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「特許×開発」で何が変わった? メルペイ初の開発スタイルを振り返る

社内カルチャーづくりは一日にして成らず。当然ですが、メンバーの理解や浸透を深めるために時間をかける必要があります。

メルペイでは「特許出願が当たり前なカルチャーづくり」のため、プロダクト開発と並行して特許出願が進められていました。プロダクト開発を行うエンジニアやプロダクトマネージャー(以下、PM)、デザイナー、知財チームが連携した結果、決済サービス「メルペイ」のリリースまでに100件を超える特許出願を行うことができたのです。

そしてリリースから4ヶ月後、メルペイ初の開発スタイルでの手応えはどうだったのでしょうか? さっそく知的財産(以下、知財)専属担当者の有定裕晶が、メルペイCTO曾川景介、プロダクトデザイナー鈴木伸緒、PM今木彩翔とこれまでの振り返りを実施。そこで見えてきたのは、メルペイCTO曾川のある想いでした。

「特許権を持つ=権利を行使する」がすべてじゃない

有定:メルペイで特許出願を行っていくことは、僕が入社する前から決まっていました。どういった経緯で積極的に特許出願をすると決めたのでしょうか?

曾川:特許出願は、メルペイ開発当初から考えていたものでした。フリマアプリ「メルカリ」はお客さまが不用品を出品してお金に変える二次流通に当たります。そしてメルペイが誕生し、その売上金をメルカリ以外の場でも使えるようになりました。メルカリのお金をどこでも使えるようにしたということは、それに応じて責任も大きくなったということです。そこで私たちはメルペイの事業が持続可能なものにするためにも、事業を守っていくためにも特許出願が有効であると考えました。それもありつつ……。

曾川景介(メルペイCTO)

有定:それもありつつ?

曾川:冒頭からぶっ込むようで申しわけないんですけど……。私たちはあくまでもお客さまへの価値提供を第一に考え、プロダクト開発を行ってきました。特許は、私たちのユニークなところを権利化し、お客さまの利益や権利を守る側面があります。しかし、不当な権利行使で誰かのイノベーションを阻害するようなことは避けたいと、今回のプロダクト開発のなかで考えていました。

鈴木:資産として特許権を増やすことは正しいけれど、武器として乱用するのは少し違うということですか?

鈴木伸緒(メルペイ プロダクトデザイナー)

曾川:そうですね。海外ではパテント・トロール(ライセンス料や和解金などを目的に特許権侵害を主張する、実事業を持たない個人や団体)がビジネスモデルとして存在するほど、金額面でも大きな影響力を持っています。だからこそ、私たちが何のために特許を出願するのかを考えなければなりません。そしてメルペイは今、その姿勢を問われる段階に来ていると感じています。

今木:それに、メルペイは事業の姿勢として「OPENNESS」を掲げています。権利行使に偏ってしまい、技術や情報をシェアしないのはちょっとかっこ悪いですよね。

曾川:そのとおり。権利だけを主張するのは、クールではありません。それに、メルカリグループはテックカンパニーを目指しています。権利を守ることも重要ですが、同時に、外部に対して技術的な成果を共有していくことも必要だと考えています。

有定:これまで「特許×開発」スタイルでプロダクト開発をしてきたからこその目線ですね。

プロダクト開発にあわせて構築した知財体制

曾川:メルペイの開発が始まるときに「特許出願に協力してほしい」とメンバーの前で伝えていました。ですが、正直に言うと、それほど協力してくれないんじゃないかと思っていたんです(笑)。改めて振り返ってみると、想像以上の成果が出ていて驚いています。

鈴木:それこそ、有定さんが知財担当としてジョインしてから「どうやって出願していくか」「どのタイミングで考えるべきか」など、具体的なやり方が固まっていった印象がありますね。当初はプロトタイプをひと通りつくってから有定さんにチェックしてもらっていましたが、今ではアイデアを出す段階で話を聞いてもらうようになりました。

曾川:そもそも特許出願はR&D(Research and Development、研究開発)のような部署が担当していて、現場メンバーでは出願したことがない人のほうが多いです。その点、有定さんが開発現場に入って「これは出願できそう」などサポートしてくれていたのはよかったですね。

有定:僕個人としては、「すぐに実装されないけど、出願しておきたい発明」をスムーズに拾えたのはよかったですね。特許的には良い発明だけど、自社で実施しないから相談しないというケースは多々あるので。

鈴木:そうでしたね。そういったアイデアも特許出願できるかどうかを見てもらっていましたね。

今木:PM観点だと、他者の権利を侵害していないかを企画段階で知財チームに確認してもらえる点が心強いです。機能をリリースしてから使えなくなると、お客さまに不利益を与えてしまいます。きちんと安全にリリースするための確認フローとして組み込めていたのは、強みだった気がします。

今木彩翔(メルペイPM)

曾川:おっしゃる通りです。他者の権利を侵害しないためにも、自ら調査・分析しなければならない側面もありました。

特許出願しやすい雰囲気づくりのポイントは、食べ物とSlackスタンプ

曾川:有定さんはメルペイ一人目の知財担当者でしたが、当初から意識して「特許出願が当たり前の雰囲気づくり」などを意識していたんですか?

有定:はい。そのため、入社直後から特許勉強会を開催していました。それに、メルペイでは経営メンバーの知財への関心も強く、特許も業務の一環という雰囲気があったんです。なので、特許出願しやすい雰囲気づくりはわりとスムーズでしたね。「特許に時間を使うな」という雰囲気の会社はけっこう多いので……。

有定裕晶(メルペイ)

鈴木:確かに、有定さんはわりとラフな感じで「これ(アイデア)特許になるんで特許出願しません?」と言い続けていました。おかげで、僕らも「じゃあやりまーす」と言えたところはあります。勉強会だけでなく、ピザを食べながら特許出願を考える社内イベントもあり、そこで刺激を受けたメンバーがUIに特化した特許を考え始めたり。

有定:ありましたね。今度はたこパしながら特許出願を考える会をやろうと思っていたりします。

今木:そういえば、プロダクトごとのSlackチャンネル内でアイデアを話していると「特許の匂いがする」と言って有定さんが突然入ってくることもよくありましたね! そして「GO特許!」というスタンプを押してくれたりして。

一同:(笑)。

有定:ありがとうございます。「特許出願しやすい雰囲気」をつくるため、入社後わりと早いタイミングで勝手にSlackの絵文字スタンプをつくりました(笑)。ちなみに絵文字スタンプはメルカリグループにある3つのバリュー(Go Bold、All for One、Be Professional)にあわせてつくったので、「GO特許!」のほか、「All for 特許」「プロ特許なる」なども用意しました。ただ、当然ながら出願しただけで終わりではありません。出願のほとんどが未公開状態ですが、まさに今、これまで出願した特許を権利化しているところです。

曾川:そうですね。そして、これまではメルペイ自体がリリース前だったので、プロダクトで使えそうなアイデアも出願に踏み切っていました。しかし、今は「メルペイで使われるのか」が鮮明になっています。先ほど「すぐに実装されないけど、出願しておきたい発明」があるという話も出ていましたが、さらに「これは取っておく」「これはなくていい」という判断をメンバーレベルでできるようになると思います。

「特許×開発」スタイルで広がるインプット・アウトプット

有定:では最後に、今回の開発スタイルでの手応えなどを聞きたいです。

鈴木:プロダクトをデザインする視点と特許を出す視点は、ぜんぜん違います。そういう意味では「こう考えればいいのか!」という視点が増えた気がします。

今木:それは私も同じですね。同時に、特許に関する知識もインプットできてよかったです。

曾川:それはよかった。開発に特許出願が加わると、アウトプットの幅が広がりますよね。エンジニアはコードを書くことがアウトプットという考え方ですが、私個人としては特許を出願するというアウトプットもあっていいように思っています。それに、私たちはただなんとなくプロダクトをつくり、世の中に出すことが目的ではないです。メルペイでは、一人ひとりが何のためにプロダクトをつくっているのか、私たちがプロダクトを通じて社会にどのような影響を与えるかを考えてきました。特許出願も、そういった取り組みの一つにつながると思っています。

有定:知的財産は、事業や組織だけでなく、今後メルカリやメルペイを使ってくださるお客さまを守るためにも必要ですしね。

曾川:そうです。より大きなイノベーションを目指すということは、それに応じた責任が生じます。今はまだまだ手探り状態ですが、メンバーはみんなそう思ってくれているし、責任感を持っていると私は信じています。

プロフィール

曾川景介(Keisuke sogawa)

2011年京都大学情報学研究科修了。2011年にシリコンバレーの FluxFlex社にてWebPayを立ち上げる。ウェブペイ株式会社の最高技術責任者(CTO)としてクレジットカード決済のサービス基盤の開発に従事、LINEグループに参画しLINE Pay事業を経験。2017年11月、株式会社メルペイ取締役CTOに就任。

今木彩翔(Ayaka Imaki)

サービス企画職としてLINE株式会社に新卒入社。入社後、LINEバイトでのサービス企画とグロースハック業務を経験後、LINEデリマ新規事業の立ち上げに携わる。その後金融事業に携わり、2018年よりメルペイにPMとしてジョイン。メルペイの立ち上げに携わり、現在はGrowthチームにて、キャンペーンやクーポンを担当。

鈴木伸緒(Nobuo Suzuki)

京都工芸繊維大学を卒業後、ニューヨーク・パーソンズ美術大学に留学。帰国後、WEB制作会社、サイバーエージェントを経て、2015年11月よりメルカリにジョイン。US版、UK版メルカリのプロダクトデザインを経験。2018年1月からはメルペイの立ち上げに携わり、現在は「メルペイあと払い」の体験設計を担当。

有定裕晶(Hiroaki Arisada)

九州大学大学院工学修士修了。ルネサスエレクトロニクスで米国特許係争を担当後、LINEの知財チーム立ち上げメンバーとして特許全般や国内外子会社の知財活動立ち上げを担当。2018年5月よりメルペイで知財全般を担当。

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