは、メルペイVP of Engineeringの木村秀夫(以下、@hidek)、エンジニアリングマネージャーである新井啓太(以下、@cocoiti)、高木潤一郎(以下、@tjun)にインタビューを実施。真摯にサービスやチームに向き合い続けてきた3人に、今だから言える開発体制の裏話を振り返ってもらいました。聞き手は、メルペイHRの松尾彰大です。

メルペイ入社の決め手は、メルカリのシナジーとCTO曾川

ーまずは「メルペイ」のリリース、本当にお疲れ様でした! 率直に今の心境を聞かせください。

一同:ホッとしました!

ー率直な心境を、ありがとうございます(笑)。今回はいろいろと開発や組織づくりの背景について伺っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。そもそも、みなさんはなぜメルペイにジョインしたのでしょうか?

@hidek:僕はもともと事業の基盤になるようなサービスが好きで、前職のDeNAでもそういったサービスを開発していました。「次にやるなら、フィンテックかヘルステック事業の基盤になるようなサービスをつくりたい」と考えていたところ、メルペイ立ち上げの話を聞きました。

f:id:mercarihr:20190225163720j:plain@hidek(メルペイVP of Engineering)

ー入社の決め手は何だったのでしょうか?

@hidek:大きく分けて3つあります。1つ目はフィンテック事業としての成功確度、2つ目はメルカリのデータや開発技術といったシナジーを使えること。そして3つ目が、メルペイCTO(Chief Technical Officer)である曾川さんの人柄に惹かれたこと。「これらの要素が揃っているなら、おもしろいことができそうだ」と思い、入社を決めました。

@tjun:僕も@hidekさんに近い動機かもしれません。僕は前職のソニーでネットワーク周辺のソフトウェア研究開発のほか、新規事業の立ち上げなどを行っていました。ちょうど転職を考えているときに、曾川さんと直接話す機会があったんです。「この人と一緒に働いてみたい」と思い、メルペイのSRE(Site Reliability Engineer)メンバーとして入社したのが決め手でしたね。

ー@cocoitiさんの場合、2人とは違ってメルカリのバックエンドエンジニア、プロダクト全体を管理するマネージャーなどを4年くらい担当していましたよね。

@cocoiti:そうですね。僕はメルペイに入社する前まで、「メルカリ月イチ払い」などの決済機能の開発を担当していました。そこで、グループ会社であるソウゾウにあった「メルカリ共通ID」(以下、共通ID)の開発を行うチームと連携することも多かったのですが、とにかく彼らが優秀なんですよ。共通IDとは、メルカリIDを使ってさまざまなサービスにログインできる機能。メルペイの前身とも言えるものです。メルペイ設立時、共通IDを開発していたチームが丸ごとメルペイに異動すると聞き、彼らともっと密にやりとりができるチャンスだと思ったんですよね。そこで、メルペイへの異動を決めました。

メルペイ開発で歩んだのは「蛇の道」だった?

ーメルペイは、メルカリグループが進めているマイクロサービス化を前提として開発が進められていきました。難しさなどはありましたか?

@hidek:マイクロサービスは、これまで中央集権的だった開発をメンバーそれぞれの裁量や思考でサービスづくりができる「民主化」を目的にした体制です。それぞれの機能やサービスが独立しているイメージですね。メルペイもその考えに則って開発をスタートさせていました。でも、最初はなかなかうまくいかず……。

ー何があったのでしょうか?

@hidek:「民主化」は「民主」「化」と書くように、そもそも土台として「国」がないと成立しませんよね? メルペイは、まさに土台がない状態から民主化を進めようとしていたのです。そのため、想定より時間がかかりました。理想を追った結果が今なので成功と言えますが、理想と現実の折り合いをつけながら進めていくのは、容易ではありませんでした。

@cocoiti:「大変になるぞ」と、みんな想像していたんです。しかし、いざやってみると足りないものが想定以上にあって……。メルカリ時代に共通IDの開発がすでに進んでいたとはいえ、メルペイはそれ以上に大きなサービスです。新しくつくる作業と、つくり変えていく作業を同時に進めることは本当に大変でしたね。

f:id:mercarihr:20190225163741j:plain@cocoiti(メルペイエンジニアリングマネージャー)

@hidek:言ってしまえば、メルペイでの開発は初めてづくしだったんです。マイクロサービスでの開発、グーグルが運営するクラウド上でのプラットフォーム・GCPでのKubernetesというソフトウェアを使ったシステムを構築・運用、そして決済事業。これらはすべて、メルカリグループとしても初めての挑戦でした。「なんで蛇の道へ行くようなことをしたんだよ!」と思いましたよね(笑)。

一同:(笑)

@tjun:僕の場合、前職からGCPを使っていたのですんなりといきましたが。メルカリのSREチームには優秀なメンバーも多いので、入社前は「しばらくは、彼らに乗っかっておけばいい」と思っていたんです。でも、入ってみたらメルペイにSREは一人もいませんでした。そのため、入社当時はメルカリのマイクロサービスプラットフォームチームの隣に座り、基本思想やアーキテクチャについてヒアリングを行い、インプットを増やしましたね。

開発スタイルの違い、ステークホルダーの多さ

ーメルペイとメルカリ、開発スタイルの違いなどはあったのでしょうか?

@hidek:メルペイは決済事業という性質上、サービスを使っていただけるお店など、さまざまなステークホルダーが存在します。当然ですが、そういった方々と各開発ごとの期日を約束しながら進める必要がありますよ。そのため、あらかじめ全体の機能設計などを考えてから実装するウォーターフォール的な開発手法でリリースまで進めていたんです。

ーローンチ前ということもありますよね。

@hidek:品質を保ちつつ期日を守るためには「これ以上は仕様を変えない」「ここまでにコードをフリーズさせる」と、チームに伝えなければいけません。また決済サービスとして安心・安全を担保した運用をするために「SLO(Service Level Objective)」を設けていました。その相談役は、SREチームである@tjunさんが担っていましたよね?

@tjun:そうですね。「運用の備えはみんなでやる」と最初から決めていました。SLOに関しては、その一環です。それを決める過程でも、各マイクロサービスを担当するエンジニアだけが責任を持つのではなく、プロダクトマネージャーがお客さまに提供したい目標値と、テックリードが考える実現可能な数値をすり合わせ、チームとしての目標を合意させていきました。

f:id:mercarihr:20190225163736j:plain@tjun(メルペイエンジニアリングマネージャー)

@cocoiti:そもそも、初期のメルカリは「システムが落ちる=すべて落ちる」という状態でした。そのため、当時はシステムを落とさないことが全社の目標だったんです。その目標はすでに達成しましたが、今回のように各チームが責任を持つようになっているのは、高いレベルでの安心・安全が求められる決済サービス特有と言えるかもしれませんね。

ー特に@cocoitiさんは、メルカリグループでいろいろなリリースを見てきました。それと比較して、メルペイはどうでしたか?

@cocoiti:個人的に、これまで一番大変だったリリースは「らくらくメルカリ便」でしたが、メルペイのリリースはステークホルダーの多さからしてレベルが違います。メルペイはもっとも難解だったリリースランキングNo.1ですね(笑)。

@hidek:それ、わかる気がします(笑)。メルカリでも言えることですが、メルペイのいいところは、経営陣にエンジニアリングへのリスペクトがあることです。期日に関してビジネスサイドと議論が白熱したこともありましたが、しばらくするとフォローが入るんですよ。特にセールスの山本さん(VP of BusinessDevelopment and Sales)は「私は待つので、いいものをつくってください」と言ってくれました。あの言葉は、エンジニアとして本当に嬉しかったですね。より身が引き締まりました。

次は組織課題に挑み、会社の成長につなげるフェーズへ

ーメルペイは決済事業として、メルカリグループの1つの柱になろうとしています。第一弾リリースまで完遂した今、みなさんはそれぞれの立場として、次はどのようなフェーズに進もうとしているのでしょうか?

f:id:mercarihr:20190225163731j:plain松尾彰大(メルペイHR)

@cocoiti:リリースまでの開発をひと通り経験した今、自分のなかで「できることが増えた感覚」があるんです。それによって、今後はもっと開発スピードを高めるのと同時に、開発体制も整えながら、これから入社するエンジニアたちが「俺たち、すごい環境で働いている!」と感じられるチームをつくっていきたいですね。

@tjun:チームも開発体制も、まだまだ整っていないところがたくさんありますよね。僕も、メンバーを増やしながらチームを良くしていきたいです。そして、社内でのつながりを強化しつつ、高い水準で安定的に使えるサービスを目指していきたいですね。

ー@hidekさんは?

@hidek:今だからこそ正直に話しますが、入社当時の僕のメンターは@cocoitiさんだったんですよね。でも、何かしてもらった記憶がありません! いろいろすっ飛ばして現在に至っている気がしています(笑)。

一同:(笑)

@hidek:おかげで、新メンバーが孤立しやすい環境であることを痛感しましたし、オンボーディング制度を充実させることができました。僕はVP of Engineeringであり、エンジニア組織を成長させることがミッションです。リリースした今だからこそ、ジョインしてくれたメンバーが120%のパフォーマンスを発揮し、会社の成長につながる組織づくりに、さらに注力していきたいですね。

f:id:mercarihr:20190225163758j:plain

@tjun:オンボーディングではまさに今、会社の技術をキャッチアップできるような仕組みをつくっています。これまで、アーキテクチャなどは社内勉強会などで学ぶ機会がありました。今後はGCPやインフラ周りのオンボーディングセッションを増やしたり、それぞれのマイクロサービスを共有する場づくりも考えています。そして、エンジニアのキックスタートマニュアルをつくり、「これを一通りできたら開発に入れる」という状態にしていきたい。この動きは、すでに進めています。

@hidek:メルペイは設立後、開発体制だけでなく組織も採用もすべて垂直立ち上げで突き進んできました。急成長してきたことによる組織課題がいくつか認識され始めているんです。サービスをより良くしていくことはもちろん、この課題に向き合い、解決していかなければならないと気を引き締めているところです。

ー本当にきれいごとばかりじゃないですよね。ネガティブな部分にも目を向けて改善しようとするところがメルペイらしい。まさにメルカリグループのバリューの一つである「Be Professional」を体現していると思います。これからも挑戦は続きますが、みなさんどうぞよろしくお願いします!

プロフィール

木村秀夫(Hideo Kimura)

SPでエンジニアとしてのキャリアをスタートさせ、通信キャリアや独立起業等を経て、2009年DeNAに入社。Mobageオープンプラットフォームの立ち上げやグローバル展開、マネジメント、オートモーティブ新規事業立ち上げ等を経験したのちに、執行役員システム&デザイン本部長に就任。その後、2018年5月にメルペイにVP of Engineeringとして入社。

新井啓太(Keita Arai)

さまざまなキャリアを経て、株式会社ウノウに入社。映画コミュニティサイト「映画生活」ではエンジニアとプロデューサーを兼務する。ウノウでソーシャルゲーム「まちつく!」では初めてMySQLを触りながら負荷対策を実施。US Zynga社に買収され、そのままインフラ担当になるものの、ネットーワーク敷設ができたため、オフィス引っ越し時にIT担当者にもなる。その後、大手IT企業で勤務したのち、メルカリにジョイン。メルカリのサーバサイドのソフトウェアエンジニアとしてサービスへの貢献。その後、メルペイへ異動。現在に至る。

高木潤一郎(Junichiro Takagi)

学生時代は未踏クリエイターとして、センサーデータベースを開発。その後、ソニーに入社。数種類のソニー製品にあるネットワーク系ライブラリ開発を担当する。2014年にはソニーコンピュータサイエンス研究所で新規事業立ち上げを行う。2018年4月、メルペイ一人目のSREメンバーとして入社。EMとしてインフラ設計構築を行う。

松尾彰大(Akihiro Matsuo)

エン・ジャパンに新卒入社後、ウェブメディア「CAREER HACK」の立ち上げを担当。同サイトのチーフエディターを経て、2016年3月にメルカリにHRメンバーとしてジョイン。2018年からはメルペイのHRとして採用やブランディングに従事。

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