監査をしないことがゴール? メルカリが提案する内部監査の新たなあり方

「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」。これは私たち、メルカリグループが創業当時から大切にしている不動のミッションです。そのミッション達成に向け、日々邁進するメルカリメンバーですが、滅多に表舞台に姿を見せない、経営組織を下支えするチームがあります。それが内部監査室です。 一般的に内部監査とは経営管理を目的とし、業務や会計の状況を調査・分析するほか、改善の助言・勧告するなど、組織や事業を強くする、いわば「成長の立役者」としての役割を担っています。内部監査人と聞けば、「社内を取り締まる人」というイメージを抱きますが、企業のプレゼンスを高め、事業をスケールさせる重要なポジションでもあるのです。

今回お話を伺ったのは、メルカリ内部監査室の鹿倉良太と金子有輔。二人が目指す、テクノロジーを用いた世界基準の内部監査体制、そして多様な個性が集う内部監査室へと舵を取る彼らの実践とは? 内部監査の新たなスタンダードを築こうとする、二人の想いに迫ります。

メルカリ内部監査の役割とは「企業や事業の基盤づくり」

ー企業における内部監査と聞くと、読んで字のごとく「社内を監査し、取り締まる人」というイメージがあると思います。まずは「内部監査とは何なのか」というお話から伺っていきたいと思います。鹿倉さん、いかがでしょうか?

鹿倉:そうですね。会社が法令遵守しているかどうか、内部統制が有効に機能しているかなど、「会社のあるべき姿」とのギャップを見出し、埋めるのが内部監査だと考えています。また、企業が扱うサービスやプロダクトを世の中にフィットさせていくことも内部監査の役割。僕たちのようなIT企業は、テクノロジーの進化に伴い、監査のスタイルや領域も変化するので、特にそう思いますね。

金子:僕も同意見です。内部監査のガイドラインに沿い、検討・評価の結果、助言・勧告をするようなフローに加え、「本質的なリスク」って何なのかについて考えることが大事だと思います。杓子定規で業務を遂行することは簡単ですが、ガイドラインで想定していないことにどう対応するかの方が重要。本質的なリスクを洗い出し、本質的に解決すること。これが内部監査のミッションなのかもしれません。

f:id:mercarihr:20181212185237j:plain金子有輔(内部監査室)

ーそのうえで、メルカリ内部監査の役割とは?

鹿倉:「社内を正す」というよりも「組織や事業の基盤をつくる」という方がしっくりきますね。今のメルカリは成長期を歩んでいるため、監査の目を入れる領域がどんどん広がっています。そのすべてにしっかりと目が行き届く状態にするためには、まずは組織基盤が大切なんです。

金子:一般的な内部監査は、社員(内部)に指摘することで評価される傾向があります。例えるなら、競技の審判員であるアンパイアですね。でも僕たちは違う。重箱の隅をつつくような指摘よりも企業をスケールさせるための改善策を一緒に考えるスタンスを常に大切にしています。内部監査とはいえ、会社ありきの組織。もちろん主観的になり過ぎてもダメですが、客観的になり過ぎてもダメなんですよね。

ーメルカリカルチャーの視点に立って考えると当然のことのように思いますが、内部監査の一般論から考えると、性質が異なるようですね。

鹿倉:言ってしまえば、重箱の隅をつつくような指摘をすることは簡単です。でも、その方法で会社にフィットしますかね……。誰も聞く耳を持ってくれないと思います。「他人事」ではなく、いかに「第三者視点」を持ちながら、メンバーに寄り添えるかが大切です。

ーメルカリの内部監査は、理想と現実がピタッと重なっている状態とも言えるのですね。ちなみに、経営陣から何か指示を受けることはあるのでしょうか?

鹿倉:監査の方針や大枠のリスクについては、常に経営陣と目線を合わせています。なので細かな指示はほとんどないですね。経営陣の意向も大切ですが、逆に僕らから提案しています。内部監査のスタンスや改善策については、僕らがハンドリングして考えることが多いですね。ものすごいスピードで成長しているので、当然ながら経営陣が会社を隅々まで把握できる規模ではなくなってきている。彼らの目が行き届かない部分までしっかりと把握し、リスクの種を一つひとつ見つけ、解消していくのも僕たちの大切な役割ですよね。

f:id:mercarihr:20181212185225j:plain鹿倉良太(内部監査室 室長)

ーそもそもIT業界における内部監査の体制そのものが、未成熟とも言えるのでしょうか?

鹿倉:内部監査は成熟した産業社会のなかで生まれ、培われてきた分野です。はっきり言って、それを僕たちが手がける事業領域にそのまま当てはめてもフィットしない。次のフェーズとして、僕たちが現代版にアップデートしていく必要があるのではないかと勝手に思っていて。これまでストックされたノウハウやナレッジを活かしつつ、いかに今の時代にフィットさせ、次の時代にバトンパスすべきか……きちんと考えなければならないなと。

金子:例えばテクノロジーを内部監査にもっと導入すべきだと思いますし、やれることも無数にあるはず。特にメルカリにおいては、CtoCのマーケットプレイス事業に加え、メルペイという金融事業にも参入するわけです。言わずもがな、これまで以上にレベルの高い内部監査体制が求められる。僕らが目指す内部監査体制とは「世界基準のテクノロジーを用いた体制」です。僕らが考える未来の企業像や事業像に、しっかりとフィットさせることが求められていると思いますし、メルカリだからこそ先陣を切って取り組むべきだと考えています。

「監査ではなく、事業の成長にコミットしたい」

ーこれまでメルカリらしい内部監査のスタンスを中心に伺ってきましたが、これはお二人がメルカリに入社を決めた理由にも重なるのでしょうか?

鹿倉:そうですね。そもそもメルカリグループが手がけるビジネスに魅力を感じて入社を決めました。特に金融事業。これまで築いてきたフリマアプリ「メルカリ」という大きなプラットホームから外に出るということは、既存の競合他社に対して大きなインパクトを与えることになる。その勢いや今後どうなるかわからないチャレンジングな未来に、純粋にワクワクして。自分も一緒に大きな山へ登り、そこから見える景色を見てみたいと思ったんです。

金子:入社した当時、僕は金融事業の構想を知らなかったんですよね。それでも入社を決めた理由としては、「人」です。メルカリに入る前から、サービスやプロダクトだけではなく、人や組織に強い関心があって。成長している企業は、どんな人で組織されているのか。そこに個人的な興味がありました。特に小泉さん(取締役社長兼COO)が、ものすごく楽しそうに仕事をしていたんですよ(笑)。優秀な人たちが集まり、メルカリ独自のカルチャーをつくっているに違いない。この組織に入ることで得られる知識やスキルは計り知れない。そう思い、メルカリを選びました。

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ー実際に入社してみて、ギャップはありませんでしたか?

鹿倉:驚いたのはタレントの豊かさ。そして経営陣との距離の近さですね。入社するまでは、進太郎さん(代表取締役会長兼CEO)や小泉さんをはじめ、トップが組織をリードしているように見えていましたが、実際はメンバー全員で会社をつくっている。誰かの特殊能力で組織をつくり上げているというより、全員野球をしている感覚というか。ポジティブなギャップですが、とても驚きましたね。例えば、メルカリは性善説を大切にしていて、全メンバーに意思決定権がある。言ってしまえば、全員が経営者なんです。そのような仕事の考え方やスタンスには驚きと同時に、感動すら覚えました。

金子:タレントが豊富すぎる驚きはありましたね。入社してみたら、横田さん(メルペイ取締役)がいて、曾川さん(メルペイ取締役CTO)がいて……その人たちとディスカッションしているだけで面白くて、刺激になる。「何をするか」も大切ですが、「誰と今を過ごすか」も大事にしたいと考えていた自分にとって申し分ない環境だと確信しましたね。あとはミッション・バリューの浸透度。これまでいくつもの会社を渡り歩いてきましたが、メンバー数や拠点が増えても、ここまで浸透している企業は見たことがありません。

ー先ほど、鹿倉さんも触れた「性善説」という考え方がありますが、内部監査をするうえでやりづらいと思うこともあるのではないでしょうか?

金子:社内で不正を起こす人って、会社の極一部なんですよね。僕らはそこに対してルールをつくるというよりも、そこを抽出する仕組みづくりをしないといけない気がしています。「性善説」そのものは悪くないと思っていて、むしろそのカルチャーを伸ばしていくために、極一部のイレギュラーな層をどのようにピックするか……そこをしっかり考えなければいけませんね。

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「キャッチアップ力 × 思考パターンの理解力」で導く監査の本質

ーそんなメルカリの内部監査にとって必要なスキルとは何なのでしょうか?

鹿倉:当然ですが、内部監査としての専門知識はベースとして必要になります。チームとしても監査アプローチのレベルを上げていきたい。ただし、その一方で既存のスタンスやあり方に囚われてはいけないとも思っていて。

ーそれは具体的にどういうことですか?

鹿倉:「内部監査業界」というほとんど変化のない領域において、僕たちは積極的に開拓していきたいんです。「これを内部監査がやっちゃうの?」「こんな内部監査のスタイルってあり?」と言われるくらいになりたい。それはアウトプットだけではなく、仕事のやり方も含めてです。

金子:そのうえで必要になるスキルは「現場からのキャッチアップ力」。つまり現場(プレイヤー)の立場をきちんと理解することですね。例えばアンパイアとして優秀でも、プレイヤーとしての経験がないと、一定の理解で終わってしまいますし、それ相応の監査内容になってしまう。いかに彼らの職能を理解できるかが鍵なんです。内部監査として誤解を招く発言かもしれませんが、極論、仲良くなることが一番の近道かもしれませんね。

ーそれは斬新です(笑)。どうしても「監査する人」「監査される人」という二項関係に陥りがちです。外側から監査するのではなく、まずは内側に入り込み、理解することが重要だと。

金子:おっしゃる通りです。逆に僕たちの立場や業務を理解してもらうためには、まずは相手を理解するためのアクションを積極的に起こさなきゃ。普段から誰が、どんな仕事を、どんなスタンスで行っているのかについて、理解したいんです。それがリスクを発見するためには、とても重要。

ーその結果として、例えばどのような成果が得られるのでしょうか?

鹿倉:例えば、内部監査が欲しいデータについて、僕らがどんな人間なのかを知ってもらえば、包み隠さず丁寧に教えてくれるんですよ。不安もきちんと漏らしてくれる。日々の関係構築がないと「なんでこんなデータを求められているんだろう? もしかして何か疑われている?」というような不信感を抱かれると思うんです。

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ーなるほど。

鹿倉:それと、もう一つ必要なスキルは「相手の思考パターンと言葉を理解すること」ですね。監査からすると理解できない思考や言葉でも、一歩引かずに歩み寄る努力をしています。

金子:IT業界なので、ある程度は簡単に調べられることがある。だからこそ自分たちから仮説を立て、現場レベルにまで落とし込み、読み解けるような工夫をしています。改善提案を出す際も、できる限り、彼らの思考パターンに合わせたコミュニケーションを図るようにしていますね。それは多分、僕らのバックグラウンドにコンサルティングの経験があるからだと思っています。徹底的にデータも見ていますもんね。

ー「相手の思考パターンと言葉を理解する」ためには、具体的なデータの使い方、分析の知識も当然求められますよね。

鹿倉:それがないと厳しいですね。メルカリで内部監査をするうえで、BI(Business Intelligence)やSQL(Structured Query Language)を理解していないと、現場とのコミュニケーションが難しいと思います。ツールの構造やデータ同士のリレーションをぱっと見てイメージできるかどうかは、結構重要です。メルカリはIT企業だし、何でもデータに落とし込む企業です。それがあると大きな武器になると思います。

金子:内部監査人として必要かどうかではなく、メルカリにいるなら必要なスキルですね。

ーメルカリグループと一口に言っても、メルカリ、メルペイのほか、トラベル領域の事業を手がけるソウゾウもあります。内部監査という軸がありながらも幅広い知識や経験を身につけられるポジションですよね。

鹿倉:おっしゃる通り、とにかく経験が積めることが面白いですね。グループ全体をグリップして社内を監査し、あるべき姿を一緒に考えていくポジションなので、カバーできていない領域をつくってはいけません。もちろん大変なことですが、経営と現場を行き来しながら経験を積めることは、とてもエキサイティングですね。

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金子:内部監査の守備範囲は会社全体。社内の全職種のメンバーとディスカッションしながら、サービスの変化を肌で感じられることはとても楽しいですね。僕たちは経営陣の直下にいるので、リアルな経営の意思決定の瞬間に携われる。しかも、ものすごいスピード感で。鹿倉さんのおっしゃる通り、まさにエキサイティングな職場だと思います。

「気づいていたら監査されていた」という体感値のない組織状態を目指す

ーではズバリお聞きしますが、メルカリ内部監査にフィットする人物像とは何なのでしょうか?

金子:難しいですね。一言で表すと、現場感のある人。ITへの深い知識や理解があるだけではダメで、きちんと現場に寄り添った課題解決ができるかどうか。提案だけして「あとは現場で頑張れ!」ではメンバーはついてきません。そう考えると、例えば会計士出身で、IT業界に入り、鍛え抜かれた戦士のような人でしょうか(笑)。

鹿倉:斬新な例えですが、よくわかります(笑)。裏打ちされたバックグラウンドがあるのは強い。内部監査ってトータルサービスみたいなものかなって思うんです。監査対象に対して我が事のように接しながら、第三者への説明責任を果たす。そこが備わって、初めて内部監査ができるんじゃないですかね。

ーつまり、お二人は似ている……?

鹿倉:結構似てると思いますよ。特にメンタリティーは(笑)。僕らは内部監査のエリート街道を歩んでいませんからね。机上で学ぶよりも、実践で身につける。現場叩き上げのような人間なので。

金子:そうそう。なので偉そうに座る内部監査室にはしたくないと思っていて。監査する役割ですが、それ以前に「会社を一緒につくっているメンバーの一員」であることを忘れてはならない。メンバーが抱える不安に対して、「できないなら早めに言ってください。僕たちも一緒に解決するんで!」みたいなスタンスは、今後も貫きたいですね。

ーでは最後に、メルカリ内部監査が目指すゴールを聞かせください。

鹿倉:目標は「気づいていたら監査されていた」という体感値のない組織状態をつくること。僕らもリスクが常に見えている状態をつくらないといけないと思っているので、テクノロジーと僕らの経験値を掛け合わせ、モニタリングのスキルをより高めていきたいですね。

金子:そうですね。そのくらいなめらかな内部監査ができるようにしたいですね。あとは人材輩出でしょうか。これまで触れたように、内部監査は様々な職種と多様なキャリアを見ることができる。そういう意味では、ある種のスーパージェネラリストをつくる職業でもあって。選択肢が多いだけに、自分にフィットした将来を自由に選んでほしい。僕たちは、そういう内部監査室でありたいと思っています。

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プロフィール

鹿倉良太(Ryota Shikakura)

株式会社メルカリ 内部監査室長。2018年7月、株式会社メルカリに入社。IPO内部統制コンサルを経て2008年Beenos株式会社入社。財務経理責任者 兼 内部統制室長。2013年よりサイバーエージェント内部監査室 室長。

金子有輔(Yusuke Kaneko)

株式会社メルカリ 内部監査室。外資経営コンサル、ITベンチャーの新規事業担当を経て2008年株式会社ミクシィ入社。内部監査室マネージャー。2015年退社後、ベンチャーの事業企画・経営企画室に従事。2017年6月よりメルカリ内部監査室。首都大学東京大学院経営学研究科修了。

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