企業発の「ソーシャルグッド」で、日本の寄付文化を前進させる——「メルカリ寄付 かんたん寄付設定」プロジェクト

「メルカリらしい寄付って何だろう?」

一つの問いを皮切りに、5年前から構想されていた、「メルカリ」での出品・購入によって気軽に寄付ができ、新しい価値の循環をつくり出す機能が、2023年12月18日に「メルカリ寄付 かんたん寄付設定」としてリリースされました。

本記事では、プロジェクトを推進した大久保雅史(@bao)、菱井康生(@hisshy)、今枝由梨英(@Vanessa-imaeda)、高橋亮平(@ryohey)の4名に、「メルカリ寄付 かんたん寄付設定」 のリリースによって、各方面にどのようなベネフィットが期待できるのか、さらにはどんな世界をつくっていきたいか、日本の寄付文化発展の展望まで、プロジェクトを振り返りながら語ってもらいました。

  

この記事に登場する人

  


  • 大久保雅史(Masafumi Okubo)

    株式会社ビズリーチにてPMとしてのキャリアをスタートし、株式会社ファーストリテイリングにて国内EC・モバイルアプリの改善、アジア・欧州・北米での新規ECや新規アプリサービスの立ち上げとその改善に従事する。2023年3月にメルカリへ入社。


  • 菱井康生(Yasuo Hishii)

    富士通に新卒入社し、インフラエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、ITベンチャーでアプリケーションエンジニアやPMを経験した後、2018年7月にメルカリへ入社。メルカリ入社後は、PMとしてiOS/Androidのモバイルアプリ体験の改善に従事し、現在は中長期での購入者/出品者体験の改善方向性を定めリードしている。


  • 今枝由梨英(Yurie Vanessa Imaeda)

    メルカリ経営戦略室政策企画マネージャー。日本銀行にて経済調査、新日銀ネットシステムの更新PJ企画、金融機関のモニタリング、海外中銀との国際協力等に従事する。2021年9月にメルカリに入社し、循環型社会を推進する各種プロジェクト、消費者政策、新規事業支援、海外政策調査等に取り組む。


  • 高橋亮平(Ryohei Takahashi)

    20代で市川市議、30代で全国最年少自治体部長職を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員、中央大学特任准教授等を経て、2018年6月にメルカリ政策企画に入り1人で自治体連携を始める。AERA「日本を立て直す100人」や米国務省のIVプログラムなどに選出。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長。政策企画ブログ「merpoli」編集長も務める。

「日本に寄付文化を根付かせる」ソーシャルグッドの輪を広げていきたい

——今回新しくリリースされた「メルカリ寄付 かんたん寄付設定」とはどんな機能ですか?また、どのような背景から始まったのでしょうか?

@bao: 出品者が「メルカリ」で出品する時に、寄付先・寄付割合を設定すると、商品が売れた時に指定の寄付先に指定の割合で寄付されるようになる機能です。これまでも「メルカリ寄付」の機能はありましたが、売り上げ残高から金額を設定して寄付する必要がありました。この機能によって、寄付先・寄付割合を設定する出品者だけではなく、購入者も巻き込んで、擬似的に寄付を経験できるようになっています。これによって、売る人・買う人の両方が世の中に対して良いことをしているという感覚を味わうことができます。

諸外国と比較すると、日本では寄付文化はまだ根付いていないと思いますが、売買をしない人も「『メルカリ』で寄付ができるんだ」と気付くことができ、不特定多数を巻き込んで寄付の輪が広がっていくのが、この機能を通じてつくりたい世界観です。

@ryohey: 実は、僕が入社した2018年当時から、寄付機能をリリースしたいと色々検討をしていました。その年は災害が多かったこともあり、「メルカリらしい寄付って何だろう?」を考えた結果、出品した物一品一品に紐づけて寄付額を設定できる機能にしたいと検討していました。残念ながら、当時はエンジニアのリソースの都合もあって、まずは物を売って貯まったメルペイ残高を寄付できる「メルカリ寄付」という機能をリリースしました。そのような経緯があったからこそ、今回プロダクト側からの提案で機会をいただき、当時思い描いていた世界観が実現できたのは嬉しいです。

高橋亮平(@ryohey)

@Vanessa: 実は、海外にはすでに類似の機能があるんです。日本よりも寄付文化が根付いている地域で実際に使われている機能から着想を得て開発されました。メルカリからの発信で、日本に寄付文化を広めていくのにも有用だと考えています。

@bao: 海外では、より寄付文化は自然なものとして受け入れられていますよね。私が台湾で働いていたとき、寄付機能でアプリをグロースさせようとする提案が多かったのが印象的でした。また、最近見た機能だと、寄付したユーザーのInstagramプロフィールに、寄付をしたという情報と、その寄付先のページがリンクされるというものがあります。寄付をすることが、自己表現の一つになっていると感じました。

@ryohey: 僕は幼少の頃ドイツで育った経験があるのですが、例えばクリスマスシーズンになるとヨーロッパではみんな当たり前のように寄付をします。社会を良くするために、自分たちでできることをしていこうという文化が根付いていると感じますし、日本にも広げていきたいと思っています。

——この機能によって、商品を売り買いするお客さまはもちろん、寄付団体や自社プロダクトなど、多方面にメリットがあるのではと感じたのですが、具体的にはどのようなベネフィットが期待できるのでしょうか?

@hisshy: 一言で言うと「ソーシャルグッド(Social Good)」の側面です。現在、「メルカリ」のマーケットプレイス内で行われているアクションに対して、寄付という新しい要素が加わることで、出品・購入によって「いいことをしている」「気分が良くなる」のような体験が得られる。それによって、お金だけではない価値の循環が生まれることが期待できます。

そしてこれは、僕たちサービス提供者にとって非常に大きな一歩になると考えています。これまでは「不要品を売って売上金を得られる」ことが主な目的となっていたマーケットプレイスに、「不要品を売ったお金で寄付をして、ちょっといいことができる」ことを目的として入ってきてくださるお客さまも増えるのではないかと思っています。

これまでの「メルカリ寄付」は、メルペイの残高から寄付を行うという仕組み上、お客さま側が強い意志を持って寄付を行う必要があったのですが、そのハードルを下げて、「普通に『メルカリ』を使っていたら自然に寄付ができている」という世界観に近づけられたのが大きなベネフィットですね。

@Vanessa: 手軽さという観点だと、寄付する側の物理的な制約がなくなるのも大きなメリットだと思います。例えば、地域のバザーだと、子供服や本だけなど寄付できる物のカテゴリに制約があったり、指定の時間・場所に現物を持っていかなければいけないという制約があったりしますよね。一方で、「メルカリ」では目の前の物を寄付したいという気持ちになった時に、パッと手軽に寄付ができるので、寄付の輪が広がっていくのではないかと思います。

今枝由梨英(@Vanessa-imaeda)

@ryohey: 寄付団体側のメリットとしては、単純に寄付額が増えることはもちろんですが、寄付という文化そのものが浸透することが挙げられます。非営利セクターの方々は、今まで寄付をしてこなかった人が寄付に興味を持って、海外のように寄付が身近になることに強い想いを持っています。新しい風を吹かせるために、民間企業のパートナーと新しい取り組みをすることに対して、非常にウェルカムな姿勢を持っていると感じますね。あらゆる人の可能性を広げて、「社会の公器」を目指しているメルカリだからこそ、その一歩になり得るのではないかと思っています。

@Vanessa: メルカリのESG推進に向けてまとめた「FY2023.6 Impact Report」の中で、5つの重点領域の1つである「マテリアリティ04:中長期にわたる社会的な信頼の構築」を前に動かす取り組みですよね。

@hisshy: 物とお金だけではない、あらゆる価値の循環を体現し得る取り組みです。自分の起こしたアクションによって、社会との接続性を感じている方は大勢いらっしゃると思います。

明確な意図を持ち、各所を巻き込んでプロジェクト推進

——「メルカリ寄付 かんたん寄付設定」のリリースにあたって、メルカリの3つのバリューの中で最も発揮したと感じるバリューはどれでしたか?

@Vanessa: やはり「All for One(全ては成功のために)」ですね!このような座組みの寄付機能は、日本にあまりないので、「どういう座組みなら実現できるのか・お客さまの負担にならない適切なスキームか」の部分を、他社の状況を調査したり、リーガル/経理/デザイン/開発/コンプライアンスの側面も含めて交通整理をしたりしていきました。かなり短い期間でリリースまで持っていったのですが、関わってくれたさまざまなメンバーが前向きに推進してくれたのはすごくよかったです!

@bao: 私も「All for One」です。私が入社して半年で、社内のこともまだわからない中で、Vanessaさん・ryoheyさんから、関係する社内の人を紹介してもらうなどのサポートを受けつつ、プロジェクトをリードしたのはとてもチャレンジングだったと感じます。

売り上げを伸ばすともまた違う機能を作ることに対して、開発チームとして一丸となれるか不安もありましたが、開発チームも「社内で重要なプロジェクトだ」と理解してくれて。メンバーの理解もあって、最終的に良いプロジェクトになりました!

ちなみに、経営メンバーもこの機能に対する改善案・意見をかなり積極的に出してくれたんです。経営陣が盛り上げてくれたことも後押しとなって、チーム全体で意欲を高めて一つになれた感覚があります。

大久保雅史(@bao)

@Vanessa: 私も同じことを感じました。私はプロジェクトにおいて経営陣とのコミュニケーションを担当していたので、彼ら/彼女らがいかにプロジェクトや機能の議論に密に関わってBold(大胆)な決断をしてくれたかを間近で感じていたんです。

個々のやりたいことを咀嚼して機能に落とし込むのは、時には大変だったと思いますが、皆さんの強いwill(意思)が発揮されていたからこそ、日本では新しいと言える機能が実現できたと思っています。

@ryohey: 僕も1つ選ぶとしたら「All for One」かなと思います。「このメンバーでやりましょう!」と最初から決まっていたというよりは、必要なことについて話していくたびに関わらなければならないメンバーがどんどん増えていく感じでした。縦割りではなく横割りの仕事スタイルで、新しい取り組みなことも手伝って、メンバーはみんな面白がって協力してくれたことは、このプロジェクトの肝だったと思います。

個人的には、6つの寄付団体との提案から契約までを1ヶ月でやりきるというミッションがあったのですが、自分に与えられたところに対しては「Be a Pro」にも推進できました。

@hisshy: 完全なる「All for One」の流れが来ている中で、僕は「Go Bold(大胆にやろう)」で(笑)。

一同:さすが(笑)!

@hisshy: 僕が一番バリューを発揮したのは、プロジェクト開始にあたっての議論をリードする部分。このプロジェクトを成功させるには、意義・意図を明確にしないと動かせないと強く感じていました。「メルカリ寄付 かんたん寄付設定」機能が結果的にサービスの成長にも繋がっていくんだ!ということを、経営陣を含めた関係者に説明し、納得してもらう必要があったんです。

お金だけではない価値も視野に入れながら、最終的にはマーケットプレイスの中の循環を広げて、それがメルカリのビジネスにも繋がっていくという展望を、さまざまな人とコミュニケーションを取りながら描いて行った部分は「Go Bold」だったと思います。

菱井康生(@hisshy)

@bao: GMV(取引流通総額)という指標は誰の目から見ても明らかなので、周囲の人を巻き込みやすいと思うのですが、それ以外の指標のところでどう周囲を巻き込み、進めていくかを考え続けたことは、とても「Go Bold」でしたよね!

長期的な利益を追求し、企業発で「やさしい世界」をつくる

——「メルカリ寄付 かんたん寄付設定」によって、寄付のハードルが低くなり、より多くのお客さまに「ソーシャルグッド」を感じていただきやすくなると思います。それによって、メルカリの目指すミッションの達成に、どのように影響を及ぼすと思いますか?

@Vanessa: 「寄付ってどういうことだろう?」と考えた時に、地域のコミュニティ・社会に対して、助け合いたいという気持ちを持つことだと思うんです。寄付という行為によって、幸せ・やりがいを感じられる世の中になっていくと思います。社会に対していいことをしたいという一人ひとりの思いが、「やさしい世界」に繋がると嬉しいですし、それがメルカリのミッションにも繋がっていくと思います。

@bao: 私も似たようなことを考えていました。この機能を通じて、他者のことを考えられるようになるといいなと思います。

今までは、「メルカリ」に出品することで売り上げを稼ぐことを主な価値として考えていた人も、他の人のことを想って、寄付機能を使う価値に気づいてくれるだろうと期待しています。そういう寄付の輪が広がっていくことで、「やさしい世界」につながると信じています!

@Vanessa: 本当にそうですよね。お金を寄付する行為は、どこで、いくら出そうというアクションのハードルが高いだけではなく、寄付した後のお金がどう使われているのかに案外目が向けられづらいこともあると思っています。気軽に、簡単に目の前にある物の寄付が実現できることで、寄付の「手触り感」も感じていただけると嬉しいです。寄付がどのように貢献されているかは、各団体のHP等もぜひチェックしていただければと思います。

@hisshy: 少し視点を変えて、メルカリのミッションという観点からお話しすると、個人が持っている不要なものをどう必要なものにexchange(転換)させるかが大事だと考えています。これはミクロな視点で、個々人がリアルに自分事にできます。(下記図左)

一方マクロな視点で見ると、「メルカリ」のマーケットプレイスを通して誰かの不要品が誰かの必要なものに転換し、必要なものの総量が増えていくことになります。そしてもちろん「メルカリ」で出品したものが売れれば売上金を得ることができるので、次の必要なものを購入できます。(下記図右)

この交換のためお金は重要な動機になるのですが、目指す状態、つまり「誰かの不要なものが誰かの必要なもの」になりさえすれば、必ずしもお金じゃなくても良いわけです。今回の「メルカリ寄付 かんたん寄付設定」によって、寄付による「ソーシャルグッド」をモチベーションとした循環が起きて、「お金にならなくても、不要品を循環させる」ことができれば、大きくミッションの達成に近づいていけると信じています。

@ryohey: 僕はメルカリで初めてサラリーマンになったんです。今までは、行政・政治・NPO団体など、まさに「ソーシャルグッド」を追求する世界に身を置いていました。そこで感じたのは、行政・政治を含めた非営利セクターだけでは「ソーシャルグッド」が実現できない時代になってきているということです。一方で、ビジネス側も社会貢献という色が濃くなっていて、お金儲けだけではない時代になっているので、行政や非営利組織などと営利組織間の在り方がシームレスになってきていると思っています。

メルカリは営利企業なので、利益の追求を前提としながらも、短期的な利益だけではなく長期的な利益を追求していく会社だと思っています。メルカリが新しい価値をつくって、循環させていくことがミッション達成に繋がっていくのではないかと思っています。

あとはとにかく、この仕組みをいろんな人に使ってほしい!願わくば、いつか「メルカリが始めたサービスがきっかけで日本の寄付文化が変わったよね」という声が聞けたら、これ以上に嬉しいことはないです!

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