「定量」でインパクトを測り、「定性」で動機を掴む──お客さまの本音を探るUXリサーチャー×Analystの二人三脚

メルカリでは「お客さまの声」を重要視し、創業当初からユーザーインタビューを定期的に実施。今ではUXリサーチ担当とAnalyticsチームのメンバーが連携し、定量×定性でリサーチをしています。

「お客さまの声」は大事…とはわかるけれど、UXリサーチで得た声をどうやってプロダクトへ反映しているの?定量×定性のバランスはどう考えている?

そこで今回のメルカンでは、UXリサーチ担当の上田 葵(@chanu)、Analytics担当の川口世人(@Tsuguto)が登場。そもそもなぜタッグを組むことになったのか、定量と定性の考え方など、メルカリにおける「UXリサーチ」について聞きました。

※撮影時のみ、マスクを外しています

この記事に登場する人


  • 上田 葵(Aoi Ueda、@chanu)

    大阪府立大学現代システム科学域卒、社会学専攻。大学在学中、Life Is Tech!にて学生向けプログラミングキャンプの運営、Yelp, Inc.にて、日本法人の立ち上げに関わる。その後、トビタテ!留学JAPANの派遣留学生としてニューヨークに渡り、日本茶の市場調査を行う。帰国後、2018年秋にメルカリにPMとして新卒入社し、その後UXリサーチチームを立ち上げる。現在ではUXリサーチャーとして、組織内の調査設計や実施、分析、UXリサーチができる体制や仕組み作りをしている。


  • 川口世人(Tsuguto Kawaguchi,@Tsuguto)

    首都大学東京(東京都立大学)修了、社会行動学専攻。在学中は貧困や外国人をテーマに質的研究を行う。修了後、(株)マクロミルに入社。データの集計解析/新商品開発部門を経て、新規部門の立ち上げに携わる。2020年にメルカリグループに入社し、現在メルカリ(JP)でデータ分析とリサーチ設計を担当。


メルカリにおける「UXリサーチ」の業務内容は?

ー@chanuさんは2018年にメルカリへ入社して以来、UXリサーチを担当しています。まずはメルカリにおけるUXリサーチ業務について教えてください!

@chanu:大きく分けて、次の3つあります。

・ メンバーから相談・依頼を受けて実施するリサーチ
・ テーマ探索型のリサーチ
・ UXリサーチの啓蒙活動

@chanu:1つ目は、プロジェクトメンバーから依頼や相談を受けて実施するリサーチ。業務の7〜8割を占めています。2つ目が、通称「テーマ探究型のリサーチ」。会社として明らかにしたい抽象度が高い課題やテーマを、外部の調査会社と協力しながら長期的にリサーチするものです。年間を通して、1〜2件あります。

3つ目が、Analytics担当の@Tsugutoさんや他のUXリサーチャーと一緒に取り組んでいるUXリサーチの啓蒙活動です。社内外に向けてUXリサーチに関する勉強会を開催したり、オンラインイベントに登壇したり。ここ1〜2年はリモートワークが基本なので、メルカリ・メルペイで協力しながらグループ全体のフローを整えて、オンラインでのリサーチを実践しています。

上田 葵(@chanu)

ー啓蒙活動?

@chanu:私自身は新卒でメルカリへプロダクトマネージャー(PM)として入社しています。その後しばらくしてから、UXリサーチを業務の中心に据えることになりました。つまり、UXリサーチに対して深い知識がある状態で今の業務を担当し始めたわけではありませんでした。もちろん、お客さまの感想や使い心地をキャッチアップするためにいろいろ手探りしてきましたが、それでも「足りない」ところがあったんです。

UXリサーチチーム発足後、いろいろと試行錯誤を重ねていたタイミングで、前職でもユーザーリサーチなどを担当していた@TsugutoさんがAnalyticsチームへ入社。ご一緒するようになってから、アドバイスしてくれたり、アンケート設計をしてくれたりしたおかげで、リサーチの質を格段にブラッシュアップすることができました。その知見を社内に広げ、メルカリグループのメンバーでリサーチに興味があれば誰でもUXリサーチを行えるようにしようと活動を始めたのです。

ー@Tsugutoさんは2020年に、メルカリへ入社しています。当時、メルカリのUXリサーチを見て感じたことは?

@Tsuguto:特に印象深かったのは、ユーザーインタビューの回数の多さと定性寄りの分析です。僕が当時配属されたチームでは、とてもスピード感のあるサイクルでインタビューを実施していたんですよね。「早い!」と感じる反面、インタビュー全体を完全には構造化していないように思いました。

川口世人(@Tsuguto)

ー構造化していない?

@Tsuguto:インタビューの目的はあったのですが、そのための設計(目的/課題や対象者、聞く内容の設計)を固めきらずにPMの裁量で柔軟に調整しているように見受けられました。当時のメルカリでは、PMが施策でのアクションなど自チームで調査結果を活用するためにユーザーインタビューをしていたため、柔軟に行うメリットもあったと思います。それに、PMが自らユーザーインタビューすること自体はすごくいいことです。ただ一方で、単発のインタビューではなく、より構造化して、一連のインタビューでなにを明確にしたほうがアクションにも繋げやすく、そこで得たデータも活用されるのではと感じました。

ーちなみに、メルカリでのUXリサーチは、基本的には@chanuさんが中心になって進めているんですか?

@chanu:そうですね。調査の設計やアンケートのレビューなどは私が担当しますが、PMやデザイナー、アナリストがインタビューのモデレーター(インタビュアー)になることもあります。基本的にインタビューはモデレーター1名、書記1名です。リサーチャーの視点とPMの視点は違うことが多いので、お客さまの生の声を聞いてもらうことで得られる示唆もその分多くなる理由から、なるべくプロジェクトに関わりのあるメンバーには参加してもらうようにしていますね。

@Tsuguto:あ、そうそう。僕がメルカリに入って驚いたのが、PMがインタビューをしていることです。スタートアップではスタンダードなのかもしれませんが、僕の前職である調査会社などではインタビュー専門のベテランモデレーターが行うことが多かった印象です。ところがメルカリでは専門のモデレーターではなく、PM自身がインタビューを行っていてびっくりしました。くり返しになりますが、PMが直接お客さまの話を聞くメリットは大きいです。「聞きたいことを聞いて、仮説を立てて、プロダクトに活かす」というサイクルが回っていたこと自体、すごいことだと思います。

UXリサーチ担当とアナリストが手を組んだ、そのきっかけは?

ー当初、@chanuさんのようなUXリサーチ担当がユーザーインタビューを実施していました。しかし、今はアナリストである@Tsugutoさんと連携して進めています。連携することになったきっかけはなんだったんですか?

@chanu:@Tsugutoさんが入社後、ゆるい連携は始まっていました。本格的に連携するようになったのは、メルカリのメンバーがオリジナルのアイデアを経営陣にプレゼンする社内イベント「Bold Camp」でした。

@Tsuguto:そうでしたね!Bold CampにUXリサーチチームもAnalyticsチームもエントリーしていて、偶然にもその内容がとても近いものでした。「じゃあ一緒にやろう」とまとめられて、一緒にプロジェクトを進めていくことになったんです。

僕らのプロジェクト内容は、フードカテゴリをドライブさせるというもの。すでにログの定量分析を通じて、フードカテゴリがかなりのポテンシャルを秘めていると気づいていました。というのも、リサーチ結果も合わせて分析した結果、メルカリには農産物を育てているお客さまはいるけれど、農産物は出品していない方が数十万人いるという試算をしました。

しかし、需要はあるけど、供給が全然追いついていなかったんですよね。Bold Campでは、その状態から一歩でも前へ前進させる施策を打ち出したかったんです。

@chanu:私の場合、実家が農家で、かつ大学でも日本茶の研究をしていました。コロナが流行する前は、オフィスで毎月お茶会を開催しているくらいお茶への“愛”には自信がありました。だから、Bold Campでも食品カテゴリに関わりたいと思っていたんです。Analyticsチームと一緒に進めることで、UXリサーチ面でバリューを発揮できると感じたことも決め手でした!実際にやってみて、ものすごくやりがいのあるプロジェクトでしたね。UXリサーチャーとして農家の方へのインタビュー設計や実施もしましたし。

@Tsuguto:ちなみに「Bold Camp」では、2位でした。結果的には、メルカリ外でコミュニケーションを取るだけでなく、メルカリ内でのコミュニケーションでも十分に効果があるかもしれないというかたちで、ネクストアクションに繋がりました。そして後日ソウゾウ側に対してナレッジを提供していきました。「どういう農家をターゲットにすべきか」という論点では、農林水産省が発表している農家の規模などからセグメントし、ターゲットを定めました。

@chanu:このときインタビューした農家の方から、「メルカリShopsでお米を売っているけど、インタビューで伝えたことが反映されていて使いやすい」という声をいただきました。プロダクトの最初から最後まで関わって、さらにそれを使っていただいたお客さまの声を直に聞ける機会はなかなかないので、「やってよかった」と強く思いましたね。

「アンケートに答える人はエクストリーム」にハッとする

ー@Tsugutoさんが本格的にユーザーインタビューに参加するようになってから、具体的に何が変わりましたか?

@chanu:最初に私が「しまった!」と感じたのは、@Tsugutoさんの「アンケートに答えてくれる人って、そもそもエクストリームですよね」という言葉でした!

ーエクストリーム?

@chanu:つまり、「メルカリのUXリサーチに協力してくれる人は特別枠」ということです。私がこんなことを言うのも何なんですが、アンケートに回答するってめんどくさくないですか?メルカリが配信しているお客さまアンケートも、すべて回答しようとすると5〜10分ほどかかります。にも関わらず回答してくださっている時点で、メルカリに愛情を抱いている証拠。言ってしまえば、アンケートの母集団そのものにバイアスがかかっていることになります。

たとえば「1か月以内に初めて出品した人」という母集団からのアンケートをとっていたとします。でも実のところ、「1か月以内に初めて出品した人」かつ「メルカリ愛のある人」になってしまっていたわけです。それに気づいたときは、ショックでしたね…(苦笑)。

それからいろいろとアドバイスをしてもらうようになって、まずはアンケートの奥深さをたくさん教えてもらいました。正直、アンケートをつくるところから「こういう聞き方をしなければいけなかったんだ…!」と反省ばかりで、学びの連続です。

@Tsuguto:わりと陥りやすい罠ですし、当時のメルカリにはアンケートを実施する際の母集団を調査によって推計したり、サンプリングしたりする意識が弱かったかなと思います。

@chanu:そしてもう1つは、分析部分についてです。今までは定性寄りだった部分を、@Tsugutoさんのサポートによって定量と組み合わせて分析するようになりました。やってみると、見える結果が全く変わりましたね。いかに今まで自分が狭いところばかり見ていたことに気づかされました。@Tsugutoさんとコラボレーションすることで、データの見方や正確性は大きく変わったように思います。

定量で当たりをつけ、定性でトリガーを探す

ー@Tsugutoさん、めちゃくちゃ頼りにされているんですね?

@Tsuguto:いやいや。ここまで話を聞くと、Analyticsチームが一方的に@chanuさんへアドバイスしているように見えるかもしれませんが、僕らとしても頼っている場面はものすごく多いです。ログ分析でターゲットを深掘りするときなんかは、@chanuさんに相談してばかりですし!

@chanu:(´;ω;`)ウッ…恐縮です(笑)。プロジェクトによって変わる部分も多いのですが、アンケートの設計から入ってもらうことが多いですね。私がたたきをつくって@Tsugutoさんや他のPMにレビューをもらって、定量部分と定性部分をすみ分けて設計しています。

ーユーザーインタビューなどで得た定性・定量の結果は、どうやってプロダクトに反映されているんですか?

@Tsuguto:明確に表現すると、以下のようになります。

・ 定量・・・調査したいターゲットや領域を決め、インパクトを測るために活用
・ 定性・・・具体的な「ペイン」や「ドライバー」を示す/探すために活用

@Tsuguto:僕のイメージでは「定量で当たりをつけてターゲットを決める。そして、ターゲットを動かすドライバーを定性で探して、試した結果を定量で確認する」みたいなプロセスが理想です。先ほどの「Bold Camp」の話を例にすると、「メルカリにおいて、フードカテゴリが大事」と示すにはそれが事実かどうかを「需要が◯%足りていないことから、フードカテゴリが不足している」と数字(定量)を示します。確実にニーズがあることは、数字が表してくれますからね。

一方で、定量だけだと見えない部分があるのも事実。そのあたりの定性的な部分をインタビューやサーベイ、アンケードなど明らかにしていくのが、UXリサーチチームの領域です。「農家の方がメルカリを使わない理由や使っていただくために必要なドライバー」などは、定量だけでは辿り着けませんので。

あと、そもそも定量で示せると説得力がありますよね。インタビュー結果を見て「こんなことだと思うんです」だけだと納得してもらいにくいというか。

@chanu:まぁ、あまり耳を貸してもらえないですね(笑)。もちろん、定量は大事なのですが、それだけにならないようにUXリサーチだからこそできることを示していかなければいけないと思っています。そのバランスは、難しい。私個人は、リサーチャーに限らず、PMをはじめとするプロジェクトに関わりのあるメンバーがなるべく多くがインタビューに参加することが大事だと考えています。お客さまの生の言葉に触れれば、数字がなくてもちゃんと伝わるんですよね。

誰が実施してもある程度のクオリティが担保されるようにしたい

@Tsuguto:でもね、よく考えてくださいよ。今までほぼ一人でメルカリのUXリサーチを@chanuさんが担当していたんですよ。シンプルに大変だったに決まっているじゃないですか。当時からインタビューの数は多かったのに、よくやっているなと思いました(笑)。

@chanu:(笑)。今までは目の前のタスクに追われて、勉強会も後回しにしてしまっていたところがありました。@Tsugutoさんとご一緒するようになって、「いつやります?」と背中を押してくれたおかげで、先ほどお話しした啓蒙活動も実行に移せました!

ーUXリサーチの啓蒙活動は、まさにお2人が連携するようになってから始まったものですもんね!

@Tsuguto:多くのお客さまに使っていただいているからこそ、そのなかにある声は丁寧に拾い上げなくちゃいけない。だからこそクオリティの最低ラインは引き上げたほうがいいんですよね。いろいろな人がインタビューすると、どうしてもクオリティにばらつきが出てしまいます。誰がやっても最低限のクオリティを担保するために、冒頭でご紹介した啓蒙活動に取り組んでいるんです。

ーなるほど!

@Tsuguto:そしてメルカリは、サービス規模としてもとても大きいものです。小さな施策でもうまくいくとインパクトはすごく大きい。そうやって、小さな改善にもとことんこだわれるのは魅力ですね。

@chanu:私は、メルカリ社内にある「チャレンジが否定されない環境」が魅力的だと思っています。何をするにも「これをやろう」となれば、チームを横断して仲間が集まる。シンプルなんですが、メルカリほどの規模でこのカルチャーが根付いていること自体が貴重で、素晴らしいことだと思いますね。すごく働きやすい環境なので、もっともっと自分がやりたいことを実行していきたいです!

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