「負債のないシステムはない」「過去との対立じゃなく、いまの問題を解きたい」メルカリ基盤刷新に挑むPJOの胸のうち

2013年のサービス開始から8年が経ち、月間利用者数が2,000万人を突破したメルカリ。しかし今、表向きの成長の裏側で大規模な開発基盤の見直しが全社をあげて進められています。

そのプロジェクト名は「Robust Foundation for Speed(以下、RFS)」。メルカリグループ全体の非連続的な成長を支えるために、ビジネス共通基盤の複雑な技術的課題の解決と抜本的な強化を図るプロジェクトです。

今回のメルカンでは、「RFS」と名付けられたこの大規模プロジェクトに関わるキーパーソン4名を取材。それぞれのキャリアにフォーカスしながら、なぜ開発基盤の大幅な見直しを“今”行うのか。どのような形でプロジェクトに携わっているのかを語ってもらいました。初回の若狭に続き、登場するのは、RFSのプロジェクトオーナーを務める塚穣(以下、@mtsuka)です。

※撮影時のみ、マスクを外しています

この記事に登場する人


  • 塚穣(Minoru Tsuka、@mtsuka)

    大手ポータルサイトで、数多くのサービスを運用した経験を活かし、プラットフォーム開発やSRE部門の立ち上げなどを行う。2019年8月にメルカリ入社。Microservices PlatformチームのEngineering Managerを経て、2020年1月よりDirector of Developer Productivity Engineering。


デパート店員からエンジニアへのキャリアチェンジ

ー@mtsukaさんはメルカリに転職される以前はYahoo! JAPANを運営するヤフーに在籍していたんですよね。

はい、12〜13年間ほど。それ以前はPFUという富士通の子会社でSIerみたいな仕事をしていました。

ーそもそも@mtsukaさんはどうしてエンジニアになろうと考えたんですか?

実は僕、キャリアのスタートはデパート(百貨店)なんですよ。パソコンは趣味で触っていた程度でしかなくて。

ーどうしてデパートに就職しようと?

僕の父親がデパートに勤務していたこともあって、販売員に憧れがずっとありました。正直な話、デパートで売っているものって他所で買うより値段が高いじゃないですか。それでも売れるのは、買い物自体に「体験」としての価値があるからですよね。そのことに興味があったんです。

ーコミュニケーションやリアルでしか得られない体験はたしかにありますよね。デパート勤務からエンジニアに転身した背景には、どんなことが?

90年代後半にネットバブルが起きたんですね。それで未経験の自分でもパソコンを使って仕事ができるかなと思ったんです。そうしたら、運良く拾ってくれる方がいて。後で僕を採用した理由を尋ねたら、最悪の場合、営業に回せばいいと思っていたらしいです(笑)。

ーデパートで接客の経験がありますもんね。

そうそう(笑)。ただ実際に入社したら、周りとのレベルの差が歴然でした。「こりゃまずい」と思って一生懸命勉強したんです。次第に仕事もできるようになって、3年目くらいからはお客さまから指名をいただく機会も増えました。

ただ、自分のお客さまにはさらにその先にお客さまがいて、自分の関わったものが直接、世の中のため、人のために貢献しているのか実感できなくなってきたんです。自分のキャリアについても考えるようになって、転職を決意しました。数社受けて残った2社のうちのひとつがヤフーで、もう1社がウノウ(メルカリ代表取締役CEOの山田進太郎が以前経営していた企業)でした。

塚穣(Minoru Tsuka、@mtsuka)

ーえっ!

だから、その頃からある意味、メルカリにはご縁があったんです。ただ、当時は事業領域的にヤフーのほうが自分に合っているんじゃないかと思ったので、ウノウは選びませんでした。

ーまさかそんなご縁があったとは。ヤフー入社後はどんな仕事に携わっていたんですか?

10年ほどインフラ畑にいて、ほとんどのサービスを担当していましたね。最後の3年間だけ、エンジニアの労働環境の改善に励みましたが。

「実は僕、具体的にやりたいことがないんです」

ー話を聞いているとすごく順風満帆に思えるのですが、なぜメルカリに転職しようと?

僕はすごく飽き性で、3年くらいすると居心地の悪さを感じるようになってしまうんですよ。それくらいの期間を費やせば、大体の仕事はある程度のことが実現するじゃないですか。

ールーティンワークも次第に増えていきますよね。

事業領域が広かったこともあり、おかげさまでヤフーではいろんなことに挑戦できたので飽きずに働くことができました。それでも2019年頃になると自分自身が燃え尽き症候群に陥ってしまって。ちょうどそのタイミングで社長が交代したので、思い切って辞めてしまったんです。次に何をするとかも決めずに。しばらくフリーランスとして活動していたところ、メルカリの当時の人事担当者からオファーをもらって今に至ります。

ー転職の決め手は何だったんですか?

求められている領域で貢献できると思ったからですかね。実は僕、キャリアの観点では具体的にやりたいことがあるわけじゃないんですよ。強いて言えば、人の役に立ちたい気持ちだけがあって。ヤフーに在籍していたときも、すごくお世話になっていた執行役員がいて、その人が喜ぶことに取り組みたいと考えながら働いていました。

だから、メルカリに声をかけられた際も自分が役立てることがあるのかを確かめたくて、まずは週2〜3回くらいでのアルバイトとして働いてみることにしました。

ー実際に働いてみてどうでしたか?

メルカリのエンジニアが顧客体験を改善するためにどういう仮説を立てて、どうやって検証しているのかを目の当たりにしたのですが、ものすごく精密に取り組んでいるんですよね。しかも個人の意思で物事を決めて動いているエンジニアが多くて、ものすごいカルチャーショックを受けました。これは自分自身の考え方を変えていかないと、みんなと一緒に働くことはできないなと焦りましたね。

自分の解きたい問題でなく、世の中が「解いてほしい」と思う問題を解く

ーエンジニアとしてキャリアを積んでいくうえで大切にしている考えはありますか?

誰が言っていたのかは思い出せないんですけど、ある人から「エンジニアは問題を解決する人だ」と言われたことがすごく記憶に残っています。「問題を解決する」には3種類のプロセスがある。まずは「問題を発見すること」、次に「それがどんな問題であるかを定義すること」、そして「実際に解くこと」。これができると、価値が生まれる可能性があるんです。

ー価値が生まれる?

例えば、ヤフー時代にスマホ事業を頑張っていこうという時期がありました。でも、アプリをリリースしただけでは見向きもされない。ようするに、お客さまにとっての問題をきちんと解決してくれるものじゃないと価値がないわけです。その経験を通じて、僕は「あ、そういうことか」と腹落ちし、自分が解きたい問題ではなく、「解いてほしい」と世の中に求められている問題を解かなければならないんだと考えるようになりました。これは後で話すことになるRobust Foundation for Speed(以下、RFS)にも通じる話ですが。

ー以前、@mtsukaさんにインタビューしたときに「メルカリのアプリをアンインストールした」と話していましたよね。それも「問題解決」を違う視点から見るアプローチのひとつですか?

その通りです。言ってしまえば、僕は僕にしかできない貢献がしたいんです。もちろんメルカリで働いてるからこそ、いちお客さまとしてメルカリを積極的に利用してGMV(Gross Merchandise Value)に貢献するのも大切です。でも、それは僕以外のメンバーにもできるし、就いているポジションからするとそういった貢献を求められているわけでもない。

「じゃあ、僕にしかできないことは何か」。そこで、メルカリをまだ使ったことがないお客さまの気持ちを考え、他のメンバーにフィードバックしていくことなんじゃないかなと思ったんです。だから、メルカリのアプリをアンインストールしました。こんなことを言っているといろんなメンバーから「メルカリを愛してないのか?」と反感を買いそうですけどね(笑)。

ーむしろ、愛しているからの行動ですよね?

そうですね。いつになるかわからないですが、これから先は0.1%〜0.01%と細かな数字の積み重ねが大切になっていくフェーズに移行します。そうなると、「メルカリを使ったことがない」お客さまにどうアプローチしていくかが重要になってくると思うんです。

エンジニアとしては、その数字がどの程度トラフィックに影響を及ぼすのかまで考えなければいけません。それに、インフラの増強にはある程度の予算が必要。予測を常に立てておかないと、適切なタイミングで適切な対応ができなくなってしまいます。

さらに言うと、グローバル展開を考えているならなおさら大事。AmazonやNetflixのようにハイパーグロースする瞬間が少なくとも2〜3回は訪れるはずです。

ーそのときのための備えを@mtsukaさんがしている?

僕の真似をしてみんながメルカリを使わなくなってしまうといけないので、それはやめてくださいね(笑)。自己弁明しておくと、僕の家族にはめちゃくちゃ使ってもらっています。うちの弟なんて去年1年間で300回以上は取り引きしたと言っていました。

負債のないシステムはないからこそ、不毛な対立構造にはしたくない

ーRFSについても話を聞きたいのですが、@mtsukaさんはこのプロジェクトにどの関わっているんですか?

端的に言えば現場監督、キッチンで例えるなら料理長のような存在ですね。できあがったものの味を見て「これは良い」「この盛り付けは違うでしょう」と言って調整していく立場です。

ーRFSはどのような取り組みなのでしょうか?

これを言うと怒るメンバーがいるかもしれないのですが、メルカリの過去のビジネスロジックはPMF(Product Market Fit:提供するサービスが市場などに受け入れられている状態)、つまりプロダクトをいかにお客さまに使ってもらうかが最優先事項だったんです。そのため、メルカリではサービスを「立派なホテル」にしたかったのだけども、結果的には、建て増し旅館みたいなものができあがったんですよね。

もちろん、今までの方針で進めてきたなかでそのような状態になったことを否定しているわけではありません。ただ、よりよくしていくためには変革が必要。それに、旅館の例えで話を進めると今のままでは接客するにあたって不合理なことも増えていく。隣に大きな旅館を建てて引っ越したいのが本音です。でも、そういうわけにはいかないので、両方をうまく折り合いをつけながら取り組もうとしているのが、今のメルカリです。

この難易度の高さを、僕は「飛行機が飛んでいる状況でエンジンを組み替えるようなプロジェクト」とよく説明しています(笑)。

ー聞いているだけで難しそうだと想像できます。

これを実現できたら、メルカリという事業専用だったプラットフォームをサードパーティー化し、メルカリグループの共有資産にできる。そうすれば、メルカリに関わるあらゆる事業に応用できるようになる。もっと早く新機能を追加できるようになるし、それによってサービス展開も加速させることができます。

あと、RFSは「既存のシステムをもっと大事に扱おう」という話でもあるんですよね。なぜかというと、新しい機能やサービスは、生まれた瞬間は1円も利益にならないんですよ。

ーむしろ、コストがかかっているからマイナス?

そうです。うまく運用してお金に変えていくには、さまざまな努力が必要ですし、そのために必要な資金も求められます。だからこそ、すでに多くのお客さまに利用されていて、いわば「稼ぎ頭」ともいえる既存のシステムをより良くしたい。そういうアクションに価値を感じる人は、僕と馬が合う気がします。

今回のプロジェクトを「技術的負債を正そうとしている」と考えている人もいるでしょう。でも、僕はそういう言葉の使われ方が嫌ですね。「技術負債」という表現には、さも「誰かのせいでつくられてしまったかのようなニュアンス」が込められている気がするんですよ。でも、プログラムはローンチした瞬間から負債になっていく。加えて、バグを含むコードがないことを証明するのが難しいように、システムに負債がないことを証明するのも難しいんじゃないかなと思うんです。

だから、今の自分たちを主語にして過去との対立構造を生むのではなく、ヘルシーな議論をしたい。例えば現状の課題として「システムの保守性の低さ」がありますが、それを高めるためにどうすればいいのか。どうしてこうなったのか、誰が悪いのか…みたいな話をするくらいだったら、ひとつでも多く問題を解こうぜと僕は言いたいですね。

RFSは次のメルカリに向けた第一歩

ー改めて、RFSが実現できたときにメルカリはどのようなフェーズにたどり着くことになるのでしょうか?

大きく風呂敷を広げると「第二創業期」だと思っています。これまでメルカリが築き上げてきた土台をベースに、新しい事業を興していくことになります。その第一歩が、プラットフォームの整備です。メルカリはテックカンパニーになりたいと常々言ってるじゃないですか。そうすると、今回のような施策の遂行は絶対に避けて通れないんですよ。

ー逆を言えば、世界の名だたるテックカンパニーはこの問題を克服しているということですよね?

過去にマーク・ザッカーバーグと話す機会がありました。「資金が集まってもう1度挑戦できるとしたら、あなたは何に投資しますか?」と聞いたところ、「早い段階で半分以上のリソースをプラットフォームに投資したい」と即答されたんです。

ーそれくらいプラットフォームを整えることは重要なんですね。

今のメルカリでは、ビジネスのスケールを技術が後押しするという、なかなか目にかかることのできない場に遭遇できると思います。ホップ・ステップ・ジャンプのようにリズム良くはできないかもしれませんが、非連続的な成長を目の当たりにできるんじゃないでしょうか。

ー今回この実現のために一緒に走ってくれる仲間を募集していますが、どんな感覚や価値観が求められますか?

先程の話に戻りますが、「問題の話ができる」のは大事です。問題を解くための3つの要素について、エンジニアは「実際に解く」役割を担っています。そこで求められるのは「エクセレントに解く」ということ。道中いろいろなところを探検しながら目的地にたどり着く散歩は楽しいですが、エンジニアリングはスマートに最短ゴールを目指す必要があります。

そのためには、そもそも解こうとしている問題がどういうものなのか理解することが重要。それができてはじめて「エクセレントに課題を解ける」。それがエンジニアリングの良さであり、美しさだと思っています。

おわりに

この記事を通して、メルカリが取り組む「Robust Foundation for Speed」プロジェクトに携わるキーパーソンの思いが伝われば幸いです。そして現在、この大規模な取り組みを一緒に成功させるための仲間を募集しています。

少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ以下の特設サイトをチェックしてみてください。より技術的な話をプロジェクトメンバーが語る「mercari engineering」の記事や、採用イベント情報がまとまっています。

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