メルカリのデータ重視文化をどう醸成する? リーダー3名が実態を紐解く

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あらゆる数字をもとに効果計測し、プロダクトや経営に関する意思決定を行うーー。

これは、メルカリが創業当初から貫き続ける社内カルチャーの1つ。そんなメルカリを数字で支え続けてきたのが、Business Intelligence(以下、データ分析)チームです。現在、データ分析チームはメルカリJPとメルカリUS、メルペイの3つに分かれて、プロダクトや経営の現状を数字やファクトであらわし、分析結果を用いて具体的な打ち手や施策の道標を示し続けています。

10月29日、そんなメルカリグループのデータ分析チームマネージャーたちによるイベント「データ分析NIGHT」が開催されました。登壇したのは、樫田光(メルカリJP)、野中翔(メルカリUS)、田中耕太郎(メルペイ)。モデレーターは、登壇したメンバー全員をよく知る片岡慎也(メルカリUS)が担当しました。

当然ながら、データドリブンな文化は1日にして成らず。メルカリグループが現在に至るまで、メルカリJP、メルカリUS、メルペイのデータ分析チームはそれぞれの立場でどのような役割を担ってきたのでしょうか。また、求められる「データアナリストとしてのスキル」とは? そこには、マネージャーたちの「鳥の目」としての役割がありました。

メルカリJPとメルカリUS、メルペイそれぞれでチームを分けた理由

片岡:今回のスピーカーは、メルカリJPとメルカリUS、メルペイそれぞれのデータ分析チームを率いるマネージャーたちです。もともとは1つのチームでしたが、2018年4月にメルペイ、続いて10月にはメルカリUSという流れで3つに分かれました。そして3人とも、最初はメルカリJPのデータ分析チームでした。改めて、メルカリJPの樫田に3チームの関係から聞いていきたいと思います。

樫田:前提として、今メルカリJPではフリマアプリ「メルカリ」を、日本とアメリカそれぞれで展開しています。一方、グループ会社であるメルペイでは、決済事業のためのサービスをローンチに向けて開発中です。

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メルカリJPとメルカリUS、メルペイのデータ分析チームの関係がわかるスライド資料

樫田:JP版メルカリとUS版メルカリ、そしてメルペイ。この3つは同じメルカリグループでも別々に運営しています。組織も事業フェーズ異なるため、データ分析チームも3つに分かれることになったのです。とはいえ、先ほど話があったように、もともとメルカリJPのデータ分析チームとして一緒に働いていたメンバーでもあるので、分析の共通知見や課題を話し合ったりして、ほどよく連携していますね。

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メルカリJP データ分析チームマネージャー 樫田光

片岡:今、それぞれのチームではどういったことをしているのでしょう?

樫田:メルカリJPのデータ分析チームでは「現状を把握するための分析」「事業戦略に必要な分析」「ゴールを達成するための施策やアクションに関する分析」の3本柱で仕事をしています。今、おかげさまでJP版メルカリの数値は順調に伸びています。最近では、事業戦略に活かすための分析の重要性が高まっていますね。

野中:基本的にはメルカリJPと同じように、さまざまな粒度の意思決定に必要なデータ分析を提供しています。しかし、US版メルカリはJP版とは事業フェーズが異なります。JP版メルカリのレベルまでにグロースさせるには、地道な改善に加え、爆発的な結果を生みだす施策が必要です。メルカリUSのデータ分析チームはそういった共通認識のもと、プロダクトマネージャー(以下、PM)とともに事業全体の意思決定を支えるためのデータ分析を行っています。

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メルカリUS データ分析チームマネージャー 野中翔

田中:メルペイはメルカリJPと会社が分かれていることもあり、組織もプロダクトもフェーズが違います。今はプロダクトも企画段階のため、データ分析チームではJP版メルカリのお客さまによるデータをもとに「どうすれば利便性を上げられるか」を分析しています。また、メルペイは決済事業に挑んでいます。そのため、お客さまだけでなく、事業者であるお店側にも使ってもらえるプロダクトにしなければなりません。「お客さま」と「事業者」、「支払う側」と「支払われる側」。その双方が満足して使えるプロダクトにするための数字や分析が求められています。

メルカリの特徴は「データ量が膨大」「分析業務が軽んじられないカルチャー」

片岡:続いては「メルカリグループの分析業務でユニークなところ」について。言わずもがな、メルカリはCtoCサービスです。ひと口に「お客さま」と言えど、出品者と購入者がいらっしゃるところは独特と言えるのでしょうか?

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メルカリUS Director of Product 片岡慎也

野中:僕は前職時代、ソーシャルゲーム事業の会社でデータ分析をしていました。ソーシャルゲームはBtoCとして、お客さまにたくさん遊んでもらえるサービスを提供し続けることが肝です。しかし、メルカリはCtoC。お客さまも「出品者」「購入者」、さらに「出品者であり購入者でもあるお客さま」とさまざまです。BtoCに比べて利用するお客さまが複雑に絡み合っていることもあり、データ分析チームとしては常に正しい分析をするだけではなく、そもそも正しい課題を設定できているかを考える必要もある。これはもう、どれだけやっていても飽きません(笑)。

田中:さまざまなお客さまに使っていただいているということは、膨大なデータが集まっている状態とも言えます。分析対象となる施策においていろいろな統計指標を計算すると、実施前後の数値比較で有意差が明確にあらわれることも少なくありません。一つの企業に、これだけ明確に差異を検出できるほどのデータが集まっていること自体、とてもめずらしい。そのくらい、メルカリには膨大なデータが集まっています。加えて、先ほどお話ししたようにメルペイは対事業者向けでもあります。ビジネスやデータの構造がさらに複雑になっているところは、分析観点から見てもやりがいがありますね。

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メルペイ データ分析チームマネージャー 田中耕太郎

樫田:もう1つ挙げるとすれば、メルカリグループには「お客さまに喜ばれるサービスを提供する=サービスとして成長する」というシンプルな事業構造があります。例えば、これが「お客さまへのサービス提供を良くする」と「広告でマネタイズする」の2軸があると、データ分析チームとしてはそれぞれを実現させるための分析業務をしなければならない。これは、けっこう大変だったりします。その点、メルカリグループは「お客さまに喜ばれるサービスにする」という1つのシンプルな論理だけ。データ分析チームはもちろん、ほかのプロダクト開発チームも同じ方向を見ている状態は、データアナリストにとってさらに深掘りした分析ができるいい環境ですね。

片岡:たしかに、そもそもメルカリグループには複雑なルールが存在しません。シンプルでいる姿勢は、カルチャーとしても独特ですね。

樫田:あと、メルカリグループの組織やカルチャーとして、社内におけるデータ分析のプレゼンスが高いことも特徴的です。社内メンバー全員が、きちんとデータを見ていて、なるべく改善や新機能開発に活かそうとします。自分たちの分析業務が軽んじられないカルチャーは、とてもやりやすいですね。

「鳥の目」としての役割を求められるデータ分析チーム

片岡:私はメルカリUSでPMをやっているからわかるのですが、データ分析チームは鳥瞰(ちょうかん)的な目を持っています。だからこそ、分析を依頼するPMにとって「これは重要」と思っていても、分析結果がそうではないこともあると思います。そんなとき、どんなコミュニケーションをしているのでしょう?

野中:分析結果を見たPMが「それは違う」となるのは、純粋にデータ分析チームのメンバーによる説明不足が原因だと思っています。というのも、分析を依頼したメンバーはプロダクトを良くするため、懸命に仮説を考えています。それをデータで否定されるのは、やはりショックですよね。そうならないためにも、「なぜ納得してもらえないのか」をヒアリングし、データを介した関係構築を心がけることが必要です。

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樫田:野中が言うようにデータを介した関係構築も大切です。しかし、PMはその業務やミッション上、どうしても近視眼的になってしまうところがあります。だからこそデータ分析チームはPMと対になり、鳥の目の役割も期待されています。データ分析チームのマネージャーの立場として、場合によっては「分析者ではなく、企画者であれ」「PMがとんちんかんなことを言ってきたら、思いっきり打ち返せ」と伝えていますね。

片岡:建設的なやりとりということですね。依頼される分析業務のなかには「今の事業フェーズやお客さま動向から考えて、それほど重要ではない」というものもあると思います。そういう場合、やはり断っているのですか?

田中:基本的には全て引き受けています。特に最近入社したメンバーには、僕らのような分析チームとどう付き合うのかを手探りしながら声をかけてくれる人もいます。そこで「それはやりません」と断ったりすると、ハードルを上げてしまうことになります。まずはちゃんと協力して「データを使えば、こんないい結果が出る」という成功体験を積んでもらうことを念頭に置き、できる限り受けるようにしていますね。

樫田:対応は大きく分けて2つ。鳥の目として事業をオーバービューして「ここが一番筋がいいのでは?」と、よりストラテジックな分析をするのか。またはPMが実際に関わっている具体的な施策の方向性について分析するのか。僕は、場合によっては前者を選ぶパターンがあってもいいように思っています。それはPMに協力しないということではなく、データ分析チームの役割としてより俯瞰的で戦略的な仕事をし、大きな方向性を決めることも重要だからです。そのためには、局地的な業務に関する分析をいったんストップする選択も大事。杓子定規ではなく、状況に合わせて判断することもあっていいように考えていますね。

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片岡:メルカリグループに限らず、事業が伸びているフェーズにある会社は、とてもスピード感があります。その会社での1日が、他社での1年みたいな。だからこそ、瞬間ごとでの深い分析が求められますよね?

田中:そのとおりですね。メルカリJPとメルカリUS、そしてメルペイでの日々はとても密度が濃いです。事業スピードにあわせて、僕らもタイミングを逃さないように分析していく必要があります。そこは難しい反面、とても鍛えられますね。

分析結果や仮説をストーリー立てて説明できるか?

片岡:採用についても聞きたいのですが、3人とも、自らのチームメンバーの採用選考に深く関わっていますよね。それぞれ、選考基準が異なっているのでしょうか?

樫田:同じグループ会社なので採用基準や求める人物といった大枠は同じです。実務上で言うと、メルカリJPとメルペイは会社が分かれているので、採用フロー自体は別々です。一方、メルカリJPとメルカリUSは一緒に採用を行っていますね。

片岡:一次面接ではSQLでの課題もありますよね。出題する内容は3チームとも同じ?

田中:JP版、US版メルカリは同じですね。メルペイも最初は同じだったのですが、少しつくり変えたところがあります。特に今、メルカリグループ全体でマイクロサービス化を進めているところです。構造が複雑になったデータベースを用いて適切な集計をするためには、よりクエリを書く力が求められる。メルペイでも、そのあたりを考慮しながら選考していますね。

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片岡:チェックする点として「データアナリストとしていい」「メルカリグループのデータアナリストとしていい」の2つがあると思っています。そのあたりの考えはどうですか?

野中:アナリストとして重視しているのは、分析結果や仮説を出すだけではなく、相手と議論しながらもいい関係を築けること。先ほど話があったように、分析を依頼したメンバーはプロダクトを良くするために仮説を考えているので、その分、想いも強い。そうすると、感情的な議論になってしまうこともよくあります。そこは感覚的な仮説を出す側と、データを使って立証していく側に分かれて、うまくタッグを組める状態をデータ分析チーム側がつくっていくべき。そういった立ち位置を理解して動けるかどうかはチェックしています。

田中:僕も、分析結果や仮説をストーリー立てて説明できるかどうか、もしくは相手が話す内容がすっと頭に入ってくるかどうかを見ています。ほかにも、一緒に働いてお互いに切磋琢磨できるかどうか、隣りに座って仕事をしているイメージができるかどうかも、けっこう重要視していますね。

「日本で分析をやるならメルカリ」の世界観を目指す

片岡:創業当初からデータを重要視し、プロダクトや経営の意思決定を行ってきたわけですが。だからこそ、今後データ分析チームにとってどんなチャレンジがあると思っているのかを聞きたいです。

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田中:メルペイは今、立ち上げフェーズです。だからこそ、さまざまな場面でデータ活用ができるようにしていきたいと考えています。もちろん分析だけにとどまらず、データ関連のプロジェクト推進やマネジメント、インフラ側でどうデータを取得していくのか、メルカリ側とのデータ共有なども含めて広く取り組んでいきたいですね。メルペイのデータ分析チームはハイブリッド型なので、企画側とエンジニア側、それぞれの事情を把握しつつ、その間をつなげられるプロとして、事業を進められるセーフティーネットになりたいですね。

野中:先ほどお話しさせていただいたとおり、US版メルカリはより多くのお客さまに使っていただくための起爆剤を探しているフェーズです。我々はデータを使ってそのチャンスに取り組んでいるので、とてもおもしろいですね。これまでフォーカスしていなかった検索アルゴリズムやCRMなどの分析もできるようになり、どんどんプロダクト改善に活かせるデータが揃ってきています。これからも、分析の幅をより広げていきたいですね。

樫田:僕は「日本における分析チームの正解」みたいなものをメルカリグループで実現したい気持ちが強いです。なぜかというと、分析チームをうまく活かせていない企業が多いと感じているから。「どの会社の分析チームが最高なのか」「どこで働けばアナリストとして幸せになれるのか」に対する考えは人によって違いますし、そもそも正解がないとも言えます。ただ、そろそろどこかの会社が「1つの正解」と言える分析チームの構築に挑まなければならない気がしているんです。

片岡:そこを、メルカリグループが担えるようにする?

樫田:そうですね、そこに僕は勝手に使命感を持っているかもしれません。野中や田中が話しているように、メルカリグループにはアナリストが活躍できる土壌が整っています。「日本で分析をやるならメルカリが最高峰」というような世界観を、メルカリグループのデータ分析チームで実現していきたい。それにはどれくらい時間がかかるかわかりませんが、分析をしている方々が今後のキャリアを考える上での1つの有力な選択肢になれるように頑張りたいですね。

プロフィール

樫田光(Hikaru Kashida)
2016年に株式会社メルカリ入社、データ分析を通して国内/米国の両事業の企画支援・戦略立案を行う一方、データ分析チームのマネージャを務める。メルカリへのジョイン以前は、外資系戦略コンサル、スタートアップ取締役などでのビジネス経験を経たのち、データサイエンスに興味を持ち30歳でプログラミングの勉強を始める。好きな言語はPython。Twitterアカウントは@hik0107。


野中翔(Sho Nonaka)
2016年4月に株式会社メルカリ入社。JP版メルカリにおけるデータ分析業務を担当した後、US版mercari向けのデータ分析担当となる。プロダクト改善のための企画支援から事業の戦略策定サポートまでを担当。メルカリへのジョイン以前は、新卒で株式会社DeNAに入社し、ソーシャルゲームのパラメータデザイン、メディア事業におけるデータ分析業務等を行なっていた。


田中耕太郎(Kotaro Tanaka)
大学院にてMOT(技術経営修士)を取得し、テクノロジーを基盤とした複数のビジネスに参画。事業モデルの構築やさまざまなデータ分析、機械学習プロジェクトなどに従事したのち、株式会社メルカリに入社。メルカリJPでの分析業務を経て、現在はメルペイの分析チームのマネジメント、データによる意思決定を推進。


片岡慎也(Shinya Kataoka)
高専で建築を学び、海外の大学へ進学。卒業後はコンサルティング会社、アスクル株式会社、グリー株式会社、株式会社フリークアウト・ホールディングスを経て2014年に株式会社メルカリに参画。その後、US版メルカリのプロダクトマネジメントやJP版プロダクト責任者を経て、現在はUS版メルカリのDirector of Productとして東京チームのマネジメントを務める。

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