国会議員×官僚×ベンチャーが語る、イノベーションに必要な三者の役割『THE BUSINESS DAY 02』レポ

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2016年からスタートした、メルカリが主催する「THE BUSINESS DAY」。「THE BUSINESS DAY」とは、経営やコーポレート部門に携わるビジネスパーソンが知見を共有し合うカンファレンス。第2回目となる今回も、ビジネスの第一線で活躍するキーマンが一同に集い、「成長戦略」「組織マネジメント」「ロビイング」など、多岐にわたるテーマについてディスカッションを交わしました。

本セッションのテーマは、「次の成長戦略と政策形成におけるベンチャー企業の役割」。登壇者は、衆議院議員の平将明さん、経済産業省情報経済課長の松田洋平さん、一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長の佐別当(さべっとう)隆志さん、株式会社メルカリの城(たち)譲の4名。一見対極にある「政治・行政」と「ベンチャー企業」ですが、セッションはモデレーター・佐別当さんの「ベンチャー企業こそ、政治家や官僚、行政と付き合い方が大切になる」という一言で幕をあけました。

ベンチャー企業は、もっと政治・行政と接点を持つべき

佐別当:普段からベンチャー企業においては「テクノロジーで社会を変えること」を目指して頑張っていると思うのですが、フィンテックやシェアリングエコノミーといった領域に関しては規制の壁などが大きく立ちはだかります。海外では、規制を変えていくためにシェアリングエコノミー系企業では、グローバルで数百名のロビイストが動いているという話もあるほどです。それぐらい政治家や官僚、行政との関わり方を重要視している。そこで、本セッションがベンチャー企業も政治や行政の世界と接点を持つきっかけの場にできればと思っています。まずは、みなさんに自己紹介していただきましょうか。

:こんにちは。衆議院議員の平将明です。最近は、2年連続で自民党の成長戦略の立案と取りまとめをしています。その前は石破茂地方創生担当大臣兼内閣府特命担当大臣のもとで、副大臣として地方創生、国家戦略特区に加え、IT戦略やイノベーション、サイバーセキュリティといった政策も担当していました。本セッションのテーマであるベンチャー企業と政治の接点についてですが、最近は間違った方向へ進んでしまっているケースを多く目にするんですよね。「アメリカではこうです」「中国ではこうです」という海外の事例をお話しいただくことがあるんですが、そもそもの仕組みが違うのですぐに真似することはできない。ですので、現実的に進めていくためにはどういうことが重要なのかというお話をしたいと思います。

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衆議院議員 平将明さん

佐別当:そうですね。たとえば、与党が法律を変える力を持っているのに、野党に積極的にロビイングしたり、規制官庁に直談判して「No」と言われてしまったり……といったケースもあると思います。どのような順番で、どうアクセスしていけばいいのかについても伺いたいと思います。次に、松田さん、城さん自己紹介をお願いします。

松田:経済産業省の松田です。普段は、産業におけるAIやIoTの活用のプロモーションを担当しています。そのなかで、 新しいテクノロジーを持っており成長スピードの速いベンチャー企業には政策形成においてすごく期待をしています。 毎年6月に成長戦略は決まるんですが、今年はサンドボックス制度( 現行法の規制を一時的に止めて新技術を実証できる制度 )をはじめとする「ベンチャー支援」に関するテーマが多く含まれています。政府内でどのように議論が行なわれているのかはぜひご参照いただき、我々も積極的にコラボレーションしていきたいと考えています。

:メルカリのリーガルグループで政策企画を担当している城です。実は大学卒業後、12年ほど国土交通省で働いていました。ですので、今でも成長戦略については興味を持ってチェックしているのですが、ここ10年ぐらいで大きく変わってきている印象を受けます。フィンテックの台頭によって、ベンチャーの支援、活躍の誘導・整理といったテーマのボリュームが増えてきていて、今これを活用しない手はないんじゃないかと思うほどです。ベンチャー企業は新しいことをどんどんやっていくのに、役所の言語や文化の壁によってかたちにならないのはものすごくもったいない。そこで、ベンチャー企業と役所をつなぐ役割として、4年前からメルカリで法務とロビイングを担当しています。本日は平さんと松田さんにいろいろ教えていただきながら、今後につなげていきたいと思います。

佐別当:ありがとうございます。ここ最近、城さんのように元官僚の方がベンチャーに転職するケースが増えてきていますよね。そういった流れも最近の特徴だと思います。

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一般社団法人シェアリングエコノミー協会 佐別当隆志さん

アクセスすべき政治家・省庁をきちんと見極めよう

佐別当:では、本題に入りましょう。ベンチャー企業はベンチャー企業なりに行政に対して一生懸命アプローチしているんですが、平さんと松田さんから実情について伺いたいと思います。

:まず、日本と海外の法律についてご説明しますね。たとえば新しいサービスを社会実装しようとしたとします。アメリカやイギリスの法律は英米法なので「やってはいけないこと」が書いてある。だから、アメリカやイギリスのベンチャー企業は「やってはいけないこと」でなければとりあえずやるわけです。ところが、日本やドイツの法律は大陸法なので「やっていいこと」だけが書いてある。つまり、新しいテクノロジーを想定した法律ではないんです。ベンチャー企業には本当にがんばってほしいのですが、「じゃあ、どうすればいいのか」についてはわかりませんよね。

:規制省庁の運用範囲でなんとかできる場合は規制省庁へ問い合わせをすればいいのですが、イノベーションに関することは法律に書かれていない。そのため、規制改革や成長戦略に関わっている国会議員のところへ行かなければならないんです。どういう国会議員がいいかというと「選挙に強くて、自民党の主だった団体や議員と議論できるような人」ですね。具体的には、民泊やライドシェアリングなどを進めようとすると反対してくる団体があっても、日本のマクロ経済や人手不足を考えて「やるべき」だと強く言える人たち。そういう人たちにアクセスするのが一番効果的だと思います。実は、規制改革や成長戦略に関わっている国会議員って10人くらいなんです。彼らにきちんとアクセスして、課題を伝えることが大事だと思いますね。

佐別当:おっしゃるとおりですね。今ロビイングの先輩たちにいろいろアドバイスいただくことが多いんですが、国会議員がどういう派閥で、どういう委員会に属していて、どの政策を支持していて、どのような選挙区に所属しているのかなど、全部分析しているんですよね。松田さんにも伺いたいんですけど、ベンチャー企業と行政がうまく付き合っていくためのポイントって何だと思いますか。

松田:大きく分けて3つあると思っていて。1つは、平先生もおっしゃってましたが「どの省庁にどういうコミュニケーションをしていくか」ですね。たとえば、経済産業省は大きな規制権限は持っておらず、他省庁に時代に合わなくなった規制があればそれを直して、イノベーションにつなげていきたいという考えなんです。逆に安全規制を守っている省庁は、確実に実行して安全を担保する責任があります。 それぞれの省庁が何を目的に動いているかをよく考え、見極める必要がある と思いますね。2つ目は、ある程度「複数社、もしくは業界全体の課題としてコミュニケーションを取ること」ですね。ときどき起こることとして「うちの社長、この税制で困っているんです」とお話しいただくんですが、1社で来られても我々は「どうぞご自分で対処してください」としか言えない。行政は「みなさんの役に立つことは何か」を考えているので、 業界内で共通の課題としてご相談いただくと我々も議論しやすくなる と思っています。3つ目は「社会的な課題と紐付けること」です。たとえば、シェアリングエコノミーであれば人手不足や社会保障といった課題を解決するためのテクノロジーだということをうまく伝えていただくと、サポートしやすいと思いますね。あと、行政官には技術のことをわかっていない人がたくさんいるので、テクノロジーの最先端にいる人が把握していることをわかりやすく伝えていただくと議論しやすくなると思います。

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経済産業省商務情報政策局 松田洋平さん

佐別当:ありがとうございます。各省庁でDNAが違うというのはその通りですね。では、ベンチャー企業の立場から、今の話を聞いてどう思ったのかをお話しいただきたいと思います。城さん、いかがですか?

:もっと早く平さんのところへ行くべきだと思いましたね(笑)。役所の役割みたいなところはわかっていたつもりでしたが、「どの政治家がどの分野に強いか」はよくわからないまま闇雲に足を運んでいたと反省しています。メルカリのガバメントリレーションズ(以下、GR)体制について紹介しますと、最近まではわたし一人でした。数か月前に専属のGR担当が入ってきて、ようやく本格稼働してきたところです。そのなかでGR担当の仕事として大切だと考えていることが4つあります。1つ目は、政治家や官僚、行政から自分たちの会社がどう思われているのかを社内、特に経営陣に迅速に伝えること。2つ目は、それをうまく自社の取り組みに反映させていくこと。3つ目は「今ここを頑張っている」ということを社会に発信して信頼を得ること。そして4つ目は、そこまでやり切ったうえで新しい制度の政策提言をしていくこと。残念ながら、弊社はまだまだリソースが限られていて難しい部分もあるんですが、もっと効率的にやっていく必要があると感じています。

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メルカリリーガルグループ 城譲

政治家の魂に火を灯すような提案

佐別当:逆に、城さんから平さんや松田さんに対して期待していることがあれば教えてください。

:そうですね。政治家や行政にアクセスするうえでの効果的なタイミングがあれば教えてほしいですね。ベンチャー企業は意思決定のスピードがものすごく速い。今日思いついたことは明日にでも実現したいわけです。とはいえ、役所は年度で動いていてある種のフォーマリティのようなものがある。だから、年間のうち一番効果の出やすいタイミングがあれば教えてほしいです。あと、お二人がこれまで見てきたベンチャー企業で「ここはダメだ」と感じたロビイングがあれば教えていただきたいです。

:成長戦略の話をすると、これまでは12月までに中間報告をまとめて、翌4月末までに最終報告をまとめるというフローでした。自民党の成長戦略にまとめられるということは、ほぼ政府の案に入るということなので、12月の中間報告、4月の最終報告の前に相談していただきたいと思います。ダメなロビイングとしてはコンセンサスの取り方が雑であること。たとえば「〇〇社の〇〇社長が言ってました」とか「〇〇議員と知り合いです」と言ってロビイングを行う会社があるのですが、それは一切関係ないし、むしろ逆効果なんですよね。政策の話のみでいいんです。

松田:直近だと、サンドボックス制度が国会内での相当な議論を経て成立しています。他の国だとサンドボックスはフィンテックのみといったように分野が限られているんですが、日本は分野の限定がない。つくった以上は成果を出さなきゃいけないと考えているので、サンドボックス制度はかなりドライビングフォースがあります。ですので、サンドボックス制度の活用を内閣官房へお話しいただいてもいいですし、事前に相談したいことがあれば経済産業省へお声がけいただいても構いません。いろいろな道案内ができると思います。

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:現状のサンドボックス制度において、誰かにやってもらいたいと思っているのは上限金利規制です。日本の利息制限は、先進国のなかで一番キツイんですよ。手数料や保証料といった名目も全部利息として扱われる。そもそもフィンテックが台頭しているのに、一年分の利払いをベースとして利息が制限されるってナンセンスじゃないですか。

佐別当:というと?

:たとえば、プラットフォーマーがいて、出店しようとしている店子に資金繰りの足りないところだけを出してあげる。そうすると、上限金利規制の外で手数料を取るビジネスモデルじゃないと回らないんです。でも結果としてはWin-Winですよね。だから「上限金利を超えてしまうけど、この枠組みならいいよね」というのをサンドボックス制度のなかでやってくれると、成長戦略を担当している政治家としては最高ですよね。もうひとつは、AI、IoT、ビッグデータです。たとえば中国は個人情報使い放題なんです。もちろん、日本や欧米は個人情報が保護されているので同じことはできません。でも。日本の秘密計算技術を活用すれば、生データを入れても秘密を守られながらアウトカムが取れるので、これを規制のサンドボックス制度のなかでやれば海外と戦える環境はつくれる。だから、そういうところを提案いただくと嬉しいですよね。

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佐別当政治家の魂に火を灯すような提案でもあると、優先順位が高くなるということですね。では、最後に一言ずつ感想をいただいてもいいでしょうか?まずは城さん。

:本日は本当に勉強させていただきました。もっと我々も声を上げていかなければいけない。正しいところに我々のエネルギーをぶつけていくことで、日本のベンチャー業界はもっと盛り上がるし、日本の経済や社会を変えていくことができるんじゃないかと思いました。最近の政府のベンチャー支援制度数も多いし知らないことが多いですが、実は実用的ものばかりなんですよね。サンドボックス制度や国家戦略特区、経済産業省のJ-Startupなどもあるので、そういったものをうまく活用していかなければいけない。そのために政治家や官僚、行政の方々と連携を取っていきたいと思います。

松田:ベンチャー企業の方にとっては、役所や政治家って遠い存在のように思うかもしれませんが、ぜひ気軽にコミュニケーションを取っていただきたいですね。役所の人間も「この規制はおかしい」と思っていても、いきなり「変えてくれ」と声をあげることはできないわけです。実際、与党の会議でもベンチャー起業家がヒアリングの対象になっています。いろんなサポートができると思うので、ぜひご相談いただきたいですね。

佐別当:ありがとうございます。もはやITはインフラですべてのサービスに関係してくるにも関わらず、ベンチャーの人たちが永田町へ行かないというのも事実です、最近は、シェアリングエコノミー協会やフィンテック協会といった業界団体もありますので、1社ではなかなか実現できないことを業界全体で声を上げ、変えていければと思います。

登壇者プロフィール

平将明(Masaaki Taira)
衆議院議員。早稲田大学法学部卒業後、家業を継ぐ。2005年、第44回衆議院議員総選挙にて初出馬・初当選。経済産業大臣政務官兼内閣府大臣政務官(第2次安倍内閣)、自民党副幹事長、内閣府副大臣(第2次安倍改造内閣・第3次安倍内閣)を歴任。現在は、自由民主党ネットメディア局長を務める。


松田洋平(Youhei Matsuda)
経済産業省・商務情報政策局・情報経済課 課長。京都大学卒業後、経済産業省に入省。産業技術環境局、大臣官房、商務流通G、資源エネルギー庁、商務情報政策局などでキャリアを重ねる。2012年よりイギリスのウォーリック大学、ロンドンスクールオブエコノミクス、中国の清華大学に留学。帰国後、経済産業政策局、大臣官房を経て、2017年7月より現職。


佐別当隆志(Takashi Sabettou)
一般社団法人シェアリングエコノミー協会 事務局長。2000年株式会社ガイアックス入社。広報・事業開発を経て、2015年秋よりシェアリングエコノミーに特化したWebメディア「Share!Share! Share!」をリリース。2016年1月に、一般社団法人シェアリングエコノミー協会を設立し、事務局長に就任。2017年3月、内閣官房・シェアリングエコノミー伝道師に任命される。


城譲(Yuzuru Tachi)
株式会社メルカリ リーガルグループ マネージャー。国土交通省の役人として12年を過ごした後、楽天株式会社を経て2014年9月にメルカリに入社。 国土交通省時代には、まちづくり、防災、地域振興、航空行政など幅広い分野に従事するとともに、国連に出向してアフリカで2年を過ごした経験もあり。楽天時代には、法務課長として、同社の多種多様なサービスに関わってきた経験を持つ。