約半年で15の新機能をリリース——Web Growthチーム奮闘の記録

こんにちは。Web GrowthチームでTechnical Product Manager(以下、TPM)を務める小河峻大(@shundai)です。

2023年6月に発足したWeb Growthチームでは、これまで大小合わせて15の施策をリリースし、メルカリのWeb機能の向上に大きく貢献してきました。また、10以上の異なる国籍のメンバーで構成されていることもあり、チーム・メンバー間での連携・コミュニケーションにおいても、さまざまな創意工夫をしつつ、大きな成果を得ることができました。

これらの成果は、プロジェクトに関わるどのメンバーが欠けても達成し得えないものでした。今回は、プロジェクトの概要と具体的な成果について、TPMの目線でお伝えしつつ、プロジェクトメンバーの中で各領域のリーダーであるFrontend EngineerのGary Forster (@gary)、Backend EngineerのJicheng Huang(@tony)、QA EngineerのTheo Paolo Amora Lim (@theo)、デザイナーの木村真理(@mura24)の4名とともに、チームづくり・コミュニケーションについても深ぼりしていきます。

この記事に登場する人


  • 小河峻大(Shundai Ogawa)

    メルカリ内定後、2018年にインターン生として入社しAMLsystemチーム等でProduct Manager職に従事。国際基督教大学教養学部卒業後、2019年に新卒入社し、CRM・CREチーム付のデータアナリストとしてプロダクト戦略、実験設計、分析を担当。2020年よりベトナムに渡り、スタートアップにて現地高校生向けのオフライン及びオンライン予備校事業の立ち上げ、グロース、ロックダウンによる縮小を事業責任者として経験後、現地で起業。2023年5月に帰国し、メルカリWeb GrowthチームにTechnical Product Managerとして入社。


  • Gary Forster

    イギリス出身。大学で物理学を専攻し、量子力学が情報技術の進歩に果たす可能性に特化して研究を行う。イギリスのスタートアップ企業複数社で働いた後、東京へ移住し、AR会社での勤務を経て2020年にメルカリ入社。アプリケーション全体に携わる中で、ウェブサイトをメルカリの中核的な部分にするための移行を支援。


  • Jicheng Huang

    2017年、台湾で修士号を取得した後、新卒でメルカリに入社。6年間にわたり、メルカリ-ポスト、ゆうパケットポスト、メルカリステーション、メルロジなどの物流に関するプロジェクトに携わった後、現在は、Web GrowthチームのBackend Engineerとして、Web能を向上させるためのAPIの設計と提供に注力している。


  • 木村真理(Mari Kimura)

    Web制作会社でデザイナーとしてのキャリアをスタート。携わったサービスを継続的に改善できる環境を求めて事業会社へ。メディア、SNS、レシピ、コミュニケーションツールなど様々なサービスの新規立ち上げ・グロースを経験する。作って試して壊して回すのが得意。 2023年より現職。趣味はインターネット。 特技は無駄づかい。


  • Theo Paolo Amora Lim

    フィリピン出身。大学ではコンピューター工学を専攻し、メルカリを含め約7年の間QAエンジニアとして業務に携わる。主な専門はテストの自動化。これまでに、Selenium、NET、playwright、protractorJSを使用したウェブなど多種多様なプラットフォームで自動化を行い、現在はメルカリでiOSの自動化に取り組んでいる。テストの自動化以外にも、手動テストに対する様々なQAプロセスの実装にも深く関わる。2022年に日本に拠点を移して以来、日本をこよなく愛する。現在はiOS自動化プロジェクトを率いるとともに、Web growthにおけるBluefinのQAリードを務める。


Web Growthチーム発足の背景

Web Growthチームは、2つの主要な目標を掲げて2023年6月にスタートしました。

まず、メルカリの入口としてのWebの強化です。これまではアプリを通じての利用が主流でしたが、最近はWeb検索からメルカリを訪れるお客さまが増えています。そのため、Webを通じてメルカリを訪れたお客さまにスムーズな初回購入体験を提供することが重要課題となりました。Web Growthチームの狙いは、Webをメルカリの主要な入口として強化することで、さらに多くのお客さまにメルカリを利用していただくことでした。

もう一つの取り組みは、既存のWeb利用者に対して、より頻繁にWebを使ってもらうための機能改善をすることです。元々メルカリのWeb版はアプリ版とほぼ同じUXになっていましたが、ユーザーリサーチやデータ分析などを通じ、Webをメインで使うお客さまとアプリをメインで使うお客さまでは属性や使い方に違いがあり、アプリを踏襲するだけではWebのお客さまに最適な体験をお届けできていないことが課題になっていました。その課題を解消するために、Web版メルカリでの初回購入時の新機能追加と、UI改善のアップデートを実施しました。

Web Growthチームが実施したこと・その結果

半期で大きな成果を出すべく、1Qは主に2つの目標にブレイクダウンしてプロジェクトを推進しました。1つは「既存のお客さま」向けに考えた骨太の仮説を検証し切るべく、関連する施策のリリースを全て完了すること。Web版では、特に頻繁に購買行動をとるお客さまが多く、いいね!機能を活用して比較検討しているような場面が多く見られていました。それを受けて、いいね!機能にアクセスしやすくし、さらにそこから購買への流れをスムーズに改善することで、より多く購買をしていただけるのではないかという仮説を持っていました。

もう1つはさまざまなチームが開発に携わっている「初回購入」の機能に関する課題を解きほぐし、依存関係を極力増やさない形のUX改善で成果を生み出すことを狙いました。2Qは1Qで作り上げた土台を生かしながら、購入を検討しているお客さまやメルカリを始めようとしているお客さまに対して、クーポン等のインセンティブ機会をよりわかりやすくタイムリーに提示する施策と組み合わせてさらに大きな成長を目指すとともに、3Qに向けて更に多くのチームを巻き込みながら、大型改善の仕込みを行いました。

結果として、1Qは12のグロースハック施策のリリース、1つの大型施策のリリースで狙いを超えるリフトを生み出すことができました。2Qはさらにマーケティング施策との組み合わせでさらに数字も伸ばすことができ、来期に向けた仕込みも順調に進捗しています。

また、いくつかのUI改善施策によって、お客さまの閲覧環境に合わせた体験が提供でき、かつ定量的にもポジティブな結果を生み出すことができました。例えば、デスクトップ版メルカリで、ヘッダーからお客さまがよく利用するページへ簡単に移動できるように改善したり、「いいね!」一覧や「値下げされた商品」の確認がワンクリックで確認できるようになったりしたことで、より多くのお客さまにメルカリのなめらかな売買体験を提供できるようになりました。

小河峻大 (@shundai)

メンバー・チーム間でのコラボレーション

@shundai: ここからは、プロジェクトメンバー4名を交えて、雑談形式でチームづくりやメンバー間のコラボレーションについて深ぼりしていきたいと思います。みなさん、よろしくお願いします!

全員:よろしくお願いします!

@shundai: Web Growthプロジェクトを進行する中で、大所帯でリーンに施策を検証しつつ、大型の機能改善も同時に開発していける仕組み・チームづくりに注力しましたよね。特に、PM・デザイナー・エンジニア間の連携スピードを速めることは常に心掛けていたと思うのですが、このあたりについて、デザイナーのmura24さんの所感はいかがでしょうか?

@mura24: 特に期初、デザインフェーズがボトルネックになることを防ぐため、施策の優先度整理と他チームとの連携を前倒しで進めることを強く意識していました。Web Growthチームでは、デスクトップ・スマートフォンそれぞれのWeb環境に応じて独自のUXを提供することも多くあり、Design Systemチームやデザインチームからのレビューが重要になるため、チーム間連携を強化し、困ったらすぐ相談できるような関係を最初に構築しました。あらかじめやりたいことを話しておくことで、その後のコミュニケーションがかなりスムーズになったと思います。

木村真理 (@mura24)

あとは、TPMのshundaiさんが「来週までにこの3つの施策をやりたいです!」と攻めたリクエストをバシバシ上げてくれたので、優先度を常に整理して、優先度の低いタスクは勇気を持って後ろ倒すこともしていましたね(笑)。

@shundai: (笑)。確かに、「Go Bold(大胆にやろう)」精神が強く求められるプロジェクトでしたよね!スピードの遅さがボトルネックになって、進行を妨げることがないように、スムーズな連携は常に心掛けていました。

チームワークという観点で、各エンジニアリング領域のプロフェッショナルとしてプロジェクトを推進してくれたエンジニアのgary、tony、theoはどんなところにやりがいを感じていましたか?

@gary: 多数のプロジェクトをチームで進めていく中で、最も大きなチャレンジだったのは、機能を早く・多くリリースしながら検証も適切に行うことでした。特にデスクトップUIを改善するにあたっては、機能単体だけでの効果を見るのではなく、数多くの機能をリリースした際にデスクトップ体験全体で見て効果が積み上がっているかを検証する必要がありました。

Gary Forster (@gary)

最近、新しいアイデアをテストするためのシステムが改善されたんです。新しい機能変更が全く反映されないグループ(訪問したお客さまの10%)と、機能変更が反映されるグループ(訪問したお客さまの90%)に分けて分析することで、各機能を単体で比較しながら、同時に複数の機能が全体の体験に成果を生み出しているかも確認することができるようになりました。これにより、12もの新機能を段階的にリリースすることができ、複雑さとリスクを大幅に軽減しながら、お客さまの行動に与えた効果を測定することができました。私たちは、この新しいシステムを試した最初のチームとして、実験プラットフォームチームと密にコミュニケーションを取り、システム利用中に感じた課題などを積極的に共有することで、全社的な開発者体験の改善にも貢献することができました。

@tony: 新機能を実装するにあたって、バックエンド側でソースコードを更新する際、会社全体のさまざまなチームと協力する必要がありました。このプロセスでは、プロジェクト外のバックエンドチームとの交渉や、数多くのインテグレーションにかなりの時間を費やしました。でも、このプロセスを経験したからこそ、会社内の他のバックエンドの仕組みを理解する貴重な機会に恵まれましたし、システムに関する知識が増えたのはよかったと思います。

他のバックエンドチームとの交渉・連携は、私にとって大きなチャレンジでしたね。他チームにも、それぞれが持っているプロジェクトや優先事項がある中で、こちらの要望のために時間を割いてもらう必要がありますから。でも、明確なコミュニケーション、協力体制、そして各チームの制約条件を理解して接することで、これらのチャレンジは成功に向かいましたし、お互いにベネフィットがある形で成功に向けて取り組むことができました。そういう意味だと、コミュニケーション能力を向上させる絶好の機会だったと感じています。

Jicheng Huang (@tony)

@theo: QAエンジニアとして、エンジニア・TPM間のコラボレーションはとても重要なテーマでした。チームの規模が大きくなるにつれて、すべての機能をテストし、品質を担保することは大変になります。そのため、新機能のテストに全員が責任を持てるようなプロセスを構築したんです。私たちQAチームが中心となり、新機能のテスト方法やチームに寄せられるバグの取り扱いについて、既存のガイドラインに基づいて機能・サービスの品質保証に向けたプロセスの実装をスタートさせました。コラボレーションに加えて、新機能の企画段階で、QAチームが関与するような体制を作ったことで、新機能の実装とテストの際に全員が同じ方向を向いているようにしました。

また、新機能実装前に必ず全員にテストしてもらいたいという思いから、スプリント終了前にドッグフーディング(プロダクトや機能のリリース前に、開発者自身が利用すること)を実施しました。これにより、品質担保とスムーズなリリースの両方を実現することができました。

品質を維持しながら、エンジニアとの協力を図ることは大きなチャレンジでしたが、チームのエンジニアたちが新しいプロセスにオープンかつ、責任ある姿勢を示してくれたことに感謝しています。

多様なチーム・メンバー間のコミュニケーションで意識したこと

@shundai: TPMとして、大きく3つのことを意識しています。

大前提として、多様なメンバーが参画するプロジェクトにおいて、「Single Source of Truth(情報の一貫性と正確性を確保するための概念。以下、SSOT)」を定義し、最新の要件を全員が理解できるようにすることがとても重要です。さまざまなステークホルダーとの議論の中で、要件が頻繁に変更される場合があるので、全員の共通認識としてSSOTを定義した上で、別の情報との間にギャップがある場合は、SSOTに立ち返ることができるように意識していました。

2点目は、テキストコミュニケーションの活用です。このプロジェクトメンバーのユニークな点として、10以上の異なる国籍のメンバーで構成されていることがあります。それぞれが得意な言語が異なるため、口頭でのコミュニケーションでは、重要な意味が伝わりづらいこともありました。そのため、特に得意な言語が異なるメンバー同士で会話する際は、全員の理解を揃えられるように、テキストコミュニケーションを活用するといった工夫もしていました。

3点目は、こまめなコミュニケーションをいとわないこと。頻繁に要件が変更される可能性があり、かつ口頭コミュニケーションでは認識の齟齬が発生しうる状況下において、少しでもわからないことがあれば躊躇せずにコミュニケーションをとって、認識を擦り合わせるようにしていました。

@theo: メンバー間では、「やさしい日本語」「やさしい英語」を使うように心掛けています。最初は少しチャレンジングかもしれませんが、ミーティングでは、「やさしい日本語」「やさしい英語」で会話することで、参加する全員が内容を理解できるようにしています。特に重要な情報については、必ず詳細を議事録に残すようにして、後で翻訳できるようにしています。日々のミーティングを英語と日本語の両方で実施しているので、言語学習という観点でも、メンバーの言語能力を向上させるいい機会になっていますね。

Theo Paolo Amora Lim (@theo)

@mura24: メンバーとのやりとりで、「やさしいコミュニケーション」をはじめとするさまざまな配慮を身に染みて感じています。私自身、英語力が十分とは言い難い中で、メンバーが必要に応じて日本語に翻訳したメッセージやスクリーンショット、動画を添付してコミュニケーションを取ってくれました。また、TPMのshundaiさんをはじめとする一部のメンバーは、日本語・英語どちらも堪能で、メンバーの間に入ってコミュニケーションの橋渡しをしてくれることもあり、大変助けられました。多様性を重んじるメルカリの中でも特に、Web Growthチームは相手に応じたコミュニケーション方法のアレンジ力が高い方が多い印象があります。

まとめ

この記事では、Web Growthチームの約半年間の取り組み・その結果を振り返るとともに、ともにプロジェクトの成功に尽力してくれたメンバーたちと、チームづくり・コミュニケーションについて紹介しました。

国籍に限らず、多くの異なるバックグラウンドを持つメンバーがいるということは、大きな魅力である一方で、時には困難に直面することもあると思います。たとえプロジェクトが順調に進まない局面があったとしても、メンバー・チーム間で密にコミュニケーションを取り合いながら、創意工夫を続けることで、チームにとってのベストプラクティスが生み出せると考えています。Web Growthチームの事例が、プロジェクト推進にお悩みの方にとって、少しでも役立つものであれば幸いです!

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