片付けコンサルタントが約10ヶ月間、「整理整頓術」を駆使してメルカリのリーガル業務改善した記録

はじめまして。メルカリCorporate Legal Teamの@yokos(ようこす)と申します。

私はリーガルチーム内の業務改善をメインに、契約書のレビュー、登記・公告業務などを担当。企業内・組織内弁護士(インハウス弁護士)である@taikiさんとタッグを組み、業務に取り組んでいます!

写真左から、@taikiさんと私@yokos!

そして、私個人は何をしている人間かと言うと!整理収納アドバイザー1級の資格を持っており、片付けコンサルタントとしていろいろなお宅の「整理整頓」をする仕事をしています。

そんな私がなぜメルカリにジョインしたかというと?片付けコンサルティングをしているなか、お客さまがメルカリを使っている様子を見ていて「エコ社会の実現に向け、ビジネスとして寄与しているところがおもしろい!」と感じ、2018年11月に入社したのでした。

さらにこのたび(2019年10〜12月)、メルカリValue賞の一つ「All for One賞」をいただきました。「All for One賞」の受賞理由は以下2点。

1.他チームでも汎用的に使えるオンボーディングリスト(※)を作成した
※)中途入社者向けの初期対応・業務サポートを円滑に行うためのプロセスを明文化したリストのこと
2.メンバーを巻き込み、リーガルにおける課題の洗い出しから業務改善・マニュアル化、見える化を率先していくつも実施し、組織改善に大きく貢献した

「リーガル業務の整理整頓をしてほしい!」の提案を受け、チームを異動

実は私、もともとHRチーム(現Talent Acquisition)としてメルカリに入社しています。働くメンバーをエンパワーメントできる仕組みづくりや業務改善がしたい…と話していたら、入社数カ月後に「ぜひリーガル業務の整理整頓をしてほしい!」と声をかけられ、CLO(Chief Legal Officer)の@Sakuraiさんとマネージャーの@maiさんとの面談を実施。リーガル業務の現状と課題、私ができそうなことなどをひと通り話し合った後、すぐに異動辞令が出て今に至ります。新卒から前職までずっと法人向けの提案営業職で、メルカリでの人事経験もたった数ヶ月なうえに管理部門の経験すら希薄。自分史上最高に「未開の地」への異動でした。

恥ずかしながら、異動当時のリーガルへのイメージは「契約書をチェックしてくれる部署」。契約交渉・レビュー・捺印は重要な業務の1つであり、会社にとってリーガルチームは大事なセクションであることも理解していましたが、誰がどんな仕事をしているのかなど、具体的なところはわかっていなかったのです。

現在のリーガルチームは、大きく分けて、組織法務を軸とした「Corporate Legal」と、メルカリの事業が前進するよう法律面からサポートする「Business Legal」の2つ。プロダクト開発チームからの相談に代替案を出しながら、「攻めの判断」をすることで事業の成長に貢献する一方、リスクが大きすぎると判断したら止めに入る「守りの判断」も行う。まさに、バリューの高い仕事の1つですよね。プロダクト開発チームと並走しながら、答えをつくりにいく法律のプロたちを見ていて、リスペクトが止まりません。

メルカリのリーガルチームは大手法律事務所出身者や企業法務経験豊富なプロが多く、インハウス弁護士の比率が高いです。異動した当初は、猛者たちの中に一匹のひよこが紛れ込んだような気持ちでした。同時に「ここで一体何ができるというのか…」と、悩む毎日の始まりでもありました。

専門領域がわからないからこそ「そうだ、みんなが走った後を片付けよう!」

私が片付けコンサルタントとしてお客さまのご自宅を担当する際、意識しているのが、次のような流れです。今回のリーガル業務改善でも、このやり方を取り入れてみました。

STEP1:全体像を把握する
STEP2:ボトルネックを見つける
STEP3:不要なものを取り除く
STEP4:必要なものを取り入れ、適切なかたちに配置していく

さっそく、現状把握を開始。専門性の高い法務については、当然ながらわからないことだらけ。そのため、リーガルチーム全員と1on1をして、一人ひとりの業務内容、関わっているチームや社外のステークホルダー、課題に感じていることなどをヒアリングしました。ヒアリングを通じて感じたのは、急成長・急拡大してきた事業と並走し続けてきたチームだからこそ、いろいろな書類や情報が散乱していることでした。

チームワークのかたちはさまざまですが、リーガルに関しては「柔道団体戦」に似ていて、各メンバーがプロフェッショナルとして個別案件に対応するスタイル。サッカーのように、パスを出し合ってゴールを目指す「チーム一体となって動くスタイル」とは異なります。メンバーそれぞれのプレーで成り立っていたリーガルチームでは、情報蓄積の自動化や業務の見える化・マニュアル化が進んでおらず、「チームとしての機能」が最大化されていない状態でした。

メンバーが個々で走り続けていると、ボールを落とさないよう進むことに手が一杯で、轍を整えるのも難しい。もちろん、その状態でも業務を遂行できますが、これから新たに入社する新メンバーにとってはどうでしょうか?「みんな、どこに向かって走っているんだ?」と迷子になってしまうのではないでしょうか。それだけは、どうしても避けたい。そこで、「戦力としては小さいけれども、業務間でこぼれ落ちたボールを拾うなど、みんなが走った後をキレイにすることならできる!」と考えたのです。

そして、現状把握を終えて、次に取り掛かったのが下記のような取り組みでした。 

<チーム運営面>適時適切な情報共有体制の設計と、チームの心理的安全性を高める。
・ 会議運営(情報共有・意思決定)の小さな改善提案
・ オフサイトの企画
・ チーム内コンディションチェックアンケートの実施とデブリーフィング
・ リーガルチームとしてのミッションの明確化ワーク


<業務面>小さな手間を省き、メンバーがバリュー発揮に集中できるようにする。
・ 「探す時間」「確認する時間」を減らす情報の整理整頓
・ 必要な情報を自動的に一元化する仕組みづくり
・ 属人化している業務を可視化し、マニュアルに落とし込む
・ リーガルと関わる部門へのヒアリングの実施と改善点を、チームへフィードバック
・ 他チームに対する法務勉強会の定期開催

見てのとおり、「重要だけど緊急ではない業務」がメインです。数も多く、すべてを同時に進めることは難しいため、できることから積み重ねていきました。

着手してみて少し驚いたのは、リーガルチームの多くが、ワードは使い慣れているけれど、パワーポイントやエクセル、Zapier、Slackなどのツール活用に慣れていない部分もあったこと。そういった業務を代わりに引き受けたり、マニュアル化するなど、私が役立てることもあるというのはうれしい発見でした。

「だったら、やってやんよ!」と腹を決め、挑んだ契約書レビュー

2019年秋頃、ようやくチーム内の情報整理がひと段落。続いて始まったのが、管理部門全体で業務改善・効率化に取り組もうといういろいろな改善プロジェクトでした。

そんなとき、あるメンバーから「@yokosさんは、もう少し法務の仕事を深く理解すれば、いい業務改善ができるのではないか」といったフィードバックをもらったことがありました。

たしかに、私自身は「みんなが走った後をキレイにする」ことはできても、プロダクト開発チームからの相談に乗ったり、いわゆるM&Aの交渉に入ったり、訴訟の対応をしたり、契約書レビューができるわけではありません。また、ちょうどこのとき、「メンバーにとって具体的にどんな業務が重いと感じるのか」に対する体感値が薄いと感じ始めていたタイミングでもありました。さらに言うと、人を巻き込む難しさに直面していた時期でもありました。

「もしかしたら、法務への理解の浅さが障壁になっているのかもしれない」「知識が足りないことで、メンバーからの信頼を得られていないのかもしれない」と、フィードバックから大きなヒントを得たようにも感じました。そして、自分を奮い立たせ、「…だったら、契約書レビューができるようになってやんよ!」と腹を決めたのです。さっそく、当時入社したばかりだった@Eritakeさんに契約書レビューの先生を依頼。法務業務サポートを本格的にスタートさせました。(快諾してくれた@Eritake先生に感謝!)

業務改善で最も評価された「オンボーディングリスト」ができた経緯

ここで改めてお伝えしたいのが、リーガル業務改善を力強く後押ししてくれた存在です。それが冒頭でもお伝えした、一緒にリーガル業務改善に奮闘してくれたメンバーの1人である@taikiさん!

彼は人事コンサルティング会社のコンサルタントとして、組織改革業務などに従事した後、ロースクールに通って司法試験を突破し、弁護士になったという異色の経歴の持ち主。入社早々「業務改善一緒にやりましょう!」と申し出てくれ、毎週のように壁打ち相手になってもらいました。

そんな彼と話し合う中で出てきたのが、「とても優秀な人たちが入社しているにも関わらず、立ち上がりサポートに不備があるせいで自走までに時間がかかり、メンバーに本来の能力を発揮してもらえていないのではないか」。つまり、リーガルメンバーにおけるオンボーディングを整理整頓しようということです。

そこから繋がったのが、今回の受賞のきっかけの1つになった「オンボーディングリスト」の作成でした。

リストを作成するにあたって、@taikiさんと一緒に以下の内容を洗い出しました。

・ そもそもオンボーディングの目的とは何か?
・ 目的が不明瞭なのであれば、まず自分たちで定義すべきではないか?
・ マネジメントは何をすべきか?メンバーは何をすべきか?中途入社者本人は何をすべきなのかを決めるべきではないか?
・ オンボーディングのゴールに対して、現状はどうなっているのか?
・ 何があればゴールに到達するのか?
・ どのようなかたちであれば、誰にでも運用可能になるのか?

ただ成果物をつくるだけでなく、誰に・どのように運用され・使ってみてどんな気持ちになるのかまでを2人で考え抜きました。

「オンボーディング」というと、人事部的な仕事のように思えます。しかし、中途入社者が早期に自走して活躍する場をつくるためには、汎用的な内容に加えてチーム独自のコンテンツも必要。リーガルチームでは、専門性の高い業務をしているからこそ、当の本人たちじゃないとコンテンツをつくれません。また、メルカリグループとしても、オンボーディングは各チームに任せる運用方針だったため、リーガルチームでの内製に踏み切ることができました。これが、結果的によかったと思っています。

メルカリメンバーをエンパワーメントしていきたい

「業務改善担当」という掴みどころのないポジションで、リーガル業務の整理整頓に挑み続けて早10か月ほど。暗中模索なことばかりで、メンバーのみなさんの助けなしには進めることができなかったものばかりです。

ただ、個人でやっている片付けコンサルティングの現場で経験してきたことと、業務やチーム運営を改善していく工程や考え方は非常に似ていると感じていて、いつ何時、どんな経験が活かされるかわからないものだな〜とも思いました。

これからも、自分が貢献できる軸でメンバーのエンパワーメントに少しでも役立っていきたいです!

品川瑶子(Yoko Shinagawa、Slack名は@yokos)

2013年東京女子大学 社会学専攻卒業。人材サービス企業、マーケティングリサーチ企業の2社を経て、2018年11月にHR(現Talent Acquisition)メンバーとしてメルカリに入社。採用アシスタント、人員計画管理等を経験した後、「業務改善担当」としてLegalへ異動。現在は契約書レビュー、登記・公告などの業務も担当する傍ら、メルカリ・メルペイLegalチーム全体の業務改善を推進中。社外では片付けコンサルタントとしても活動する1児の母。写真は、メルカリ社内で撮ってもらったもの。

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