カンファレンスで語りきれなかった「これからのメルカリ」戦略── メルカリジャパンCEO田面木×VPoB野辺対談

2020年2月20日、メルカリ初の事業戦略発表会「Mercari Conference 2020」を開催。メルカリグループの掲げる事業の三本柱「メルカリ日本事業」「メルカリ米国事業」「メルペイ事業」の中でも、中核を担う「メルカリ日本事業」の今後の戦略方針を発表。「CONNECT」をコンセプトに、パートナー企業との連携を通じた出品施策の拡大や、データ連携を通じた一次流通と二次流通の融合について紹介しました。
※発表内容はプレスリリースや当日の配信動画からご覧いただけます。

今回のメルカンでは、「Mercari Conference 2020」に登壇した取締役メルカリジャパンCEOの田面木(たものき)と、執行役員VP of Business Operationsの野辺が登場。対談を通じて、カンファレンスでは語りきれなかった「CONNECT」というコンセプト誕生の背景、リアルとネットの両輪を経験してきた2人の目線で見た「メルカリという事業」、だからこそ実現させたいことなどを語ってもらいました。

リアルとネット、両輪の経験から馳せる「融合」への想い

ーまず、改めて田面木さんと野辺さんが「メルカリに入る前は何をしていたのか?」について教えてください。

田面木:僕は2010年にイラストのSNSを運営するベンチャー企業・ピクシブに入社したのち、日本最大級のアニメショップチェーンであるアニメイトの子会社で社長を務めていました。ピクシブに在籍していた時代から、アニメイトとの仕事はパートナーシップとしてすでに始まっていたので、かれこれ7〜8年は小売業界のIT化に携わっていたことになります。そこで、アニメイトやグループ会社が運営するECサイトのリニューアルからオンラインマーケティング、SNS運用など、ずっとデジタル領域を手がけていたんです。野辺さんも、小売業界でデジタルもやっていたんですよね?

野辺:はい。デジタルもリアルも、マーケティングは全部やっていましたね。

田面木:なので、2人とも一次流通の業界経験がベースにあるのです。

田面木宏尚(取締役メルカリジャパンCEO)

野辺:ですね。僕は、ローソンの上級執行役員マーケティング本部長として、マーケティングやデジタル系も全部見ていましたし、新規事業にも関わっていました。ネットスーパーの再編や、佐川急便のSGホールディングスさんと一緒に、ローソン店舗を起点にした配送サービスを提供する、ラストワンマイルの会社も設立したりしました。また、マーケティング担当としてCMやパッケージはもちろん、ローソンを退職する前は、バスチー(バスク風チーズケーキ)や「悪魔のシリーズ」もやりましたね。さらに言うと、メルカリの発送サービス導入も僕が担当していました。

田面木:現場のオペレーションを考えるのって、奥が深いですよね。

野辺:はい。今までのメルカリは、パートナーの配送事業者さんを通じて、コンビニ事業者側と話していました。そのため、メルカリのメンバーからすると、小売店舗の実態がよくわからなかったんじゃないかと思います。そこで、僕が入社してすぐ、メルカリのBizDev(Business Development)メンバーを連れて、ローソンのオーナーさんと飲みに行ったんです。そうすると、やはりオーナーさんから「ここが大変だ」「これはわかりづらい」など、いろいろなご指摘を受けまして。おかげでBizDevメンバーは、初めて「小売の現場って、なにか1つ導入するにもこんなに大変だったんですね」と気づいたようです。

田面木:リアルビジネスは、店舗や機械などフィジカルなステークホルダーがどうしても多く、例えば小さなズレが利益率を圧迫する場合があったりします。そのため、けっこう緊迫感があるんですよね。一方、ネットビジネスは店舗も在庫もないし、サーバーもクラウドで、フィジカルなものに触れていないので、オフラインのUXに対する感覚がちょっと違うのかもしれませんね。僕も野辺さんも、リアルとネットのそれぞれの特徴を理解しているからこそ、「もっとお互いのビジネスは連携できるし、もっと良くなる」という想いが強いですよね。

オンライン・オフラインともにアップデートし続けてきた1年だった

ー野辺さんはメルカリに入社してちょうど1年ですが、実際にどう感じていますか?

野辺:すでに3年くらい働いた感覚です(笑)。メルカリは「Trust & Openness」のカルチャーが浸透していて、すごいなと思いますね。メンバーを信頼できない組織だと、稟議や承認、会議、説明、社長プレゼンなど、さまざまなルールで縛られてしまい、意思決定スピードが遅くなる場合があります。メルカリの場合、生産性の高い環境が用意されているし「Trust & Openness」の精神が浸透しているので、意思決定スピードは今までの環境に比べて3倍くらい速い感触がありますね。

野辺一也(執行役員VP of Business Operations)

ー田面木さんは、メルカリジャパンのCEOに就任してから約1年半。その間にどんな変化があったと思いますか?

田面木:1年くらい前に、OMO(Online Merges with Offline)について学んでいたのですが、中国のインターネット企業では「オフラインのタッチポイントもアプリの一部として捉えている」ことに衝撃を受けました。メルカリも、アプリだけで完結するUXではないからこそ、オフラインの体験も大事だと思ったんですよね。すぐにOMOチームをつくり、まずコミュニティマネジメントから検討しました。

ーそうだったんですね。

田面木:手探りではありましたが、メルカリの使い方を1から学べる「メルカリ教室」を始めたり、郵便局などに梱包資材を設置したり、オープン型宅配便ロッカー「PUDO」で発送できるようにするなど、オフライン体験の拡張を進めてきました。すべては、OMOの概念をメルカリに取り入れるべきと考え、始まったと言えます。ここまで、オンライン・オフラインともにアップデートし続けてきた1年でした。でも、本当に地道です。いきなりできるものではありません。ようやく、さまざまなパートナーさまと地道に続けてきた取り組みが、カンファレンスで発表できるところまできたという感覚です。

「メルカリで売る」の選択肢が広まれば、日本全体の経済が活性化する

田面木:僕自身、一次流通でビジネスをしていた経験からも、一次流通、二次流通を融合し、お互いのビジネスを加速することで、日本全体の経済を活性化できると考えているんです。今は「モノが売れない時代」と言われていますが、それは、みんなが家に使わない「モノ」を溜め込んでいることも原因だと考えているんです。同時に「モノが溢れて供給過多」とも言われていますが、使わないモノは「メルカリで売る」選択肢が広まることで、もっと気軽に買えるようになる。そして、買い物に失敗しても平気な世界にしたい。そうなれば、売買が活性化して、結果的に日本経済も好転するはずだと思っています。

野辺:リアルビジネスには、リアルビジネスのセオリーがあり、オフラインのUXをつくり込む場合、インターネットの流儀は通用しません。今回、メルカリはリアル店舗「メルカリステーション」や、売れた商品が発送できる無人投函ボックス「メルカリポスト」など、オフラインの拠点をリアルビジネスのパートナーさまとつくり込んでいくことをカンファレンスで発表しました。ここには、オフライン・オンラインのUXを両輪で見てきた自分だからこそ、良いものにしていきたい想いが強くあります。例えば、Amazonは配送領域にも乗り込んで、どんどん自分たちで新しいUXを開拓し、ECの体験として価値を上げてイノベーションを起こしています。メルカリも負けずにどんどんやっていきたいですよね(笑)。

「Mercari Conference 2020」での様子。ここで、メルカリステーションやメルカリポストの発表も行った

田面木:Amazon Goとかもそうですよね。あれは感動のオフラインUX体験ですね。

野辺:メルカリでいうと、「出品」はUX上、非常に重要な要素です。メルカリがメルカリステーションや、メルカリポストをつくって、制約がない「Trust & Openness」のカルチャーのもとに、お客さまと共創する場所をつくるというのは、オフラインUXに強いパートナーさまとの共同でないと実現できません。メルカリ単体ではなく、いろんなパートナー企業さまとCONNECTして、さらにお客さま体験を拡張していく。そういうフェーズに来ているんだなと思います。

田面木:そう考えると、メルカリステーションもアプリの一部なんですよね。

野辺:そうですね。オフラインの体験を拡張することで、アプリ自体の一貫したUXが向上しているというわけですね。

田面木:僕と野辺さんはリアルビジネスとITの経験を活かして、両者の接点を近づけて、ビジネスの橋渡しをしたい。それが「CONNECT」というカンファレンスのテーマに込めた想いです。

「Mercari Conference 2020」のテーマでもある「CONNECT」を伝えている様子

All for Listing – 出品体験の向上を掲げて

野辺:メルカリジャパンは、2019年後半から出品を向上する施策に注力していて、社内では「All for Listing」という目標を掲げて、方針を明確にしました。規模が大きくなると、フォーカスするポイントやメッセージングをシンプルにする必要があります。そうしなければ、組織や人は動きづらくなるものです。今回、メルカリでも方針を明確に打ち立てたことは良かったですね。フラットでオープンなカルチャーを保ちながら、シンプルに集中するところは集中する、というスタンスはリアルビジネスから学ぶことも多いです。

田面木:「All for Listing」は、今後もしばらく続いていくと考えています。なぜなら、すべての世代のお客さまにとって、メルカリで気軽に出品できる状態を目指すことが、今僕らが一番やるべきことだからです。そうすれば、眠っている「モノ資産」もどんどん売買され、モノが循環していく。そして、新品・中古を含めた、一次流通・二次流通全体の経済が活性化するはずです。なにを隠そう、僕はファッションが好きなので、メルカリヘビーユーザーでもあります。スニーカーや服を1つ買ったら、必ず1つ売るというマイルールを決めています(笑)。

野辺:CtoCは、いろんな領域に広がるポテンシャルがありますし、社会に大きな変革をもたらすことができると思っています。Amazonも、もともとネットの本屋さんだったのがこれだけ変貌しているのと同様、メルカリも、個人と個人を繋ぐフリマアプリから、一次流通までCONNECTしたような、まったく新しい形に変貌できるはず。プロダクトの範囲をオフラインだけでなく、企業のエンパワーにも広げていくフェーズが来ています。これって、ワクワクしますよね。

田面木宏尚(Hirohisa Tamonoki)

早稲田大学を卒業後、GMOクラウド株式会社へ入社。CS業務、サーバーホスティング事業、および新規事業の立ち上げ等に従事。2010年にピクシブ株式会社へ入社し、取締役としてシステム開発、マーケティング、グロースなどの事業統括に従事。2016年1月より株式会社アニメイトラボ代表取締役社長CEOに就任し、小売領域におけるIT事業推進を実行。2017年2月に執行役員としてメルカリに参画。2018年10月執行役員メルカリジャパンCEO就任、2019年9月取締役メルカリジャパンCEO就任。

野辺一也(Kazuya Nobe)

学生時代にIT系ベンチャー創業、事業売却後に外資系コンサルティング会社にて事業戦略・マーケティングなどのプロジェクトを担当。2007年に株式会社リヴァンプ立上げに参画、支援先化粧品会社CEOとして事業再成長を実現。2013年から株式会社ローソン上級執行役員マーケティング本部長、オイシックス、ロイヤリティマーケティング(ポンタポイント運営会社)などの社外取締役も務め、2019年2月に参画、執行役員VP of Business Operations就任。

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