「アメリカで成功する姿を見たいだけ」メルカリ米国事業へ飛び込んだQAエンジニアの今

メルカリグループが掲げる「事業の3本柱」に、メルカリ日本事業、メルペイ事業、そしてメルカリ米国事業があります。米国事業を行う「メルカリUS」は、アメリカに軸足を置いてサービスを展開。そこには、日本事業を行う「メルカリJP」から転籍したメンバーもいます。

「では、メルカリUSへ転籍した彼らの今は?」

国境を越えれば、言葉や文化は異なるもの。フリマアプリ「メルカリ」と言えど、JP版とUS版では“同じようで同じではない”部分があるのです。US版メルカリを開発するメルカリUSへ転籍したメンバーたちは今、何に悩み、手応えを感じているのでしょうか?

そこで今回のメルカンでは、メルカリUSへ転籍したメンバー3名にフォーカス。第2弾は、QA(Quality Assurance)エンジニアの楠田章子が登場します。2016年にメルカリへ入社し、日本にいながらUS版メルカリ開発を担当していた楠田。2019年2月にメルカリUSへ転籍した彼女がぶつかったのは「求められるスキルの違い」でした。
※掲載写真はすべて、在宅勤務になる前に撮影したものです。

この記事に登場する人


  • 楠田章子(Akiko Kusuda)

    大学卒業後、大手メーカーに入社。サーバーサイドエンジニアとしてネットワーク機器の監視アプリケーションの開発に携わる。2016年1月にQAエンジニアとしてメルカリに入社。おもにUS版メルカリのテストを担当。2019年2月にメルカリUSへ転籍。


US版メルカリがローカライズを強化するなかでの転籍

ー楠田さんがメルカリへ入社したのは2016年ですが、そのときの社内はどんな雰囲気だったんですか?

今と比べて特徴的だったのは、当時はJP版メルカリとUS版メルカリで同じソースコードを使っていたこと。私はQAエンジニアなので、テスト環境のなかでソースコードをビルドし、その機能をリリースして問題ないかどうかを検証します。このときのメルカリは、何を実装するにしても、機能単体はもちろん、JP版とUS版それぞれへの影響もチェックしていました。

ーUS版メルカリは、メルカリUSが中心となって開発しています。同時に、一部機能は日本オフィスで開発していますよね。楠田さんは入社当時から、日本にいながらUS版メルカリを開発していたんですか?

いえ、アプリではなく、CXI(Customer Experience Improvement:顧客体験改善)チームという、メルカリUS・JPそれぞれのCSが業務で使う管理画面のQAをしていました。このときのメルカリは米国事業ファーストだったので、US版メルカリの機能開発に注力。そのため、JP版メルカリの機能は、メルカリJPのQAエンジニアに担当してもらうこともありました。その後、プロダクト開発チームへ異動し、US版メルカリを担当するようになったんです。

当初、US版メルカリはJP版と連動するようなかたちで開発が進められていました。でも、当然ながら日本とアメリカでは、お客さまが求めているものは異なります。US版メルカリも、アメリカにローカライズしないと勝てない。そこで、2017年3月末から、JP版メルカリとの連動をやめ、完全にローカライズ化を目指す意思決定をしています。

US版メルカリのアプリ画面

その後、メルカリUSのQAマネージャーと話す機会があったんです。息が合っていたみたいで「一緒に働くと楽しそう」と感じました。ちょうど、日本オフィスからUS版メルカリのQAを担当するようになって3年ほど経ったころ…そろそろ別のチームへ異動したい気持ちもありました。そこで、転籍を決めたんです。

アメリカで担当したのは、高級ブランド品の出品画面

ーメルカリUSへ転籍してから、どんな業務を担当していたんですか?

QA業務は施策ごとにアサインされます。そのなかで特に思い出深かったのは、高級ブランド品の出品画面を担当していたときですね。

US版メルカリには、出品された高級ブランド品が本物かどうかを鑑定する「Mercari Authenticate」機能があります。私は、その出品画面を担当していました。

具体的に言うと、この機能は高級ブランド品かどうかを鑑定してくれる外部サービスと連携しています。なので、他社のAPIにリクエスト(商品名や写真、値段、種類など)を送り、鑑定してもらうことになります。

商品名や写真、値段、種類などの情報は、登録後にお客さまが変更したり、うっかり消されてしまったりする可能性もありました。PMが描く仕様を実現するにあたってUse Caseに漏れがないかを洗い出すほか、機能実装のためにデータ内へ新しいステータスを追加したときに既存アプリに影響がないかを検討することが、QA業務として重要でしたね。

同じく日本から転籍したメルカリUSメンバーとの写真。一番右が楠田章子(メルカリUS、QAエンジニア)

ーいろいろな方向から可能性を探るんですね。

そうです。もちろん、開発を優先して進めることは可能です。しかし、こういったすり合わせがないと、新機能を実装したあとに問題が発覚し、修正が必要になるなど、結果的に開発工数が膨らんでしまう可能性が高まります。だからこそ、QAエンジニアである私たちが開発前の仕様検討段階で「ここを変更するとどうなるのか」「モバイルとWEBページの挙動は異なるのか」「他機能とのコンフリクトはどうなるのか」などをチェックしているんです。

QA業務は、日本オフィスにいたころからずっとやり続けてきたもの。メルカリUSへ転籍後は、QA業務に関してはあまりギャップがなかったですね。むしろ、別のところで受けたギャップが、なかなかの試練だった気がしています。

メルカリUSで求められた、育成スキルとピープルスキル

ー別のところで受けたギャップというのは?

日本オフィスにあるUS版メルカリ開発チームは少数精鋭で、メンバーが同じ目標に向けてそれぞれ動いているようなスタイル。一方、メルカリUSでは、開発体制が体系化してきたことに加えて、QAチームのメンバーも急速に増えました。なかには、育成が必要なメンバーもいました。

実はこれまで、私は育成に深く関わったことがありませんでした。それに加えて、ラーニングスタイルの違いにもつまずきました。

私は、脈絡ない会話から情報をつなぎ合わせて理解するのが得意。ところが、メンバーによっては体系的なドキュメントや整理された情報から学びたい人もいました。何がどうわからないのか、何をすればわかってもらえるのか。それを把握するまでに、わりと時間をかけましたね。隣りに座って教えながら開発したり、私が話すことをそのままドキュメントにまとめてもらったり。情報共有と育成の難しさは、引き続き試行錯誤しています。

また、業務においても、日本にいたときとは異なるスキルが必要になっていきました。

ー日本にいたときとは違うスキル?

私自身、メルカリUSへ転籍する前までは自分の仕事の正しさで強みを出し、評価されるタイプでした。だから、自分さえしっかり業務をこなせていれば問題なかった。しかし、メルカリUSでは、そうはいきません。他チームの責任者に納得してもらわないと前へ進まないものもあったんです。おかげで「ピープルスキル(対人コニュニケーションスキル)」の重要性に気づくことができました。

メルカリUSには、ピープルスキルが優れている人が多い印象です。例えば、ポートランドにアプリ機能を試すテスターチームをつくったメンバーがいます。彼は難しそうな要求をあっさりと通すので、いつも驚くのですが(笑)。でもこれって、相手の立場を考えたコミュニケーションができているから、理解してもらえるんですよね。私も今、そういったスキルを強化しようとしているところです。

「メルカリがアメリカで成功する姿を見たいだけ」

ー先ほど「そろそろ別のチームへ異動したい」ということで、メルカリUSへの転籍を決めたと話していました。選択肢には「他の会社で働く」もあったと思うのですが、それでもメルカリを選んだ理由を知りたいです。

私は、メルカリがアメリカで成功するのを見たいだけなんです。これは、「アメリカで成功するぞ!」とメルカリグループ全社で言い続けていることでもあります。ここまできたら、成功する姿を見ないと気がすまない! そのために、US版メルカリはお客さまにとって誠実であるプロダクトをつくり続け、着実に知名度を上げていく。その積み上げが、成功の近道だと思っています。

ーそのなかで、楠田さんは何をしようとしているんですか?

アメリカでは、QA業務はオートメーションテストがスタンダードです。メルカリUSは、まずそのスタンダードを追わなくちゃいけない。…というと、QA業務の一部を機械に奪われるように受け取られがちですが、むしろマニュアルで行うテストに、エンジニアが集中できると思っています。

今までレグレッションテスト(影響範囲を確認するテスト操作)でカバーしてきた基本的な機能の確認をオートメーションテストにできれば、高級ブランド品の出品機能のように、複雑な機能でビジネスインパクトがある施策により多くの人的リソースを導入できる。そんなスタイルを取り入れつつ、本当に注力すべきところに人的コストを投入できるような体制を、はやくつくりたいですね。

第3弾では、メルカリUSのBackendエンジニアである清水直樹(Deme)が登場します。

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