山田進太郎の知られざる特殊能力「行動デザイン」とは?

CEOの意思決定サポートをするため、経営に踏み込み、戦略の策定から組織運営の仕組みづくりなどを行うのが「経営戦略室」。そんな経営戦略室を率いる河野秀治(Shuji、上級執行役員 SVP Strategy)は、現在は経営戦略や国際戦略のほか、Security、ITインフラ、HR、R4D(研究開発)、サステナビリティ(ESG・SDGs)なども管轄しています。

そこで今回は、Shuji自らが書いた記事をお届け。送られてきた箇条書きスタイルのドキュメントに強い意思を感じたため、原文のまま掲載します。

※以下、河野本人によるブログ原文です。

タイトルに釣られた皆さんこんにちは。Shujiです。

2年ぶりのメルカンへの投稿です(前回まあまあいい事言ったつもりが、「わかりにくい」と貴重なご意見をいただきました)。ということで、今回はメルカンが社内報であるということをいいことに、より生々しい情報を共有できたらいいなと思って筆を取ります(当然ですが実際はタイピングしてます)。

この記事を書いた人


  • 河野秀治(Shuji Kawano、Shuji)

    ライブドアの投資銀行部門、ゴールドマン・サックス証券とSBIホールディングスによる合弁の投資ファンドを経て、戦略コンサルティング会社である経営共創基盤(IGPI)に入社。その後、起業も経験。さらにGunosyの経営戦略室長として上場を経験したのち、2018年7月にメルカリへ入社。現在は上級執行役員 SVP Strategy。写真のイラストはSlack用アイコン。


起:山田進太郎の特殊能力「行動デザイン」

  • Shin(山田進太郎)を知る社外の方からは、「いい人」「(ベンチャー社長っぽくない)普通の人」と表現されます。自分でも自らを「凡人」と表現します。確かに感情の起伏も殆どなく、ベンチャー社長には珍しく自己顕示欲のない人です。ファッション誌で自分の豪邸を紹介したり、バラエティ番組に出たり、Twitterで全能感に満ち溢れたポエムを垂れ流したりしません。
  • 打ち手は常に利他的。発言は背伸びもお化粧もせずシンプルが好き。一方で、複雑な社会課題に果敢に向き合うという稀有な起業家だと思います。(個人活動の一つ、理系女性向けの奨学金プログラム「山田進太郎D&I財団」の活動は、D&I推進のボトルネックとなっている社会構造にメスを入れる取り組みになっています)
  • その一方で、あまり知られない側面もあります。それは彼の持つ「行動デザイン力」です(僕は彼の持つ特殊能力と考えていて、勝手にそう名付けています)。
  • 「行動デザイン」というと難しく感じますが、ネット業界ではよく耳にする「UXデザイン」と同様です。
  • いいプロダクトをつくるにはUXにこだわる必要があります。お客さまに理想的な動きをしてもらうために、画面に表示されるレイアウト、色、幅やテキストなど無数の変数を調律して、無限のアップデートを行っていきますよね。
  • ShinはもともとPM(Product manager)のため、組織もプロダクトと捉えています(いると思います)。皆さんに成果の出やすい環境を提供するためにこだわる変数が無限にあって、それを細かく調律し続けています。例えばですが、皆さんに使ってもらいたい資料は、その構成やリンクの遷移先の流れに気を配ります。文言は、テニヲハまで執拗にこだわりますし、まどろっこしい抽象的なものにはせずにできるだけ短く具体的に記載するように努めています。
  • このこだわりがスケーラブルな組織をつくる肝だと気づけていないと(いや、気づけていても)、「Shinコマカイヨ! ムキ-!」ってなります。
  • 良い「行動デザイン」は、意識が高い/低いなどのモチベーションに関わらず、適切に人を動かす力を持っています。「やってくれるだろう、わかってくれるだろう」と思って用意したものは上手くいかないことが多いですよね。その時に悪いのはデザインの設計であって、社員の人格や能力ではありません。
  • メルカリにおける多くのリーダーが「行動デザイン」という視点をもって様々な改革をしていくことを期待して、より具体的な事例を紹介したいと思います。

承:「行動デザイン力」は生存戦略をドライブする力

  • 当社は特に動きの早い業界にいます。グループ全事業を取り巻く環境(産業構造/事業モデル/働き方など)は引き続き不可逆な変化が起こり、メディア、EC、ペイメント、SaaSと、これまで比較的はっきりと見えていたビジネスの境界が曖昧になってきています。
  • 加えてコロナで味わったような、滅多に起きないはずの「ブラック・スワン」も今後頻繁に起きてくる。プラットフォーマーとしての戦い方の本質がダイナミックに変わってきているなかで、利益を出せる論理も変わっていく可能性があります。変化に適応してくる企業が出るところで、当社がイノベーションで出遅れるわけにはいきません。
  • 生き残っていくために必要となってくる組織能力は兎にも角にも「変化対応力」。(手垢のついた言葉ではありますが、どうしたらその力をつけられるのか、何が必要なのか、具体的に説明してくれる教科書はなかなか見つかりません)
  • 社内にいると気付きづらいですが、メルカリは「異次元の変容力」を持っています。
  • トップダウンとボトムアップを状況に応じて使い分け機敏に変化していきます。事業や組織の形、そして様々な制度や運営のモデルも「1年前はなかった」というものばかりですよね。この規模の会社になっても毎年メジャーなバージョンアップがされていきます。
  • この変容力はどう養ってきたのか。そのデザインを得意とするのがShinです。
  • 具体的な事例を紹介してみます。
          • まず、開かれた経営モデルをデザインすること
                      • 経営会議の状況は、一回目のメルカンをご参照ください。
                      • 会議の前日までに、論点整理のし易い会議フォーマットで上程される。会議が始まるまでに質問コメントが記入されており、さらに回答までもが書かれている。その状態で始めるからこそ、短時間で多面的で深い議論ができます。事業スピードの速さの源です。その内容は、議論の過程を含めてすぐさま社内にシェアがされていきます。
                      • 当社の経営方針を記載したロードマップ(後で少し説明します)は多くの関係者を巻き込み作成していき、常にアップデートしていくルーチンをつくっています(この事業/組織規模でも頻繁にピボットしていきます)。
                      • 多くの制度は全社で議論を重ねて実装していきます。例えば最近発表した新しい働き方「メルカリ・ニューノーマル・ワークスタイル “YOUR CHOICE”」は、その考え方や具体的な仕組みまでを皆で何度も何度も議論し、生産性と創造性を高めるとともに採用競争力を生むニューノーマルな働き方を定めていきました。結果として、本格的な黒船来航による採用市場の激化に備えた打ち手をつくることができました。
          • 多様で流動的な組織をデザインすること
                      • 自然体では進行しにくい重要課題はCEO自ら先頭に立って強烈に推進させていきます。(創業間もなくグローバル人材採用を推進。D&Iは先んじて社内で起こっていた動きに反応する形で全社横断でCEO直下の委員会であるD&I Councilを設置。コロナ禍によるマーケットプレイスの変化を捉え、有識者会議の設立や「マーケットプレイスの基本原則」の策定に繋げていきます)
                      • 「機会の平等」を重視し、各ポジションの人材候補者づくりには偏りの無いよう運用をすることで、極力自然に多様性をつくっていきます。
                      • 四半期に一度、いくつかの組織でレポートラインの変更を起こしています。年間を通すと多くの組織で抜本的な変更が起こっています。新しいリーダーの目でオペレーション改革を行っていくと同時に抜擢のポジションをつくる。合理化をすすめると同時に意識的にカオスをつくっています。
                      • 一方で、組織変更の度に曖昧になる業務管掌や職務権限については、毎回くさびを打っていくことも忘れません。
          • 今後は「採用」だけでなく「育成」を強化する
                      • 育成の7割が実際の業務での経験で達成され、残りはフィードバックや学習を通して補完がされると言います。そのため、最適な配置モデル、フィードバック(コーチング、メンター制度やスポンサー制度など)や学習プログラムなどをつくれるかが、今後の重要な取り組みの一つです。
                      • 特に会社のカルチャーを作っている管理職の皆さんがどういう意識で仕事をするかは、ハイブリッドな働き方をしている上ではより重要になってくるため、マネージメント力を底上げするためのデザインに力を入れていきます。
  • また、変化の中にも規律をつくるためのデザインを紹介します。
          • 取締役会からリデザイン
                      • 取締役会の過半数が社外取締役であることで、いつでもCEO自らがクビにされる仕掛けに。それによって経営責任に対して強い規律と健全性をつくります。
                      • 取締役会では議案を絞るとともに自由議論のパートを設け、当社の未来を決定づけるような重要な議案に時間を割いて議論できるようにしている。それによって日常業務で頭がいっぱいの執行サイドに外の目から「気付き」を与える。そして、経営トップが勇気をもって厳しい決断をすることや正しいリスクに挑戦する決断のサポートを得ることができます。
                      • もちろん取締役会の会議内容も、議論過程までも現場にシェアされます。それによって、すぐさま仮説の強化や再構築ができます。
                      • これらは、ガバナンスを強化するだけでなく、同時に生産性の向上も実現できることになります。
          • ロードマップ経営をデザイン
                      • 全グループでミッション達成までのロードマップを作成。皆のイメージを揃えていくために、到達点の景色を明瞭に書いていきます。併せてグループの基本方針や、改革のためのキーワードを掲げる。これによって、自分たちの会社の行末を自分たちで決められるという自律性が生まれてきます。
                      • 3カ年計画数値と1年予算はロードマップを数値化したものなので、各事業の戦略、施策や事業計画数値に齟齬や矛盾が生じにくく、多くのパーツがカチッと噛み合いやすくなります。
                      • OKRはロードマップを達成するために、よりストレッチゴールを定めます。OKRでは定量的な目標を設けることで、抽象に逃げない(達成したかどうかわからないような目標設定をしない)ようにしています。
                      • ロードマップ、事業計画数値、四半期ごとの目標設定が、一貫して整理されるようなデザインに作り上げているため、いくつも目標が発生し、混乱してしまうことを抑制しています。
                      • また、過去のロードマップを振り返ると、数年前に掲げた内容の多くを今実現していることがわかり、大きな成功体験を皆で共有することができます。
          • その他にも
                      • 効果的なチームをつくるデザイン
                      • 失敗を繰り返さないデザイン
                      • 多様性をつくり統合させていくデザイン
                      • 採用強者となるためのデザイン
                      • Go Boldに攻めるデザイン
                      • 守りのデザイン
          • などなどなど、ぱっと言語化できるデザインだけでも1000個くらいありそう(そして、本音としてはもっと深い/細かいレベルのデザインを皆さんに共有したいところ。今度どこかでやりますね)。
          • IT化も活用しながら、属人化しない仕組み、時間が経っても風化しない仕組みもつくっていきます。
          • そして何よりも、毎度これらの改善ループを回すことも忘れない。すべてにPDCAが回ります。
    • メルカリの社員であれば、あれはこういう思想で設計されてるのか、というものがいくつも発見できると思います。逆にここに淀みがあるなという発見も。それを理解することが、今度は皆がデザイン設計をする(変化をもたらす)ときの視点になると思います。
    • 変化対応力と規律を持ち、「短期的急成長」企業から「長期持続的成長」企業へと変貌させていきたいと思います。しかし、それを達成するための「施策」と「それを運営できるモデル」をつくることはとても難易度が高く、まだまだ足りないものばかりです(皆さんの周りの優秀な方々にメルカリへの参画を促してください!)。

    転:コロナ禍に上げた再加速の「狼煙」

    • 先日、主にクリエイター・生産者・小規模事業者様向けのネットショップサービス「メルカリShops」がリリースされました。「かんたんで、売れる」という強みをもったサービスです。多くの事業者様に頻繁に使って頂ける存在となるために、長期的に投資をしていく予定の第4の柱です。
    • そして、暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画開発を行うメルコイン社も設立。そこでは、お客さまの資産運用に関するサービスや、リアル/デジタルの真贋保証を伴う技術を開発し、より「安心・安全・かんたん」に取引を行っていただける基盤を拡大していく予定です。
    • またこれまでスマホ内だけの関係性だった存在から、リアル店舗での接点を増やしていくためにオフライン投資も加速していきます。
    • 加えて海外展開についても。コロナで足踏みしていましたが改めてアメリカ以外の第三国への進出の準備をしていたりと、まぁ、放っておいてもみんな大胆に攻め続けるもんですから、公には大きな声では言えませんが組織はとってもカオスですよね。
    • これだけでもわかるように、メルカリは大型のトライの数が多い会社です。皆が健全な野心を抱き、事業/組織/個人の限界を決めず、果敢にリスクをとっています。そんな姿勢を見ていると、従業員数は約1700名(連結)ですがとても大企業とは言えない。煌々と赤く燃えるベンチャー魂に満ち溢れた会社です。一方で、お客さまを始めとする会社やサービスの関係者も厖大なことから、社会課題にも向き合えるロマンのある会社だとも言えます。(この動画で皆が話してる言葉をパクりました。スマン!)
    • 去年一年間は、コロナ禍に対応し「セーフモード」と称して企業活動も行動抑制していました。しかし、そんな環境下でも皆さんは虎視眈々と将来に向けた種まきを行っていたわけです。そこで、2020年末にセーフモードを解除の大号令。CEO自ら「攻めよう」と、全社に対して再加速の「狼煙」を上げました。

    結:これからの使命

    • 循環型社会を牽引するために、メルカリが進出していかないといけない市場は広大です。そのためには、対となる組織はより高度化していく必要があります。
    • ここまで話すとすでに出来上がった会社のように見えますが、実情はグローバルスタンダードにまだまだ達していない未熟なベンチャーです。これからは早々に世界基準を達成し、今度は当社が世界のベストプラクティスと言われるようにしていきたいですね。
    • これから皆さんが調律していくべきツマミは無限にあります。うまくいってない部分のリデザインはこれからも止むことがありません。ただし、その過程ではあちこちで矛盾や摩擦が起きます。そこでは白黒つかないものへの判断が必要で、利害の異なる人々を纏めていく必要があります。皆さん一人ひとりが変革に導いていくリーダーになっていく必要があるんです。
    • 僕らの仕事は、曖昧な物事に対して「論理でメルカリらしい解を導き出して、選んで、実行して、成果を出すこと」です。是非それらを楽しみながら行ってください。
    • メルカリの未来を「選ぶ」のは皆さんです。そして、変化をもたらす「行動デザイン力」によって1年後のメルカリをより特別な会社にして、未来の社会に大きく貢献していきましょう!

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