CS体験の向上がお客さまへの価値提供につながる。スピードも安全性も保ったまま、機能改善・開発するためのコラボレーションのあり方

日々多くのお客さまが利用する、メルカリというサービスを支えるうえで重要なのがカスタマーサービス(以下、CS)という存在。そのCSの業務の基盤には、CSツールのたゆまぬ機能改善と開発があります。こうした基盤づくりとオペレーションの改善にはチームでのコラボレーションが不可欠です。また、メルカリはグループ全体で、常に新しいビジネス需要が生まれています。こうした変化に富む状況に対して、どう仕組みと技術で課題解決しようとしているのでしょうか。

これまでは基盤づくりをエンジニアの観点からフォーカスすることが多かったのですが、今回は機能改善から開発の一連の流れについて、CS Tech Solutionsチームの平野友規(@hirano)、CS Product Management チームのAlain Bariel(@alain)、CS Foundationチームの松久保敬人(@Peranikov)、CS ToolチームのEunsu Jang(@Unsu)に、チーム間のコラボレーションを軸にお話しを聞いていきました。

  

この記事に登場する人

  


  • 松久保敬人(Yuto Matsukubo)

    2018年11月にメルカリにジョイン。ソフトウェアエンジニアからテックリードを経て、現在はエンジニアリングマネージャーとしてチームをサポートしている。クラフトビールとボードゲームとカメラが好き。


  • Eunsu Jang

    韓国出身。ソウルのIT企業でウェブ開発を担当した後、2016年に日本に渡り、楽天グループ株式会社でソフトウェアエンジニア・エンジニアリングマネージャーとして従事。その後LINE株式会社へ入社し、銀行開発プロジェクトに参画。2022年2月、株式会社メルカリにエンジニアリングマネージャーとして入社。日本酒とマーベル映画と日本のお笑いが好き。


  • 平野友規(Yuki Hirano)

    制作会社でウェブディレクターとして勤務。自治体や交通機関のサイト構築に関わる。2018年10月にメルカリCS部門に入社。コンタクトセンターやセルフサービスの運用、開発プロジェクトを担当。2020年より現チームマネージャー。


  • Alain Garcia Bariel

    スペイン出身。シティバンクジャパンでシステムエンジニアとして3年間勤務し、その後DMM.comで海外事業部部長として約10年間勤務。 2022年10月にメルカリにPMマネージャーとして入社。バーベキューをすることとボードゲームが好き。

「スピーディーな事業立ち上げ」と「CSの対応」をセットで考えることの重要性

――まずは、事業拡大を続けるメルカリグループで、CSの領域においてどのような課題があるのかからうかがっていきたいと思います。

@hirano:いまはそれぞれの事業が大きくなり、かつ新しい事業も立ち上がろうとしているので、オペレーション業務はより広範囲におよび、複雑になっています。特にメルカリはこれまでも新規事業の立ち上げスピードを大事にしてきたので、CS用のツール開発やオペレーション構築も急ピッチで進める必要があります。その結果、既存ツールとはまた別に新たにツールを開発したり、外部ツールを導入してきました。立ち上げ当初は最低限の要件を満たした状態で使えたとしても、事業が進む中で使いづらい部分が出てきたり、既存のシステムと統合すべきではないかという議論が生まれたりしています。

ここ1年ぐらいは、新規事業の取り組みをしながらも、CSとして何が必要な機能の提案や、業務自動化の取り組みを行ってきました。その結果、生産性が向上したり、オペレーションが改善されてきています。

平野友規(@hirano)

――これまで新規事業に対しては急造のツールで対応していたところがあるとおっしゃっていましたが、今回はどのように優先順位をつけて機能追加の対応をしていくのでしょうか?

@hirano:順番としては、新規事業に対するCS体制を想定し、そのために必要なオペレーションを考えて対応しています。例えば、お客さまのサポートのために必要なチャネルは電話なのか、それともメールなのか、それぞれの場合の適切なシステムも考えます。できるだけ、いまあるツールで対応できないか工夫しつつ、どうやったら一番良い形でお客さまサポートができるのか、加えてオペレーションの仕事のしやすさを両立する形で機能を整理して、要件をalainさんのチームにお渡しするようにしています。

最近は、「新規事業を立ち上げる」ことと「CSの対応が必要」ということを会社全体としてセットで考えられるようになったと思います。

――alainさんのCS Product Management チームでは、受け取った要件をどのようにプロジェクトとして進めているんですか?

@alain:「問い合わせが減る」「オペレーションのパフォーマンスが上がる」「トランスファーが下がる」など、できる限り数値化して効果が最大化できる方法を見極めています。顧客体験やコスト削減の目線でなにが一番効果を発揮しそうか考えるんですね。特にエンジニアのリソースは有限なので、速さと効果を鑑みて優先度をつけます。

私が入社したときは、マーケットプレイス、ソウゾウ、メルペイのCSオペレーションがバラバラでした。今年の7月からJRCSという組織ができて、CSに関わるチームがひとつに統合される形になりました。それによってだいぶまとまりがでてきたように感じます。しかし、最近になって新しい事業が立ち上がりはじめているので、そこでまたバラバラにならないようにまとめようとしているのが注力しているところです。やはり、「スピード優先」か「メンテナンスしやすいシステム優先」かというのがどうしても課題になりやすいので。

Alain Bariel(@alain)

@hirano:「お客さまが困っているから」とか「こんな事象が起きている」という、いままさに目の前にある課題に対する感度が高いのは良いことだと思うのですが、それを全て解決しようとすると、「これをいますぐつくると、後になって別の開発が必要になります」といったことが発生してしまい、CS側からだけの要望だと論点が抜け落ちてしまうことがある。そこはalainさんたちに相談して、デメリットがあればちゃんと切り分けて考えていくようにしています。

@unsu:およそ一年前までは、CSツールがコードフリーズしていたから、CSツールに新たに機能追加できない期間が長かったというのもありますよね。なので、昔はその理由で別のツールや別の画面がつくられてしまうことが多かったと聞きましたが、いまは別のツールをつくっていったん解決する文化を変えていかないといけない。メンバーの考え方も変わってきましたね。

@Peranikov:モノリシックだった大きいアプリケーションを再設計するという流れで、いったんコードフリーズをして、そこに集中しようとした歴史がありましたが、メルカリのサービスはとても大きく、それを完全に分離・再設計するのは難しい。そこでアプリ自体をメンテナブルにしようとしたのがRFS(Robust Foundation for Speed)でした。

いったんRFSも終わり、フロントエンドの部分も徐々に他のビジネスを受け入れられるようになってきました。そこで、他のビジネスのためにCSツールを新しくつくる」のではなく、既存のツールをいかに活かしていくかという流れに変わってきたのがいまですね。

CSにもメリットがあり、エンジニア的価値も出せるようバランスを取る

――alainさんがPMとしてプロジェクトを進める中で、エンジニアと連携するときに、最も考慮していることはなんですか?

@alain:「いますぐやる」と「いますぐやることでどうなるのか」のバランスを取ることですかね。たとえば、マイグレーションのみのプロジェクトではCSの業務に確かに効果が見えないですし、逆にCSにしか短期的なメリットが出せずエンジニア的に価値がないというのもやりたくないし、やるべきではない。どうビジネスの効果を出しながら、エンジニアも価値があるように進めるかバランスを取っています。

――実際にかんたんなことではないと思いますが、エンジニアはPMとどのように連携しているんですか?

@unsu:目先のCS業務をもっと良くする取り組みを進めたいけど、システムをそのままにしておくと負債がたまって、後で修正を加えにくくなりがちだと思います。CSに価値を提供しながら、エンジニアリングの面でも良いものにできないか、そのバランスについて考えながら進めようとしています。

@Peranikov:最近はそのバランスが良くなってきたと思っています。少し前だとマイクロサービス化とか、技術的負債を返済していくために古いシステムをどう使えるようにするか考えてきたんですけど、最近は良い意味で「CSのためにどうやって技術的負債を返済するか」というディスカッションができるようになってきました。

要は技術的負債を返済しても、その後のビジネスにつながらなければ、結局コストだけを払った形になってしまう。僕たちは技術的負債を返済するときに、どこの部分をどう適切に返済していくと、CS業務に関わるメンバーが将来的に嬉しいのかを考えながら進めていたところはあります。ただ「技術的負債」というパーパスが前面に出ていたので、「本当にこれが効果的なのか?」ということについてあまり自信が持てていなかった部分もあったと思います。

最近は、alainさんを中心にして「CSのオペレーションにおいて、こういうところで困っている」「新規事業の立ち上げにあたって、この技術的負債を返しておかないとサポートできない」というように、ビジネス側の要求やCS側の視点も大切にするようになって、ディスカッションもとても建設的になってきていますね。

松久保敬人(@Peranikov)

@unsu:「技術面で古くなっているものだけを何とかしよう」というよりは、「CSが楽に使うために、ビジネス面での拡張性のために開発を進めていこう」という意識がメンバーに芽生えてきていると感じます。

CSのオペレーション改善がメルカリのお客さまの体験向上につながる

――では、新たな機能開発〜実装していくにあたり、CS Tech Solutionsチームとしてはプロジェクトにどのような関わり方をされているのでしょうか?

@hirano:まずは、開発された機能を実際にオペレーションに触ってもらい、CS Product Management チームにフィードバックしています。また、オペレーションを変える必要がある機能の場合、オペレーションの生産性への影響を予測し、きちんとレポートして、新しい機能によってどのぐらい改善されたか分析をしています。このほかには、新しい機能を使ってもらうためのマニュアルを整理するなど、ユーザーが使い始めるまでの準備の全てに関わっていますね。

――CS業務において、メルカリのお客さまならではの特徴はあるのでしょうか。

@hirano:やはりCtoCということですよね。メルカリは「購入者」と「出品者」という異なる属性の方がいて、両方の立場を尊重しないとなにかトラブルがあったときに問題が解決されないんです。

@unsu:また、CSツールのメインユーザーはお客さまと相対するCSのメンバーなので、我々としてはCSツールをどう開発すれば、CSのメンバーが使いやすくなるかを考えています。このようにCSのオペレーションを改善することで、メルカリのお客さまの体験向上につながるというのはメルカリのCS開発ならではだと思います。

Eunsu Jang(@Unsu)

@Peranikov:やはりエンドユーザーが社内のCSメンバーであるというのは、サービスをつくっているチームの中でも特殊ですよね。個人的にはBtoBのSaaSを開発している感覚に近いと思っていて。他社のBtoBのSaaS事例も研究したりしています(笑)。

メルカリのようなCtoCのサービスの場合は、不特定多数の人が利用するので、初めての人でもフローがわかって、シンプルに使えることが前提としてあると思うのですが、CS向けやBtoB向けだとオンボーディングも組み込めるので、アプリだけでシンプルに使える方向性にしなくていい。むしろCSメンバーからは「ショートカットキーをきちんと付与してほしい」という要望を受けることも多いので、最初からProモードな仕様やハンドリングタイムの改善を意識しています。

@alain:最近だと、新たな画面をつくるときに「こういう構成にすれば、CSがそもそも迷わない」とか「ここを改善すれば、より早く対応できる」といった、日々の業務の中から見えてきた生産性向上につながるポイントにフォーカスしたプロジェクトも進行しています。

@hirano:新たな機能を追加するばかりでなく、ベテランのオペレーターの生産性を落とさないようにすることも大事ですよね。ベテランの方たちによるオペレーションの貢献は大きいので、ちょっとした変化が与える影響が実は大きかったりするので。

開発のスピードも安全性も保ったままサービスをつくりたい

――ここまでの話をうかがって、総じて良い方向へ向かっていると感じましたが、逆にボトルネックになっていることはあるのでしょうか。

@Peranikov:ボトルネックというより直近フォーカスしているのは、新規事業であるHR事業のCSオペレーションを、既存のCSツールに統合していくことですね。当初は自分たちで独自のCSツールをつくろうとしていたのですが、安全面も考慮してすでにあるCSツールに統合した方が良いという判断になりました。いま僕たちCS Foundationチームは、CSツールを統合することを目的にチームとして活動しているのですが、リスクとなり得るのは権限管理や監査のところですね。こういったところは、MVP(Minimum Viable Product)から意外と落とされがちだと思っていいます。

しかし、誰がどういうオペレーションをしているのか、どういった操作を行っているのかは、監査の目的で最初から整備されていた方がいい。メルカリぐらいのサービス規模になってくると、そういうところは通年で取り組むべきだと思っています。

直近の課題としては、ここまで再三お話ししていますが、ビジネスのスピードを落とさないようにサポートすること。うちのチームのメンバーも積極的にHR事業の開発チームに入って、フォローアップすることもやろうとしています。開発のスピードも安全性も保ったままサービスがつくれるようにしたいですね。

@unsu:CS Toolチームでは、既存のCSツールを新しい共通基盤に載せていく取り組みを進めています。いまのままだと「CSで新しい機能をつくってほしい」となったときに提供スピードが遅いので、既存のCSツールを新しい基盤の上に載せたあとは、、我々の技術的負債の解消だけではなく、必要な機能をつくってCSに提供したり、複雑だったオペレーションを自動化できる機能を提案することによりフォーカスできると期待しています。

――では最後に、いまメルカリでCSの機能改善や開発にエンジニアとして関わることの醍醐味を聞いてみたいです。

@Peranikov:CS Foundationチームの話からすると、CSの機能をそのままつくるというよりは、それを「きちんと開発できる基盤を支える」ところに興味を持てるエンジニアは向いていると思います。複数のCSツールが関係する中央的なシステムの部分であるとか、セキュリティや監査の部分に携わるので、普段から丁寧な開発を意識していなければ、大きな事故につながりかねない。そのため、安定して稼働することにレスポンシビリティを感じるエンジニアはやりがいがあると思っています。

@unsu:CS Toolチーム側で言えば、プロダクトや機能自体をモダンな技術を使って新しいUI/UXを考えながら開発ができることです。また、複数のユースケースや複数のチームで使われることを考慮して、新たな機能開発をするにあたって再利用性(リユーザビリティ)高くつくるにはどうすればいいかを考えることが好きな方は、モチベーション高く仕事ができると思います。

@Peranikov:スタートアップの時期は、共通の基盤というよりは垂直で事業を立ち上げていくことが一番重要です。一方、最近のメルカリはもうフェーズが異なります。垂直立ち上げではなく、守りの部分も意識して共通の基盤をつくっていて、開発スピードを落とさないような意識へと変わっている。個人的にはゲームが変わってきたと思うし、こういう環境やタイミングに巡りあうことはそう多くない。大手IT企業はすでに基盤整備がされていますが、メルカリならではの方法で基盤整備を目指していくのがいまのフェーズなのだと思います。

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