英語学習にも役立つ「やさしい日本語」トレーニングとは?受講メンバーの学びをシェアします!

こんにちは、メルカリ社内の言語施策に取り組んでいるLanguage Education Team(LET)の@Mazです!私は「やさしい日本語トレーナー」として、社内のコミュニケーショントレーニングのファシリテーターを務めています。いつもは「やさしい日本語」と「やさしい英語」の両方を扱った「やさしいコミュニケーション」トレーニングをしていますが、今回はTnSチームで「やさしい日本語」にフォーカスしたトレーニングを実施しました。トレーニング終了後日、参加者とファシリテーターが振り返り対談を行い、トレーニングで得た学びや今後のことについて意見交換をしました。

この記事に登場する人


  • 池田 舞(Ikeda Mai, @mai.i)

    2016年1月にメルカリに入社。アプリの不具合に関するお問い合わせ業務に配属後、現在は不正対策を担当する。


  • 横田 渉(Wataru Yokota, @wataru)

    2014年11月にメルカリに入社。Trust and Safetyチーム配属後、出品監視を担当。現在は知的財産権業務を担当する。


  • 清水恵実(Emi Shimizu, @AmyShimizu)

    2018年3月にメルカリに入社。警察対応チームに従事し、TnS領域での運用フロー整備を行う。現在は知的財産権業務を担当する。


  • 赤羽優(Yu Akahane, @Hane)

    2019年10月にメルカリに入社。Trust and Safetyチーム配属後、知的財産権業務を経て、現在は不正対策を担当する。


  • 松本にいな(Nina Matsumoto, @nina)

    2022年5月に入社。Global Operations およびLanguage Education Team 所属。多文化・多言語コミュニケーションのスペシャリストとして、通翻訳業務に従事する傍ら、誰にとってもインクルーシブで働きやすい環境を目指し、「無意識バイアスワークショップ」や「やさしいコミュニケーション」など、メルカリ独自のD&I研修トレーナーを担当。


  • 親松雅代(Masayo Oyamatsu, @Maz)

    2018年7月に入社。Language Education Team(LET)所属。日本語プログラムとスピーキングテストの開発や日本語レッスンを担当。現在は日本語だけでなく英語プログラムマネジメントも行う。また、やさしい日本語トレーナーとして「やさしいコミュニケーション」の社内トレーニングを主導。

メルカリの「やさしい日本語」とは

「やさしい日本語」とは、日本語を母語としない人などにもわかりやすく文法や語彙を調整した日本語のことです。

今回の記事では「やさしい日本語」に焦点を当てますが、メルカリには「やさしい英語」という取り組みもあってトレーニングをしているのが特徴です。英語を母語としないメンバーでも、安心して英語でコミュニケーションが取れるように、社内メンバーが日々心がけている考え方です。

メルカリでは日本語話者も英語話者も歩み寄る“Meeting Halfway”(歩み寄り)の考え方を大切にしています。「やさしい日本語/英語」をより多くのメンバーに知ってもらい、日々のコミュニケーションをするために、2019年に「やさしいコミュニケーショントレーニング」というメルカリ独自のトレーニングプログラムを作りました。

このトレーニングプログラムを開始した理由は、メルカリには60以上の国や地域から、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっているからです。「それぞれ異なる母語を持つメンバーを誰も取り残すことなく、インクルーシブ(包括的)なコミュニケーションを推進するために、自分たちに何ができるだろうか?」を考えた結果、「やさしいコミュニケーション」というトレーニングプログラムが誕生しました。

「やさしいコミュニケーション」トレーニングの具体例

「やさしいコミュニケーショントレーニング」は、チーム単位で申し込みを受け付けています。チームが抱えている課題ごとに、少しずつ内容が変わりますが、今回ご紹介するJapan Region Trust and Safety / TnS Office(以下、TnSチーム)の場合は、下記のような流れでトレーニングを行いました。

今回のトレーニングでは「英語学習にも役立つやさしい日本語」というテーマを掲げて、オンラインで60分という限られた時間の中で、4つの項目に注目してみました。

それは「文に簡単にする」「否定の表現をわかりやすくする」「日本語の主語」そして「Go Bold(大胆に)に言い換える!」です。

この4項目に絞ったのは、現在TnSチーム内では日本語でやりとりができる環境ですが、業務によっては英語で文章を書いたり、口頭で意見を伝えたりすることが必要な場面があるからです。そのため、まずは自分たちが普段使っている日本語を「やさしい」表現に言い換えることに挑戦しました。

実際のトレーニングで、どんな例を使って練習したか具体的にご紹介します。4つの項目に対して、1つずつタスクに取り組んでみました。

それぞれの項目の何に注目してもらったかというと、1. は文の構造です。より簡単な文構造にするとどういう言い方になるか?に注目しました。

2.は二重否定表現の言い換えです。3.は、文の主語は「は」で考えるか「が」で考えるかという視点と「GMV」という特殊な言葉の言い換え、そして4.は、「手詰まり感」という言葉の言い換えです。参加メンバーは、トレーニング中の学びをもとに「英語のセンテンスを作りやすくするため」という視点で、各自が考えた答えを出し合いました。参加メンバーの回答を、それぞれ1つずつご紹介します。

1. わたしたちの仕事は、お客さまの安心・安全を守ることです。
2. わたしはこのタスクを明日までに終えることが可能です。ですが、そうするためには、とても頑張らなくてはならないと思います。
3. 今月の売上は1番よかった。
4. プロジェクトが上手く進められない。

今日はいつもより構成や主語を意識しながらタスクに取り組んでみましたが、各自が書き方を工夫していることがわかるものでした。正解はひとつだけではありませんが、単にサンプルの答えを学ぶのではなく、試行錯誤しながら自分で見つけてみるという体験をしました。

トレーニングに参加して、実際どうだった?

今回は、トレーニングに参加してくれたTnSチームのメンバーに、トレーニングに参加した感想を聞いてみました!TnSチームについて改めて紹介すると、お客さまが安心・安全にメルカリのサービスを利用できるように、公正で持続可能なルールとポリシーを、社内および社外の関係者に対して、言語化のうえ説明責任を果たす役割を持つチームです。

参加してくれたTnSチームのメンバー代表の4名と、やさしいコミュニケーショントレーナー2名が、トレーニングを受けて得た学びやコミュニケーションの変化をシェアし合いました。

@Maz:「やさしいコミュニケーション」トレーナーのMazです!

@nina:おなじく、ninaです!みなさん、よろしくお願いします!まずは、トレーニング実施のきっかけから聞かせていただけますか?

@mai.i:トレーニング実施のきっかけは、TnSチーム全体として、英語話者メンバーとのコミュニケーションに課題を感じていたことです。私はTnSチームに入る前から開発やアプリの不備を報告するチームにいたのですが、やりとり相手のエンジニアの人たちは英語話者が多く、ミーティングや議事録が基本すべて英語でした。

翻訳ツールを駆使しつつコミュニケーションを試みていたのですが、自分の日本語が翻訳ツールでうまく翻訳されなくて…。「もしかしてわたしの日本語を変えたほうがいいのかな?」とふと気づいたんです。「まずは自分の日本語の文を正しく、わかりやすくすれば、正しく英語に翻訳されるのではないか」「やさしい日本語を学ぶことが、英語学習にも役立つのではないか」という希望を持って、Mazさんに相談しました。
池田舞(@mai.i)

@Maz:相談をいただいた後に、mai.iさんとミーティングを実施したのですが、maiさんが議事録に事前に書き込んでくれた「使い慣れた日本語を捨てる!」というミッションが素晴らしかったんです!英語話者とのコミュニケーションに悩んでいる場合、おすすめの英語勉強法や英語教材などの質問をする方も多いのですが、まずは自分の母語である日本語に目を向けていたことに「とても鋭い視点を持っているな」と感動しました。

@AmyShimizu:TnSチームは、maiさんの気づきをきっかけに「やさしい日本語」に注目してみたんです。Haneさんが「やさしい日本語」で情報発信している自治体のWebサイトを見つけて共有してくれたのですが、人々の生活に密接に関わっている自治体でも、実際に目に見える形で取り入れているということを実感しました。

@Hane:そのWebサイトを読んだときに、「誰が読んでもわかる文章」になっているなと気づいて、これは私たちの日々の業務にも活かせそうだなと感じました。
赤羽優(@Hane)

@Maz:日本語を母語としないメンバーが日本で快適に生活できるようにすることや、メンバー同士の良い関係性を構築することを考えると、日本語を母語としないメンバーが日本語を学ぶことはとても大切です。それと同時に、日本語が母語のメンバーが、「みんなに伝わるわかりやすい日本語ってなんだろう?」と考えることで、より円滑なコミュニケーションが実現できると考えています。

参加者のみなさんは、実際にトレーニングを受けて、どんな学びやコミュニケーションの変化がありましたか?
親松雅代(@Maz)

@Hane:これまで当たり前に使っていたけれど、実は伝わりにくいフレーズに気づくことができました。たとえば食べ物を注文するときに「わたしはラーメン」と言うことがありますが、それをそのまま英訳すると ”I am a ramen(私はラーメンです)”になっちゃう(笑)。その代わりに「私はラーメンを食べる」「私はラーメンを注文する」と言い換えると、翻訳ツールでも正しく翻訳されると気づきました。

@wataru:トレーニングを受けて、自分がこれまで複雑な日本語を使っていたことに気づきました。もともとの日本語がやさしくなかったんだなと気づけたことが一番の学びですね。

@AmyShimizu:Slackで文章を送る時、知らず知らずのうちに難しい言葉を使って長い文章を書いていたことに衝撃を受けました。日本語の構造を考え直すきっかけになりました。
清水恵実 (@AmyShimizu)

@Maz:やりとりの相手が人であろうと翻訳ツールであろうと、期待していたものとは違う反応が返って来ることがあります。以前だったら「何でわかってくれないの?」と思っていたのが、今は「もしかして自分の伝え方がまずかったかな?変えたほうがいいのはどこかな?」と意識が向くようになったんですね。

@nina:具体的に「やさしい日本語」を意識するようになった場面はありますか。

@Hane:あります。わたしが最近経験したのは、「ガードレール指標」という表現についてです。「カードレール指標」の意味は、「施策が問題なく進んでいるかどうかを確認するための指標」ですが、最初はその意味がわかりませんでした。このときはSlackコミュニケーションだったので自分で調べながら追いつくことができましたが、対面の会話だったら置いていかれていたと思います。最近では、TnSチーム内で「やさしい日本語で言い直します」というようなやりとりを頻繁に見かけるようになりました。

@AmyShimizu:TnSチーム内で「やさしい日本語」を意識する機会が増えましたよね!誰かの「やさしい日本語」を見つけた場合は「やさしい日本語」スタンプでリアクションをつけています。

例えば下記のやりとりの場合、「Slackにメッセージを送る」という意味でしばしば使われる「投げる」という言葉を「投稿する」と言い換えています。慣れや癖もあり、つい使ってしまう言葉やフレーズはあるものの、気づいて直す/メンバー間で認め合うことが大切だと考えています。

@Maz:わからない言葉や難しい言い回しが出てきたとき「これがわからないのはわたしだけかも…」と思うと質問しづらいので、発言者が「やさしい日本語で言い直します」と言ってくれるのはありがたいですね。

@nina:まさにそうですね!メルカリ社内では、和製英語やビジネス用語といった、英語混じりの日本語フレーズを使う場面も多いですよね。そのような言葉で、わからない言葉に出会ったことはありますか?

@AmyShimizu:わたしは半年ほど前に育休から復帰したんですが、最初分からなかったのが「インサイトを得る」のような英語混じりのフレーズです。

@mai.i:通訳をしているninaさんに聞きたいのですが、完全に日本語だけで会話が進むのと、横文字やカタカナ語が多い日本語が出てくるのと、どちらのほうが訳しやすいんですか?

@nina:それ自体にはあまり差がないと思います。それよりも何を意図しているのかがわからないと、どちらの言語を使っていたとしても訳しにくいです。質問なのか/共有なのか、対象は誰なのか、やってほしいのか/やってほしくないのかなど、意図が汲み取れなかったときが一番苦労します。
松本にいな(@nina)

@Maz:「伝えたいことの軸を明確に伝えること」が一番重要ということですね。

@nina:ここまで日本語に対する意識の変化を聞いてきましたが、英語に対する意識の変化はありましたか。

@mai.i:はい、ありました。トレーニングの後に、参加者に対してアンケートを取ったのですが、英語でのコミュニケーションや英語学習への抵抗感を示す人が半分以下に減りました。

一同:おお!すごい!

@Hane:トレーニングを受ける以前の私は「とにかく英語を勉強しなきゃ」「何かテキスト買わなきゃ」と焦ってしまっていたのですが、「やさしい日本語」について考えたことで、英語への苦手意識が減った気がします。

@Maz:では最後に、今後TnSチームや個人として、言語学習・コミュニケーションにおいて取り組みたいことがあれば教えてください。

@mai.i:英語については、まずは自分の現在のレベルを知ることから始めることです。日本語については、今回の「やさしい日本語トレーニング」で学んだことや気づきを定期的に啓蒙して、TnSチームにより浸透させていきたいですね。

@AmyShimizu:定期的に受けている英語レベルテストのレベルを上げたいです。私は、社内で手作りコスメを作る部活を開催しているので、その部活に参加してくれた外国籍メンバーに対して、わかりやすく英語で説明できるようになりたいと思っています。また、自分の業務でも使えるようになっていきたいです。

@wataru:通訳サポートがなくても、英語話者とのミーティングをスムーズに実施できるようになりたいです。「やさしい日本語トレーニング」によって、英語への苦手意識が下がったので、もっとスピード感を持ってプロジェクトを進められるように英語を勉強し続けたいと思います!
横田渉 (@wataru)

@Hane:チーム間で資料のフィードバックをする時に、相手に伝わるように書くことを心がけていきたいです。日本語はもちろん、英語でやりとりすることも増えていくと思うので、「やさしい日本語」を意識しつつも、英語学習にもより一層力を入れていきたいです。

実際の参加者にトレーニングの感想を聞く中で、「やさしい日本語」によって日本語を母語としないメンバーとのコミュニケーションだけではなく、日本語を母語とするメンバー同士のコミュニケーションが円滑になったという意見にみなさん共感することができたようでした。また、「『やさしい日本語トレーニング』を受けたことで、英語への抵抗感が減った」という声が挙がったことは、とても興味深い結果だと思います。英語コミュニケーションに悩んだ時、「英語を勉強する」ことだけではなく、「日本語を見つめ直す」という過程を入れてみると、英語を学習するときに見える景色も変わってくるかもしれませんね。

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