まだない市場を切り開き、“次の当たり前“をつくる!——「Recommerce領域」から未来の生活様式をいかに変えていくか

2023年4月、「Recommerce領域」という新規事業開発のために新たなチームが立ち上がりました。一次流通との新たな接続の実現に向け、組成されたチームにはBizDev経験者がいない中で、どのように他社と連携して事業を推進させてきたのでしょうか。

事業責任者である與田祐樹(@yoooda)、Communication Specialistの志和あかね(@akane)、「Recommerce領域新規事業」のビジネスアドバイザーである執行役員 VP of Logistics Marketplaceの進藤智之(@shindy)の鼎談を通じ、リコマースというまだ日本にない市場を切り開いていく課題や、リコマースが実現する未来の生活様式について聞いてみました。

この記事に登場する人


  • 與田祐樹(Yuki Yoda)

    ディレクター Head of Recommerce。青山学院国際政治経済学部卒業。大手印刷会社系列のITベンチャーを経て、2011年にグリー株式会社入社。ソーシャルゲームやスマホゲームの開発マネジメントやプランニングを担当。2015年に株式会社ファーストリテイリングへ入社し、PMとしてユニクロアプリやジーユーオンラインストアの開発を担当。2018年2月に株式会社メルカリ入社し、US版/JP版メルカリにてProduct divisionのマネージャーを担当。その後、メルカリ経営戦略チームに参画。2023年7月より現職。


  • 志和あかね(Akane Shiwa)

    大学卒業後、2008年に外国人モデル事務所に入社。マネージャーとしてCMやドラマ・映画の撮影に携わる。 2014年よりPR会社ベクトルに入社し、PR会社プラチナムでは2年間TVプロモーターとして、WBSなどの報道番組から、めざましテレビなどの情報番組を担当。その後、2年半ほどPRコンサルタント・営業としてクライアントと向き合うアカウントマネージャーを担当。2018年2月よりメルカリの広報に従事し主にフリマアプリ「メルカリ」のPRを担当。2019年11月にメルカリ総合研究所を立ち上げる。 2021年10月からはソウゾウPRチームのマネージャーも兼務。2023年4月Recommerce Division立ち上げに伴いCommunication Specialist兼リコマース総研主席研究員に従事。


  • 進藤智之(Tomoyuki Shindo)

    大学卒業後、ヤマト運輸に入社し、法人支店長を経験。2007年には日本IBMにて、コンサルティング事業部にて運輸・物流のプロジェクトを担当する。2013年にアマゾンジャパンに参画し、物流ネットワークの立上げ責任者を務める。2020年、イオンネクスト準備株式会社にて理事物流部長に就く。その後、2021年にメルロジ代表取締役COOに就任、2022年2月より株式会社メルカリ執行役員 VP of Logistics Marketplace。

創業者の思いと、日本にないまだ市場を切り開く難易度の高さ

——まずは、なぜ今「Recommerce領域新規事業」が立ち上がったのかを教えてください。

@yoda:この先10年のメルカリの道筋を描くロードマップを議論する経営会議の中で、進太郎さん(代表取締役 CEO 山田進太郎)から「循環型社会の実現を目指すにあたって、一次流通と二次流通の連携を、もっとGo Boldに進捗できるのではないか」という課題提起がありました。私は当時経営戦略室に所属し、その会議のファシリテーションを担っていました。その中で、Naoki(上級執行役員 SVP of Japan Region 青柳直樹)より一次流通と二次流通を接続するモメンタム作りに挑戦してくださいというお話があり、これまでメルカリでは注力したいと思いながらも、大きな進捗がなかった一次流通と二次流通のコネクトを担う新たなチームを立ち上げることになりました。それが2023年2月のことです。

2023年初頭に、2024年度版のロードマップの議論を行った際には、コロナ下の状況を考慮した、やや消極的な内容になっていました。経営ロードマップの最初の案でも、現場も含めて慎重な意見が目立つ時期でした。しかし、そこで進太郎さんから大きな歩みを作ろうという声がけがあり、立ち上がったのがこの「Recommerce領域新規事業(以下、以下、Recommerce事業)」です。循環型社会の実現を目指すメルカリの創業者である進太郎さんにとっても思いがある新規事業と言えます。

與田祐樹(@yoooda)

——Recommerce事業の立ち上げを進める中でどんな課題が出てきたのでしょうか。

@akane:私を含めてチーム全員が営業やBizDev未経験者だったので、「連携してくれる一次流通のブランドさんを探すぞ!」となっても、最初に何から手をつけていいのかわからず、本当に手探りで開拓していきました。

@yoda:そもそもリコマースというビジネスモデルが日本にまだ事例がないため、ブランドさんも我々も「これが正解」というイメージがない中で、ビジネスを構築するということ自体の難易度がかなり高い。理解を示してくださるブランドさんもいれば、まだ全然自分ごと化できないというか、そこまで意識を向かせていないブランドさんも多くあるので、そういった中でビジネス連携を進めて行くというのは想像以上に難しいことでした。

ミッション・バリューへの共感、そして新市場へのパッション

——市場ができていない、BizDev経験者もいない、そんな環境下で新規事業を進めるためにはどんなマインドが必要だと考えていますか?

@yoda:ミッションに強く共感していることと、まだ形のない新規事業はどうしても空中戦から始まることが多いので、戦略的な理解だけではなく、ビジョンから逆算して物ごとを進めていくスキルが求められると思っています。答えがない中で、自分たちで答えをつくっていく。地に足をつけた具体的なアクションを創出していくマインドが必要だと感じています。

@shindy:事業開発は答えがあるようでない、汎用性がないロールだと思っています。メルカリのようなサービスで、かつプロダクトが強い会社にありがちなことは、自分たちの考えや自分たちが生み出したものが絶対に正しいと思ってしまうところです。ある一面において正しいかもしれないのですが、世の中は必ずしも自分たちの考えるように評価してくれるとは限りません。モメンタムを形成し、共感を得て、強い関係性をつくっていく…というところまでの道筋を作るのが事業開発の役目だと思います。

自分たちが良いと信じていることを、いかに周囲から理解を得るか。ステークホルダーが求めていることに、メルカリ内部からもアジャストさせていくことで、きちんと事業として昇華させていくということが重要です。

時にはメルカリ社内から「どっちの味方だよ」と思われるようなシーンもあるかとは思います。しかし、メルカリのミッションやバリューに強い共感を持って、Recommerce事業を成功させようという熱いパッションがあることが最終的には重要だと思います。

進藤智之(@shindy)

——色々なメルカリの新規事業を見られてきたshindyさんからみて、どんな点がRecommerce事業特有の課題だと思いますか。

@shindy:1つ目は、日本ではまだメジャーな市場ではないというところでしょうか。リコマースという新たなビジネスモデルに対して、我々のビジネスを成功させる手前に、まずはこの新市場の理解を得る活動が必要です。2つ目は、メルカリは良い意味で自己完結型の会社なので、ステークホルダーと合意を取らなければいけないという難しさです。ただ、ここは難しさである反面、事業開発に携わっている人からすると面白さでもあるので、メルカリの中でもレアなチャレンジができる領域だと思います。

——では、メルカリならではの新規事業の進め方に特徴はありますか。

@akane:私は元々メルカリでPRを担当して、『メルカリShops』が立ち上がる際に、ソウゾウに異動し、またメルカリに戻って新規事業の部署に異動するなど、本当にいろんな経験をさせてもらっています。その中で感じたことは、やっていることは違えど根本は一緒ということです。

みんなミッションに共感し、バリューに基づいて行動・判断する。そこは揺るがないのですが、ソウゾウやリコマースなどの新規事業では、「これが正解!」というものを時間をかけてつくって世に出すというよりは、ある程度生煮えであっても、まずは世に出してみる。それに対してどんどんフィードバックをもらって、より早く進めるという特徴があると思います。

志和あかね(@akane)

リコマースで新たな当たり前をつくり、生活様式を変えていく

——事業内容について具体的にうかがっていきたいのですが、「この世の中をどう変えていきたいか」ということに重要なポイントがありそうです。こういう未来がいいという、描いているイメージは何かありますか。

@akane:私はリコマース総研の研究員でもあるので、海外のリコマース事例や消費行動の変化などを調べているのですが、海外だと再販価格を意識して一次流通のものを買うことが若年層を中心に当たり前になりつつあります。安いからといって飛びつくのではなく、二次流通でも値崩れしない、ブランド力が高いものが買われていることがわかっています。

日本にもリコマースが根付くと、 サステナブルな生活を楽しむ人たちが若年層を中心に増えていくと思います。そうすると、消費者の買い物体験が変わり、生産者のモノの作りが変わっていくと期待しています。モノの作り方が変わった結果として、大量生産大量販売大量破棄のような、環境負荷が高いビジネスモデルが変っていく好サイクルが回せるのではないかと思っています。今はまだ日本に市場がないリコマースが10年後には当たり前になっていて、「あれが我々の一歩だったよね」みたいに言えるポテンシャルがこの事業には十分にあると思っています。

@yoda:いつもチームで言ってるのは、「生活様式を変えていきたい!」ということ。モノを大切に扱うことはすごく大切だし、使い終わった時に、それを必要としている方に滑らかに譲り渡すことによって、また新しい良いモノを買っていくというような、生活習慣や生活様式が根付いていき、それによって色んな市場の新しい可能性が拓けていく。

私たちが描いているのは、モノを大切にするという生活様式の周辺に、新しい経済成長の種が増えていき、さらに新しい付加価値を人々が付けていくような世界です。その第一歩をこのRecommerce事業でチャレンジして、追求して行きたいと思っています。

——アドバイザー的な立場で関わられているshindyさんが、今後のRecommerce事業に期待することはなんでしょうか。

@shindy:すごく大変なチャレンジではありますが、「次の当たり前」をつくろうとしていますよね。「次の当たり前」というのは、例えば車をイメージしてみてください。新車か中古という選択肢が市民権を得て当たり前になっています。先ほどakaneさんが言ったように、車はリセールバリューまで見据えて購入する人が少なく有りません、中古車市場のマーケットがすでに大きいことはもちろんですが、生産台数にも限りがあるので、もう一度、場合によっては何度でも使うことの大切さが市民権を得ています。

そうした考えは車に限らず、さまざまなマーケットにどんどん波及していくべきだし、その広がりを推し進めていくことが、Recommerce事業の根幹にあることだと思います。Recommerce事業の活動そのものが、「次の当たり前」をつくることですし、それができるチームだと思っています。

メルカリのアセットを活用し、アウトプットを早く出す

——ずばり直球でうかがいますが、メルカリが「Recommerce事業をやる意義」とは?

@yoda:このRecommerce事業は、メルカリのグループミション「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる(Circulate all forms of value to unleash the potential in all people)」と密接に結びついているものです。

これまでメルカリはオールジャンルのモノの売り買いが行われ、人々の生活様式を変えてきました。多くの人々にとってまだなじみのないリコマースという業態であっても、そこにメルカリが携わることによって、お客さまに興味や安心感を持っていただけると思います。また、Recommerce事業事業をやってる他社さんからは、「メルカリが先陣切ってもらえるとすごく助かる」という声もいただいています。

世の中から期待をすごく感じますし、それを変えるだけのアセットがメルカリの中にはあると確信しています。

——生活様式を変えるものだったり、あるいはまだ馴染みのないものを浸透させていこうとする時に、とるべきアプローチはありますか。

@yoda:実物を作るということはすごく大事だと思います。以前はチーム内でも「どんなアウトプットにすればいいんだろう」と議論のフェーズで迷ってしまうことが多かったのですが、 「もうここは迷っても仕方がない!」とある意味割り切って、一回アウトプットを作りましょうと仕切り直しました。

「これが我々のなんかリコマースの形だ!」というものを一回形作って、まずは世に出せる状態にする、それをベースにいろんな方からフィードバックをいただく。 そして、この一連のサイクルを高速でどんどん回していくことで、加速度的な学びを得て、パートナーさんへの浸透を実現させようとしています。どうしたら最短でリリースできるか、様々な制約を外しながら日々検討していますし、チーム全員が共通の目線でいる必要があります。これから新しい仲間をどんどん迎えていくので、ここはぶらさずにやっていきたいと思います。

新規事業に必要な人材は“諦めが悪い人”

——現在、Recommerce事業では、これからの事業の中核を担っていくHead of Businessを募集しています。このポジションで活躍できそうなキャラクターやスキルなどがあれば教えてください。

@yoda:新しいことを切り開いてきたフロンティア精神旺盛な人は、マッチすると思います。ですが、ただ遮二無二に突っ込んでいくのではなく、色んなビジネス要件や制約、置かれている環境などを組み合わせながら、ハイレベルにロードマップを組み上げて、道を切り開いていける方は活躍することがイメージできます。 また、社内外のステークホルダーを巻き込み、理解を得ながら物ごとをどんどん推進する力が非常に求められると思います。

@shindy:ハードスキルとソフトスキルがあると思いますが、ひと言で言うならば“諦めが悪い人”が1番いいと思います(笑)。 新しいことをやるには、諦めないという胆力が必要。人は得てして経験してきたことでしか物ごとを判断ができないので、新しいことはなかなか受け入れられないものです。基本的に拒絶から始まる中で「この道こそが正しいんだ」、 「こうあるべきだ」と突き進むには、やはり諦めない心が重要です。それは“信じるきる力”とも言えるかもしれません。

@akane:カオスな状態が苦ではなく、新しい挑戦にワクワクしながら楽しめる方ですね。先ほどshindyさんもおっしゃった通り、私たちがつくろうとしている事業は簡単に受け入れられるものではありません。そんな中でも、一次流通のブランドさんと対話を重ねていくと、「私も実はそう思っていたんです!」と言ってくださるハイブランドのSDGs担当者に出会えたり、小さな共感が少しずつ広がっていく実感があります。その「共感の芽」を一緒に大きくしていける方ににジョインいただけると嬉しいです!

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