「6,000万DLのメルカリがユーザビリティテストを大事にする理由」メルカリプロデューサーのあたまのなか by 宮田大督

すでに多くのお客さまにダウンロードされているメルカリが、ユーザビリティテストを重視する理由はなんですか?ーー。

メルカリJPのプロダクトオーナーである伊豫が、メルカリで働くプロデューサーに実際の企画と結果、そして各々のバックグラウンドに迫るインタビュー企画第6弾。今回は、メルカリUXチームのプロデューサーである宮田大督が登場します。

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宮田大督(Daisuke Miyata)※写真左

大学院卒業後、 2008 年に新卒としてNTTコミュニケーションズ株式会社に入社し、新規事業開発等を担当。2012年に楽天株式会社へ入社。UXディレクターとしてさまざまな業態のWEBサービスにおけるUXデザイン/調査業務を行い経験を積む。 2015年よりプロデューサーとしてメルカリに入社。US版メルカリの改善に2年ほど従事し、現在はJP版メルカリのUI/UX改善を担当しながら、ユーザー調査をサービス改善に活かす仕組み作りなどに取り組む。


伊豫健夫(Takeo Iyo)※写真右

大学卒業後、松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)、株式会社野村総合研究所を経て、2006年に株式会社リクルート入社。中長期戦略策定および次世代メディア開発など、大小問わず多数のプロジェクトを牽引したのち、2015年3月株式会社メルカリに参画。2016年8月より執行役員。US版メルカリのプロダクトマネジメントを担当後、2017年4月より国内版メルカリのプロダクト責任者を務める。

メルカリではユーザビリティテストを週1で実施

伊豫:そもそも僕と宮田さんは、JPでもUSでも一緒に仕事をしてきて、今でもUI/UXに関する相談に乗ってもらったりしているんですよね。

宮田:そうですね、伊豫さんとはなにかしら仕事で関わっていますよね(笑)。

伊豫:そうそう(笑)。メルカリでは、UXを良くするための1つの検証としてユーザビリティテストやユーザーインタビューをよく行っています。最近ではユーザビリティテストを特に多くやっていますが、メルカリではどういったお客さまを中心に、どれくらいの頻度でテストしているんですか?

宮田:基本的には週1回の頻度で行っています。ご協力いただいているのは、今までメルカリをまったく使ったことがないお客さまと、既存のお客さまの2属性ですね。

伊豫:ちなみに、メルカリをまったく使ったことがないお客さまは、どういったところでつまずく人が多いんですか?

宮田:「出品ボタンに気づけない」というものがありましたね。デザインとしてわりと目立つように大きくしていますが、メルカリを使ったことがないお客さまには通じなかったんです。

伊豫:メルカリを使い慣れたお客さまのユーザビリティテストで驚いたことはありますか?

宮田:驚いたのは、メルカリをメディアとして活用しているお客さまがいたことです。例えば「自転車のパーツが好きだけど、そういった雑誌がない」というお客さまの場合、保存した検索条件から新しい商品をチェックするといった雑誌感覚で活用されていましたね。

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伊豫:そういえば僕と宮田さんがUS担当だったときにも、ユーザビリティテストをやりましたよね。あのときに感じたのは、ユーザビリティテストでは国民性みたいなものが表れるということです。

例えばアメリカのお客さまの場合、使いにくい部分があれば我々に説明を求めて「あ、そういう意図があったのね。OK!」とポジティブに受け止めてくれるパターンが多かったりする。だから、アメリカのユーザビリティテストは、日本より総合点が高いことが多いんです。

一方で、日本のお客さまは操作でつまずいてもあまり質問しようとしないので、こちらから「どんな感じですか?」と聞く頻度が高くなるんです。そして、総合点もやや低めだったりします。

宮田:そうですね。だからこそユーザビリティテストでは、国民性も考慮する必要があります。アメリカのお客さまの総合点が高いからといって「アメリカでは使いやすいと言われている」と勘違いしてはいけない。

国民性の話にもありましたが、ユーザビリティテストではできるかぎりバイアスを取り除くようにして、参加してくださっているお客さまの行動をよりつぶさに観察する必要があります。

6,000万DLのメルカリがユーザビリティテストを大事にする理由

伊豫:メルカリは、日本では6,000万ダウンロードされていて、すでに多くのお客さまに使っていただいています。僕が今日一番聞きたいと思っていたのは、「それほど多くのお客さまに使われているメルカリがなぜユーザビリティテストを大事にしているか」なんです。

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宮田:伊豫さんのおっしゃるとおり、日本のメルカリは多くのお客さまが使われているので、UIを少し変えたからといってすぐに数値が上がることはありません。しかし、だからと言って、お客さまが不満に思っているところにじゅうぶんアプローチできているかというと、そうではなかったりします。

メルカリが多くのお客さまに使われているということは、僕らが知らない使い方もされているということです。だから、お客さまに協力してもらって、僕らが拾いきれなかったイシューを見つけて、どんどん改善していく。そうやって、究極のUXを極めたいと思っているんです。

伊豫:先ほど、ユーザビリティテストはほぼ毎週行うというお話でしたが、なかなかの頻度ですよね?

宮田:理由は2つあります。1つは、回数が少ないとデータが偏ってしまうからです。できるかぎりデータを増やすためには、回数は多いに越したことはないんです。

もう1つは、実はユーザビリティテストの目的の中にはモックアップと呼ばれる、いわゆる開発中の機能などを見せてお客さまに試してもらうというものがあります。

メルカリでは毎週なにかしら新機能などがリリースされています。リリース前の検証も行おうとすると、週1回という頻度になるんです。

伊豫:この話の流れだと、メルカリはまさにユーザビリティテスト・ドリブンなリリースサイクルとも言える気がします。

宮田:まさにそうですね。

モックアップ段階で発覚した「売上金で購入」画面の盲点

宮田:モックアップ検証での具体的な事例は、昨年末くらいにリリースした「売上金でポイントを購入する」があります。

それまでは売上金を使って商品を購入できるフローでした。それが「売上金でポイントを購入し、それを使って商品を購入する」に変わったため、商品購入ステップの中に「売上金でポイントを購入する」を加えることになったんです。なので、そのステップがわかるようにしていたつもりだったのですが…お客さまに気づいてもらえず、そのまま購入画面まで操作されてしまうケースが発生しました。

伊豫:具体的に、どういった仕様になっていたんですか?

宮田:画面のタイトルに「売上金からポイントを購入する」と書き、さらに説明文も目立つ位置に入れていました。「読まれないこともあるかもしれない」と思うところはありましたが、メルカリ以外のサービスでもそういったフローは存在していました。なので、「わざわざ強調しなくても、売上金でポイントを購入する仕組みは理解してもらえるだろう」と思っていたんですね。

しかし、実際は違いました。お客さまは「売上金でそのまま商品を購入できるだろう」と思い込んでいて、途中で表示される「売上金で〜」という文言はほとんど読まれなかったんです。

テストを見学していたメンバーがその場で提案し、同席していたデザイナーがラフを書いてくれたのが「ここで売上金から購入するんだ」と明確にわかるポップアップのラフスケッチでした。すぐに検証してみたら、ちゃんと気づいてもらえるようになりました。その後もほかのお客さまに触っていただいたところ、あまり読まない人も一部いましたが、やはり「あったほうがいい」となり、今の仕様になったんです。

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(写真左)ポップアップのラフスケッチ、(写真右)現在の仕様

開発する立場になると何度も仕様を見るので、当然ながらくわしくなっていく。そうすると、お客さまが操作でつまずく部分がわからなくなってしまうんです。「売上金でポイントを購入する」の当初は、そこに原因があったんじゃないかと思っています。

このユーザビリティテストで問題点に気づき、メンバーとその場でディスカッションして改善案を作れたことは本当によかったです。しかし、まだまだ改善すべき点が多々あります。リリースした今もユーザビリティテストで検証を進め、メンバーで案を出し合うなど、今後も改善を重ねていきたいと思っているんです。

あえてユーザビリティテストをプロセス化しない

伊豫:これだけの頻度でユーザビリティテストを行えば、発見されるイシューの数も多くなると思います。どうやって管理しているんですか?

宮田:メルカリUXチームでは、ユーザビリティテストで発見したイシューをスプレッドシートなどでシンプルにまとめています。優先順位の付け方も、今のところはみんなで話し合い、チームでやったほうがいいものがあれば案件していくといった、わりと自由な感じで進めていますね。なので、そこまで明確なプロセスはないんです。

というのも、プロセス化しすぎるとユーザビリティテストが形式張ったものになってしまいます。義務感のようなもので、ユーザビリティテストをしばりたくないんですよね。

僕としては、自分たちが新しいものを作るときに、能動的にユーザビリティテストを活用していくようにしたい。だから、義務的にならず、むしろ少しゆるい感じで運用しているんです。

伊豫:ちなみに、UI/UXとなるとデザイナーとのやりとりも多くなると思います。工夫されていることなどありますか?

宮田:基本的には直接話し、阿吽の呼吸で協力しながら改善していくスタイルでやっていますね。ユーザビリティテストで見つかったイシューを伝えるときも「お客さまがこう言っているから〜」ではなく、「1つの可能性としてこういうものがあって〜」と一緒に課題解決をするスタイルでやりとりしています。

なので、基本的には僕はデザイナーにべた張り状態で、「忙しいから1人にして」と言われたら離れるくらい一緒に仕事をしていますね(笑)。

「イシューをもとに、新サービスを生み出してみたい」

伊豫:宮田さんはこれまでもUI/UXの仕事が多かったと思うのですが、メルカリでやる楽しさはなんだと思いますか?

宮田:とにかくGoBoldに仕事を進められることですよね。一般の会社では、イシューの大小関わらず、その改善に至るまで1〜2ヶ月かかるケースがほとんどです。ですが、メルカリではプロデューサーがやる・やらないも含めて判断できる範囲が広い。だから、現場がスピーディーに改善を進められるんですね。トライアンドエラーができる環境があることは、プロデューサーにとってすごく恵まれていますね。

伊豫:宮田さんはプロデューサー採用の一次面接なども担当されていますが、どういったところを見ていたりするんですか?

宮田:基本的にはGoBoldなチャレンジをしていたり、思考回路を持っていたりするかどうかをチェックしますね。

あと、個人的には「世の中に革命を起こしたい」と思っている人に来てほしいと思っているんです。そもそもメルカリでは、能力があって器用なだけではフィットできないカルチャーがあります。その先に叶えたい夢や野望があり、それに向かってジャンプできるような飛躍的な思考がある人が合っていたりするんですよね。

伊豫:宮田さん自身、叶えたい夢や野望を抱いていたりするんですか?

宮田:僕はユーザビリティテストやユーザーインタビューなどのユーザー調査に興味があって、社会人になってからずっとそれをやり続けてきました。

今、メルカリが行っているユーザー調査やユーザビリティテストは、どちらかというと細かい機能のUX改善サービス改善がメインになっています。ですが、実際にやってみると、そこで発見された、お客さまが潜在的に抱えているイシューの中には、サービスそのものをゼロから作らないと解決できないものもあったりするんですね。僕は、そういったイシューをもとにまったく新しいものを生み出していくようなことを、プロデューサーとしてやりたい気持ちがありますね。

Product Manager

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