メルカリAIチーム発足メンバーの新天地はUS版アプリ。その理由は? #BoldChallenge

メルカリにある3つのバリュー、Go Bold(大胆にやろう)、All for One(全ては成功のために)、Be a Pro(プロフェッショナルであれ)。なかでも特にメルカリらしいと感じられるのが「Go Bold」です。このメルカン特集企画「Bold Challenge」では、変化するメルカリの現場で挑み続けるメンバーにフォーカス。その現在地から、挑戦の原動力を紐解いていきます。

第4回目は、メルカリが技術戦略の一つとして取り組む、AIを活用したプロダクト開発を行うAIチーム発足メンバー、山口拓真が登場します。これまでメルカリAIチームは、出品物の画像認識によって商品名やカテゴリー、価格相場が自動で入力されるAI出品のほか、不正出品物を検知する機能、さらに撮影した画像から出品物を検索できる写真検索機能などをリリース。では、そんなAIチームの最前線にいる山口の現在地は……なんとUS版メルカリの開発チームでした。なぜ今、US版メルカリへ? 山口とともにAI関連のプロダクト開発を担ってきた、Search/AI Engineeringチームのディレクター森山大朗が話を聞きました。

「データを使って何かする」だけを決めて、メルカリへ入社

森山:山口さんとは、なんやかんやで2年くらい、AI関連のプロダクト開発を一緒に進めてきた気がします。そもそも、僕より少し先にメルカリへ入社していますよね? 最初からAI関連の開発をするためにメルカリへ?

山口:いえ、最初からAIをやるというよりは「データを使って何かする」だけを決めて、メルカリに採用応募しました。もともと、前職でデータ分析するための仕組みづくりをしていたので、分析職もしくはエンジニア職どちらになるんだろうなぁと思っていたくらいです。

山口拓真(US版メルカリ開発チーム)

森山:かなりワイドだったんですね。

山口:そして、決まったポジションがないまま2016年にメルカリへ入社。当初はメルカリのプロダクト開発チームにジョインしましたが、次の日にまた別のチームに異動することになって……。

森山:次の日に?

山口:はい。「メルカリの次の革命を起こすためのアイデア出し」をするチームにアサインされ、日々ブレストしていました。その1ヶ月後、Backendを担当するソフトウェアエンジニアとして半年間ほどUS版メルカリの開発に参加。ヘルプセンターに寄せられるお問い合わせ数をいかに減らすか、というプロジェクトを担当していました。

森山:その後、AIチームが発足したんでしたっけ?

森山大朗(Search/AI Engineeringチーム)

山口:2016年12月から、バーチャルなチームとして存在していました。でも当時は「何をするのか」が決まらず、画像認識や機械学習の技術をメルカリでどう活かせるかを、社内wikiやSlackでシェアする日々でした。その後、木村俊也さん(現メルカリAIチーム、ディレクター)が入社し、はっきりとチーム化していったのを覚えています。

AI出品・違反出品物検知・写真検索と同時に進めた「機械学習の基盤づくり」

森山:まさに「何をするか」の部分に入り込んだのが、AI出品や違反出品物の検知機能だったんじゃないかと思います。そのころの僕は、メルカリの検索体験を改善するプロジェクトを進めていましたが、ある日、山口さんの社内wikiを読み、「この技術、検索に使えないかな?」ということでデモをつくってもらった記憶があります。

山口:そうです、そうです。資料だけではピンと来ないので、類似画像検索や画像認識のデモをつくりました。

森山:当時から「メルカリは便利だけど出品作業は面倒くさい」という課題感があり、お客さまに少しでも簡単に出品してもらう方法を模索していました。そこで、AIチームがつくったデモをプロダクト責任者だった伊豫さん(現メルペイ執行役員CPO)にプレゼンしたら「おもしろい!」「これなら出品を楽にできるかも」となり、AI出品のコンセプトにつながっていったのでした。

山口:その流れがまた、とてつもなく速かった……。「ブレストしましょう」と呼ばれて参加したMTGだったのに、「いかに機能へ落とし込むか」「やるか・やらないか」を話し合う場になっていって。通常、画像認識を活用した機能開発には約1年かかりますが「今四半期中にリリースを」と言われたスピード感は衝撃的でしたね。しかも、MTGの時点ですでに半月も過ぎていましたし。

森山:AI出品をリリース後、CRE(Customer Reliability Engineering、顧客信頼性エンジニアリング)の機能開発にも関わっていただきましたよね? あのときのメルカリは、矢継ぎ早にお客さま向けの新機能などをリリースしていた一方で、どうしてもカスタマーサービス(CS)が後手になりがちだったんです。そこで、メルカリの安心・安全を技術で担保するため、優先度を上げて取り組んだのが画像認識による違反出品物の検知でした。

山口:これに関しては、US版メルカリの開発を担当していたころから、CSのオペレーション改善に機械学習を導入できないかというアイデアがありました。というのも、CSの現場を見ていてわかったのは、ある違反出品物を見つけても、違反出品者側で余計なキーワードをタイトルに入れるなどして、その他の違反物を検索できないように仕組んでいること。もちろん、そういった知識を持つCSメンバーが「このキーワードは避けて検索すると良さそう」と違反出品物を探し当ててきたのですが、そうすると属人性も育成コストも高まる問題もありました。そこで、「画像で似たものを探せるといいのでは?」となり、リリースに至ったんです。

森山:AI出品と違反出品物の検知機能を立て続けにリリースしていて、まさに黎明期でした。そして、2019年3月には写真検索機能が誕生しています。このAPIは、写真検索以外の新機能(近日リリース予定)にも必要不可欠なものになっていて、応用の幅が広いのが特徴です。

山口:確かに、メルカリでAI技術が花開いたタイミングでしたね。一方で、AIチームでは、AI出品や写真検索などの機能開発と同時に、機械学習の基盤づくりも進めていました。つまり、データを取り込んで学習し、実際に機能に落とし込んでいくためのベースづくりです。そのため、AIチームでは機械学習の基盤をつくるメンバーと、現場の課題解決のための開発をするメンバーがいます。

森山:山口さんはどちらを担当していたんですか?

山口:僕の場合、メルカリではずっと機能開発をする側でしたね。

US版メルカリ開発チームへの異動は「機械学習の活用をドライブさせるため」

森山:山口さんとは戦友というか、常に一蓮托生な感じがあったんですよね。でも、僕は僕で検索改善に専念するようになったり、プロダクトマネージャーからエンジニアリングマネージャーにロールが大きく変わったり、ディレクターとして全体を統括したりするようになって。一方で、山口さんはUS版メルカリに移るという決断をしていました。

山口:そうですね。これからさらにAI関連のプロジェクトを進めていくような状況のなか、US版メルカリの開発へ異動するという選択をしたことは、自分でも信じられません(笑)。

森山:US版メルカリの開発チームの異動には、どんな経緯があったんですか?

山口:1つは、僕が加わることで、US版メルカリにある機械学習を使った機能やプロジェクトをさらに加速させられると思ったからです。先ほどから話しているように、JP版メルカリはCS向けの画像認識、お客さま向けのAI出品や写真検索など、機械学習を活用した機能を連続してリリースさせていました。しかし、US版メルカリではなかなかうまく進んでいない印象があったんです。

森山:このあたりは、AIに関わるテクニカルなプロジェクトをリードできるメンバーがいるかどうかによって大きく異なりそうですね。

山口:一般的に、AIなどの新技術を扱うチームは「技術を活用すること」が目的になりがちですが、それでは上手くいきません。これはメルカリでも気をつけないといけないんです。

森山:まさにそのとおりで、僕らのミッションは「お客さまの体験をより良くする」こと。そのためには「AIありきで考えてはダメ」と言い続けることが大事ですよね。AIを使えばスケーラビリティな施策も可能ですが、必ずしもうまくいくとは限りません。それに、開発には時間もかかります。実は、勝負は序盤で決まることが多くて、解こうとしている課題の筋が良さそうなプロジェクトか、機械学習で効果的な解決可能どうかを見極めるという「課題設定」が一番大事だなと思います。

自分の成長より、貢献できるかどうか

森山:先ほど「気がついたら山口さんはUS版メルカリへ異動していた」と話しましたが、頭の片隅でその予感はあったりしました。US版メルカリじゃないと得られない経験もあるので、この選択は山口さんにとってもチャンスですし。

山口:個人的には、「貢献できることが多そう」で選んでいたりします。それに、「新しいチャレンジ」「自分の成長」っていうのは個人的にはあまり言いたくない(笑)。成長できる環境かどうかは、僕にとってはどうでもいいんです。それより、貢献できているかどうかのほうが大事。僕と同じことをできる人がたくさんいたら、たぶんメルカリを辞めると思います。

森山:もしくは、同じことをできる人がたくさんいたら、自分の領域を少しズラしたりするんでしょうね。それに「成長」って、あくまでも結果ですし。

山口:そうですね。

森山:僕がメルカリの美徳だと思っているのは、自分の今の役割をはるかに高いレベルで担える人を採用したり育てたりして、役割そのものをぽーんと引き継ぎ、次のチャレンジができるところです。実際、自分の役割が変われば、視野も広がります。山口さんの場合はUS版メルカリに「できることがある」と思ったわけですが、人によってはメルペイへ行く選択肢になっていたかもしれない。あるいは、まったく違う職種に貢献できる可能性を見出す人もいるかもしれない。僕は、これぞメルカリらしい、キャリアに関する大胆な考え方なんじゃないかなと思っていたりするんです。

山口:それ、すごくいいところですよね。僕はこれまでメルカリでのAI活用に携わってみて、フリマアプリというドメインのなかで使える手法みたいなものがだいたいわかってきた気がしています。今後は、JP版やUS版問わず、いかに流用できるかという部分に目を向けていかなくちゃいけない。今のところ、US版メルカリの価格推定やサジェスト機能での活用を検討していますが、ここではJP版メルカリの機能をチューニングしたり、AI出品をさらに一歩前へ進めたものを実装したりできると思っています。

森山:いいですね! どんな技術であろうと、事業課題を解決できればそれでいいと思っています。

山口:同感です。

山口拓真(Takuma Yamaguchi)

機械学習や画像認識・コンピュータビジョンの研究に10年以上携わり、それらに加えオペレーションズリサーチ分野やビッグデータ関連のシステム開発、WEBアプリケーション開発などにも従事。現職であるメルカリでは、エンジニアリングマネージャーとして画像認識を中心とした機械学習技術を積極的に使って、より良いサービスをユーザに届けられるように日々奮闘中。

森山大朗(Tairo Moriyama)

早稲田大学卒業後、リクルートやHR系スタートアップ立ち上げを経て株式会社ビズリーチに入社。求人特化型検索エンジンの開発と自然言語処理技術を駆使した検索改善に従事。2016年11月にメルカリに入社してからは、プロダクトマネージャーとしてUS/JP版メルカリの検索改善やパーソナライズ、AIを活用した新機能をリリース。2018年1月からは並行してCREを立ち上げ、メルカリCSの技術的な改善を推進。現在はData Science, Search, AI, Tech PMチームなどのディレクターを担当している。

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