多様なメンバーをつなぐ架け橋になりたい。マジョリティとマイノリティの両方を経験した自分だからできること──vol.4 Mark #LeadersVoices

メルカリでは、どんなバックグラウンドを持っていても、平等なチャンスと適切なサポートのもとでそれぞれがバリューを発揮できる組織を目指し、様々な取り組みを実施しています。

SDGsの1つにもなっている「ジェンダー平等」、そしてDiversity & Inclusion Statementに基づく多様な組織の実現は、私たちメルカリのグループミッション「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」にも深く結びついている考え方です。

当連載「新たな価値をつくる ─ 風の時代を生きるリーダーが紡ぐ言葉の記録」の第4回には、執行役員 CEO Fintech / メルペイ代表取締役 CEO / メルコイン取締役の山本真人(@mark)が登場。ドイツで過ごした幼少期のエピソードや外資系企業で働くなかで直面した課題、そしてそこから生まれた自分なりの多様性への哲学について語ってもらいました。

この記事に登場する人


  • 山本真人(Masato Yamamoto)

    2004年 東京大学大学院 学際情報学府 修士課程修了。NTTドコモを経て、2008年よりGoogle JapanのEnterprise部門 Head of Partner Salesを務める。2014年にはSquare JapanにてHead of Business Development and Sales、2016年からはApple JapanにてApple Pay 加盟店事業統括責任者を務める。2018年4月にメルペイに参画し、CBOとして金融新規事業(Credit Design)や加盟店開拓など、ビジネス全般を担当。2022年1月よりメルペイ代表取締役CEO。2022年7月よりメルカリ執行役員 CEO Fintechに就任、メルコイン取締役を兼務。

さまざまな文化が混ざり合うことで、新しいものが生まれていく

──まずはMarkさんの生い立ちについて聞かせてください。幼少期はドイツで過ごしていたんですよね?

はい、そうなんです。1988年、私が小学2年生の時、親の転勤で西ドイツへ引っ越しました。当時は日本人学校に通っていたのですが、学校から一歩外へ出ると、言語・文化はもちろん、交通ルールさえも日本とは全く異なっていて、幼心に衝撃を覚えたのを今でもよく思い出します。

当時、現地のサッカーチームに入っていたのですが、そこでも大きなカルチャーギャップを体験しました。日本のサッカーチームでは、チームプレーを重視されることが多かった一方、ドイツでは「自分が一番なんだ」という強いエゴがないと試合に出場させてもらえない。自分のスキルをいかにアピールできるかが勝負の分かれ道でした。とはいえ、私の元々の性格が起因しているからかもしれませんが、それで戸惑ったり悩んだりした経験はあまりなく、「どうすればこのチームの中で自分が成果を出せるのか」を常に考え動いていました。チームの弱い部分を自分が補うことで結果を出すというマインドが強かったと思います。結果を出すと、わかりやすく評価されましたし、最終的にはずっとレギュラーで試合に出場させてもらえるようになりました。
ドイツのサッカークラブでプレーしていた頃の写真

──子どもながらに、文化の違いや社会の厳しさを学んだんですね。ところで、Markさんがドイツにいた頃はちょうど東西ドイツ統一の時期だったそうですね。

はい、ドイツに引っ越してすぐのタイミングでベルリンの壁が崩壊しました。東西ドイツが統一された直後、旅行でベルリンを訪れたのですが、同じドイツ国内にもかかわらず文化が異なっていたり、経済的な格差があったりと、混沌とした雰囲気に包まれているのを肌で感じました。しかし、ベルリンはその後数年で大きな発展を遂げ、東西ドイツ時代とは異なる新しい街並みへと進化していきました。特に近年は音楽やアートなど文化的な側面での成長が著しく、かつてのベルリンとは大きく様変わりしています。こうした様子を間近で見てきたこともあり、さまざまな文化が混ざり合うことで、新しいものが生まれていくことを知りました。

日本と異なる文化圏で生活して学んだのは、自分の価値観と異なる状況に遭遇したとしても、逃げずに踏み込んでいくことの大切さです。もちろん最初は理解されず排他されることもありますが、一歩踏み込んでいくと仲良くなれるし、わかり合えるようになると思っています。

私自身、日本人であるという理由だけで理不尽に排他された経験を何度もしてきましたが、だからといって日本人のコミュニティにこもってしまうのではなく、怖がらずに相手の世界に踏み込んでみることを大切にしていました。言語や文化は違えど同じ人間ですから、逃げずに踏み込んでいけば自然とわかり合えるんだなということを身をもって学びました。
ベルリンの壁を訪れたときの写真

まずはマイノリティ側が“違い”について自己開示すること

──Markさんは外資系企業でのキャリアが長いですよね。そこでもマイノリティになる場面があったと聞きましたが、どんな課題にぶつかることが多かったですか?

外資を3社経験しましたが、いずれの会社でも日本での新規事業立ち上げを担当しました。私は大学では理系専攻でしたが、研究者になりたいと思ったことは一度もなく、それよりも新しい技術を世の中に広めていく役割に興味を持っていたので、一貫して、アメリカで立ち上がった新技術のサービスを日本に持ち込んで広める仕事に携わってきました。とはいえ、アメリカにあるものをそのまま日本で展開するだけではうまくいかないことがほとんどなので、まずは本社のメンバーに日本の文化について説明し、そのうえで市場にフィットするサービスのあり方について提案しました。しかし、本社のメンバーからは「アメリカのグローバルスタンダードを踏襲すれば問題ないはずだ」と言われてしまうことが多く、そこをいかに理解してもらうかが大変でした。

例えば、決済システムの話でいうと、日本はかなり特殊ですよね。レシートと別に領収書を発行する国は日本以外にほとんどありませんし、そもそも英語には領収書にあたる名称が存在しないので、本社メンバーからすると「なにそれ?なんのために必要なの?」という状態です。それに対して、なぜ必要なのか、それがあると一体どんなベネフィットがあるのか、一から丁寧に説明していかなければならず、苦労しました。私だって領収書がなぜ必要なのかを考えて生きてきたことなんてありませんでしたから、まずは自分の中で領収書の意義について向き合うところから始めました(笑)。

──確かにそうですよね(笑)。本社メンバーを説得する際に心がけていたことはありますか?

まずは、自分たちの文化の良さを知ってもらうことから始めていました。「なんでもいいから領収書機能を作ってくれ」とただ依頼するのではなく、「日本はなぜこういう文化になっているのか」「こういう文化があるからこそ、日本にはこういう素晴らしい面がある」といったように、日本という国自体、ときには自分自身について知ってもらって、好きになってもらう。ここに一番時間をかけるようにしていました。

マジョリティ側は、得てして違いがあることにすら気づいていないケースがあります。それゆえに、無意識のうちに違いを無視してしまうことも少なくありません。そのため、まずはマイノリティ側も「何が違うのか」「なぜ違うのか」について説明したうえで、お互いが歩み寄れる状態をつくることが大切だと考えています。

多様性の確保は「手段」ではなく「目的」

──さまざまな企業で多様な経験を積んできたMarkさんから見て、メルカリのD&Iはどのように映っていますか?

メルカリに入社して最初に感じたのは、D&Iというものをすごく真摯に捉えているなということ。そして、やるべきことをちゃんとやりたいという思いが根付いているなという印象を持ちました。ESGも含め、「正しくありたい」「善くありたい」という思いが強く、それに対してきちんとアクションしていこうとする姿勢に共感しました。

一方、D&Iについて議論したり、決定したりするシーンは多いのですが、議論や決定をしていく過程における多様性はもっと担保されるべきだと考えています。なかでもジェンダーにおける多様性ついては、まだまだ課題があると思っています。外資で働いているとき、女性のSVPと一緒に仕事をする機会が多かったのですが、彼女たちの出すアイデアはどれも自分には思いつかないようなものばかりで、いつも刺激を受けていました。先ほどもお話しましたが、マジョリティだけだと新しいものは生まれにくい。そのため、まずはジェンダーを含め、多様なバックグランドをもつメンバーが議論に参加している「状態」をつくる必要があると考えています。

──では最後に、多様な組織づくりを実現するためにMarkさんがメルカリのリーダーとして今後チャレンジしていきたいことについて教えてください。

多様性の確保は目的を達成するための「手段」と言われることも多いですが、私はそれ自体が「目的」であって良いと考えています。手段と捉えてしまうと、別の方法を採っても良いとされる可能性や危うさがあります。新しいものを作りあげていこうとする僕らが、こと多様性に関してそれ以外の選択肢を採ってはいけないと思っています。

そのうえで、私個人としては、多様なメンバーをつなぐ架け橋になりたいと思っています。おそらくほとんどの人が、マジョリティとマイノリティの双方を尊重し、一緒に歩んでいくことがベストだと考えているはずです。それなのに、なかなか前に進まないのは、両者の間にある「違い」に気づけていないことが原因なんですよね。この違いに気づくことができれば、一人ひとりの考え方の幅が広がり、新しいものが生まれていく。そうして、組織が強くなっていくことは実体験を通して学んだことでもあります。マジョリティとマイノリティの両方の立場を経験してきた自分だからこそ、多様なメンバーをつなぐ架け橋となり、気づきを提供していくことで、D&Iの「I」の部分に貢献していけるのではないかと思っています。

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