創設30周年のサッカークラブを変えた──鹿島アントラーズ×メルカリの“社内だけじゃない”IT環境再構築

2019年7月30日以降、メルカリは鹿島アントラーズの経営に参画しています。そして、まず着手したことの1つが「鹿島アントラーズの社内IT体制再構築」でした。

「社内IT体制再構築」とは、つまりITツールを社内へ導入し作業効率化を図るわけですが…。担当メンバーから飛び出たのは「僕らがやりたかったのは、単なるITツールの導入ではなく“情報の透明化”です」。

そこで今回のメルカンでは、鹿島アントラーズの社内ITを担当する金子有輔と小沼涼、メルカリで社内IT業務を行うIT Serviceチームの篠嵜 洸が登場。鹿島アントラーズの社内IT体制における変化と過程をインタビューしました。

この記事に登場する人


  • 篠嵜 洸(Hiroshi Shinozaki)

    前職は株式会社モンベルで、電算室所属、社内ツール開発・運用を行う。2017年9月にメルカリに入社し、IT Serviceを担当。社内のテクニカルサポートからSlackの移行プロジェクトなど幅広い業務に対応している。

  • 金子有輔(Yusuke Kaneko)

    朝日アーサーアンダーセン(現PwCコンサルティング合同会社)、ITベンチャーの新規事業担当を経て2008年株式会社ミクシィ入社。内部監査室Mgr、社内システム部部長を歴任。ミクシィ退社後、2社教育ベンチャーの事業企画・経営企画室マネージャーを経て、2017年6月メルカリ入社。内部監査室、コーポレートプランニング等複数の部門を経験し、2019年9月株式会社鹿島アントラーズ ・エフ・シー経営戦略チームのマネージャーとして出向(メルカリSportsBusiness マネージャーを兼務)。東京都立大学大学院経営学研究科修了。CISA、CRISC。鹿嶋市出身、住友金属工業蹴球団からのアントラーズファン。

  • 小沼涼(Ryo Onuma)

    関彰商事株式会社で、デジタルトランスフォーメーション部に所属し、サーバーエンジニアとして構築・保守・管理を行う。2018年4月に鹿島アントラーズ ・エフ・シーへシステム担当として出向。業務用PCの全刷新、Google Workspace・Slack導入を始めとした社内のDXプロジェクトを推進。2020年より始まったDXコンサルティング事業にも従事している。


鹿島アントラーズへのITツール導入、最初の一歩は「メルカリ東京オフィス見学」

ーメルカリが鹿島アントラーズの経営に参画後、社内のIT体制を再構築しました。具体的にはグループウェアとSlackの導入、名刺管理ツール、人事管理システムの導入など。そのほか、会計システム、経費精算システムのクラウド化、電子契約の導入にも取り組んでいると聞いていますが…けっこういろいろありますよね。何から始めたんですか?

金子:前提からお話しすると、メルカリが経営参画する前の鹿島アントラーズでは、紙や口頭でやりとりが行われていました。そこへいきなりITツールを取り入れるのは、混乱のもとです。僕らがやりたかったのは「単なるITツールの導入」ではなく「情報の透明化」。そのためには、鹿島アントラーズで働く方々がメリットを理解しやすく、使いこなせるITツールから導入することが大事でした。

そこで最初にやったのは、鹿島アントラーズのIT担当者である小沼さんにメルカリ六本木オフィスに来てもらったことですね。担当者が「ツールを入れるとどうなるか」をイメージできていないと意味がないので…。小沼さんからすると、鹿嶋市から突然、緑のない六本木ヒルズに呼び出されたわけですけれど(笑)。

金子有輔(鹿島アントラーズ ・エフ・シー経営戦略チーム・マネージャー 兼 メルカリSportsBusinessチーム・マネージャー)

小沼:最初のオフィス訪問では、メルカリではどんなツールやシステムを使っているのか、社内IT担当者が何をしているのかを見学。今後、鹿島アントラーズでメルカリが使っているシステムを導入する場合、どうすればメンバーへスムーズに浸透させることができるのかとイメージを膨らませていました。

篠嵜:そのときのこと、僕も覚えています。一緒にご飯を食べに行って「これからよろしくお願いします」みたいな感じ。何と言いますか、最初はお互い探り探りでしたよね(笑)。その後、2〜3回ほどメルカリ東京オフィスへ来てもらった気がします。

小沼:(笑)。

小沼涼(鹿島アントラーズ ・エフ・シー、システム担当)

金子:小沼さんのオフィス見学と並行して、鹿島アントラーズでは「メルカリグループで使っているツールをどの程度使うのか」をディスカッションしました。

メルカリと鹿島アントラーズでは、それぞれで働くメンバーのITへの理解度に差がありました。これは決して悪い意味ではありません。メルカリで働くメンバーはITツール大好きな人たちが多く集まっているので…どうしても差が出てしまうんです。メルカリと同じシステムを使ってもらうのか、それとも分けて運用を考えた方がいいのか。小沼さんから鹿島アントラーズ側のシステム一覧を見せてもらって、メルカリとの社内IT体制の違いを洗い出したりもしました。

小沼:金子さんも話していたように、以前の鹿島アントラーズでは、社内コミュニケーションは電話と口頭メインで、チーム内MTGでは議事録もなく、稟議も紙の書類でした。決裁のハンコも、多いときは7個くらい必要なときもありました。なので、鹿島アントラーズ内でも、情報を見える化し、コミュニケーションをもう少しスピーディーに行いたいという課題があったんです。メルカリが経営参画する以前から、「チャットコミュニケーションを取り入れましょう」という話は社内でも出ていました。Slackについてはすでにメルカリグループで導入していたこともあり、わりとすぐに導入を決めましたね。

導入したばかりのSlackで、コロナ禍での試合開催可否をスピーディーに議論

ーでは、最初に導入したのはSlackだったんですね。

篠嵜:そうです。現在、メルカリと鹿島アントラーズ間のSlackは、プロジェクト単位でやりとりが行われています。Slackに鹿島アントラーズ用のWorkspaceをつくり、使ってもらっているんです。

金子:Slackに関して補足すると、ちょうど当時のメルカリでは、Enterprise Grid(アカウント一つで複数のWorkspaceで作業ができるSlackの仕様)を導入しようとしていたタイミングでした。鹿島アントラーズのほうが少人数規模でテストしやすいこともあり、メルカリより先にEntlerprise Gridで運用開始しています。そういう点では、Slackにおいてはメルカリグループの中で瞬間的に最先端企業になりました(笑)。

篠嵜:あと、Slack導入後はオンボーディングのためにメルカリから2〜3名ほど講師として鹿島アントラーズへ派遣し、講習を行いましたよね?

金子:そうでしたね。なかでも、最初にメルカリの社内IT担当メンバーが鹿島アントラーズに来て、セットアップをしてくれたのはよかったですね。そこでオリジナルスタンプを使うなど、メルカリ流のチャット文化もうまくインストールできました。

篠嵜:今、鹿島アントラーズに参加しているメルカリメンバーたちは、両方のWorkspaceを1つのアカウントで使用できています。切り替え作業や通知機能も一元化されているので、管理コストはかなり低くなっているはず。また、メルカリとメルペイ、鹿島アントラーズ共有のチャンネルもつくれるので、共同イベントを開催する場合でもすぐにやりとりができるようになりました。

篠嵜 洸(メルカリIT Serviceチーム)

ーSlackの導入に対して、鹿島アントラーズで働くメンバーの反応はどうでしたか?

小沼:鹿島アントラーズのメンバーには、Slackの使い方がとてもマッチしていましたね。弊社はメンバー数が少ない一方で、さまざまな部門があり、他部門とのコミュニケーション機会は非常に多い。Slackが導入されたおかげで、部門間のやりとりがスムーズになり、事業をスピーディーに進められるようになりました。

篠嵜:僕にとって印象的だったのは昨年11月、試合前夜にトップチームの選手から新型コロナウイルス感染症の陽性者が出たため、Slackで開催に向けた議論をしていたときのこと。Slackがなければ、あの限られた時間のなかでクラブとして必要な対応をスピーディーに決定し、試合開催までたどり着けなかったと思っています。

金子:確かに、Slackのおかげでインシデント対応がうまくいくようになりましたね。試合開催可否の議論では、Slackで情報を共有しながら、PRチームはGoogle Docsを使ってリリース文面を作成、同時に保健所とのやりとりをしているチームやSNSチームなどもSlackで連携していました。すべての情報を関係するメンバーがリアルタイムで閲覧できる状態にしたおかげで、状況に合わせた対応パターンを導き出し、適切に試合開催の判断を行えました。以前は電話でコミュニケーションしていたので「それ、誰が言ったの?」「誰の判断を待っているの?」という状態になることも多かったのですが、Slackのおかげでそういったトラブルも回避できました。

「誰一人取り残さない」社内IT化を一歩ずつ実現

ーITへの理解度に差があったという話もありました。だからこそ意識していたことは?

金子:篠嵜さんが鹿島アントラーズ側の要望を丁寧にヒアリングしたうえで、複数の提案をしてくれました。おかげで、スムーズに社内IT体制を整えることができました。本来は、一つひとつのシステムの検証を鹿島アントラーズ側で行うところを、篠嵜さんがやってくれたんです。僕らは提案されたもののなかから、コストと使い勝手のバランスを見て、導入を判断するような流れでした。

小沼:篠嵜さんが提案してくれたおかげでは「この使い勝手だったら鹿島アントラーズのメンバーも使ってくれそう」「ちょっと難しいから他のツールがいいかな」と感覚値でもわかりやすくツール選定を行えましたね。

金子:もう一点、鹿島アントラーズでは、なるべくシンプルでわかりやすいツールを選ぶよう心がけました。メルカリメンバーはITリテラシーが高いので説明コストがあまりかからないのですが、鹿島アントラーズは創設30周年を迎える歴史あるクラブであり、創設期から在籍しているメンバーも多い。最初の説明でしっかりツールの使い方を伝えないと、サポートコストが高まるんです。

小沼:篠嵜さんから「ツールを導入する際はマニュアル動画」と提案してもらったんです。今までは文章で説明していたので、わかりづらいという声もありました。そこで今回のITツール導入にともなって、ログイン方法などを動画化してみたんです。これは、なかなか革新的でしたね。

篠嵜:メンバーへのオンボーディング方法はSlack上で話し合い、決めましたね。メルカリへ入社する前まで、僕は非IT企業で情報システムを担当していました。社内に浸透させるノウハウをいくつか持っていたので、鹿島アントラーズでも活かすことができましたね。

金子:そのほか、鹿島アントラーズのメンバーには、新たなツールを導入することのメリットを伝えるように意識しましたね。その効果もあり、みんなが安心感を持って新しいツールを使い始めることができました。

篠嵜:あと、メルカリの運用ガイドラインにすべて合わせようとはしませんでした。例えば、メルカリではSlackのチャンネル名を英語表記にしていますが、鹿島アントラーズでは漢字を使っていたりします。それぞれの文化に合わせることが大事かな、と。

金子:そういえば以前、鹿島アントラーズの古参メンバーが電子契約の方法を総務メンバーに教えてもらっていたときのこと。やり方を教えてもらっている間に「◯◯さん(総務メンバーの名前)はデジタルの世界に行っちゃったからな〜」と笑いながら話していたんです。ほのぼのしているように思える話ですが、鹿島アントラーズでは急速にDXを進めながらも、なるべくITツールを使う現場の視点を持ちながら設計・導入しなければならないと改めて感じるエピソードでした。

篠嵜:最近、デジタル庁でも「誰一人取り残さない(No One Left Behind)」という言葉を掲げています。まさに、鹿島アントラーズはそれを一歩ずつ実現しようとしているんですよね。

金子:スピーディーに取り組んではいますが、変に焦ってDXを進めたりはしていませんね。

小沼:ですね。急激に変化させちゃうと、それについていくだけでもメンバーは精一杯になる。地に足をつけたDXを進めている感じですね。

メルカリ×鹿島アントラーズのIT業務は“社内”に限らず!

ー今回はメルカリ×鹿島アントラーズで社内IT化を進めたわけですが、その結果どんなメリットがあったんでしょうか?

金子:グループシナジーが生まれ始めていることでしょうか。今は、両社のDX施策をお互いに参考にしたりもしています。この輪が広がり、鹿島アントラーズがメルカリのグループに入ったことで、社内ITに限らずいろんな分野で実証実験を始めています。それも大きなメリットです。

篠嵜:ITツール導入では、いろいろなサービスを試しながら「鹿島アントラーズくらいの組織規模だと、どのサービスで社内IT体制を整え、運用するといいのか」と検証しながら進めました。将来、メルカリが同じ規模の企業をM&Aしたとき、すぐに応用できるノウハウができたのはよかったことの1つだと思います。

ーそして現在、鹿島アントラーズでは社内ITメンバーを募集中ですよね?

金子:そうです!鹿島アントラーズの社内ITチームには、メルカリがIT業界で培ってきた技術、鹿島アントラーズがサッカー業界で培ってきたノウハウやカルチャーの両方を得られる環境があります。ほかではなかなか得られないスキルが手に入るので、スポーツ業界における社内ITのパイオニアになれるはずです!

篠嵜:パイオニア(笑)。でも確かに、ほかではなかなかできない経験は多いですね。僕目線だと、小泉さん(株式会社メルカリ取締役会長兼株式会社鹿島アントラーズFC代表取締役社長、小泉文明)と近い距離感で働けることですね。今のメルカリの組織規模だと、小泉さんと直接やりとりしながら仕事をする機会はほとんどありません。でも、鹿島アントラーズにおける社内ITは、小泉さんとコミュニケーションしながら仕事を進めていくことになる。これは、千載一遇のチャンスだと思います。

小沼:勤務地は、基本的には鹿嶋市です。しかし、鹿嶋市以外でも働けるようにもっとIT化を進めることもできると思っています。社内制度や規定、セキュリティルールも今後さらにしっかりと考えていくので、提案が通れば、制度の立案や変更もできます。そういう意味では、裁量がとても大きな仕事です。

金子:そして強く主張しておきたいのですが、鹿島アントラーズの社内ITは、スタジアムやクラブチームでのIT化も仕事の1つです!そんな新たな領域で企画提案するなど面白がれる人には楽しい環境だと思いますね。実際に、鹿島アントラーズでは社内ITによるDXのノウハウをもとに、コンサルティング事業を開始しました。現在、いくつか案件を受注しています。かなりアグレッシブなんですよね。

篠嵜:それってもはや「社内IT」の枠組みからはみ出してますよね(笑)。でも「やりたい」と思ったことへすぐに取りかかれるのはとてもいい。知見が足りなければ、ノウハウを持つメルカリメンバーも紹介できます。これも魅力かと。

鹿島アントラーズの“社内IT担当”に向いているタイプは?

ー「こんな人が鹿島アントラーズの社内IT担当者に向いてそう」というタイプは?

金子:メルカリと鹿島アントラーズでは「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」という同じバリューを掲げています。すごく基本的なことなのですが、その3つを体現できるかどうかは大事ですね。

小沼:僕としては、メンバーの意見に耳を傾けるなど、自分からコミュニケーションできる人は相性がいいと思います。相手が何に困っているのかと、気遣えることが理想ですね。スキル面では、現状はどんなテクニシャンでもきてほしいです。一芸に秀でた人がいてくれるとめちゃくちゃありがたいので(笑)。自分自身のスキルを軸に、社内ITに必要な業務に挑むなど、自分の領域を拡大させながら仕事ができるとなおいいですね。

ー鹿島アントラーズの社内IT化は順調に進んだように感じますが、今後は?

小沼:ようやく鹿島アントラーズの社内IT環境を地ならしできたところです。今後はワークフローやセキュリティ、ネットワーク、販売管理システムのリプレイスを進めたいですね。

金子:先ほどもお話ししたように、鹿島アントラーズの社内ITは“社内だけ”の業務に限りません。鹿島アントラーズのショップを無人店舗化する計画がすでに動き始めています。一方で、鹿島アントラーズが運営するアカデミーでも、選手分析を進めていきたいという声もあがっています。これらすべてに、インフラ整備が必要です。鹿島アントラーズの“社外”ITも、協力しながらどんどん進めていきたいですね。

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