サービス加速の一手…になれるか。メルカリ“東京以外”の開発チームで考えた、多拠点の可能性

東京オフィス以外の拠点で開発を行うエンジニアたちは、メルカリの今の体制をどう思っている?

メルカリは東京だけでなく、福岡にも開発拠点を設けています。そんな福岡開発拠点が誕生したのは、2018年。フリマアプリ「メルカリ」の出品画像10枚化をはじめ、現在ではメルカリ福岡オフィスにあるカスタマーサービス(CS)との距離の近さを活かしながらCSツール開発を行っています。

そこで、今回のメルカンでは2記事にわたって「メルカリ福岡開発チーム」に注目。第1弾では、Director of Client Engineeringの若狭と、メルカリ福岡開発チームの髙橋による記事をお届けします。

メルカリが日本国内に東京以外の開発拠点を設けたのは、福岡が初めて。対談では、メルカリ福岡開発チームに“1人目”として入社した髙橋による「拠点ごとで開発するメリットは?」とぶっこんだ質問からスタート。それに対して、前職のGoogleやLINEでもさまざまな開発拠点と連携してきた経験がある若狭が明かしたのは──。

「目が届かない」が、各拠点に分かれて開発する一番のメリット

髙橋:若狭さんは、GoogleやLINEで勤務していたとき、いろいろな拠点と連携しながら開発を進めてきた経験がありますよね?メルカリでも2018年に、福岡オフィスに開発拠点(福岡開発チーム)を設立したのですが、若狭さんから見て、プロダクトを各拠点に分かれて開発することのメリットは何ですか?

若狭:まず、本社から離れた場所にあるので、いい意味で目が届かないですよね。自由に思い思いの開発ができるところが、一番のメリットだと思っています!

髙橋:「目が届かない」って言い方が(笑)。

髙橋祐記(メルカリ福岡開発チーム、テックリード)

若狭:これ、わりと本音です(笑)。自由に動けるということは、新しい挑戦がしやすいということ。多拠点での開発は、まさにパイロット版的な動き方がしやすいです。そこで試したことがうまくいけば、本社でも導入できます。プロダクトに新しい風を吹かせることになるので、非常にいい循環を生むきっかけになるんです。

髙橋:確かに。福岡開発チームでも、けっこう自由に動いていたりしますね。

若狭:でしょう?(笑)。この自由さは、メルカリがマイクロサービスを採用し、機能やプロジェクトごとに担当を切り分けられるようになり、実現しています。そもそも、マイクロサービスを導入するには、それに追随した組織スタイルにする必要があります。マイクロサービスはまだ移行途中ですが、機能やシステムごとの依存関係がどんどん明らかになり、切り分けられています。これが完了すれば、機能やプロジェクトごとに担当が分かれ、オーナーシップを持って開発を進められる。ソフトウェアで疎結合な構成を増やすことは、とてもいいと思っています。

髙橋:ソフトウェアの疎結合な構成を増やすことは、いいこと?

若狭:密結合は、メンバー同士のやりとりもスムーズですし、何かあったときにすぐ対応できるところがメリット。一方で、密結合のままソフトウェアを大きく変更することは難しい。それに「すべて一箇所でやっています」だと、タコツボ化してしまうこともあり、スケールさせるうえでの障害になりやすかったりします。プロダクトとしてのスケールを目指すなら、いろいろなところで開発していたほうが、いい方向へむかうことも多いんです。

若狭建(メルカリDirector of Client Engineering)

若狭:もちろん、密結合と疎結合のどちらかが正解というわけではなく、あくまでもプロダクトの成長フェーズに合わせた1つの手法です。メルカリが創業当時のモノリスからマイクロサービス化へ踏み切ったのは、そういった観点もありました。しかし、メンバー間やチーム間で密なコミュニケーションが必要になる状況もあるので、「組織も疎結合にしてよい」と単純には言えないですが。

「結果を出さないと、東京の人たちに振り向いてもらえない」

髙橋:僕がメルカリに入社したのは、2018年7月。実は、福岡開発チームの1人目だったりします。当時は、エンジニアのオンボーディングの仕組みが福岡オフィスになく、メンターも東京オフィスにいました。当時は、今よりも東京と福岡を行き来していましたね。そのときに感じたのが「多拠点の1つとして結果を出さないと、東京オフィスの人たちに振り向いてもらえない」でした。

若狭:「振り向いてもらえない」というのは、認めてもらえない的な?

髙橋:そうです。先ほど若狭さんは「本社から離れた場所にあるから自由にできる」と話していました。僕としては、距離があるからこそ、存在感を高めないといけないって思ったんです。結果を出しているから、自由に動けるわけですし。そして、福岡開発チームが最初に挑んだのが、フリマアプリ「メルカリ」の出品画像を4枚から10枚に増やすプロジェクトでした。

若狭:出品画像10枚化は、僕がメルカリに入社する前にリリースされた機能でした。これはお客さまからの要望が多かったことから実現したと聞いていましたが、福岡開発チームにとっては「最初の大きな成果」を目指した結果でもあったんですね。

髙橋:出品画像10枚化は、エンジニアだけでなく、CSとも連携する必要がありました。かつ、このときの福岡開発チームは最低限必要なメンバーが揃ったばかり。東京のチームが出品や商品画像に関するマイクロサービス化を同時進行していたので、それこそ密にやりとりする必要がありました。思い返せば、本当にぐちゃぐちゃななかをチームのみんなで進んでいった末のリリースだったので、反省も多いのですが。それでも、やりたいと思ったことに全力投球できたのはよかったです。

若狭:わりと大きなリリースだったんじゃないかと思います。リリースした後の福岡開発チームは?

髙橋:徐々にメンバーも増え、チームらしさはぐっと増しましたね。2019年7月からは、メルカリ福岡オフィスのCS拠点と距離の近さを活かして、お問い合わせ周りの開発を担当することが決まりました。当時に比べてマイクロサービス化が進み、ドメインもはっきり分かれ、チーム内で意思決定できるようにもなりました。これは、僕が入社したばかりのころに比べて、とても大きな変化です。

福岡開発チームの成功が、メルカリを加速させる

髙橋:さっき、若狭さんは「疎結合であるほうが、プロダクトをスケールさせやすい」と話していました。一方で、疎結合を増やす=レポートラインが増えることにもなる気がしているんですが?

若狭:その問題はありますね。また、これまでのメルカリでは急成長による組織変更やチーム・業務の入れ替えが多く、そのたびにレポートラインが変わってしまう問題がありました。そのため、今はレポートラインを変えないようにしています。なおかつ、スクラムチーム単位にしていければと考えているところです。

髙橋:スクラムチーム単位?

若狭:iOSやAndroid、Frontend、Backend、デザイナーなどが1つのチームに集まっているようなイメージです。そして、職種や役割を越えてクロスファンクショナルに開発を進めていく。それを、プロダクトエリアごとに分けるなどはアリかもしれないですよね。レポートラインは、各チームに開発とディレクションができる人に集約する。とは言え、評価を本社中心とした中央集権にするか、各拠点ごとに分散させるのかは、どちらが正解なのかはわかりません。だから、引き続き試行錯誤が必要だと思っています。ピアレビューなどもあるので、どちらも不可能ではない気もしています。

髙橋:僕自身、いろいろな領域に関わりながらプロダクト開発をしたくてメルカリに来ました。なので、今のやり方はけっこう合っている気がしているんです。入社してみて、思っていたよりカオスだったのは驚きましたけれど(笑)。

若狭:僕は、プロダクトをスケールさせるための役割が好きなんです。まさにメルカリはその壁にぶつかっていると聞いて、入社を決めました。それもあり、高橋さんが言っているプロダクト開発をしっかりできる組織をつくりたいです。そのためにも、まずはメルカリの今の組織が「カオスだ」と表現されているところから脱却させたい。

髙橋:カオスの脱却!

若狭:うーん、何と言うか、「カオス」って言葉自体がかっこいいじゃないですか?だから、この表現をしていることで思考停止しちゃう気がするんです。不必要なカオスはどんどんやめていかないと、プロダクト開発をスケールできません。

髙橋:なるほど。

若狭:そういう意味でも、福岡開発チームのこれからが楽しみなんですよね。福岡開発チームは、メルカリにとって初めての多拠点開発。ここでうまくいけば、ほかにも開発拠点をつくることだって可能です。

髙橋:その期待に応えるためには、福岡開発チームの仲間をもっと増やさないと…!

若狭:ですね。もっと仲間が増えれば存在感も増すので「あれを頼みたい」と言われるようになるだろうし、チーム内での「これをやりたい」ももっと増えるはず。福岡開発チームが存在感を高めながら拡大していくことは、メルカリにとってもポジディブでしかないんですよね。

若狭建 (Ken Wakasa)

Director of Client Engineering。Sun Microsystems、Sonyでハードウェア(携帯電話・AV機器)関連のソフトウェア開発を担当。GoogleにてGoogle Mapsの開発に従事した後、2010年以降、Android OS開発チームでフレームワーク開発に携わった。Appleでのシステムソフトウェア開発、LINEでのLINEメッセンジャークライアント開発統括を経て、2019年8月、Director of Client Engineeringとしてメルカリに参画。

髙橋祐記(Yuki Takahashi)

2014年に新卒でDeNAに入社し、趣味が高じて複数のアイドル関連サービスの開発に携わる。2016年にLINE Fukuoka入社に伴い福岡に移住したのち、メルカリの福岡開発拠点立ち上げと同時にメルカリに入社。現在はCREチームのテックリードとして、メルカリのお問い合わせ領域のエンジニアリングを行っている。

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