マルイとメルカリの融合による「新しい小売のかたち」とは何か? #メルカリ勉強会

メルカリ初となる事業戦略発表会「Mercari Conference 2020」を開催したのは、今年2月のこと。「CONNECT」をコンセプトに掲げたメルカリ日本事業の新戦略として、パートナー企業との連携による出品施策の拡大、メルカリが持つ膨大な顧客データを通じた一次流通と二次流通の融合などの施策を発表しました。

そしてカンファレンス当日、メルカリは丸井との業務提携を発表。今後、リアル店舗「メルカリステーション」を新宿マルイ本館に出店するほか、マルイ店舗での決済手段としてメルペイの導入、データ連携による顧客体験の拡張などを進めていく予定です。

そこで先日、メルカリBusiness Operationsグループが社内向け勉強会を開催。なんと、登壇したのは丸井の代表取締役社長である青木正久さん!当日はGoogle Meet経由での開催となりましたが、丸井が考える小売のあり方を語ってくださいました。今回のメルカン記事では、その勉強会の内容をお届けします。

商品を売らず、体験を提供する

青木:新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前から小売業界は危機的な状況にありますが、個人的には10年後を見据えるとチャンスもあると思っています。

ー自己紹介を終えた後、青木さんは勉強会の序盤でこう持論を展開します。小売業界におけるチャンスとは何か──。青木さんは「体験の提供」にあると語ります。

青木:大前提として、丸井グループの事業は、小売・フィンテック・ITの三位一体。魅力的な店づくりで集客し、お客さまに買い物やエポスカードでの決済を使っていただき、そこでの利益を店舗へ再投資していくサイクルです。なかでも、丸井では集客に注力してきました。新型コロナウイルス感染拡大が始まる前から、小売業界はEC化やコト消費への移行、シェアリングエコノミーの台頭など、今後の長期的なトレンドを踏まえて、厳しい状態が続くと考えていました。

青木:そうした状況のなかで、大事なのは、ECと対立するのではなく“共存”すること。アパレルや雑貨などの物販メインから、飲食店やサービスをはじめとした体験型のショップを取り入れていくことで“体験”を提供していきたい。そんな想いで、丸井グループは6年くらい前から体験型店舗をつくる動きをしています。

ー青木さんによると、これまでのマルイの実店舗はアパレルと雑貨が売り場面積の9割を占めていました。しかし、2年ほど前から割合は6割に減少。昨今は飲食やサービスなど体験型のショップを増やしています。

青木:昔は「ファッションのマルイ」という代名詞もありましたが、今は違います。小売業でありながらも“売らない店”を目指しています。そのため、現在マルイにおける体験型ショップの比率は3割ほどですが、今後4〜5年以内に6割まで広げたいと考えています。

加速するスタートアップとの取り組み

ー 体験型ショップの比率を高めるべく、昨今の丸井グループはスタートアップへの投資。そして、協業にも注力しています。これまでにオーダースーツECサービス「FABRIC TOKYO」を運営するFABRIC TOKYO、Eコマースプラットフォーム「BASE」を運営するBASE、パーソナライズヘアケアブランド「MEDULLA」を運営するSpartyに出資。それぞれのスタートアップはマルイで、期間限定店舗、旗艦店舗、常設店舗などを展開しています。

青木:Spartyが運営する「MEDULLA」は、マルイの売り場を通じて、お客さまの頭皮、頭質のカウンセリングをして、3万通りのなかから最適なシャンプーをECで届けています。有楽町のマルイは1日に約3万人のお客さまが来店されるので、新しい層の顧客獲得にも繋がるんです。実際に、ネットよりもリアル店舗のほうがCPA(Cost Per Action)を下げることができ、お互いにメリットがあります。我々としては、今まではECが主戦場だった会社と一緒に組むことで、新しい業態をつくろうとしているのです。

ーまた直近では、店舗内の区画(約1区画:60cm×40cm)をさまざまなブランドに定額で提供するサンフランシスコ発のスタートアップ「b8ta」と提携。新宿のマルイに店舗をオープンする予定だと青木さんは言います。

青木:どれだけのお客さまが商品を手にとり、フロア内に滞留するのか。その接客データを商品化に活かしていくチャレンジもしていこうと思っています。

新しい価値を一緒に生み出していく

ーそうしたなか、丸井グループはメルカリと組み、リアル店舗「メルカリステーション」の出店、スマホ決済メルペイの導入も予定しています。

青木:我々はメルカリさんと想いをともにする部分が多いと思っています。丸井は衣料品や雑貨を89年という歴史のなかでたくさん販売してきました。売りっぱなしはよくないということで、10年くらい前から不用な衣料品の回収をしています。年間4万人のお客さまから、30万点の衣料品を回収し、一部は店舗で販売。その収益で循環型のサイクルを回し、一部は寄付しています。

青木:また、昨年9月に開催したポップアップショップでは、実際に「メルカリのことは知っているけれど、使ってみる勇気はなかった。ただ、このスペースでやってみたら簡単で、直接スタッフに話が聞けるのもよかった」という声もたくさんあったんです。そのような感想をもとに、メルカリステーションはメルカリを“体験しながら学べる”場所にできればと思っています。

ーメルペイでの決済は、新宿マルイ本館を筆頭に全店に導入予定。また、マルイウェブチャネルでも導入される予定です。

青木:データの連携に関しては、メルカリで商品を検索したときに、マルイウェブチャネルで新品の商品を表示したり、購入履歴をメルカリの商品リストと連携して、より簡単に出品できたりするといったことが実現できればと思っています。一次流通と、二次流通をCONNECTし、新しい価値をメルカリと一緒に生み出していきたいですね。

導入店舗はポップアップの反応で判断する

ー青木さんによる講演のあと、メルカリ執行役員VP of Business Operationsの野辺から質問が投げかけられ、ディスカッションが進んでいきました。

野辺:丸井さんが“売らないお店”というコンセプトを打ち出し、実際に始められたのはいつ頃でしょうか?それによって何かお客さまの変化はありましたか?

青木:打ち出したのは2年ほど前で、実際に動き始めたのは1年半前くらいですね。我々にとっては、マルイに足を運んでいなかった人たちを集客できるかどうかが大事。新たなお客さまを集めるべく、今までのマルイのイメージにはなかったショップを増やしています。そういったショップを増やすことで、これまでとは違った期待を集められていると考えているんです。

青木正久(丸井取締役社長、丸井グループ取締役上席執行役員)

野辺:実際、新たなショップを見つけて導入するまでの判断を下すのは、情報感度が高くなければできないような気がします。

青木:試行錯誤はくり返してしています。そんななか、これまでに実施してきて一番よかったのがポップアップの開催ですね。常設はリスクも伴うので、1週間くらいのポップアップイベントでお客さまの反応を見て、「これはいける」と思ったら大きく広げるようにしています。

野辺:メルカリも、最初はSDGsの文脈でポップアップをマルイで展開させていただいたことがあります。そこで、何か新しい発見はありましたか?

青木:メルカリさんのお客さまと、マルイのお客さまは親和性が高いなと思いました。一次流通だけで見ると、二次流通を使っているお客さまの姿がわからない。ですが、実際にポップアップを開催すると一緒だということがよくわかりました。一次流通、二次流通を掛け合わせたら、今までマルイに来ていただけなかったメルカリのお客さまにも足を運んでいただけるんだろう、と思います。

野辺:正直なところ、メルカリが店舗を持つことはイメージできましたか?

野辺一也(メルカリ執行役員VP of Business Operations)

青木:できていませんでした(笑)。ただ、ECが主戦場になっていくなか、リアル店舗が生まれるのは自然な流れです。以前なら実現しにくかったかもしれませんが、今は違います。今回のメルカリステーションも、実は言うと先日のカンファレンスで野辺さんにダメ元で話しかけたことがきっかけで実現しました。これは、丸井では社内最速で実現した事例でしたね。

野辺:非常にありがたいです!ポップアップもそうですし、決済の面でも丸井さんとの取り組みは手応えがあります。今後もっと広げていきたいです。今日はありがとうございました。

青木正久(Masahisa Aoki)

株式会社丸井取締役社長。株式会社丸井グループ取締役上席執行役員。1992年に株式会社ムービングへ入社。2009年に株式会社丸井へ異動し、新宿マルイ アネックス店長やアニメ事業部長を経て、2017年に執行役員就任。2019年4月に上席執行役員、株式会社丸井代表取締役社長。同年6月よりグループ取締役に就任。

野辺一也(Kazuya Nobe)

学生時代にIT系ベンチャー創業、事業売却後に外資系コンサルティング会社にて事業戦略・マーケティングなどのプロジェクトを担当。2007年に株式会社リヴァンプ立上げに参画、支援先化粧品会社CEOとして事業再成長を実現。2013年から株式会社ローソン上級執行役員マーケティング本部長、オイシックス、ロイヤリティマーケティング(ポンタポイント運営会社)などの社外取締役も務め、2019年2月に参画、執行役員VP of Business Operations就任。

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