言語を活用してメルカリのビジネスやD&Iなどをサポート!──Global Operations Teamによるローカライズがメルカリをもっと身近に

メルカリグループの特徴の一つは、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を重視した職場環境づくりです。世界中の優秀な人材が、社内に自分の居場所があり、受け入れられていると感じる職場風土の醸成を目指しています。メルカリグループがミッションを達成し、世界中の多様な社会・文化に受け入れられるサービスを提供するためには、まずは社内でこのビジョンを体現することが重要だと考えています。

メルカリ社内で「GOT」として知られているGlobal Operation Teamは、ますます多様化しているメンバーたちを支援するチームの一つです。主に社内の通訳・翻訳業務を担当していますが、実際の組織へのインパクトやビジネスへの貢献は、ただの通訳・翻訳にとどまりません。短期連載「Global Operation Team:言語を活用してメルカリのビジネスやD&Iなどをサポート!」を通して、GOTの業務や社内で果たしている重要な役割について深掘りしていきます。

今年、メルカリグループはメルカリマーケットプレイスのソースコードを一から書き直すという作業を終えました。社内でリリースされた「GroundUp」として知られる前代未聞のマンモス級プロジェクトでは、英語版ローカライズも行われました。今回は、GroundUpプロジェクトチームのメンバーと、英語ローカライズに携わったGOTのメンバー2名にご登場いただいています。メルカリが社内でどのように言語を活用し、社外製品をより良く、より身近で、より使いやすいものにしているのか、ぜひご一読ください。

この記事に登場する人


  • Satoshi Kobayashi(@koby)

    JPプロダクトマネジメントエンジニア/Mgr。デザインシステムチームのプロダクトマネージャーを務め、メルカリのサービスのまとまった体験を提供するために、デザインプロセスの合理化に重点を置いています。前職では、Sony PlayStationのUI Framework Teamでリードプロダクトマネージャーを務めた。


  • Emma Davis(@emma)

    GOT1翻訳者。マサチューセッツ州出身のエマは、2015年にハーベイ・マッド・カレッジ(カリフォルニア州クレアモント)を卒業し、コンピューターサイエンスと日本語の人文科学の学位を取得した。その後、日本の富山に移り、ALT(外国語指導助手)として2年間英語を教えました。2017年9月、東京に移転してメルカリに入社し、以来、グローバルオペレーションチームで社内翻訳者、編集者、翻訳マネージャーとして働いています。言語やローカライズのほか、演劇、2.5次元アイドル、モバイルゲームなどを楽しむ。


  • Miguel McDonald(@Miguel_RM)

    GOT1翻訳者・通訳者。カナダ西部のプレーリー村ドネリー出身。ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリアの高等学校に入学し、初めて本格的に日本の文化や言語に触れる。ビクトリア大学卒業後、JETプログラムで札幌市に渡り英語を教えた後、横浜に移り、ローカライズのキャリアをスタート。2021年2月、メルカリに入社。プライベートの時間は、娘たちのバイオリンやピアノ、トランペットの演奏を聴くのが好き。横浜の街を走る長距離走にハマっている。

社内に多大な影響を与える前代未聞のプロジェクト

──まずは、基礎的な質問から…「GroundUp」とはそもそも何ですか?

@koby:GroundUpは、メルカリのコードベース全体を最新のテクノロジースタックで書き直し、アプリ全体を一から作り直すプロジェクトです。

──IT企業がこのように自社のサービスや製品のコードを完全に書き直すのはよくあることなのでしょうか。また、メルカリはなぜ、それが必要であると判断したのでしょうか。

@koby:間違いなく普通じゃない!という感じです(笑)。

メルカリのマーケットプレイスサービスを立ち上げた当初から、技術的な負債がどんどん増えていき、新機能を追加するスピードが目に見えて遅くなっていました。このような思い切ったことをする企業はあまりないのですが、サービスの進化スピードに対応するためには、プロセスを効率化する必要があると考えました。

Satoshi Kobayashi(@koby)

──なるほど!アプリを丸ごと書き換えることで、より深い問題が見えてきたんですね。そこから社内用に英語にローカライズもするという発想になったということでしょうか。

@koby:そうですね。多言語対応することで、メルカリのユーザーがより利用しやすいサービスにしたいという思いもありましたね。

@emma:そうなんです。メルカリはもともと1つの言語で書くことしか想定していなかったので、例えば日本語のテキストをすべて英語に置き換えるようなことは、元のコードでは簡単にできませんでした。モバイルもウェブも含めてアプリ全体を書き直すことになったので、将来的に他言語のサポートも追加しやすいようにコードを整理し、英語にもローカライズする良い機会だと考えました。

現時点で、他言語を外部に公開する計画はありませんが、将来、多言語展開することを想定し、その可能性に備えておきたいと考えました。それ以上に、社内でももっと身近に感じられるアプリにしたかったんです。メルカリは多様性のある組織を目指しており、長年、日本語話者でない海外からのエンジニアがプロダクト制作に携わってきました。そのようなエンジニアは、UIを見ても文章の意味が全くわからず、開発で苦労することが多いようです。また、コードを見てなんとなくわかるとしても、他の人に説明してもらわなければならないことが必ず出てくるでしょう。製品開発では、自分で使ってみて感覚をつかむことが大切だと思うのですが、今まではそのハードルが高かったんです。

@koby:その通りです!また、これはエンジニアに限ったことではなく、社内の日本語を話さないあらゆる人、どんな役割の人でも、英語で製品が使えるようになることで、より効果的な改善を行うことができるのです。

@emma:そうですね。製品のコード開発に直接携わらない人でも、自分で使ってみて、お客さまがどんな体験をしているのかを理解することは重要です。そうすれば、その視点を自分の仕事にも取り込んでより的を射た改善ができるようになります。例えば、アプリを使っていて気づいたことが、UXを全体的に向上させるアイディアにつながったりしますよね。内部ローカライズによって、誰もがその視点を持つことができるようになったのです。

最高のローカライズを実現するために、チーム全体でテキストを一つひとつ見ていった

──GroundUpにおけるGOTの役割を教えてください。

@Miguel_RM:私たちは、ユーザーインターフェース上のテキストの翻訳と、「メルカリガイド」の作成を主に担当しました。「メルカリガイド」とは、メルカリの使い方を説明するマニュアルのことで、発送や支払いの仕方など、アプリ使い方をあらゆる面からわかりやすく説明しています。

通常のワークフローとは少し異なるプロセスをとりました。通常、GOTの翻訳依頼は、翻訳者と確認者の2名で担当することが多いのですが、GroundUpでは、文章、説明文、ユーザーインターフェースの一つひとつをチーム全員で確認しました。一つのリクエストに担当者が一人つきますが、他のメンバー全員でもレビューすることで、できるだけ多くの視点や意見を取り入れようと努めました。UXの観点では、アプリ内の言語が、一人の人間が翻訳したよう統一するよりも、できるだけ自然にスムーズに読めるようにしたいと考えました。

Miguel McDonald(@Miguel_RM)

──文章の一つひとつから、チーム全体が関わることがローカライズの大きな力になったことがよくわかります!

@Miguel_RM:そうですね。この試みにより徹底的な品質管理ができたというのも付け加えたいです。GOTのメンバー全員がすべての文章を見るので、文法やスペルはもちろん、用語の統一や書き方などをできる限り徹底することもできました。チーム全員が力を合わせて成功させたと言ってもよいと思います。

──ローカライズの開始から終了まで、どれくらいの時間がかかったのでしょうか。

@emma:プロジェクトは2年ほど前にスタートし、現在ではサービス全体のローカライズが完了しています。とはいえ、ローカライズに “終わり “はなく、アプリに追加される新機能などに対応するため、作業自体は継続的しています。日本語のテキストが変わるたびに、それもローカライズしなければなりません。

そういう意味では、ローカライズの「プロジェクト」というより、通常の開発プロセスの一部に過ぎないとも言えますね。

UIのローカライズができたことで、社内の貴重なツールになった

──皆さんに質問です。GroundUpに携わってきた中で、好きなことや特別な思い出があれば、教えてください。

@Miguel_RM:私にとっては、メルカリガイドに携わったことですね。メルカリ社員やマーケットプレイスアプリのユーザーであっても、商品のやり取りの機会は限られているので、商品の発送方法や支払い方法など、今まで気づかなかった機能や細かい部分を知ることができたのは楽しかったです。

こんなに身近で使いやすいものなんだと、改めて実感しました!

@koby:また、「メルカリガイド」もとても気に入っています。UIをローカライズしてもらうことは、社内ツールとしても重要在でしたが、それに加えて、メルカリガイドがあることで、ユーザーが問題に遭遇したときに自分でトラブルシューティングできるようになって、メルカリをより国際的にすることができると考えています。

@emma:私にとっては、アプリのローカライズを作ることは、入社以来ずっとやりたかったことで、面接でも言ったかもしれません(笑)!

日本に住んでいると、日本語を話せない友人などが日本語だけのアプリや機械翻訳された拙い英語のアプリを使って苦労しているのをよく見かけます。メルカリも例外ではありません。メルカリはとても素晴らしい製品なのですが、言葉の壁でメルカリを使うのを諦めてしまう人を時々見かけて、残念に思っていました。それもあって、メルカリがより多くの人に届き、誰もが利用しやすいものになるよう手助けしたいと強く思ってきました。

また、GOTのメンバーとして直接製品に関わることがあまりなかったので、ローカライズに携われて本当にうれしかったです。今はまだ社内でしか使われていませんが、英語版が一般公開されて皆さんにも使ってもらえる可能性に一歩近づいた気がしていて、いつかぜひ実現したいと思っています。

Emma Davis(@emma)

@Miguel_RM:エマが言ったように、GOTはほとんどの業務が社内向けで直接製品に触れることはあまりないので、この記念すべきプロジェクトに参加できて光栄です。GroundUpが発売されたときには、ステージで飛び跳ねたりして、お祝いのパーティーを開きました。そのエネルギーの一部になれて、本当によかったです!

メルカリの文化「やさしいコミュニケーション」に深く根ざしたプロジェクト

──「メルカリガイド」やアプリのローカライズが、エンジニア組織の日常業務に与えた影響とは?

@koby:本当に大きなインパクトがありました!今ではエンジニア全員がアプリを使い、デザインファイルだけに頼ることなく、すべての機能の背景を理解できるようになりました。そのため、改善案や課題解決のための新たなアイデアが生まれ、メルカリをより良いマーケットプレイスアプリにすることに直結しています。

──GOTがこのプロジェクトに参加した最大のメリットは何だと感じていますか?

@emma:例えば、機械翻訳を使ったり、ローカライズを他社に委託することもできたと思います。GOTのメンバーはメルカリの社員であり、製品や会社そのものに深く精通していることが強みです。メルカリの文化やブランドへの理解など、その経験や視点、文脈を活かしてローカライズを行うことができたと思います。

──ここまで、プロジェクトの成功について少しお話を伺いましたが、ハードルとしてはどのようなものがあったのでしょうか。

@emma:特に苦労したのは、実際の画面やUIを見ながら、それぞれの文字列をどのようにローカライズするかということです。ボタンやポップアップ、キャンペーンバナーのテキストなど、同じテキストでも使い方によって意味が変わってくるので、デザイン要素をどう取り入れるか、どう関連付けるかは難しいところでした。

また、日本語と英語のアプリでは、ユーザーへの訴え方が異なります。日本語の文章を直訳すると、冗長で丁寧すぎる表現になり、翻訳された文章だとすぐにわかります。それぞれの文字列を、元の意図に忠実でありながら親しみやすく自然な英語にするのは難しい作業でしたが、創造性を発揮できるとても楽しい機会でした。

──では、最後の質問です、日本やメルカリで働くことを検討しているエンジニアの方で、言葉の壁で少し不安を持っている方に向けて一言お願いします。

@Miguel_RM:新しい国に移り住み、新しい言語の壁と戦わなければならないことは、間違いなく不安なことです。私はそれを経験しました。日本語を読めない、話せない、理解できない時期もありました。でも、メルカリにはそれをサポートするサービスがあります。素晴らしいチームと会社の一員となった上にGOTのサポートまで受けられるのです!だから、もしあなたが日本で働こうと考えているなら、メルカリは、日本での仕事と生活に溶け込むことをより簡単にしてくれる最高の選択だと思います。

@emma:私はメルカリに入社して5、6年になるので、海外や日本の他の会社から日本語を話せない人が入社してくるのをたくさん見てきました。完全な英語環境とまではいきませんが、社内にはさまざまな言語レベルがあることを、みんなが配慮して意識してくれています。母国語が何語であろうと、メルカリにはあなたを成功に導く文化や環境があります。

@koby:emmaとMiguelがうまくまとめてくれたと思いますが、メルカリの文化である「やさしさコミュニケーション」の重要性に改めて言及したいと思います。基本的には、お互いが理解しあえる中間地点を探そうとすることです。メルカリでは、特定の言語を話すことを強制することはありません。それよりも、お互いが理解しやすくなるように協力しています。

──皆様、本日はお忙しい中、ありがとうございました!

このミニシリーズも今回が最終回です。GOTがメルカリのD&Iにどのように貢献しているのか、その内幕を楽しんでいただけたでしょうか?もし過去の記事を見逃した場合は、このページの上部にリンクがありますので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。

関連記事 サクッと読める!✨

生成AIを用いて人事領域の課題解決を行う「AI/LLM Hackathon」を開催しました! #メルカリな日々

新規事業発表から働き方の発信まで!Corporate PRチームで2021年を振り返ってみた#メルカリな日々

感謝の気持ちのバトンを渡す。毎月100人以上のメンバーが参加する寄付活動について #メルカリな日々

関連記事 読み応えアリ✨