異なる価値観との出会いが、新たな価値をつくる──Vol.7 CaDs #LeadersVoices

メルカリでは、どんなバックグラウンドを持っていても、平等なチャンスと適切なサポートのもとでそれぞれがバリューを発揮できる組織を目指し、様々な取り組みを実施しています。

SDGsの1つにもなっている「ジェンダー平等」、そしてDiversity & Inclusion Statementに基づく多様な組織の実現は、私たちメルカリのグループミッション「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」にも深く結びついている考え方です。

当連載「新たな価値をつくる ─ 風の時代を生きるリーダーが紡ぐ言葉の記録」の第7回は、Carlos Donderis(@CaDs)を迎え、文化の入り交じるヨーロッパ圏で生まれ育ち、複数の国を渡り歩きながら自身のキャリアと組織の多様性に向き合ってきた経験から、多様な視点でものごとを捉えることの大切さを語ってもらいました。

この記事に登場する人


  • Carlos Donderis (@CaDs)

    メルカリ VP of Product Engineering。マドリード・コンプルテンセ大学にてコンピュータサイエンスを専攻。Software Engineerとしてヨーロッパ・中南米の企業で働いた後、GMOグループやSansanなどで勤務。2019年にエンジニアリングマネージャーとしてメルカリに入社し、主にプロダクトチームを担当している。

多様な人・文化との出会いによって、貴重な体験を得てきた

──まずは、CaDsさんご自身のバックグラウンドから教えてください。

スペイン・マドリードの山間にある小さな街で生まれ育ちました。街のシンボルとして、歴史ある修道院があり、その周りに人々が暮らしている。とても美しい場所です。

つい最近マドリードに帰ったのですが、コロナ禍を経て、人や街並み、働き方など、多くのことが変わっていました。故郷であるマドリードがもっと面白い街になっていく兆しを感じて、とてもワクワクしました。

思わず息を飲むような、美しい故郷の風景 (エル・エスコリアル修道院)

──スペインを含むヨーロッパ圏には、多様な人種・国籍の人々が集まっていますが、日頃から多様性について考える機会はありましたか?

マドリード大学入学後に、多様性について考える多くの機会を得ました。マドリードはスペインの首都ということもあり、スペイン国内だけではなく、世界各国から学生たちが集まっています。大学生活を通して、自分とは異なるバックグラウンドを持つ人々との出会いや交流を楽しんでいました。また、大学時代にヨーロッパの国々を旅して、さまざまな生き方があることを肌で体感したことも、D&Iを考える上で貴重な経験でしたね。

──これまで、CaDsさんがエンジニアとして複数の国で働いてきた中で、特に印象深かった仕事や、やりがいを感じた仕事について教えてください。

大学卒業後、スペインでコンサルティング系企業のソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。やりがいは感じていたのですが、外部委託という立場だったこともあり、自分の仕事がお客さまにどう届いているのかを実感しづらかったのが心残りでした。

その業務に数年間取り組んだ後、パナマで仕事をする機会を得ました。パナマは小さな国ですが、中南米のハブとなる国で、周辺国への影響も大きいので面白そうだと感じたんです。パナマでは、ネットバンキングのサービスを開発・提供する仕事を担当していました。以前の職場と比較して、自分の仕事の結果が目に見えやすかったので、充実感を得ることができました。

その反面、スペインで働いていたときと同じく、エンジニアである自分の仕事と、エンドユーザーの距離が遠いことにジレンマを感じていました。そんな折、パナマでとあるエンジニアと出会ったんです。彼は、さまざまな企業の課題に向き合い、理想状態を実現するための方法まで提案できる凄腕のエンジニアでした。彼と一緒に仕事をするうちに、お客さまの課題に寄り添いながらサービスやプロダクトをつくりあげることに、大きなやりがいを持つようになったんです。

その経験を通して、私は自分が関わるサービスやプロダクトがお客さまにどのように使われているのか、また人々の生活にどう役立っているかに強い関心を持っているのだと改めて気づかされ、自分のキャリアにおける指針が明確になりました。

空手がきっかけで日本に心酔。日本での生活は驚きと試行錯誤の連続

──さまざまな国で経験を積んできたCaDsさんが、日本に興味を持った理由が気になります。

7〜8歳頃に空手を習い始めたことが、私と日本文化との最初の出会いでした。空手は、相手と戦うだけではなく、高い精神力や礼儀などの「武道の心」を重んじており、それがとても興味深く感じました。
空手の稽古は、自分自身と向き合う大切な時間

それから随分と長い年月が経ってしまいましたが、30代の頃にようやく日本を訪れることができました。初めての日本にとても感動し、特に東京の街並みや清潔さ、人々の丁寧さに心掴まれて、次は旅行者として滞在するのではなく在住しようと決心したんです。そこから早いもので12年が経ちました。本当は1年の滞在予定だったんですけどね(笑)。
Carlos Donderis(@CaDs)

──もうすっかり日本での生活が長いんですね!来日当時は、日本の職場は驚きの連続だったと思うのですが、具体的にどのようなカルチャーギャップを感じましたか?

まずびっくりしたのは、毎朝朝礼があること!日本で初めて勤めた会社では、時間になったらメンバー全員が起立し、その日にやるべきことについて報告し合う風習がありました。万が一遅刻をしてしまうと、全員が遅刻したメンバーに注目するので、絶対に遅刻できないことも含めてカルチャーショックでしたね(笑)。

あとは、毎日午後2時から15分間シエスタと称して昼寝をする風習もあって、それがとても新鮮でした。

──シエスタは、元々はスペイン発祥の、長いお昼休憩の文化ですよね?

そうです。日本の会社でも、シエスタを導入しているところはあるんですよ!シエスタの時間になると、オフィスの電気が消えて、全員が自分のデスクに突っ伏して昼寝し始めるんです。最初は慣れなかったのですが、次第に15分間しっかり眠れるようになって、シエスタがないと午後のパフォーマンスが発揮できない体になりました(笑)。

──毎日が新鮮な驚きに溢れていたんですね!日本で働く中で、どんな苦労や難しさを感じていましたか?

言語の壁にはとても苦労しました。私は来日した当時、日本語をほとんど話すことができなかったのですが、社内のほとんどのメンバーが日本語話者だったので、自分がやるべきことを理解したり、相手に業務を依頼したりといった、日常的なコミュニケーションでさえも難しく感じていました。

言語の壁を取り払うために、毎日が試行錯誤の連続でした。毎回の朝会で、何を発表するかを事前に決めて、翻訳ツールを駆使して準備をしたり、仕事終わりに日本語学校に通って勉強したり…。また、プライベートでも英語/スペイン語話者とはなるべく遊ばず、日本語話者と積極的にコミュニケーションを取るようにしていました。努力の甲斐あって、1年半ほどで、日常会話には困らないレベルの日本語を習得することができました。
日本に来日してまもない頃。当時の同僚との写真

メルカリには「GOT(Global Operation Team)」と呼ばれる通訳・翻訳の専門チームがありますが、社内にこうしたサポートが整っているのは海外出身のメンバーにとって、とても大きな支えになっていると思います。実際、私自身、今でもGOTには助けられていますし、多様な組織をつくるうえでは欠かせない存在だと思います。

ものの見方を変えて、現状を打破していきたい

──複数の国での就業経験を経て、日本で働く中で、D&Iという観点で課題に感じていることはありますか?

まず、ジェンダーの問題は改善の余地があると思っています。スペインで働いていた頃は、昇進・昇格においてジェンダーの差はあまり見られませんでした。

その理由として、日本とヨーロッパ諸国では、一般的に女性の社会的役割に違いがあるからだと考えています。日本は歴史的に、父親は家族のために働いてお金を稼ぎ、母親は家にいて家族を支える、働くとしてもパートで働くといった性的役割分業がなされてきた印象があります。もちろん、女性の社会的役割は徐々に変化しており、子育てをしながらフルタイムで働く女性も増えてきていますが、世界基準ではまだまだ改善の余地があると感じます。

一方スペインでは、ジェンダーに関わらず平等に働くことが当たり前のこととして受け入れられていると感じています。私自身、母子家庭で育ち、働きながら私と妹を育ててくれた母の姿をずっと見てきました。そのような家庭環境の中で、女性の社会的役割について、考える機会が多かったように感じます。母は今も自分のロールモデルで、大切な存在です。
自分のベースをつくってくれた、かけがえのない家族

加えて、日本全体の傾向として、意思決定を担うリーダー層が、特定の属性に偏っていることにも課題を感じています。リーダー層の属性が偏っていると、意思決定プロセスにおいて、社内のメンバーやお客さまなど、多種多様なステークホルダーがどのような課題に直面しているのか、真の意味で理解することができないと思っているからです。

例えば、育児のサポート制度について議論する場に当事者が一人もいなかったら、育児をしながら仕事をしている人がどういう悩みを持っているのか、どのようなニーズがあるのかを理解しづらいですよね。やはり当事者にしかわからないことはたくさんあるので、多様な視点を取り入れながら考えることが何よりも重要だと思いますし、そうしたプロセスを経ることで初めて価値のあるアイデアが生まれると考えています。

──CaDsさん自身、子育てをしながらメルカリで働く中で、助かっていることはありますか?

私には娘がいるのですが、メルカリのYOUR CHOICE(働く場所や時間を自由に選択できる制度)には夫婦ともに助けられています。産休を経て妻が仕事に復帰した後は、私が娘を保育園に送り迎えをし、娘を寝かしつけた後にまた仕事に戻るなど、生活スタイルの変化に合わせて勤務時間を調整できるのはありがたいですね。

その他にも、娘が体調を崩した時には通院や看病のために中抜けできたり、仕事終わりの家族との時間が増えたりとメリットが多いので、柔軟で多様な働き方がもっと世の中に浸透していくことを願います。
妻と娘と過ごす、楽しいひととき

──最後に、複数の国で働いたバックグラウンドを持つリーダー、そして一人の親として、組織のD&I推進にどのように関わっていきたいと考えていますか?

D&Iを考えるうえで私が大切にしている言葉があります。それは、「Think Different(ものの見方を変える)」と「Challenge The Status Quo(現状を打破する)」です。

新鮮な視点を持って現状を打破し、そこから得たユニークな観点や経験を仕事、ひいては人生そのものに反映し、「平均的ではないもの」を創り上げていきたい。そうすることで、自分の周りの人にも前向きな影響を与えられると思っています。

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