メルカリが世界を変える存在になると信じている——Meet Mercari’s Leaders〜篠原孝明(Chief Product Officer)

「人が人生で初めて触るインターネットサービスを作りたい」。

自身のキャリアの原点にある想いをこう語るのは、執行役員 Chief Product Officer(CPO)の篠原孝明(@unryu-in)です。10歳で経験したネット上の購買体験に衝撃を受け、インターネット業界で多種多様な経験を積んだのち、現在はマーケットプレイスの成長をリードしています。

篠原はキャリアを通じて「自分なりの原体験」を作ろうとしてきました。それは、言い換えるならば、経験を自分なりに噛み砕いて血肉に変えてきたということ。その証拠に、仕事で大切にしていることを聞くと、借りてきた言葉ではなく、彼自身の言葉で明確に答えてくれます。今回は、篠原がキャリアを通じて学んできたことや、CPOとして働くうえで意識していること、そして彼から見たメルカリの可能性について聞きました。

この記事に登場する人


  • 篠原孝明(Takaaki Shinohara)

    フリーランスのWebディレクターを経て、2012年にグリー株式会社入社。2014年に株式会社ビズリーチへ入社し、転職メディアを立ち上げる。2017年9月に株式会社メルカリ入社。Director/Head of CREを務め2020年4月より株式会社メルペイへ異動。アライアンスプロジェクト責任者を経て2021年1月に株式会社ソウゾウを設立し、Head of Product就任。2022年7月、執行役員不正対策日本統括就任。現在は執行役員 CPOとしてマーケットプレイスの成長を牽引。


マーケットプレイスの顧客体験をアップデートする

——まずはunryu-inさんが担当されている領域について教えてください。

マーケットプレイスのCPOとして、メルカリアプリの成長を実現する役割を担っています。ビジョンに掲げているのは「あらゆる人の価値の循環が、圧倒的に加速されるプロダクトを創る」こと。その実現に向けて数値的な目標だけではなく、「お客さまにこういう体験を提供する」といった定性的なゴールを3年先まで策定し、達成のための各種施策を推進しています。

——どのような顧客体験を作ろうとしているのでしょうか?

大きくは3つ掲げていて、1つ目は「お客さまが売買だけでなく、好きなモノやコトで繋がっている」ようにすることです。サーフィンが好きな人がサービスを使っていく中で自然とそれにまつわる商品に出会えるようになります。また、お客さま同士によるコミュニティを作り、「初心者の方はこれを買おう」といった情報も得られやすくできたらと考えています。

2つ目は、メルカリに毎日訪れたくなるような体験を提供することです。たとえば、毎晩決まった時間に自身の興味関心に纏わるイベントをやっていたり、現実世界の蚤の市のように偶発的なヒトやモノとの出会いが体験できたり。そんな掘り出し物に出会えるワクワク感を強めていきたいです。

3つ目は、「出品者」を軸としたディスカバリー体験を作りたいと思っています。現代の消費行動はSNSやインフルエンサーが軸となっているのに、メルカリ上では個人名を出してSNSと紐づけて活動している人はあまりいません。なぜなら、不要なものを売ることは、その人のブランディング上難しい場合も多いからです。この辺りのペインポイントを解消することで新たな体験につなげていきたいです。

前職で学んだ「自分なりの原体験」と「勝ち癖」の大切さ

——アップデートが楽しみですね。unryu-inさんは、昔からサービスやプロダクトを作ることに興味があったんですか?

そうですね。仕事としてものづくりに触れたのは18歳のときでした。フリーランスのWebディレクターとして、Webページ制作を始めたんです。Youtubeを見てコーディングなどの知識を学び、なんとか納品するというのを繰り返していました。

4年間フリーで働いた後、22歳のときにグリー株式会社に入社しました。フリーランスとして一人で働いていては、作ったサービスを通じて関われる人の数には限りがあり、人生時間のROIを高めるために利用者の多いサービスに携わりたいと考えたからです。グリーでは、ネイティブアプリ特化の開発スタジオを立ち上げるなど、さまざまな経験をさせていただきました。

——その後、株式会社ビズリーチに転職されましたね。転職の理由はなんだったのでしょうか?

担当していたサービスで大きなマーケティング施策を打つかどうかの議論をしていた際、経験のない自分からするとTVCMなどを打つべきなのか、まったく判断ができないということを経験しました。一方、創業期からグリーにいる人たちは、過去にCMで事業を伸ばした原体験を持っています。その姿を見て、まだブレイクスルーが起きていない会社で「自分なりの原体験」を積むべきだと考え、当時150人くらいの規模だったビズリーチに転職しました。

ビズリーチには営業として入社したのですが、毎月個人OKRを達成し4ヶ月目に新規事業のPMとして異動しました。そのまま事業責任者なども経験させていただきサービスの立ち上げからグロースまで経験しました。

——当時の経験で、今に活きているものはありますか?

特に大きかったのは「勝ち癖」が身についたことですね。ビズリーチは泥臭いことをしてでも必ず目標を達成しようとする会社です。入社当初は営業だったので、月末にはいつも死に物狂いでアポイントをとって受注につなげていました。社長自ら現場の鼓舞を続け、達成できたあかつきには、全力で喜び合う。そんな環境だったからこそ、絶対に成果を諦めないという姿勢を原体験として学べました。

10歳でした衝撃的な体験がメルカリ入社につながる

——事業責任者としても活躍されていたなか、メルカリに転職された経緯を教えてください。

明確な転機のようなものがあったわけではないですが、新規事業を立ち上げる際にだるまの片目入れをして目標を掲げていたのですが、それを達成し、だるまに両目を入れた日にたまたま知人から誘われてメルカリのオフィス見学にいくことになったんです。そこで、当時国内版メルカリのプロダクト責任者だった伊豫(健夫)さんと1on1をする流れになり、そのまま面接へと進み、入社することになりました。

ビズリーチを辞めたことにネガティブな理由はまったくなくて、本当に偶然タイミングが合ったということだと思います。ただ、あえて言うならば、C向けのプロダクトに携わりたい気持ちはずっと持っていました。というのも、僕がインターネット業界に進んだ根本的な理由が、10歳で初めてヤフオクを触ったことだからです。

——10歳でヤフオクですか!

10歳の頃、初めてヤフオクでゲームを買いました。行ったことのない北海道の知らない方からゲームが届いた体験は衝撃的でした。子どものころの自分にとって、不要なものを売って新しいゲームを買うという体験が大好きだったんです。

そんな体験があったので、僕がインターネット業界で働くモチベーションは「人が初めて触るインターネットサービスを作りたい」が根源にあります。UI/UXがかんたんで、おそらく10歳未満でも、(保護者の同意があれば)モノの売買が可能なサービスであるメルカリに対して、強いシンパシーを感じました。

——メルカリ入社後は、多種多様な役割を担当されていたと思いますが、特に印象的な仕事はありますか?

いくつもありますが、一つ大きかったのは「Customer Reliability Engineering(CRE)」というお客さまとの信頼関係を強化する組織を立ち上げたことです。当時メルカリは上場間近でしたが、それまではオフェンシブなグロースに注力していたために、顧客体験やカスタマーサポートといったディフェンシブな領域の補強が必要でした。
この組織ではVOCやNPSを活用した継続率改善や不正対策(Trust and Safety)、カスタマーサポートツールの機能開発などを行っていました。一例を出すと、当時はお客さまに問い合わせいただいてから一次返信までに数日間かかっていたんです。そこで、CRE Divを立ち上げて問い合わせ削減や顧客体験の改善によって、3ヶ月後には一次対応までの時間を目標のサービスレベル以上に短縮することができました。

それから不正対策や緊急事案系のプロジェクトオーナーにアサインされる機会が増え、気づいたらジャンル問わず緊急事案が発生するたびに声がかかるようになりました(笑)。

その後、メルペイでアライアンスプロジェクトを推進した後、2020年末にHead of Productとして株式会社ソウゾウを立ち上げました。ソウゾウでは『メルカリShops』をリリースした後に、国内事業全体の不正対策を強化すべくJapan Region Trust and Safety(TnS)を立ち上げています。

TnSは、メルカリをお客さまにとって安心・安全なサービスにするために主に不正対策の側面から機能開発・オペレーション構築を推進する組織です。当時は各事業部それぞれが不正対策を行っていたのですが、不正対策に関わる国内事業すべての開発組織/オペレーション組織/分析組織を統合しました。リスクレベルの高い潜在的なリスクを解消した後、マーケットプレイスCPOに就任したのが現在です。

——どのようなことを意識してキャリアを築いてきたんですか?

僕は偶発的に築かれるキャリアというものが好きで、TnSに参画したのも、過去の延長線上にはない選択です。メルカリにはこうした予期しないオポチュニティーがたくさんあるので、それらを一つひとつ120%で打ち返し続けていくことで、点と点が結ばれていきました。

また、僕はなにか特化した専門性を持っていないからこそ、問題を客観的に捉えて各領域の専門性を持っているメンバーを巻き込んで課題を解決してきました。そのなかで、プログラムやプロジェクト全体をマネジメントする力が育まれてきたのだと思います。

全体へのコミット、セルフマネジメント、組織作り……CPOとしての仕事哲学

——現在、CPOとして働くなかで意識されていることはありますか?

いくつかあって、一つは大前提の心構えとして「小さな帰属意識を捨てよ」ということです。自分がどこのチームの人間だとラベルを貼ると管掌範囲や役割が狭まってしまいます。あくまで、「メルカリグループとしてやるべきことをやろう」と考えています。

また、セルフマネジメントの観点で意識しているのは「自己評価はローソク足で見る」こと。株価の動きを陽線と陰線で見るように、自分の仕事が上手くいっているかそうでないかは、どの時点で自己評価するかによって変わります。

プロジェクトを進めるなかで一時的につまづいたタイミングで自己評価をしたら、ネガティブな評価になってしまうでしょう。でも、失敗してから巻き返して、成果が出たタイミングで自己評価をしたら、ポジティブに感じられる。特に新しい挑戦をする際は、デイリーやウィークリーで自己評価をしたり、周りの目を気にしたりするのではなく、「勝つまでやりきる」意識を持って長い目線で取り組むことがモチベーションを安定化させるために大切だと思います。

——先ほどの「勝ち癖」をつけるという話にもつながりますね。他にもありますか?

CPOの仕事とも密接に関わるのですが、「人を巻き込む力」を大事にしています。

いくら素晴らしいアイデアがあっても、それをお客さまにデリバリーするためには、社内外のステークホルダーの連携が不可欠です。メルカリには専門性の高いメンバーが多く、彼らの力を最大限発揮できるような強い組織や体制が作れれば、自分が考えたことが何倍にも昇華されるはず。

求心力のあるプロダクトビジョンやロードマップなどを作り、「組織で勝ちに行く」ことを強く意識してきました。

——求心力のあるビジョンやロードマップはどうやって作るのでしょう?

営利企業なので、ビジョンやロードマップがビジネス貢献につながることが明確でないと、各施策の優先度は上がりません。ですから、まずは中期経営計画とうまく接続させて作るようにしています。

ただ、数値だけでは語れない目標もありますよね。たとえば、安心安全にまつわる項目もそう。将来のリスクをケアするものですから、ROIが見えづらくリソース投資の判断がされづらい。ハートドリブンに挑戦したいプロジェクトや、先行事例の無い挑戦もそう。

それらに合理的に取り組んでいくためには、ビジョンを言葉にして語るしかありません。だから、今のプロダクトビジョンやロードマップは、グループビジョンから考え、ブレイクダウンした定性的な目標を接続させました。

考え抜いた実践だけが、自分なりの原体験を作る

——unryu-inさんから見ると、メルカリはどんな会社でどんな人が活躍しやすいと思いますか?

メルカリのいいところは、誰でも提案ができるところだと思います。それが、冒頭で話したビズリーチへの転職理由でもあった「自分なりの原体験を作る」ことにつながります。

自ら課題を特定し、企画し、経営メンバーに提案し、フィードバックで叩かれる。そこで自分に抜けていた観点を知り、修正して実行に移す。その施策がたとえ失敗したとしても、それだけ考え抜いたものがどう転んだのかを知ることこそが、一つの原体験になります。

これは、なんとなく上長や周りが言っていたことを担当者として実行するだけでは、絶対に得られないものです。「自分の推し案はこれだ!」と言い切れるまで考え抜き、将来につながる原体験を積み重ねていきたい人にとって、メルカリはいい環境だと思います。

——今後のメルカリだからこそ挑戦できることはありますか?

メルカリはC2C領域におけるリーディングカンパニーなので、未来の「当たり前」を作るレベルの企画に携わることができます。また、近年ではESG領域におけるリーディングカンパニーになることも目指していて、これから大きく打って出るタイミングです。

具体的な言及は避けますが、たとえば、企業活動における余剰材や廃棄されるものをアップサイクルして、リユースやリセールにまわす仕組みに着目しています。メルカリのプラットフォームならば、世界中から壊れたものを集め、それを補修し、その人たちが修理したものを出品して対価を得る、という座組も作ることができると思います。

こうした座組は自社だけでなく、地球を守るためのビジネスを展開している企業と一緒にできたらなおよさそうです。「捨てるをなくす」ということがメルカリの根源的な想いとしてあるので、企業の枠組みを超えた連携にも今後は力をいれていくべきことだと思います。

僕は、ESG領域の取り組みや、国境を超える価値の交換を実現する「越境EC」も含め、メルカリが本当に世界を変える存在になると信じています。一緒に挑戦してくれる方をお待ちしています。

番外編:私のメルカリ活用術!

メルカリでよく購入するのは、住んでいる地域が指定するゴミ袋です。スーパーやコンビニで10枚セットで売っていますが、たとえば引越しなどで使う場合、だいたい1〜2枚使って余るじゃないですか。それらが安く出品されているのを見かけたら、買うようにしています。普段値引きされることはない商品ですし、なおかつ安価なので、ポイントを消費するのにもいいですね。もはや外でゴミ袋を買うことはほとんどなくなりました。

あとは、新しいデバイスやプロダクトに触れることを大切にしているので、古い型のものはメルカリに出品して代謝させています。機能やデザイン、価格帯について知ることもそうですが、プロダクトがどう進化しているのかを知るために、どんどん新しいものを体験してみるんです。プロダクトに関わる仕事をしている方におすすめのメルカリ活用術です!

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