お客さま体験向上のヒントを探りプロダクトの意思決定にも影響を与える、メルカリのUXリサーチャーという仕事

お客さまの豊かな体験を実現するために本質的な問いを立て、あらゆるリサーチ手法を駆使し、鋭い洞察を得ることで事業にコミットするメルカリのUXリサーチという仕事。月間2,000万人以上が利用する「メルカリ」のUXリサーチャーは、お客さま、デザイナー、プロダクトマネージャーをはじめ、メルカリグループを横断し、あらゆるステークホルダーと協働しながら、サービス全体を見渡し、最良の意思決定を行えるような動き方が求められています。

今回は具体的にどのようにUXリサーチに取り組み、プロジェクトを進めているのか、UXリサーチャーの辰田悠輔(@Usuke24)、上田葵(@chanu)、井手あぐり(@aggy)、西口哲平(@teppei)に聞きました。

この記事に登場する人


  • 辰田悠輔(Yusuke Tatsuda)

    2007年に新卒で三菱重工業に入社し、アジアマーケットの海外営業を担当。その後、リサーチ会社であるインテージにて日本企業やアメリカ企業の海外進出を支援。その中で携わったUXリサーチに魅了され、2023年にメルカリに入社。現在はUXリサーチャーとして、日本のお客さまのリサーチに携わりつつ、メルカリの良さを感じるからこそ海外展開を熱望している。


  • 上田葵(Aoi Ueda)

    大阪公立大学卒、社会学専攻。大学在学中、Life Is Tech!にて学生向けプログラミングキャンプの運営、Yelp, Inc.にて、日本法人の立ち上げに関わる。その後、トビタテ!留学JAPANの派遣留学生としてニューヨークに渡り、日本茶の市場調査を行う。帰国後、2018年秋にメルカリにPMとして新卒入社し、その後UXリサーチチームを立ち上げる。現在ではUXリサーチャーとして、組織内の調査設計や実施、分析、UXリサーチができる体制や仕組み作りをしている。


  • 井手あぐり(Aguri Ide)

    通信系BPOベンダー、リモートワーク人材サービス企業にて人材マネジメント、育成、事業責任者などを経て、社会人向けサービスデザインスクールの修了を機にUXリサーチャーとしてキャリアチェンジ。新銀行立ち上げプロジェクトを経験し、2022年より株式会社メルカリに参画。趣味はロードバイクでの林道探索と金継ぎ。


  • 西口哲平(Teppei Nishiguchi)

    大学卒業後、日系マーケティングリサーチ会社にResearcherとして入社。国内・海外のアドホックリサーチを経験した後、2017年にグループ会社であるシンガポールの英系リサーチ会社へ異動。グローバル企業の東南アジア市場でのリサーチを企画から分析まで一貫して担当する。Bytedance Japanに転職するタイミングで帰国し、ゲーム部門においてスマートフォン・PCゲームの市場・顧客分析をリード、複数タイトルのリリースに携わる。2023年夏にメルカリにUX Researcherとして入社。

メルカリのリサーチャーに「お客さまのことを理解し終えた」ということはない

――まずはメルカリにおけるUXリサーチャーの役割や、メルカリというサービスの独自性を聞いていきたいと思います。

@Usuke24:そもそもの話からすると、UXリサーチャーの仕事とは、お客さまの体験をより良くしていくためのヒントを、リサーチを通じて見つけていくことです。特に「意味のあること」を見つけていくのがUXリサーチャーの仕事で一番大事なことだと思っています。

@teppei:メルカリに入社してから感じた一番の独自性は、お客さまの数が多いだけでなく、年齢層含めさまざまなタイプの方がいることです。例えばアプリの操作に慣れている方だけに向けたサービスを展開してしまうと、スマホやアプリの操作に慣れていない方にとっては使いにくいアプリになってしまう。さまざまなタイプのお客さまが使っていることを理解した上でリサーチをするのが、メルカリのUXリサーチャーとして働く楽しさでもあり、難しさでもあると思っています。

@Usuke24:メルカリでは、ポケモンカードもあればハイブランドも取引されていて、いろいろなお客さまについて理解を深めていかないといけない。これが難しいけど面白さではありますよね。だからこそ「お客さまのことを理解し終えた」ということは絶対にないんですよね。

辰田悠輔(@Usuke24)

――「お客さまを理解する」とは、すなわちどういうことなんでしょう?

@Usuke24:例えばお客さまのインタビューをしていると、だんだんその方の気持ちに感情移入することがあります。「この人だったらこういうとき、こんな風に判断しそうだ」という想像ができるようになると、お客さまの理解が進んだと言えると思いますね。

@chanu:最初はその方の行動原理がわからなくても、話していくうちに「この人はこうだから、多分こうしたんだろうな」と、お客さまの思考プロセスがだんだん見えてくるようになるんですよね。

@teppei:インタビューではメルカリのことだけを聞くわけではありません。お客さまを理解する上では、その方の家庭環境であったり、友人関係であったり、そういったバックグラウンドをお伺いしないと、その奥にある「動機」が見えてこない。

@aggy:お客さまにインタビューをすることで、自分の主観とは違う領域があることが朧げに見つかるんですよね。そこからさらに言語化すると、目を閉じれば浮かぶぐらいの解像度で、その人が毎日どういう暮らしをしていて、どんな風に相手とコミュニケーションしていて、どんなことを考えて、物事を選択しているかが想像できるようになる。この状態までいけば「理解した状態に近づいた」と言えるのではないかと思います。

ペアで動くことで目的地にたどり着くスピードが速くなる

――実際の業務について少し深掘りしていこうと思います。二人一組でリサーチを進めていると聞いたのですが、仕事の進め方やコミュニケーションは具体的にどのように取られているんですか?

@aggy:チームの進捗管理ツールとしてはTrelloを使っていて、各プロジェクトのタスクを週次でリストに入れています。私とUsukeさんのペアの場合は、毎日朝10時に行うデイリースタンドアップで当日のタスク、前日の進捗、少し先の予定の話をシェアします。それぞれがメインとなる案件がありますが、プロジェクトの進行はお互いが把握している状態です。

@Usuke24:ペアで動くメリットは、目的地にたどり着くスピードが速くなることです。情報共有という意味だとメルカリは組織としても透明性が高く、情報発信する人も多くて、アクセスしようと思ったらどんな情報にもほとんど分け隔てなくアクセスできる。それゆえに困ったときに、探せば情報があるし、仮に探しきれなくても4人のメンバーに聞けば助けてくれる。最近入社した私やteppeiさんが、仕事にすぐ慣れることができたのはそういった土壌もあると思います。

@teppei:ペアワークによって、違った視点やインプットを得られるのも良い点だと思っています。定性調査は定量調査と違い、決まった指標で評価ができないので、個人のバイアスがかかってしまったり、一つの視点でしか見れないこともあるんですよね。ペアだとそういった偏った視点にならないで済みます。

@aggy:メルカリ全体を見れば、データアナリティクスのチームに過去の調査について聞くこともできるし、メルペイの過去のレポートを探して参考にすることもできる。さらにメルペイとの横断的な関わりだけでなく、USのUXリサーチメンバーのナレッジが得られるというのもある意味「福利厚生」だと思っています(笑)。

以前関わったプロジェクトでは、習慣化に関するUSのレポートからインスピレーションを得てプランを作って、ステークホルダーに提案したこともありました。プランニング時点で横断的にデスクリサーチのインプットが豊富にあるのはありがたい点です。

井手あぐり(@aggy)

@chanu:Slackで「こういった関連調査やったことないですか?」と聞くと、リサーチに関わるメンバーに限らず、どこからともなく教えてくれることもメルカリだとよくありますよね。

@teppei:そうですね。横断的な連携は非常に大切なので、私たちマーケットプレイスのリサーチチームだけでなく、メルペイのリサーチチームともコミュニケーションの場を定期的に設けるようにしています。

――皆さんのこれまでのキャリアはさまざまですが、メルカリのUXリサーチャーとしての仕事を進めるうえでの難しさや面白さ、あるいは「らしさ」はどこにありますか?

@teppei:私は他の部署との距離の近さが面白さだと思います。私はchanuさんと一緒にメルカリ全体のUI設計に関わるプロジェクトに取り組んでいますが、そこに関わるメンバーはマーケットプレイス側だけでなく、メルペイのチームとも一緒に関わって、しかもリサーチの部署だけでなく、経営や戦略に関わる方も含めて、リサーチの結果を一つの材料としてディスカッションしています。他の会社と比較してメルカリは、UXリサーチャーが意思決定に与える影響が大きいと感じますね。

@aggy:私は前職が銀行だったのですが、リサーチ結果を意思決定に使ってもらうためには、さまざまなタイプの方々を巻き込む必要がありました。メルカリのUXリサーチャーもそういう意味では、ファシリテーション力、物事を進行していくスキルは重要ですが、「N1」の声に興味を持って、それに力があると思ってくれる状態から仕事をスタートできるところが違います。また、入社して特に感じたのが「定量ドリブン」だということ。定量データをもとに意思決定する仕組みがしっかり根付いているからこそ、「ここから先は定量ではわからないから、N1の話を聞こう」となるのだと思います。

@chanu:メルカリのUXリサーチャーがプロダクトの意思決定に大きな影響を与えているというのも、ただ「お客さまがこう言ってた」だけでなく、裏付けとなる定量調査と定量データがしっかりあるからだと思います。私もインタビューでお客さまからいろいろなエピソードを聞いて、すごい面白いと思うのですが、それを鵜呑みにするのではなく「それって本当にそうなんだっけ?」と疑問に感じた部分も同時に伝えなければいけないと思っています。

UXリサーチャーには「物事を受け入れつつ、当たり前を疑う力」が必要

――少し余談になるのですが、メンバーについて「こういうところがさすがだなー」と思うポイントがあったら教えてください。

@chanu:teppeiさんは、適応力の高さと仕事の速さを備えつつ、アウトプットの質がとても高いんですよね。最初に二人で携わったのが、カテゴリグロースチームとの共同リサーチだったんですけど、他プロジェクトも並行しながらタイトなスケジュールで進めなくてはなりませんでした。そんな中でもteppeiさんは、他の部署の人たちや外部のベンダーの方々含めて上手にコミュニケーションを取っていて、学ばせていただくことが多かったです。

@teppei:なんだか気恥ずかしいですね…(笑)。僕からもアンサーをすると、chanuさんは本当にバランス感覚が良いんですよね。「これはできない」とは言わず前向きに話を進めてくれるので、かなり一緒に仕事をしやすかったです。また、お客さまが安心して話せるような優しい雰囲気を作るのがとても上手なので、リサーチャーとして素晴らしいと思っています。

西口哲平(@teppei)

@Usuke24:僕はaggyさんと一緒に働いていて、良かったと思う点が4つあって。

@aggy:4つもですか(笑)!

@Usuke24:はい!1つ目は、先を見据えてプランをスケジューリングしてくれるので、プロジェクトが安定運用すること。常に心の準備ができた状態で仕事に取り組めるので、新しくチームに入った私からするとありがたかったです。

2つ目が「リサーチをどうプロダクトに生かすか」「どういうマーケティング施策に繋げるか」という意識が非常に強いこと。リサーチを意味あるものにしようというaggyさんの姿勢は学ぶべきだと思っています。

3つ目が、chanuさん同様、aggyさんもファシリテーションが上手い。柔らかい雰囲気の中でテンポよくリサーチ、インタビューしていくので、お客さまも話しやすいだろうし、よくインタビュー中に笑いが起きるんですよね。

4つ目は、分析が深いということ。漫画の『キングダム』で羌瘣(きょうかい)という女性のキャラクターがいるんですけど、すごい深い呼吸をする人で、aggyさんの分析の深さに似ているなと思ったんですよね(笑)。

@aggy:いまの発言でおわかりいただけたと思うんですが、Usukeさんの良さは「周りの人の良さを引き出すところ」にあるんですよ。壁打ちしているときも、参加しているメンバーが次の考えに移りやすいように間をつくってくれたり、キーワードをその場にそっと置いてくれたりする。それぞれの人の得意領域をすごくよく見てくれるから、役割分担も自然にできるし、ペアのリサーチもやりやすい。

リサーチの過程を開き、外部の視点を持ち続けること

――UXリサーチャーとして大切にしている視点や「問い」はありますか?そもそもリサーチャーとUXリサーチャーは何が違うのかも気になっているのですが…。

@aggy:違いを語るとなると、3時間以上は必要になりますね(笑)。いったん、私が大事にしていることをお話しすると、2つあります。1つはリサーチのプロセス、解釈の部分を開きたいということ。つまり、リサーチをリサーチャーだけのものにせず、PMやデザイナー、エンジニアのメンバーにも共有したい。お互いの立場から解釈を重ねたり透かしたりすることで結論が出るから、共通言語になると思うんですね。リサーチャーがN1のお客さまのエピソードを伝えたり、解釈を伝えて、「共通知」にしていきたい。

これを実現するためには、リサーチャーが組織の中で同質化してはダメだと思っていて。ありていに言うと、外に出て旅をして、人と話して本を読んで、感じたことを内省して言語化していく必要がある。外の視点を持ち込むために、半歩外にい続けることも大切にしたいと思っています。

@chanu:私は元々メルカリでPMをしていたのですが、予想に反して施策がお客さまに響かないことがありました。当時はその理由がわからなかったのですが、リサーチャーになって、初めてお客さまにインタビューをしたことで、自分の思考が知らず知らずのうちに「メルカリの中の人」になっていたことに気づいたんです。リサーチャーだからこそ気がつけること、伝えなければいけないことがインタビューをするたびにあるので、これをどう「伝わる情報」としてPMやエンジニアに橋渡しするかが大事だと思います。

上田葵(@chanu)

@aggy:PMや一緒にリサーチに加わってくれる人のモードを切り替えるお手伝いをするのが、私たちの仕事でもありますよね。自分の主観ではなくて、お客さま側に立とうと思って見るときのモード、眼鏡がある。

@chanu:以前、とあるリサーチャーの方から「シンパシー」と「エンパシー」についての話を聞いて。「シンパシー(同情・共感・共鳴)」はできるけど、お客さまの視点に立ってどう感じるのかという「エンパシー(感情移入)」は難しい。これは誰でもできることではないし、だからこそ言語化して伝え続けていくことは大切にしたいと思っています。

@teppei:僕は「疑う」ということを大事にしています。例えば「メルカリのユーザー数が増えた」というと良いことのようにも思えますが、もしかしたら外部要因によって増えただけだったり、キャンペーンで一時的に増えただけかもしれない。実際は、メルカリが使いにくいと感じているお客さまや、メルカリを使うのをやめてしまったお客さまがそれ以上に多くいることだって考えられる。そのため社内の数字についても、基本はまず疑って、正しく理解しようとしています。

@aggy:teppeiさんは常に多角的な視点を持っていて、目の前の情報に反射的に反応しないんですよね。対象物を見たときに、否定せずにいったん受け止めてから「こっちも何か要因があるのではないか?」と疑う。仕事以外でもその姿勢を感じていて「リサーチャーっぽい素質だよな」と思うんですよね。

@Usuke24:リサーチャーは多くの情報に触れるので、必要な情報を見つけていくことは大事なことですよね。そしてそのリサーチを「伝わる形」に情報を構造化することも必要なスキルだと思っています。お客さま目線で見つけた意味のある情報を、PMやエンジニアにちゃんと届けられる形で伝えることに、責任を持ちたいと思っています。

リサーチャー発信でアクションを起こせるのがメルカリの魅力

――では最後に、このチームにジョインすることの醍醐味や、これからのチームの展望があれば教えてください。

@teppei:リサーチャーって、一般的な企業では表に出る機会は少ないし、あまり発言権もない場合が多いのですが、メルカリはUXリサーチャー発信でいろいろなアクションを起こせる機会が多い。UXリサーチャーとしてお客さまを理解するだけでなく、事業のことも考えて実際にアクションを起こすチャレンジができるのは、メルカリでUXリサーチャーとして働くことの醍醐味だと思います。

@aggy:フリマアプリという業界をリードしているメルカリは、次なる体験をつくっていく立場にあると思うのですが、そのプロダクトにUXリサーチャーがいる意味は大きいと思っています。複雑に要素が絡み合っているからこそ、UXリサーチャーとして「つまりどういうことが言えるのか」をちゃんと提言していく必要がある。データの集計結果は人によって変わることはありませんが、そのデータを分析し、得た示唆をもって提言する仕事が、次の新しいビジネス、メルカリのアップデートをリードしていけると思っています。

@Usuke24:メルカリを使っていない方は日本にもまだまだいるので、さらに広がっていく可能性があると思いますし、今後は越境ECで日本以外の国のお客さまに使ってもらうチャンスもあります。日本のお客さまだけでなく海外のお客さまも理解して、メルカリをいろいろな国の人に使ってもらえる良いものにしていきたいですね!

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