覚悟を決めて数字を追う。メルペイマーケ責任者がメルカリ時代から一貫していること

「コンビニのおにぎりが11円!」「メルペッペッペ〜イ♪」ーー。

2019年2月に決済サービス「メルペイ」をリリース後、一人でも多くのお客さまに使っていただくきっかけをつくるべく、キャンペーンはもちろん、テレビCMなどさまざまなマーケティングを行ってきました。その裏側を支えてきた一人が、メルペイグロースチームのディレクター山代真啓です。

実は山代、もともとはメルカリのマーケティングチームでマネージャーを担当。狼と牛をモチーフにしたテレビCM「売ルフと買ウガール」のほか、オフライン・オンラインでのマーケティングを手掛けてきたわけですが、なぜメルペイへ? 理由を聞いてみると、返ってきたのは「本当のゼロイチを経験したかったから」でした。山代が語る「本当のゼロイチ」、そしてメルカリ・メルペイのマーケティングで一貫し続けている覚悟をインタビューしました。

「マーケティング×プロダクト」でトップラインにコミットする

ー山代さんはメルペイで、コンビニのおにぎりが11円になるクーポンやテレビCMなどを手掛けてきましたが、その前まではメルカリのマーケティングを担当していたんですよね?

山代:僕がメルカリに入社したのは2017年。なので、わりと古株なほうかと思います(笑)。前職の外資系企業では、10年ほどマーケターをやっていました。日本で5年、シンガポールで5年ほど消費財領域のマーケティングを担当していたんですが、そこで感じたのが「世界における日本のプライオリティが下がり始めている」ということ。マーケットと人口には関連性があり、どちらが減ってもいけない。日本の場合、少子化によって人口が減っていて、それに伴ってマーケットが縮小し、魅力がなくなり始めていたんです。そういった現状を目の当たりにして、何と言うか、愛国心みたいなものが芽生えたんですよね。そこで「次に働くなら、日本の成長産業で仕事がしたい」と思うようになりました。

山代真啓(メルペイグロースチーム、ディレクター)

ーなぜ「成長産業」?

山代:成長産業って、マーケティングが発達しにくい領域なんです。なぜなら「成長している=注目が集まっている」ということで、プロダクトや商品を必ずしも自ら積極的に売り出す必要がないから。特にIT業界では、プロダクトアウト的な思考が強い傾向もあります。もちろん「いいものをつくれば売れる」という考えには賛成です。しかし、最近ではプロダクトや商品に魅力があっても、差別化を図れず衰退していく企業も増えています。だからこそ僕は「マーケティングが発達しにくい」と言われる成長産業でプロダクトとマーケティングを融合させ、事業を伸ばしてみたい。これは、大きな挑戦になると思いました。

ーメルカリに入社後は、当時マーケティングを担当していた小泉さん(メルカリ取締役兼COO)と一緒に、テレビCMなどを手掛けていったんですよね?

山代:ですね。当時から考えていたことの1つに「予算を一番使うマーケティングチームこそ、トップラインの責任を負うべき」があります。メルカリでのトップラインとはGMV(総流通総額)を指します。メルカリ入社後は小泉さんからマーケティング業務を引き継ぐと同時に、オフライン・オンラインマーケティング、CRMグロースが一枚岩になれる体制を構築。プロダクト開発チームとも密に連携できたおかげで、2017年12月当時の高いGMV目標を達成できました。

異動後すぐ「マーケティング」「HR」のマネージャーを兼任した理由

ーそして、2018年1月にメルペイへ異動するわけですが?

山代:僕、メルペイに異動するまで「ゼロイチ」を経験したことがなかったんです。前職では、減速しているビジネスをターンアラウンド(事業再生)させたり、グロースフェーズに入ったブランドを「加速させる役割」としてマーケティングを担当してきました。メルカリの場合は後者です。だから、そろそろゼロからつくり上げる経験をしたかった。そこで運良く直樹さん(メルペイ代表取締役)から「メルペイどうですか?」と声をかけてもらい、異動を決めました。とはいえ、最初からメルペイのマーケティングだけに注力していたわけじゃなくて。

ーどういうことです?

山代:当時のメルペイは、全メンバー合わせて50名以下。サービスも全力で開発中。そうすると、ぶっちゃけマーケティング以前に、採用をはじめとした組織づくりが急務だったんです。

ー何というか、ゼロイチっぽい。

山代:ですよね。僕も「これがゼロイチかー!」ってなりました。「何か、何かできることはないのか!」となっていたところ、ちょうどメルペイHRチームのマネージャーが空席だったので「何でもやらせていただく所存でございます!」みたいな感じで、マーケティングとHRのマネージャーを兼任していました。

ー当時のメルペイは、組織も事業も垂直立ち上げ状態。そのなかで、人材採用は急務だったんですよね?

山代:そうですね。コーポレートだけでなく、プロダクト開発チームも一丸になって採用に取り組んでいました。でも、僕にはHRとしての経験はなかったので。メルペイのコーポレート部門をリードしていた横田さん(現・メルカリ執行役員VP of Corporate)と二人三脚になり、チームメンバーである松尾さんや北原さんと一緒に200名規模まで大きくしていきました。

ーかなり急ピッチ!

山代:いやもう、本当に毎日がスポ根でしたね! HRチームとマーケティングチーム兼任時代は無我夢中で。正直、当時の記憶はあまりないです(笑)。

メルペイ初のテレビCM放映の瞬間は「胃が痛かった」

ーリリース後には、セブン-イレブンのおにぎりが11円で買えるキャンペーンなどがありましたよね。これは、何を意図して考えられた施策だったんですか?

山代:メルペイのマーケティングで意識していることは2つあります。まずは「お得で便利」であると伝えること。誤解を恐れずに言ってしまうと、世の中には「ちょっと高くて便利」「お得だけど、ちょっと不便」なサービスがあります。お得と便利、どちらかが欠けていると、サービスを使おうという気持ちになりにくい。逆に言うと「お得で便利」ならば、使わない理由がない。この2つをどう両立させるかは、常に意識していました。

ーそして2つ目は?

山代:2つ目は「楽しい」ということ。お金を使うって、それほど嬉しい行為じゃないですよね。お金、なくなりますし。なので、クーポンをめくるワクワクだったり、使うことで何かがお得になったり、少しでも楽しいと感じる要素を加えるようにしたんです。

ー確かに、「めくる」はワクワクします。

山代:でしょう? 「100円お得になる」は、「110円の商品が11円で買える」と言われたほうがなんだかお得に感じるし、ワクワクするじゃないですか。そこで「100円の価値が高いところで勝負する」とチーム内で話し合い、「コンビニ」「おにぎり」にフォーカスして誕生したのが、「おにぎりが11円になる」という最初の戦略でした。

ーGWでは、支払額の50%相当(セブン-イレブン店頭での支払いの場合は70%相当)がポイント還元されるキャンペーンも実施。これは、3月での「おにぎり11円」で手応えを感じたから?

山代:そうですね。メルカリでの売上金をメルペイ経由で支払う体験さえしてもらえれば、一定のお客さまが使い続けてくださることは数字でも見えていました。ならば、クーポンの次はポイント還元ということで、インパクトを強めるためにテレビCMを含めた施策に挑んだんです。これもう、今だから言いますけど本当に緊張した……。

ーメルカリでもいろいろなテレビCMを手掛けてきたのに?

山代:ゼロイチのフェーズで、しかも最初のマスマーケティングに立ち会うのは、これが初めてだったんです。今まではある一定規模の商品やサービスのマーケティングだったので、過去データにもとづいた施策を打てるため、それほど大失敗しません。でも、メルペイはまさにこれが一発目。失敗したら、会社辞めようと思ってましたから。

ー覚悟が。

山代:キレイに表現すると「覚悟」になりますけど、実際はテレビCM放映開始までずっと胃が痛くって。前日はメルペイのリリースパーティーだったんですけど、心ここにあらず。チームメンバーみんなで放映開始当日0時を見守った瞬間は、今でも覚えています。嬉しいことに初速でけっこう伸びて「いけるかもしれない!」という雰囲気になってから、ようやくホッとできたんですよね。

メルペイが次に挑むのは、マーケティングとデータの掛け合わせ

ー異動後すぐにHRチームとの兼任、そしてメルペイ一発目の大型キャンペーン。濃いというか、何というか。

山代:マーケティングを本格始動したのは4月ですが、もう1年くらいかけてやりきった感じがありますよ! GWの実績があるからこそ、加盟店さま側から「キャッシュレスを盛り上げたい」と声をかけられることも増えました。3社タイアップのキャンペーンCMで「メルペイするならファミリーマート♪」、マクドナルドの「メルッペッペイペ〜イ♪」、吉野家の「牛丼実質114円」などのコラボが実現したのも、これまでの経緯があったからです。とはいえ今、「他の決済サービスの背中がやっと見えた」くらいだと思っています。

ーぎりぎり生き残れたという感じでしょうか?

山代:ですね。ペイメント業界は、いい意味でしのぎを削り合っている状態です。そして、常に戦局が変わっています。1つの施策がうまくいったからといって、全然安心できない。そこで7月からは体制を少し変え、引き続きマスマーケティングやデジタルマーケティング、CRMなどを行いつつ、メルペイBI(Business Intelligence)チームとともに「トップラインをつくるグロースチーム」として、今まで以上に効果的な施策などを考えるようにしたんです。

ーマーケティングとデータの掛け合わせですね。

山代:先ほどもお話ししたように、一番予算を費やすマーケティングこそ、トップラインに対する責任を負うべきなんです。そうすると、経営が安定し、プロダクトと二人三脚になれる。そして、プロダクトが未来をつくれると思うんです。それに、メルペイって、新規事業ですからね。大きな戦略やビジョンも大事ですけれど、忘れちゃいけないのが足場を固める確実な成長。これがなければ、新規事業なんて成り立ちません。とにかく目の前の数字を一つひとつ積み上げないと生き残れないと思います。その先にこそ、ミッションの実現があると考えているんです。

ー攻め続けないといけない、という。

山代:そうそう。今、メルペイはようやくスタートラインに立ったところ。本当の意味でのグロースは、ここからが本番なんです。

山代真啓(Masahiro Yamashiro)

慶應義塾大学を卒業後、P&G Japan マーケティング本部に入社。 紙おむつ「パンパース」ブランドの日本市場を担当後、シンガポールにて同ブランドのグローバル、アジア市場のブランドマネージャーに。 その後ヘアケアブランド「パンテーン」の商品開発、マーケティングを牽引。2017年6月より株式会社メルカリに入社。 マーケティングチームマネージャーとして、TV CM等ブランディング、獲得型オンラインマーケティング、グロース領域までマーケティング全般を統括。2018年4月からはメルペイに異動し、マーケティングとHRを兼務、組織の立ち上げに従事。7月よりグロースチームのマーケティング責任者としてディレクターを務める。

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