メルペイの魅力はルールメイキング。PMが振り返るコード決済プロジェクト

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2019年3月14日、スマホ決済サービス「メルペイ」は、iD決済に続いてコード決済機能「コード払い」をリリースしました。

コード払いは、お客さまがフリマアプリ「メルカリ」上からバーコードもしくはQRコードをスマホ画面に表示し、メルペイを導入しているお店側が読み取ることで決済できる機能。お客さま側はもちろん、お店側でも店舗用アプリをインストールしておく必要があったため、法人・個人事業主向けのプロダクト開発も必須でした。

このプロジェクトをリードしていたのは、プロダクトマネージャー(以下、PM)の鈴木伸明(以下、@nobu)。これまでスタートアップのCTO、バックエンドエンジニアとしての開発経験など、まさに技術畑のど真ん中にいた彼は、どのようにコード払いプロジェクトを進めてきたのでしょうか。また、これまでCtoCのマーケットプレイスを開発・運営してきたメルカリグループが、 法人・個人事業主向けプロジェクトに挑んだ背景とは? 聞き手はメルペイChargeチームのPM、丹野瑞紀(以下、@tanno)です。

「お客さまが決済できる場所を増やす」が最優先

@tanno:コード決済機能リリース、お疲れさまでした! これは、@nobuさんがPMを務めるMerchantグループが担当していましたが、改めて、どのようなプロジェクトだったのかを教えてください。

@nobu:メルペイは、メルカリの売上金を使って支払いができるスマホ決済サービスです。コード払いは、スマホやタブレットでメルペイの支払いを受け付けることができるため、個人店でも導入しやすい特徴があります。POSレジ(販売情報を管理するシステムを搭載したレジ)があるお店でも、メルペイAPIと連携させれば、これまでのオペレーションに支障をきたすことなく導入可能です。Merchantグループでは、コード払いのプロダクト開発と同時に、Salesチームと連携した営業活動、お店側で導入されるアプリ開発なども手がけていました。

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@nobu(Merchantグループ)

@tanno:営業活動は、どういった優先順位を意識していたのでしょうか?

@nobu:今回のプロジェクト戦略の中心にあったテーマは「メルカリのお客さまがどこで支払いたいか」でした。メルペイの最大の特徴は、メルカリの売上金で支払いができること。メルカリにはさまざまな利用データが蓄積されており、どの地域でどのような出品がされているのか、売上金が多いエリアはどこなのかがわかります。そのようなデータからメルカリのお客さまによる決済シーンを想像し、カスタマージャーニーマップを作成してプロダクト設計。営業活動に関しては、メルペイのSalesチームと連携し、データ分析結果をもとに進めました。

@tanno:あくまでも「お客さま中心」だったんですね。

@nobu:そうです。決済サービスは「支払う人」と「支払える場所」のマッチングで成立します。メルペイにはすでにメルカリのお客さま(支払う人)がいます。そのため、支払う場所を増やすことが急務だったんです。支払える場所が少ないと決済サービスとしての価値も低く、良いUIを実装したとしてもお客さまに伝わりません。リリースと同時にお客さまがメルペイで支払える場所をいかに急拡大できるかは、常に意識しました。

事業者向けも、一般向けも、ユーザビリティーの重要性は同じ

@tanno:そして、メルペイは大手加盟店さまから個人店までを含む135万ヶ所で利用できるようになりました。とはいえ、お店によって求められる機能や利用シーンも異なります。プロダクト開発で特に意識していたことは何でしょうか?

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@tanno(Chargeチーム)

@nobu:プロダクト開発では、できる限りシンプルな仕様にするように心がけていました。メルペイの決済サービスを利用できる135万ヶ所では、多くの店舗スタッフの方々が働いています。メルペイでの決済が現金払いより手間がかかると、店舗スタッフの労働時間が長くなり、結果的に人件費が増加します。そのような事態にならないよう、「1:マニュアル不要で操作できるUIを実現する」「2:スピーディーに導入できる」「3:スピーディーに会計ができる」の3つを意識して開発しました。

@tanno:3つの要素それぞれを実現するためには、どのような工夫が?

@nobu:「1:マニュアル不要で操作できるUIを実現する」は、Salesチームに同行し、実際に店舗スタッフの方々に使ってもらいました。勤務歴が短い方でも理解できるかどうか、何度もチェックを重ねましたね。「2:スピーディーに導入できる」は、メルペイの加盟店さまとして申請していただいた事業者に対して、申し込み内容をもとに審査します。そして申し込み後すぐにご利用いただくための「審査秒速化」というプロジェクトを立ち上げ、テクノロジーを活用してできるかぎり人手のかからない審査フローになるような取り組みを続けています。

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メルペイの管理画面(お店用)

@tanno:これまでメルカリはCtoCサービスの開発・運営をしてきた歴史があります。僕個人の感想では、事業者向けプロダクトは一般のお客さま向けプロダクトとは異なるイメージがあるものの、ユーザビリティーの重要性は同じです。@nobuさんは、そのあたりをどう感じていましたか?

@nobu:僕も同意見です。事業者向けプロダクトは、スケジュールや仕様に対するコミットメントを強く求められるシーンがあります。この点は、一般のお客さま向けプロダクトのつくり方と異なります。しかし、使いやすさを突き詰めれば、一般のお客さま向けプロダクトのユーザビリティーと一緒。「3:スピーディーに会計ができる」では、決済サービスにありがちな難しい用語を使わないようにしたり、接客しながらでも操作しやすいようにUIにメリハリをつけたり。操作性全般においては迷いが生じないよう、単一機能に絞り込める設計していきました。

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@tanno:Merchantグループでは、コード払いやお店側で使用する管理画面だけでなく、事業者向けのメルペイ紹介ページや、申し込みフォームもこだわって開発していました。

@nobu:メルペイを使えるお店を急拡大するには、導入しやすい道筋をつくることも大事です。申し込みフォームは審査の都合上どうしても記入欄が多くなってしまいます。せっかく導入しようとしてくださっているのに、申し込み方法が煩雑だと「やっぱりやめておこうかな」という気持ちになってしまいますよね? 「2:スピーディーに導入できる」にも関わってくるため、入力する項目をできるかぎり減らしたり、店舗や会社情報など手間がかかりそうな入力には店舗名が自動で出てくるサポート機能を実装。入力補助を強化することで、申し込み時の負担を軽減できるようにしました。

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メルペイの申し込みフォーム画面

@tanno:まさに、コード払いのプロダクト開発に関わるすべてを担当していたんですね。

@nobu:これだけではありません。審査を通過されたお店には、操作マニュアルはもちろん、ひと目で「メルペイを使えるお店」とわかる店頭用POPなどを同封した加盟店さま用スタートキットも用意しました。もちろん、理想はひと目で操作できるプロダクトにすることなので……。今後は、操作マニュアルの活用シーンを減らしていきたいと思っています。

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加盟店さま用スタートキット

初めてのPMで、「コード払い」という大規模プロジェクトに挑む

@tanno:@nobuさんは、もともとはバックエンドエンジニアでしたよね。どういった経緯でMerchantグループのPMになったのでしょうか?

@nobu:僕はメルカリに入社する前まで、ザワットというスタートアップのCTOとしてプロダクト開発をしていました。メルカリに入社後は、ブランド査定付きのフリマアプリ「メルカリ メゾンズ」の立ち上げに携わり、出品画像から商品を推定し必要な情報を入力補完して出品できる機能開発を担当していました。なので、PMとしてプロダクトに関わるのは、メルペイが初めてでした。

@tanno:この一大プロジェクトを率いる@nobuさんのPM歴が、まさか1年目だとは思いませんでした。自ら希望してメルペイにジョインしたのですか?

@nobu:そうなんです。ザワット時代は越境EC事業を展開していましたが、当時から「決済」に課題意識がありました。決済手段には、いくつもハードルがあります。それをすべて飛び越え、決済にイノベーションを起こす必要があると感じていたんです。メルペイが立ち上がると聞いたとき、僕が感じてきた課題に取り組めるチャンスだと思いました。そこで、メルペイ立ち上げ期にジョインすることを決めました。

@tanno:コード払いは、とても大きなプロジェクトです。今回はPMとしてリードする立場でしたが、エンジニアとして働いていたときに比べて必要なスキルや知識にギャップはありましたか?

@nobu:前職では、CTOとして事業面と技術面を見ながらプロジェクトを進めていました。それもあり、特に違和感はありませんでした。コードを書く機会が減ってしまったのは、少しさみしいですが(笑)。Merchantグループは、メルペイ立ち上げ期に採用されたメンバーがコアとなり、コード払いのプロジェクトを進めてくれました。現在は7つのプロジェクトチームがあり、僕はそれをリードする役割を担っています。

@tanno:7チームも! それぞれ、どういった役割分担だったのでしょうか?

@nobu:大きく分けて、POSレジに関連するプロダクトを開発するチームと、店舗用アプリに関連するプロダクトを開発するチームの2つに分類して進めてきました。POSレジは接続するために専門知識が必要になるため、POSレジに特化したチームを組成。店舗用アプリは個人店に利用していただくことを想定し、顧客理解を深める目的で組成しました。

既存プレイヤーを巻き込んでルールメイキングしていく魅力

@tanno:これはメルペイ全体で言えることですが、リリースを発表するまでの道のりはなかなか険しいものでした。なかでも、コード払いは法人・個人事業主向けのプロダクト開発ということもあり、一筋縄ではいかない場面もあったかと思います。そんななか、@nobuさんはどこにモチベーションを感じていたのでしょうか?

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@nobu:メルペイが挑もうとしているスマホ決済の領域は、「現金」よりも利用されているサービスがまだ存在しません。スマホ決済が支持されるにはどのような変化が必要なのかを一つひとつ検討することが、僕にとっての一番のモチベーションだったのかもしれません。

@tanno:というと?

@nobu:メルペイは先日開催したカンファレンスで、中立でオープンなパートナーシップを前提に事業者間で協力していく「オープンネス」を発表しました。これは、メルペイのほか、JCBやKDDIなどの他企業がお互いのアセットを共有し合いながら、新たなキャッシュレス社会をつくりあげていくというもの。なので、メルペイは今、キャッシュレス社会を実現するために、プロダクトを導入してくださるお店や決済事業者、行政機関とともにあらゆる可能性を模索し続けています。その可能性をMerchantグループとしてプロダクト面から支えているため、その過程にとてもワクワクしています!

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@tanno:わかります! キャッシュレス推進委員会が発足するなど、コード決済は日本が国策として推進するものの1つです。メルペイだけではなく、既存プレイヤーを巻き込んでルールメイキングしていく魅力がありますよね。

@nobu:そうなんです。スケールが大きくて、魅力的ですよね。先日発表したモバイル決済サービス「LINE Pay」との加盟店さま相互開放の取り組みも、オープンネスの重要性を理解いただき実現したものです。コード払いをリリースした今、これからのMerchantグループはキャッシュレス社会がいち早く訪れるように、メルペイが掲げるオープンネスを軸に決済事業者や行政機関により広げていきます。そして、お互いに切磋琢磨しながら、お財布を持たずに不便なく生活できるスマホ決済での新しいライフスタイルをプロダクトを通じて創っていきたいと思います。

プロフィール

鈴木伸明(Nobuaki SUZUKI)

2011年にザワット株式会社を創立、取締役CTOとしてフリマ事業に従事。2017年にザワット社をメルカリ社へ売却、メルカリのグループ会社ソウゾウでエンジニアリングマネージャーとしてメルカリ メゾンズの立ち上げに従事したのち、メルペイ社の立上げ初期よりプロダクトマネージャーとしてメルペイの開発に従事。メルペイ初代MVP。Twitterは@nobuzuki。Slack名は@nobu。


丹野瑞紀(Mizuki TANNO)

NTTアクセス網研究所でロボットを制御するソフトウェアに関する研究開発に従事し、その後バーチャレクス・コンサルティング、サイボウズを経てビズリーチに入社。インターネットサービスのプロダクトマネジメントに10年以上携わる。2018年より、メルペイにPMとしてジョイン。個人としてあらゆる企業のPMをインタビューやイベント開催など、日本におけるプロダクトマネジメントの普及活動も行っている。Twitterは@mizuki_tanno。Slack名は@tanno。

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