メルカリUS CTOが明かす、データと機械学習の組み合わせが生む価値交換の最適化「Mercari Tech Conf 2018」レポ

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2017年からスタートしたメルカリが主催する「Mercari Tech Conf(MTC)」。「Mercari Tech Conf」とは、メルカリをはじめとするメルカリグループ各社が、これから目指す方向や取り組む技術的なチャレンジについて紹介する技術カンファレンスです。

第2回目となる今回は「Evolution(変化)」をテーマにこの1年間でメルカリグループ内に起こった、もしくは起こりつつある変化が紹介されました。

基調講演の2番手として登壇したのは、メルカリUSのCTOを務めるDr. Mok Oh(以下、Mok)。メルカリに蓄積されている膨大なデータに機械学習の技術を掛け合わせると、どうなるのか──。

「キャンセルされる確率や商品の売れやすさ、それからシャツが好きな人が靴を好きになる可能性も分かるようになる」と話す、Mok。メルカリUSにおけるデータと機械学習の取り組みの先に見える未来とは?

売り手と買い手をつなげる「データ×機械学習」

メルカリ創業から1年後。2014年4月に米国子会社「Mercari, Inc.」は立ち上がりました。2014年9月のUS版メルカリの提供開始から、わずか3年弱でダウンロード数は3,000万ダウンロードを突破。

2018年3月には、ロゴ、アイコン、アプリUI(ユーザーインターフェース)、Webサイトデザインを一新。さらなる成長を見据え、抜本的なリブランディングを実施しました。

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Dr. Mok Oh(メルカリUS CTO)

そんなUS版メルカリのCTOを務めるのが、Dr. Mok Ohです。MokはPayPalチーフサイエンティスト、サムスン電子副社長(韓国、スウォン)を歴任したほか、12の特許保持者でもあります。基調講演ではUS版メルカリにおける、売り手と買い手が価値のある商品を発見して交換できるサービス「Mercari Engine」、そしてそれを実現するためのデータと機械学習技術について語りました。

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バイヤーにおけるカスタマージャーニーの図

まず、Mokが語ったのは売り手と買い手のカスタマージャーニーについて。買い手は欲しいものがあったら、メルカリ内で検索し、欲しいものが見つかったら購入する。Mokは「非常にシンプルです」と語る一方で、「メルカリでユニークなのは売り手のカスタマージャーニーです」と言います。

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セラーにおけるカスタマージャーニーの図

「売り手は売りたいものを出品した後、買い手となってくれる人が見つからなければ、売ることができません。カスタマージャーニーにおける、売り手の『売る』という目的を達成するためには、いかに買い手とマッチングさせるかが大事。そこで重要な役割を担うのが『データ×機械学習』です」(Mok)

機械学習によってマッチング率を向上させる

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2017〜2018年におけるGMV(総流通総額)の推移

「メルカリにはたくさんのデータが蓄積されています」と言い、Mokがスライドに映したのがアメリカ国内における、US版メルカリの1年間のGMV(総流通総額)の推移。これを見ると、さまざまな地域で取引されていることがわかります。

各地域におけるGMVの推移のなかで、もっとも伸び率が高かったのがテキサス州ヒューストンです。Mokは続けて、ヒューストンでのトランザクション(取引)のデータを紹介しました。

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ヒューストンにおけるトランザクション(取引)データの推移

このような、たくさんの取引によってメルカリのデータベースには売り手や買い手の基礎情報や出品履歴、購買履歴、好みといったデータのほか、1億もの商品データが蓄積されていきます。こうしたデータを機械学習と組み合わせ、売り手と買い手の価値交換を行いやすくしているのです。

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大量のデータと機械学習を組み合わせ、価値交換の最適化を目指している

「データは機械学習の技術を使わなければ、ただただ使いづらいもので終わってしまいます。ですから、メルカリではfMLという機械学習の技術によって、さまざまなことをできるようにしています」(Mok)

具体的な取り組みのひとつとして、Mokの口から語られたのがfML Genome Engineです。「これは非常にシンプルな仕組みです」と言い、説明を続けていきます。

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「これは『f(input)=output』という関数に基づいたものです。inputはメルカリに出品されている商品のこと。商品から人間が読み取れる値段やカテゴリー、サイズ、重さといった情報を、N次元ベクトルとして機械が読み取れるように変換していきます」(Mok)

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N次元ベクトルとして機械が読み取った際の商品のクラスタリング

それによって可能となるのが、大量の商品のクラスタリングです。この関数を使うことで、例えばシャツが好きな人は、靴が好きな可能性は78%だが、パソコンが好きな可能性は12%というデータの分析予測ができるようになります。

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シャツが好きな人が靴を好きになる可能性、パソコンを好きになる可能性がわかる

「このシャツを気に入った人は、この靴も気にいるのではないか。そういった情報も、データと機械学習を組み合わせることで収集できるようになります」(Mok)

もちろん商品だけでなく、売り手と買い手の情報もインプットしていきます。そうすることで「もっとも優秀な出品者と似ている人はどのような人か」が分かるようになるのです。また、どのような商品を出品するかも予測できるようになります。

「こうした技術を駆使することで、男性・女性でそれぞれ伸びそうなカテゴリーはどこかも把握することが可能です。例えば、男性の場合、テクノロジーカテゴリの商品がよく売れて、コレクションアイテムや住宅関連のカテゴリが今後、伸びていくことが予測できるようになります」(Mok)

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男性・女性でそれぞれ伸びそうなカテゴリーはどこかも把握することができる

「予測」とは質問することである

続けて、Mokが語ったのは「予測」について。「予測とは質問をすること」と言い、US版メルカリでは「72時間以内にどのようにこのアイテムを販売可能?」と質問を投げかけ、商品データをもとに売れやすさのスコア付けをしていきます。

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売れやすさのスコアの分布図

「このスコアによって、例えば何か出品された際、『この商品は今のままでは売れづらいので何か画像を足してみてはいかがですか?』といったアドバイスができるようになります」(Mok)

その他にも、買い手にキャンセルされる確率はどれくらいか。これも質問を投げかけ、出品された商品のなかからキャンセルされた商品の割合を抽出。それをもとにスコア付けすることで、キャンセルが発生しそうな場合にはあまりプッシュしない、ということもできるようになるのです。

「こうした演算をもとに、さまざまな質問を投げかけることで偽造商品の割合や出品者のチャーンレート、その出品者は他にどんな商品を出品する可能性があるのか、商品を出品したときにそのユーザーが商品を買う可能性はどれくらいかといった予測ができます。これを実現するために必要なのはデータと機械学習なんです」(Mok)

いよいよ基調講演も終盤。Mokが最後に語ったのはメルカリUSの「人」、そして「カルチャー」でした。

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メルカリUS社員の集合写真

「これまでデータと機械学習の話をしてきましたが、それを支えるためにもっとも重要なものが『人』と『カルチャー』です。ポートランド、パロアルト、ボストンにあるオフィスには熱意のあるメンバーたちが働いています。またテクノロジーのアドバイザーとしてMITの教授も参画。どんどんユニークな仲間が増えています」(Mok)

メルカリUSのチームは買い手と売り手のカスタマージャーニーに合わせて構成されています。すべてのチームが境界線を越えて、シームレスに連携することでデータと機械学習を掛け合わせた魔法のような体験を生み出すことができるのです。

「人とカルチャーがあることで、データと機械学習の掛け合わせが可能になり、そして最終的に売り手と買い手が価値のある商品を発見して交換できるようになる。そんなサービスを『Mercari Engine』が実現します」(Mok)

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もっと出品しやすく、もっと売れやすく、もっと買いやすく──最先端のテクノロジーを活用した、US版メルカリのEvolutionはこれからも続いていきます。

登壇者プロフィール

Dr. Mok Oh
メルカリUS CTO。EveryScape創設者、Where, Inc. CIO、ノースブリッジベンチャーキャピタル客員起業家、Moju Labs共同創設者兼CEO、PayPalチーフサイエンティスト、サムスン電子副社長(韓国、スウォン)を歴任。Mok氏はオバーリン大学で学士、ペンシルベニア大学で修士、そしてマサチューセッツ工科大学で博士号を取得。

プレゼンテーション映像


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