「コンプライアンスは企業の成長武器になる」メルペイ鈴木秀俊

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「コンプライアンス」。一般的に「法令遵守」と訳されることが多い言葉ですが、今や法令だけにとどまらず、企業の内規から社会的規範、モラルまでも意味し、その解釈は年々広がりつつあります。コンプライアンスと聞くと、「ルールに従うこと」「社内を取り締まること」といった「守り」のイメージを持つ人も少なくないのではないでしょうか。しかし、それだけがコンプライアンスの機能や役割ではありません。コンプライアンスとは企業のプレゼンスを高め、事業をスケールさせる、いわば「攻め」の後方支援を担う要でもあり、経営の最重要課題のひとつとも言えるのです。

今回お話を伺ったのは、メルペイにコンプライアンス担当としてジョインした鈴木秀俊。証券会社でのリテール営業からキャリアをスタートさせ、オンライン証券会社で新規事業、外資系金融機関では内部管理態勢の構築を担当。コンプライアンスに関わりはじめ、足掛け約10年。そんな彼が、なぜ今メルペイを選んだのか。これまでのキャリアを紐解きながら、メルペイのコンプライアンスならではの役割や特徴、そして「新しい金融」に懸ける想いを伺いました。

個人の小さな意志が会社を大きく変えた原体験

ー鈴木さん、本日はよろしくお願いします。まず簡単にこれまでのキャリアについて教えていただけますか?

鈴木:はい。大学卒業後に大和証券へ入社し、主にリテール営業を担当していました。しかし私が入社した1997年は、四大証券会社の不祥事が発覚した年で……入社後すぐに行政処分となり、営業停止を受けたんです。当時、私は大阪の難波支店で働いていたのですが、配属直後から何もすることがない状態でした。なので私の金融人生のスタートとコンプライアンスはともにあるといっても過言ではないですね。

ーそうだったんですか。波乱の幕開けですね……。

鈴木:そうですね。ただ、たまたま運が良く個人の成績は全国でもトップレベルだったんです。その結果、当時日本でもっともヘビーな支店と呼ばれていた三重県の津市に配属になって、そこでまたゼロから営業成績をコツコツと積み上げていきました。数か月間、営業成績は鳴かず飛ばず。正直もう辞めたいと思っていたのですが、あるとき転機が起きて。

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鈴木秀俊(メルペイ コンプライアンス)

ー何が起きたんですか?

鈴木:三重県の四日市を車でまわっていたら大型家電量販店を見つけてふらっと入ってみたんです。そしたら偶然、お年寄りを対象とした無料のパソコンセミナーが行われていて。当時はまだインターネットが普及されていなかったのですが、いよいよこれから波が来ると感じたんです。そこで閃いたのが、オンラインの口座開設でした。当時は未開拓の領域で、大和証券でさえもCD-ROMのキットだけが、辛うじてあるような状況で。そこで会社から了承を得て、キットを借り、その家電量販店にパソコンセミナーの講師をやらせてほしいと申し入れたんです。実際は営業ですね(笑)。

ーとてつもない行動力ですね……!

鈴木:土日の休日を利用して、実際にセミナーを行うと、パソコンが売れるだけではなく、口座開設も増えていって……結果的に最高の成績を出したんです。実はそれがきっかけとなり、大和証券とヤマダ電機が業界初の業務提携を結ぶことにつながるんですよ。そのときに思ったのが、大和証券のような大企業でも個人の意志やアイデアによって、大きく変化をもたらすことができるということ。それと同時に、今後オンライン領域は確実に拡大するだろうと実感しましたね。

ー会社の公認とはいえ、ほぼプライベートではじめたプロジェクトが業務提携につながるとは驚きです。

鈴木:真面目な自己紹介になってしまいましたね(笑)。仕事の話からは少し逸れますが、かつてプロのミュージシャンをしていまして。

ーえ? それは大和証券に入られる前ですか?

鈴木:いいえ、大和証券を退職した後です。大好きな音楽に集中して取り組もうと思い、大和証券を辞めたんですよ(笑)。

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ー「音楽好き」という噂は伺っていましたが、まさかプロのミュージシャンをされていたとは。

鈴木:二歳半からピアノを習いはじめ、ずっとピアニストを目指していたんです。でもある時、病気を患ってしまい、ピアニストを諦め、それからは楽曲づくりに専念。某大手レコード会社が主催する音楽オーディションで優勝したのが転機でした。それから名だたるアーティストの方々に楽曲提供させていただき、ライブでマニュピレーターとしても活動していましたね。

ー実際に楽曲もリリースされているんですね!

鈴木:そうです。当時は自分のレーベルを持っていたので、素人のミュージシャンをプロまで育てあげるというプロデュース業もしていました。6年くらいはプロのミュージシャンとして働いていましたね。

ーすごい経歴ですね。それから再び金融機関に戻られるわけですが、どんな背景があったのですか?

鈴木:厳格な家庭で育った影響もあり、証券会社を辞める際に「成功しようが、失敗しようが、音楽は30歳まで」と決めていたんです。なので、逆に20代は楽曲づくりに本気で取り組めました。おかげさまで、これまで200曲以上の楽曲をつくれましたし、やりきったと思えたので一切悔いはないですね。 

ー潔いですね。それから外資系金融機関に転職されるわけですね。

鈴木:はい。昔から英語が好きだったこともあり、外資系金融機関であるシティバンクに入行しました。入行直後は大和証券の時と同様、リテール営業を行い、その後はセールスマネージャーを担当。全国の支店長のサポート業務や若手セールスマンの教育などをしていました。

ー本格的にコンプライアンス担当として、ジョブチェンジするタイミングはいつだったのですか?

鈴木:シティバンクの退行後です。それからマネックス証券(旧オリックス証券)に転職するのですが、今はなき「大証FX」の立ち上げをしたのが実は私で……。当時、「くりっく365」という東京金融取引所が上場した外国為替証拠金取引が脚光を浴びていて、それに対抗するかたちで立ち上がったのが「大証FX」でした。その他にもアメリカの企業と手を組み、「グローバル・フォレックス・トレーディング」という「CFD」という差金決済を根付かせる取り組みなどもしていましたね。日本のマーケット拡大を目的に、民間企業を代表してさまざまな企業のコンサルティングを行っていたのですが、その時に法整備も行わなければならないので、金融庁や日本証券業協会などと綿密にやりとりをしていたんです。その頃から徐々にコンプライアンス業務も担当するようになっていきました。

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ーまさに金融における新しい事業をリードされていたんですね。

鈴木:そうですね。ひとつの事業を立ち上げるというよりも、日本の金融マーケットに新しい商品を持ち込むための環境づくりをしていました。でも当時は、官公庁から、歴史ある信用取引以外のFXやCFDなんて全く理解されなくて。そういう状況のなかで、いかに交渉を円滑に進めるかというのが私の役割でもありました。それから金融庁交渉などを主に担当。コンプライアンスの役割や領域を本格的に担うようになっていきました。その後は、金融庁から行政処分を受けたばかりのスタンダードチャータード銀行に入行。ビジネスコントロールのユニットマネージャーとして銀行の立て直しをやらせていただきました。

ーなかなか自ら手を挙げにくい仕事ですよね(笑)。

鈴木:そうですね(笑)。かなりチャレンジングな仕事でしたが、その分やりがいは大きかったですね。無事に立て直しもできて、ある程度の成果を残すことができました。

ーこれまで0から1をつくってきた鈴木さんが、マイナスから0にするという仕事を経験されるわけですね。

鈴木:まさにおっしゃる通りです。その後も、数社に渡りコンプライアンスの責任者をやらせていただく機会に恵まれ、どんどん知見を深めていきました。

「入社する気は全くなかった」意思を変えたメルペイ青柳の一言

ーそんな鈴木さんがメルペイにジョインしたきっかけは何だったのでしょうか?

鈴木:正直に話すと、メルペイに入社するつもりは全くありませんでした。フリマアプリには、なんとなく課題や問題も多いイメージを勝手に持っていて。でも深く調べてみると、目指すビジョンも面白いし、やれることが沢山ありそうと思いはじめて。徐々に興味を持ち始めたんです。

ーずばり決定打は何だったのでしょうか?

鈴木:青柳さん(メルカリ取締役兼メルペイ代表取締役)との面談ですね。そこで一気に体温が上がりました。

ーもしよろしければ、詳しく教えていただけますか?

鈴木:大変僭越ながら、初めて青柳さんにお会いしたときに、私がお伝えしたことがあって。ひとつは「転職する気は全くありません」ということ、そしてもうひとつが「メルペイのビジネス成功確率は20%くらいだと思っています」と。

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ー青柳さんはどんなリアクションでしたか?

鈴木:忘れもしませんが、「気が合いそうですね」と言われました。それから青柳さんが今向き合っていることや課題認識など、いろいろ教えてくださったんです。そのなかで特に印象的だったのは「これまでの金融のスタンダードをベースに考えたら、全く立ち行かない」ということ。「システムごと変えたいと思っているし、変えられるだけのパワーを持っている」と力説されて。その時に、今のメルペイの状況と私が証券会社時代にFXやCFDを担当していた時の状況がピタッと重なったんです。「自分にできるかもしれない」と、すごくワクワクしたことを覚えています。

ーなるほど。そこに共感したわけですね。

鈴木:そうなんです。誰よりも青柳さんがワクワクしていて(笑)。そんな青柳さんはメルカリの全ユーザーであるお客さまを本気でワクワクさせようとしている。「お客さまのため」というお決まりのスローガンが、ピュアにそのまま受け止められたんですよ。メルペイ、そして青柳さんなら信頼できると思い、転職を決意しました。

ー実際にジョインしてみていかがですか?

鈴木:これまでセールスやエンジニアをはじめ、さまざまな職種のみなさんとディスカッションさせていただきましたが、全員に共通するポイントがあって。それは自分たちの利益云々ではなく、「お客さまに何をしたらワクワクしてもらえるか」「自分たちのサービスによって世の中がどう変わるか」ということを常に本気で考えて働いていること。言葉は悪いですが「馬鹿なんじゃないの?」って思うほど本気なんですよ(笑)。入社して間もないですが、その感覚は日に日に強くなっている。青柳さんと同じモチベーションをメルペイメンバー全員が持っているんですよ。経営と現場がシームレスで、認識のズレを全く感じないのが、最初の印象でしたね。

ー他には何かありますか?

鈴木:メンバー同士がとてもフェアですね。これはメルカリグループ全体に言えることですが、みなさん「職位(役職)」ではなく「役割」で仕事をしている。成功するためであれば、相手が青柳さんであろうと部下であろうと一緒。言いたいことを言えるよう、フェアに向き合うことを大切にしています。これもメルカリらしさかもしれませんね。

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ー逆に、鈴木さんが課題だと感じた点はありますか?

鈴木:もちろん、沢山あります。正直に言うと、金融機関で当たり前とされていることが必ずしもできていない。そこに対しては一つひとつ改善している最中です。他方で、メルペイがひとつになって同じ方向に突き進むスピードやテンションに対して、時に逆行しなければならない難しさを痛感しています。簡単に言えば、内部管理態勢の構築や第二線(ディフェンスライン)の強化ですが、メルペイ独自の態勢があるため一筋縄ではいかない。つまり、この会社ならではのコンプライアンス体制をゼロからつくらなければならないと思っていて、それを構築することが、今の私の使命ではないかと。

ーコンプライアンス業務をするうえで、もっとも大切にしている価値観は何ですか?

鈴木:シンプルに「考え抜くこと」ですね。金融機関のコンプライアンス担当者の多くは、ちょっと勘違いしているなと思うことがあって。それは「自分たちだけが特別な知識を持っていて、社内を取り締ることができる偉い人」という勘違いです。社員に指摘をし、怒り、それに陶酔している人……それって本当に見当違いだと思うんですよ。私たちは企業という組織のなかの一員なので、会社が良くなるために何をすれば良いのかを最優先に考えるべき。なので対話やディスカッションを重ね、最適化を一緒に考えることが大切だと思っています。

ー確かに、伝え方やプロセスによって得られる結果も異なりそうですよね。

鈴木:そうなんです。例えば、赤信号を渡る人がいたとします。私はその人に渡らないよう説得したい。その時、どんな声をかければ良いと思いますか? 「道路交通法第7条違反です」と声をかけられたら、納得しますかね。私だったら「以前、ここで脇見運転したドライバーが悲惨な事故にあってね……」というように過去のケースを例に説得します。つまり同じ現象でも注意する側がどういう言葉をかけるかによって、守る側の意識って結構変わるんですよ。法律の知識をひけらかすのではなく、会社のため、引いてはお客さま、世の中のために考えることが大事だと思いますね。

ーそれはもしかすると、社内コミュニケーションだけではなく、社外コミュニケーションにも通ずることでしょうか?

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鈴木:おっしゃる通りで、例えば「金融庁対応」と聞くと一般的にメンバーが謝罪対応するというイメージがあると思いますが、私は全く違うと思っていて。「こんなにしっかりと内部管理を整えている遵法意識の高い素敵な会社なので、新しい事業をやらせていただけますか?」という金融庁に対する、ある種のプレゼンテーションの場ではないかなと。なので、そのために「積極的にコミュニケーションを図り、自発的に考える」ことは、コンプライアンスにとってもっとも大事なポイントではないかと思っています。

ーコンプライアンスと聞くと「守り」のイメージが強いですが、事業をスケールさせるための役割として大きな役割を担っているのですね。では、最後に鈴木さんの今後の目標について教えていただけますか?

鈴木:はい。新しい金融のモデルをつくろうとしているメルペイのビジネスには強く共感しています。その一方で、それをつくるためには、これまで「絶対」「不可避」と理解されてきた土台を丸ごと考え直さなければなりません。その土台なしに新たな金融モデルはつくれません。既存のガイドラインや法令を新しく解釈する必要も出てくる。そのためにコンプライアンス体制という機能は、ものすごく重要になると思うんです。

ーこれからが楽しみですね。

鈴木:うまくいかないことも、やらなければいけないことも山積です。でも、だからこそ楽しい(笑)。今後、会社が何かを成し遂げた時に「コンプライアンス部があったおかげです」と言ってもらえるような仕事をしたいですね。ぜひ楽しみにしていてください。

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プロフィール

鈴木秀俊(Hidetoshi Suzuki)
大和証券とシティバンク銀行で営業職及び営業管理職、オンライン証券で新規事業の起ち上げ責任者を経験。スタンダード・チャータード銀行など、邦銀及び外資系銀行で内部管理態勢構築の責任者として当局対応などを担当し、2018年メルペイに参画。

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