元財務官僚・辻木勇二が、メルペイを次なる挑戦に選んだ理由

「信用を創造して、なめらかな社会を創る」。テクノロジーの進化とともに「お金」に関するシステムや体験が変わりつつあるいま、新たな金融事業に取り組むメルペイは、こんなミッションを掲げている。お金にまつわるサービスをメルペイの生み出すプラットフォームひとつで完結する世界を目指し、日々奔走するチームの牽引役はいったいどんな人なのだろうか。今回お話を伺うのは、メルペイ取締役兼新規事業責任者の辻木勇二さん。金融業界に20年、インターネット業界に5年。銀行、霞が関(官僚)、IT企業という異色のキャリアを歩んできた辻木さんが、なぜ次のステージにメルペイを選んだのだろうか? 過去から現在を紐解きながら、辻木さんのメルペイに懸ける想いを伺った。

国籍、人種、貧困……あらゆる格差をなくしたい

ー銀行、霞が関、IT企業、そしてメルペイ……。メルカリグループには変わったキャリアを持つメンバーが多いですが、ここまで異色の方は珍しいと思います。まずはメルペイに入社するまでの経緯を教えてください。

辻木:どこから話せばいいでしょうか(笑)。まず高校二年生のときに、南北問題に関する本を読んで衝撃を受けました。先進国と発展途上国の間にある経済格差、それに伴う環境問題や貧困問題。同じ地球に生きるのに、こんなにも格差があることに大きな疑問と危機感を抱くようになったんです。それをきっかけに理系から文系に進路変更。大学では経済学部に進み、開発経済を学びました。

ーその後、東京銀行(現、三菱UFJ銀行)に就職しますよね。国連やJICAなど、国際機関に就職しようとは思わなかったんですか?

辻木:おっしゃる通り、国連や世界銀行で働きたいとずっと思っていましたが、当時は英語ができず断念(笑)。でも、いずれ途上国の援助に関わりたいという想いはあったので東京銀行に入行しました。

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メルペイ取締役 辻木勇二さん

ー銀行では何をしていたのでしょうか?

辻木:支店業務を経験した後、シンジケートローンを担当していました。これはお客さまの資金調達ニーズに対して、地銀や生損保など複数の金融機関を取りまとめて、貸し出しを行う融資形態なんですが、わたしの担当がインドと中国だったんです。そこで金融の知識と同時に語学力も付き、なんとか英語を話せるようになって。その後、2年間のアメリカ留学を終えて日本に帰国。帰国するや否や、上司からアジア開発銀行への出向を命じられ、本部のあるフィリピンへ向かいました。

ーアジア開発銀行といえば、世界銀行のアジア版というイメージです。

辻木:途上国の経済発展に貢献するための国際機関なので、わたしが高校時代から抱いていた夢が叶うチャンスでもあったんです。アジア開発銀行では、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、ラオスで構成されるメコン地域のインフラ開発をする部署に配属となり、発電所や高速道路、水処理施設などの建設資金のファイナンスを担当していました。イタリア人の環境専門家やバングラディシュ人のエコノミスト、フランス人のエンジニアなど、専門や国籍、年齢がまったく異なるメンバーがお互いを尊重しながらミッション達成に向けて頑張るわけですが、それがとても刺激的で。アジア開発銀行には約6年いましたが、その後も発展途上国の開発に携わりたいと考え、銀行には戻らず財務省に転職しました。

ーアジア開発銀行への出向が人生の転機になったんですね。しかし、なぜ官僚、しかも財務省なんでしょうか?

辻木:財務省の国際局に開発金融専門官として入省し、地球環境問題や気候変動対策を推進するグローバル基金の拠出運営をすることになったんです。プロジェクトの管轄は経済産業省や環境省、国土交通省など幅広いのですが、各省庁が基金をもとに国連機関や世界銀行などと一緒にプロジェクトを実施するんですよ。各省庁や国際機関との連携を密に図り、プロジェクトをリードする役割だったので、アジア開発銀行での経験が活かされましたね。国連の気候変動枠組条約(COP)の日本政府代表団として国際交渉に従事したり、途上国支援の企画立案にも携われ、何にも代えがたい経験とやり甲斐を得ることができました。

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グリーとヤフーで感じた、インターネット事業の難しさと可能性

ーアジア開発銀行と財務省のご経験までを伺うと、十分に夢や目標を叶えられたようにも思えますが、さらにインターネット業界にチャレンジするわけですよね。

辻木:財務省での仕事はとても充実していました。その一方で、世の中にインターネットがものすごいスピードで浸透していく光景を目の当たりにして、大きな可能性を感じたんです。当時、途上国へ出張にいくと、ネットカフェが多くの人で溢れていて。インターネットに対する人々の関心の高さを痛感しました。これまではインフラ開発の側面から途上国に尽力してきましたが、これからはインターネットを使ってアプローチしてみよう。そう思ってグリーとヤフーで経験を積みました。

ーグリーでは何をしていたのでしょうか。

辻木:当時のグリーはゲーム事業とは異なる分野の事業を伸ばそうとしていた時期でした。そこで、わたしは非ゲーム分野の新規事業の開発担当として、ブランド品買取サービス「uttoku」、住まいメディア「LIMIA」の2つのサービスの企画、立ち上げを行ったんです。自分のバックグラウンドとはまったく関係のない分野やサービスでしたが、当時はインターネットビジネスがどのように成立しているのか、とにかく学ぼうと必死でしたね。ECマーケティングやSEO、コンテンツ制作などネット事業に関することなら何でもやっていました。その後、ヤフーでは金融事業の新規事業を考える部署を任せてもらえて。グリーで得たインターネットの知見と、これまでの金融業界で得た経験を掛け合わせるかたちで、金融事業にコミットしました。

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ーヤフーでは約2年間にわたり金融事業に取り組み、その後メルペイに入社するわけですね。

辻木:はい。メルペイを立ち上げた当時、青柳直樹さん(メルペイ代表取締役/元グリー取締役)が「メルカリ・メルペイのスピード感はやばい」と仰っていて。グリーの急成長に貢献してこられた青柳さんが速いと感じるレベルとは、どのような環境なんだろうと純粋に興味があったんです。また、さまざまなレガシーシステムが残る金融業界において、メルペイが思い描く「信用を創造して、なめらかな社会を創る」というミッションは、そのシステムをアップデートしてくれるサービスだと感じられました。日本に銀行ができて約100年。新たな金融の歴史をメルペイでつくりたいと決意し、会社の門を叩きました。

「自分たちにしかつくれない金融」 の答えを出したい

ー今年の3月にメルペイに入社した辻木さんですが、これまでの期間は何をしてきたのでしょうか。

辻木:経営企画室の室長として入社しましたが、基本的には何でもやりましたね。予算づくりから銀行交渉、財務会計、新規事業の戦略づくりなど、関わる業務は多岐にわたります。メルペイでのわたしのミッションは「新しい金融のかたちをつくること」だと思っているので、部署や役職にとらわれず、貪欲に担当しました。現在は決済サービスの次にチャレンジする新規金融事業の開発準備に専念しているところです。

ーこれまで官民両方のフィールドで活躍してきた辻木さんですが、メルカリグループや人の雰囲気はいかがですか。

辻木:霞が関で働く官僚たちは「もっとこうしたい」「こうなりたい」という熱い想いを持っている人が多いんですよ。やはり国を背負って働いている人たちなので、「この国をなんとかしたい」という熱量(Will)のある人が多い。そういう意味では、手段(How)が異なるだけで、共感できる部分は多いと思いますね。しかもメルカリは思考するだけでなく、実際に現場で手を動かすことも大切にしているじゃないですか。それは人から見えない場所で泥臭い仕事をしている官僚と通ずる点ではないかと。両者とも、高い志とモチベーションを持って仕事をしていると思いますね。

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ー官と民では、一般的に利益に対する価値観や考え方が異なるようにも思いますが、国や社会を良くしたいという根底は一緒なんですね。他に何か気づいた点はありますか。

辻木:エンジニア職の割合が多く占めるメルカリグループらしさかもしれませんが、クリエイター魂というか、ものづくりのエネルギーで満ち溢れている人が多い印象を受けました。キャリアや年齢に関係なくプロフェッショナルなところ、そして個性が際立っていながらも「All for One(全ては成功のために)」なところもメルカリらしさではないでしょうか。上意下達の金融組織のなかには、なかなかいないタイプの人たちだと思います。あとは、なんといっても会社のミッションやバリューが社員に浸透しているところ。「All for One」と口で言うのは簡単ですが、体現することって難しいじゃないですか。でも一人ひとりがプロジェクトの主導権を握って「これをやるんだ!」と意志を持って進めている。それは会社のバリューを自分ごと化できている証拠ではないかと。社内に起業家が多くいるのも、納得しました。そんな人たちと一緒に働けているなんて、自分は幸せ者だと思いますね。

ーでは最後に、辻木さんのメルペイでの展望について教えていただけますか。

辻木:わたしは社内の仲間に「良い金融とは何かを考え、新しい価値を届けよう」と日々話しています。お客さまときちんと向き合いながらながら、なめらかな社会をつくっていくためにはどんな金融が必要なのか。金融には資産運用やレンディング、保険といった多くのサービスがあります。それらを社会に実装していくためには、金融の良し悪いを見極め、テクノロジーの進化に合わせた開発や発想が求められる。自分たちにしかつくれない良い金融とは何かという青臭い議論を真剣に重ねながら、メルペイらしいサービスをつくっていきたいですね。そういう人たちが集まる魅力的な組織をつくることも、わたしの重要な役割だと思っています。これからのメルペイに期待してください。

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プロフィール

辻木勇二(Yuji Tsujiki)

株式会社メルペイ取締役兼新規事業責任者。元財務省開発金融専門官。財務省よりグリーに入社し新規事業を担当。グリーでは住まいメディアプラットフォーム『LIMIA』や中古ブランド品買取サービスの立ち上げに従事。その後、ヤフー金融部門の新規サービス部長等を経てメルペイの新規事業責任者に就任。タフツ大学フレッチャー法律外交大学院、アーサーD.リトル経営大学院(現Hult IBS)にて修士取得。仕事以外にも、北海道十勝郡浦幌町での地方創生プロジェクト「うらほろWork Camp」や、大田区京浜島で開催されるアートイベント「鉄工島フェス」の運営支援など、幅広く活動を行う。

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