「データが好き」だけでは終わらせないメルカリ文化とは? 経営とプロダクトを“数字”で支えるBI×MLマネージャー対談

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木村俊也さん(写真左)、樫田光さん(写真右)

データドリブンになれるかどうかは、「数字に理解のあるメンバーがいるか」「数字をもとに施策を考える習慣があるか」ーー。

メルカリではプロダクトの機能改善はもちろん、経営やプロダクト成長戦略の意思決定でも「データ」を活用する文化があります。そんなメルカリをデータで支えているのが、Business Intelligence(以下BI)チームとMachine Learning(以下ML)チームです。

  • BIチーム・・・意思決定に必要なデータを分析し、提案する
  • MLチーム・・・メルカリにある大量のデータをAIに学習させ、サービスの利便性や付加価値を高める

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機械学習の進歩もあり、さまざまな場面で「データ活用」に注目が集まっています。そんな中、メルカリではどのようにデータを活用しているのでしょうか。

今回のメルカンでは、これまでデータと向き合い続けてきたBIチームの樫田光さんとMLチームの木村俊也さんが登場。メルカリでのデータの活かし方、そして樫田さんと木村さんのデータの向き合い方について語りました。

樫田光(Hikaru Kashida)
2016年にメルカリ入社、データ分析を通して国内/米国の両事業の企画支援・戦略立案を行う一方、BIチームのマネージャを務める。メルカリへのジョイン以前は、外資系戦略コンサル、スタートアップ取締役などでのビジネス経験を経たのち、データサイエンスに興味を持ち30歳でプログラミングの勉強を始める。好きな言語はPython。早稲田大学理工学研究科卒業、工学修士。Twitterアカウントは@hik0107


木村俊也(Shunya Kimura)
2007年よりSNS企業にて研究開発を担当。機械学習の知見を活かして、レコメンデーションエンジンやグラフマイニングエンジン開発を担当。その他、自然言語処理学の知見を活かした広告開発や マーケティングデータ開発にも携わる。その後、技術を統括する組織の責任者を経て、インフラからアプリまで幅広いマネージメントを経験。2017年より株式会社メルカリにて研究開発のオフィサーを担当し、AIを中心とした幅広い研究領域のリサーチを担当。

BIは内科医、MLは外科医

樫田:そもそもメルカリのBIチームとMLチームは、「データを扱う仕事」という意味で混同されがちなところがあります。特にBIチームでは外部の方や採用面接の質問で「機械学習の手法を使うことはありますか?」と聞かれることがよくあるのですが、木村さんのほうではどうですか?

木村:MLチーム側ではそれほど混同されることは少ないです。とはいえ、僕らのようにチームもミッションも分けられている企業はまだ少ないので、同じことをしている印象が強いのかもしれないですね。

樫田:実際にはやっていることがけっこう違う気がするんですよね。

僕らのチームそれぞれの特徴を例えて話すと、BIは内科医で、MLは外科医と表現することができる気がします。

BIチームは直接的にはプロダクトの開発や改修はしませんが「こうすればもっと良くなる」「ここが良くないので治すべき」といったように、プロダクトやサービスの健康状態を把握し、どういった薬(=施策)が必要なのかを判断します。つまり内科医的な 「診断能力」と「治療方法」を知っていることが一番の武器です。

一方でMLチームは、プロダクトの中に組み込まれるアルゴリズムを作る能力を持っています。そのため、なにかあれば外科手術のように直接プロダクトに触れ、状態を良くしていくことができます。

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木村:内科医と外科医…、すごくいい例えですね(笑)。しかし、チームもミッションも違う僕らだからこそ、連携を強めているところがありますよね。

AIや機械学習を扱うMLチームから見て、BIチームはデータのスペシャリストです。MLチームではあらゆるデータを使っていますが、それでも「必要としているデータが利用可能か」「このデータが最良かどうか判断できない」なんてことがあります。僕らの場合、BIチームのサポートがあり最良のデータが取得できます。

樫田:BIチームとしても、MLチームの存在はありがたいです。というのも、僕らはいろいろなチームの課題に対して分析をしているので、その中で「ここは機械学習を使ったらかなりの改善効果が期待できそう!」といった、施策のアイデアの種を見つけることがとてもよくあります。しかし、それはあくまでもアイデアであり、実装するためのスキルはないわけです。そんなとき、いつも木村さんに相談したりしているんですよね。

データ活用では、それぞれの分野の専門家に意見を聞いたほうがいい場面がいくつもあります。それでいうとメルカリには「テキストデータ解析に強い人」「画像解析に強い人」といろいろなメンバーがいますので、思いついたらすぐに話せる環境があっておもしろいですね。

木村:そうですよね。そういった意味でも、僕らは協力したほうがお互いにやりやすいんです。

「知る・理解する・予測する」ができて初めてデータドリブンと言える

樫田:メルカリではサービスの利便性や付加価値を高めるためだけでなく、プロダクトの方向性や経営に関する意思決定でもデータに基づいた判断を取り入れています。AIや機械学習が急速に進歩しつつある今だからこそ「データ活用」に注目が集まっていますが、そもそも会社が “データドリブン”な状態になるというのはそれほど簡単なことではありません。

データ分析を使ってできることは大きく言うと次の3つがあります。

  1. 知る・・・必要なデータが取得でき、可視化できている
  2. 理解する・・・そのデータがなぜそのような数字になっているのかを説明できる
  3. 予測する・・・そのデータからどういったことが起こるのかを予期できる

「予測する」は機械学習を使って実現できるようになった部分が多いですが、基本的にはこの3つが揃って初めて「データドリブンな会社」と言えると思います。よくあるパターンとしては最初の「知る」のステップでつまずいていたり、「なぜKPIが動いたのか」をブレイクダウンできていなかったりします。

その点、メルカリではBIチームである僕らが日々ダッシュボード上でプロダクトが今どういった数字になっているのかを出しています。それを経営陣やマネージャーだけでなく、ほかのメンバーも見ている。そして日々メルカリがどういった状態にあるかを把握し、次の施策を考えたりしています。

木村:とはいえ、「“知る・理解する・予測する”を実行してデータドリブンになるぞ!」と誰でもすぐにできるかというと、実はそうではなかったりします。

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僕は、データを扱う力=筋トレみたいなものだと考えています。普段からデータに慣れていないと、具体的にどういったものが必要なのかがわかりません。データ分析をする側はもちろん、依頼する側としてもなにを知りたくて、どういったデータを要求すべきなのかを理解していないとやりとりすら進みません。

樫田:そのとおりですね。なんの積み重ねもなく、一発ですごい分析結果を出して「よし、会社をこうしていくぞ!」と決められるなんてことはほぼありませんからね(笑)。

数字に理解のあるメンバーはいるか?

樫田:データドリブンになれるかどうかは、「数字に理解のあるメンバーがいるか」「数字をもとに施策を考える習慣があるか」など企業のDNAレベルの文化によるところも大きいです。それがないとデータ活用して仕事をするのは難しいと思うのですが、木村さんはどうですか?

木村:メルカリが「データドリブン」となっている大きな要素はそこにありますよね。メルカリでは3ヶ月に1回、データをもとにOKRを見直していますし、必要であれば自らデータ分析を行うメンバーもいます。数字が好きなメンバーが多いだけでなく、経営陣からの理解があるのもやはり強いです。

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そもそもデータでのやりとりには信頼関係が必須です。いくらBIチームが優秀でも、経営陣が「データ活用するぞ!」となっていないとプライオリティが上がらないまま終わってしまう。逆に、応用力のないBIチームだと、経営陣が本当にほしいデータを出すことはできない。

MLチームでも同じことが言えます。最近、MLチームではプロダクトチームと連携し、出品画像から商品名などを推定&自動入力する機能をリリースしています。これは、お客さまの出品に関する手間を少しでも減らしたいというニーズから誕生したものです。この意思決定に関しても、経営陣やマネージャーが「メルカリにはどういったデータがあり」「どう活用できるか」がわかっているからこそ実現したんですよね。

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今のメルカリは、経営陣とBIチーム・MLチームとの関係性ができています。だからこそ、BIチームに関しては経営陣の意図をくんだ適切なデータを提供することができ、MLチームではデータ技術を活用した新機能をリリースしている。でも正直なところ、こういった関係性を築くことはそんなに簡単ではないんですよね。

「データが好き」だけでは終わらないおもしろさ

樫田:僕はデータ分析する上で「分析結果を元に誰に提案するのか」を必ず意識しています。相手が経営陣ならどれくらいの粒度にしておくべきか…などですね。

最近では、データサイエンティストや機械学習エンジニアをやりたいという人が増えています。しかし、技術力が高いだけでは、意思決定に活かせるデータ分析はできなかったりします。そこで必要なのは「データ分析した結果をどう伝えるか」。そこまでできていないと、本当の意味でデータを活かせません。

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木村:それはMLチームでも近しいことが言えますね。例えば機械学習では「何をしたいのか」を明確に決めることが重要であり、そのための手法やアーキテクチャを選択できるセンスがないと正直難しいです。

樫田:ようするに「データはあくまでも手段である」という理解があるかですよね。僕らのようにデータを扱う人が陥りがちなものとして、新しい手法や技術にこだわりすぎてスピードを落としたり、そもそも使われない機能をつくってしまったりすることがあります。

木村:手法や技術はとことんこだわれるだけに注意が必要ですよね。それに、アウトプットによって選ぶべき手段も変わります。データ分析などに強いことは前提ですが、それはあくまでも手法であり、目的のために正しい選択をできることが必要です。

樫田:純粋に「データが好き」というだけでなく、いかに「データを使って何ができるのか」「どう届けたいのか」を考えられるかどうか。これを楽しめる人にとって、今のメルカリにある「データを扱う仕事」はとてもおもしろいと思いますね。

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