一人ひとりのパフォーマンスを評価したい。メルカリが新人事評価制度に込めた願いと覚悟

※本記事は2018年10月時点を参照しています。2019年8月時点では、より明確なフィードバックの実現、および人事データの活用を目的として、「レイティング(ただし、一人ひとりの成果/成長に応じた絶対評価)」を実施しています。最新情報に関しては採用チームにお問い合わせください。

社員の能力や成果にランク付けを行わないシステム「ノーレイティング」。昨今、ランク付けによる評価制度は従業員のパフォーマンス向上やビジネスのコラボレーションに結びつかないと指摘する声が多く、欧米企業を中心にノーレイティングを推奨する動きが加速しています。

そんななか、メルカリは2018年1月に人事評価制度を刷新し、「ノーレイティング」「絶対評価」を評価制度へ明確に盛り込みました。制度刷新後、改めて向き合うべき課題が明確になってきた今、刷新の立役者の一人であるPeople Experience(以下、PX)高橋寛行にインタビューを実施。制度をつくるまでの背景や運用状況について伺うと、世界に通用するテックカンパニーを目指すメルカリならではのポリシー、そして実現したい企業像が見えてきました。

個人のパフォーマンスを最大限に評価するメルカリへ

ー早速ですが、新人事評価制度の内容について教えていただけますか?

高橋:はい。新しい評価制度を一言で表すと、メンバーをよりパフォーマンスで評価するための制度です。メルカリが大切にするバリューのひとつに「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」という行動指針がありますが、まさにプロフェッショナルとして個人のパフォーマンスやバリューの体現などをきちんと評価する仕組みを制度化しようと決めたのが、新評価制度の目的ですね。

f:id:mercarihr:20180912165643j:plainPeople Experience 高橋寛行

ーメルカリのバリューにきちんと沿った制度なんですね。具体的には何が変わったのでしょうか?

高橋:メンバーの一人ひとりをレイティングせず、絶対評価することを明確に制度へ盛り込みました。これはメルカリの経営陣の社員に対する想いと密接に関わっています。そもそもレイティングというのはメンバーに「S評価」「A評価」「B評価」など、ランクに分けて評価すること。組織が1,000名を超えてくると、評価者にかかる人事評価のためのコストや権限委譲を名目に事業部単位やチーム単位に原資を分配し、与えられた原資のなかで評価する手法をとることは珍しくありません。でも、メルカリの場合は昇給額に原資を設けていません。あくまで個人のパフォーマンスで評価される仕組みをつくろうと思ったのです。

f:id:mercarihr:20180914192717j:plainメルカリの人事制度の大方針

ー原資ありきの「トップダウンな評価」ではなく、個人のパフォーマンスがベースとなる「ボトムアップな評価」をより明確にしたのですね。他に変わった点はありますか?

高橋:「グレード」と「マネジメント職」を紐付けず、切り分けたことでしょうか。

ーというと?

高橋:これまでは、(エンジニア職以外)一定のグレード以上になるためには「マネジメント職」になる必要がありました。これを今回、全職種においてグレードとマネジメント職の関連を切り分けることにしたんです。「役職で仕事をしない」という言葉をメルカリの経営陣はよく口にしますが、マネージャーとは組織のパフォーマンスを最大化するという「役割」であり、「職位」ではない。メンバーを束ねるマネジメント力が長けていれば、マネージャーになればいいし、逆にプレイヤーとして高みを目指したいと考える人は、その役割のままグレードを上げることができる。それによって自分のキャリアの選択肢が広がり、引いては組織で活躍する人材を増やすことにつながるんですよね。これも新評価制度の大きな特徴だと思います。

f:id:mercarihr:20180914192720j:plainグレードとマネジメント職の関係

大切なのはマネージャーとプレイヤーの「納得感」

ー新しい評価制度ができたとはいえ、重要なのは運用後ですよね。

高橋:その通りで、さまざまな課題を日々抱えながら運用しています。運用のフローとしては、まず1次評価者であるマネージャーがメンバーの評価を行い、その評価をもとに2次評価として他マネージャー同士で「評価キャリブレーション」という会議にかけられます。1次評価者が恣意的に評価をしていないか、その評価に妥当性があるかを相互に確認し目線合わせを行うんです。

ー第三者目線での評価も欠かさず行うんですね。運用するなかで課題は見つかりましたか?

高橋:課題は山積みですが、大きく分けて2つあります。まずは、マネージャーが昇給額を「評価キャリブレーション」へ提案する際、決められた上限額や昇給率がないだけに、その金額にロジックや基準を持たせにくいこと。

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ーたしかに、評価額にルールがないだけにマネージャーは評価しづらいですよね。

高橋:そこで求められるのは評価者であるマネージャーの「マーケット感覚」。とてもシビアな話ですが、それぞれのメンバーが市場価値としてどのくらいなのかを考えるということです。そのための視点や知識が必要になるノーレイティングは、マネージャーにとって難易度の高いシステムであることは間違いないと思います。そして2つ目は、キャリブレーションコストが多くかかってしまうこと。社員数の増加に比例して、この課題は根深くなるのではないかと思っています。

ーそれでもキャリブレーションをやり続ける理由は何なのでしょうか?

高橋:はい。人事評価において最も重要だと思っていることは、メンバー自身の「納得感」だと考えています。どんな手法をとっても、最終的にメンバーが評価に対して「納得」すればいい。それを追い求めるために必要なことはすべてやりたいと思っています。またキャリブレーションにおいて他のマネージャー目線でみた評価や指摘を受けることで、より精度の高いフィードバックができるようになります。もちろんキャリブレーションコストは多くかかってしまいますが、「納得感」を得るためには続けていくべきだと考えていて。もちろん、その手法に関する効率化は、今後改善しなければならない課題だと思っています。

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「茨の道」の先に見える景色を目指して

ーそもそもメルカリがノーレイティング、絶対評価を取り入れられた要因は何だと思いますか?

高橋:そうですね。要因は2つあると思っています。1つは経営陣のメンバーに対する想い。メンバーそれぞれのパフォーマンスに応じて、見合った評価を適切に行いたい。それが何らかの給与テーブルや指標によって制限を受けてしまうものにはしたくなかったんです。もう1つはメルカリのカルチャーです。先ほども触れたバリューにもある通り、プロフェッショナル志向を持つメンバーが多い会社なので、アウトプットやパフォーマンスで評価されることに馴染みと納得感があったのだと思います。

ー経営の想いとメンバーの意識が揃ってこその制度なんですね。

高橋:そうですね。正直、ノーレイティングや絶対評価を採用することは人事だけでなく評価に携わる人たちにとって「茨の道」です。それは実際に運用してみて、より痛感しています……。レイティングや原資分配を取り入れた評価をすればキャリブレーションコストはかからないし、評価に手戻りが少ないので評価者だけの側面でみれば楽に感じるかもしれません。でもメルカリは個人のパフォーマンスを最大限に評価する会社でありたい。この経営陣の想いは、メンバー全員が理解していると信じています。

ーそれでは最後に評価制度の展開について教えていただけますか?

高橋:まずはグローバルにおける評価制度の導入ですね。これまで話してきた内容は日本だけの評価制度で、現在はグローバルで運用する制度づくりを行っています。今後は今以上に出向や異動などの動きが活発になることが予想されます。そうなるとメルカリグループとして評価制度を統一する必要が出てくる。日本のようにノーレイティングで評価していくのか、それともレイティングで評価していくかなど、まさに議論をしている真っ最中です。

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ー手段は変われど、目的は一貫しているんですね。

高橋:今はノーレイティングと絶対評価を採用していますが、重要なのはこれに固執しすぎないこと。常にベストな評価制度を選んでいくべきで、ときには既存制度を捨てて新しい制度につくり変えるという気概や覚悟も必要だと思っています。これからも、より「納得感」を持ってメンバー全員が働けるような評価制度を目指し続けたい。正解はありませんが、常にメルカリらしさを追い求めていきたいですね。

高橋寛行(Hiroyuki Takahashi)

大学卒業後、新卒で株式会社インテリジェンスに入社し、人材紹介業に携わる。株式会社ミクシィにて人事キャリアをスタートさせ、エンジニア中心の採用に従事。その後、株式会社コロプラの人事労務マネージャーとして新卒・中途採用のほか、制度企画・労務等の人事全般を経験し、2016年より現職。

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