メルペイからメルカリグループ全体のコーポレート統括へ。横田淳の決意

「信用を創造して、なめらかな社会を創る」をミッションに、2017年11月にメルカリのグループ会社として誕生した株式会社メルペイ。その設立が発表された瞬間、まるで「よーい、ドン!」の合図がかかったように、プロダクト部門やコーポレート部門のすべてが一斉に築き上げられていきました。そして「0→1」状態だったメルペイは、およそ1年あまりで数百名規模の組織へと成長を遂げたのです。

そんなメルペイのコーポレート部門立ち上げをリードしていたのが、メルペイ取締役である横田淳。株式会社エヌ・ティ・ティ・データや株式会社サイバーエージェントを経てメルカリグループへ入社し、メルカリグループのソウゾウやメルペイのコーポレート部門立ち上げなども担っていた彼は今年4月、メルカリのVP of Corporateに就任。つまり、今度はメルカリグループ全体のコーポレート部門を統括する役割を担うことになります。

そこで今回のメルカンでは、VP of Corporateに就任したばかりの横田にインタビューを実施。横田自身がメルペイのコーポレート部門立ち上げで最初に着手したこととは? さらに、上場後のメルカリグループが目指す「強いコーポレート部門」とは? インタビューを進めると、これまでの既成概念に囚われない横田の野望が見えてきました。

メルペイ立ち上げで意識した、組織づくりの優先順位

ー横田さんはメルカリに入社後、ソウゾウやメルペイのコーポレート部門立ち上げに注力していましたよね。特にメルペイでは、立ち上げからわずか1年あまりで数百名規模の組織に急成長させています。強い組織をゼロからつくるうえで、最初に着手したことは何だったのでしょうか?

横田:そもそもメルペイには「よげんの書」というものがありまして……。

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横田淳(メルカリVP of Corporate)

ーよげん……?(笑)

横田:そう、「よげん=予言」です(笑)。これは、直樹さん(メルペイ代表取締役)や曾川さん(メルペイ取締役CTO)、そして私を含める立ち上げメンバーで考えたメルペイのロードマップ。よげんの書には、メルペイが決済事業を通じてキャッシュレス社会を創るまでの道のりを描いています。その1ページ目に書いてあるのが「よげんを実現するため、最初に着手すべきは会社の基盤をしっかり築くこと」。立ち上げ時は、もっとも人手が足りない状態です。そこで、メルペイでは採用力を高めるために採用メンバーを増やすことから始めました。

ー優秀な人材を見つけてくれる採用メンバーを増やした、ということですね。

横田:そうです。当時は、メルカリのHRメンバーにジョインしてもらい、それと同時にメルペイの経営メンバーを積極的に露出して情報発信なども行いました。それこそ、すべてのメンバーが役職を越えて採用に深くコミットしていましたね。その後、ある程度の規模になってから、本格的に組織づくりをスタートさせていきました。

ー新しいメンバーが急速に集まっていくなか、どのように組織づくりを進めていったのでしょうか?

横田:当然ながら、新しいメンバーが多いということは、社内カルチャーもあまり浸透しておらず、共通知も少ない状態です。そのため、メンバーが何を考えているのか、そもそもどんなメンバーが集まっているのかなど、わかりにくいという壁にぶつかりました。それを打破してくれたのが、組織スコアリングです。

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ー組織スコアリング?

横田:これは「バリューは浸透しているか」「メルペイを知人に紹介したいかどうか」などの質問を月1回、全メンバーに投げかけ、組織コンディションを定量的にチェックするためのものです。回答率が95〜98%だったので、「職場環境がイマイチ」など、改善すべき点を的確に洗い出せました。おかげで、組織改善だけでなく、経営メンバーによる意思決定もスムーズでしたね。当時は組織コンディションを良くすることにコミットするため、私のOKR(Objectives and Key Results)にも「組織スコアリングの数値を良くする」という目標を入れていました。

ーなんだかサービスづくりみたいです。

横田:そうなんです。今思えば、メルペイならではのオリジナルデータをもとに、コーポレートガバナンスをつくるのは楽しかったですね。大事な社内コミュニケーションを数値で図れたのは、私にとっても成功体験でした。

次のフェーズで求められる「強いコーポレート部門」

ーお話をうかがっていると、横田さんは組織づくりにおいて「優先順位」をはっきりさせてからスタートしているんですね。

横田:そうです。プロダクト開発でも言えることですが、組織づくりの大前提は「優先順位を正しく決めること」。とはいえ、組織づくりは会社の成長フェーズや事業の方向性によって優先順位もどんどん変わっていきます。例えば、事業の成長を最優先としている場合、コーポレート業務での優先順位をあえて下げることもあるんです。創業から上場までのメルカリは、まさにその状況でした。

ー創業から上場までのコーポレート部門を、横田さんはどう感じていたのでしょうか?

横田:これまでのメルカリは、グループ全体にミッションやバリューが浸透していて、コーポレート部門もかなりいいバランスだと感じていました。しかし、上場して決済サービスもリリースした今、このままのコーポレート部門で突き進めるかというと、難しい場面のほうが多い。あらゆる上場企業は、コーポレート部門強化に抜かりがないです。コーポレート部門が強いということは、人員や予算、リスクが常に可視化されている状態ということ。無駄な調整が少なく、わからないことを調べるコストがないため、迅速な意思決定につながります。そうすると、経営や事業の選択肢も増えるわけです。

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ー強いコーポレートは、企業の意思決定を後押しする?

横田:そうです。今後、さらに大きな勝負を仕掛けていくには、コーポレート部門全体が、変化への対応力や機動力を高める必要があると思っていて。

ーというと?

横田:私がメルカリに入社して感じたのは、コーポレート部門はもっと成長できるという確信でした。メルカリは上場してまだ1年未満。コーポレート部門をより強くするため、優先順位やリソース配分などを経営メンバーがよりGo Bold(大胆)に変革していかなければならないフェーズのように感じています。

ーコーポレート部門は、次のフェーズへ進もうとしているんですね。

横田:ビジネスの世界では、さまざまな企業が生き残りをかけ、しのぎを削っています。当然、簡単に勝たせてくれるわけがありませんよね。メルカリグループのコーポレート部門は、そういった世界で戦い抜くための筋力をつけようとしているんです。

「業務の再構築」と「人材や組織の韮(にら)化」

ーそして今年4月から、横田さんはメルペイを離れて新たな役割を担うと発表されました。どういった役割になるのでしょうか?

横田:私は今年4月から、メルカリグループ全体のコーポレート部門責任者であるVP of Corporateに就任します。これまでのメルカリグループは、社内カルチャーがしっかり浸透した土壌のうえに成り立っていました。一方で、各グループ会社でコーポレート部門がバラバラだったこともあり、非効率な業務やプロジェクトが放置されていたり、仕組みやノウハウが足りないことで属人的になっている業務が散見されます。人間の身体に例えると、贅肉がつき始めている状態です。今後はVP of Corporateとして各社のコーポレート部門を1つにまとめ、仕組みをつくり直すなど、役割分担や優先順位をより明確に整えていこうと考えています。

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ー具体的に、何をしていくのですか?

横田:明確にやりたいことは2つあります。1つ目は、業務の再構築。2つ目は、人材や組織の韮(にら)化です。

ー1つ目の「業務の再構築」とは?

横田:コーポレート業務において、スピードとクオリティーは比例します。具体的に言うと、「これは何ですか?」という質問にすぐ回答できる状態が理想。今は逆に「回答に時間がかかる=担当者が業務をしっかり理解できていない」という状況が少なからずあると実感しています。業務を深く理解していれば常に正確な情報を把握しているはずですし、あらゆる状況にもクイックに対応できるはず。メルカリグループでも業務フローや仕組みを再構築し、スピードとクオリティーを上げていきたいですね。

ー2つ目の「人材や組織の韮(にら)化」とは、何を意図しているのでしょうか?

横田:コーポレート業務では、あらゆる数字や組織、リスクを多角的に見る必要があります。例えば、「人」にフォーカスすると、人事の視点では「組織に何人くらい必要か」「組織のコンディションは良いか」となります。しかし予算管理では「人員が増えることで人件費やオフィス費用はどれくらいになるか」、さらに法務では「人員増加に伴うリスクをコントロールしたい」という見方をしていたりします。いろんな専門分野の視点を持ち、経験を積み重ねていくことで、人材や組織が「韮」という文字のように強みが増えていくのではないかと考えています。

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メルペイの全社定例で「韮型」について発表後、個人のSlackチャンネルでも想いを綴った

ー各専門分野に深く根ざしながら、横とのつながりも強い。「韮」という漢字が表しているとおりの状態ですね。そして念のため確認するのですが、韮とは、フライパンで炒めて食べる野菜の「にら」ですか?

横田:そうです。いわゆるキャリア形成では、スペシャリストをI型、シングル・メジャー人材をT型、デザイン・エンジニアリング・ビジネスの3分野をつなげる人材を「H型」と表現したりしますよね。「韮型」は、それらの進化系として3分野以上の見方やつながりを持てる人材を指しています。私はそういった人材を増やし、組織も同様に韮化させていきます。

グループ全体を一枚岩にする「メルカリ×メルペイ」のシナジー

ー今年4月から、メルカリグループのコーポレート部門では、メルカリCFO長澤啓さんとの2トップ体制になると聞きました。それぞれ、どういった役割分担になるのでしょうか?

横田:啓さんはIRなど、対外的な数字を正確に社会へ届ける役割を担います。そして私は、啓さんが正しい数字を伝えられるよう、社内を整える役割。わかりやすくいうと、コーポレートの社外的な部分を啓さん、社内的な部分は私という感じですね。啓さんは金融機関出身ということもあり、社外でのコミュニケーションスキルがとても高い。そして私は事業会社でのコーポレート業務全般を経験してきました。それぞれの強みを活かしつつ、密に連携するつもりです。

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ーそのあたりも韮化?

横田:そうです。そしてさらに、メルペイでの知見をメルカリにも活かしたいと思っています。メルペイの立ち上げ時は、多くのメルカリメンバーがジョインしてくれました。メルカリとメルペイの両事業の視点を持ち、複数の専門性を有する人材はとても貴重です。メルカリグループ全体で一枚岩の状態をつくるためにも、コーポレート部門こそ、メルカリ・メルペイの視点を持つ人材を増やしたい。そして、双方のシナジーをより高める仕組みづくりを目指していきたいですね。

プロフィール

横田淳(Jun Yokota)

株式会社エヌ・ティ・ティ・データを経て、株式会社サイバーエージェントに入社。グループ全体のコーポレート業務に従事する傍ら、多数の新規事業やグループ会社の経営支援、特命案件業務に従事。経営本部長、執行役員を歴任。株式会社 AbemaTV取締役として動画事業の立ち上げ等に尽力。同社を退社後、2017年6月にメルカリ/ソウゾウに入社、執行役員に就任。また、2017年11月には、メルペイの取締役に就任。そして2019年4月からメルカリVP of Corporateに就任。趣味はマグロ釣り。

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