メンバーの活躍を“大胆に”報いる──大幅アップデートされたメルカリ人事評価制度の内容と意図

「強調しておきたいのは、今までの人事評価制度が決して悪かったわけではないということです。当時のメルカリグループの“らしさ”を体現していましたし、市場価値に合わせながらメンバーのパフォーマンスに対して大胆に報いる制度は、会社のフェーズにも合っていました。今回の新人事評価制度でも大方針は変わっていません。ただ、フェーズに合わせて手段を変えただけなんです」

2021年2月、メルカリグループでは人事評価制度を大幅にアップデートしました。これまでの人事評価制度では、メンバーの能力や成果にランク付けを行わないシステム「ノーレイティング」、設定された目標をどの程度達成できたかを評価する「絶対評価」を採用。さて、アップデートされた新人事評価制度の内容は?

今回のメルカンでは、新人事評価制度の設計に向けて奔走したプロジェクトチーム「PJ-Excite」のメンバーである梅澤 亮(@ume)、田中マヤ(@maya)、井上友幸(@into)、江本桃子(@momoko)にインタビュー。新人事評価制度をどのように変え、どんなメンバーをより評価できるようにしたのかを聞きました。

※撮影時のみ、マスクを外しています。

この記事に登場する人


  • 井上友幸(Tomoyuki Inoue、@into)

    メルカリHR Planningチーム、マネージャー。2018年7月にメルカリ入社。Corporate Solutions Engineeringチームにて、評価システム「Reviews」やRSU管理システム「Benefits」のプロダクトマネージャーを担当。その後HR Planningチームに異動し、人事評価制度の刷新プロジェクト(PJ.Excite) の全体PMを務める。

  • 江本桃子(Momoko Emoto、@momoko)

    メルカリHR Planningチーム。2018年1月にメルカリへ入社。CS DivisionのHRBPとして採用〜労務管理までの人事全般とチームのマネジメントを担当。2020年4月にHR Planningチームへ異動し、現在は人事評価制度企画/運営、グループ人員計画の管理を担当。

  • 田中マヤ(Maya Tanaka、@maya)

    メルペイHRBPチーム。2018年7月にメルカリ入社。Global Operations Team(GOT)の通訳者として入社し、マネージャーへ。GOT Managerの際にはTaskforceのリーダーとしてLeadership Developmentの土台を作り上げた後にメルペイのD&Iをリードしてきた。

  • 梅澤 亮(Ryo Umezawa、@ume)

    メルペイTalent & Cultureチーム、Director。2018年3月にメルカリに入社。HR Planning Teamでグループの制度設計に携わったのち2018年8月にMerpayに異動。MerpayではHRの立ち上げからオフィス、総務、カルチャー構築など幅広く管掌 Merpayの経営会議の事務局も務める。


新人事評価制度で定めたのは「期待と評価の道標」

ーこれまでのメルカリグループでは、メンバーの能力や成果にランク付けを行わないシステム「ノーレイティング」、設定された目標をどの程度達成できたかを評価する「絶対評価」を人事評価制度に採用していました。今回の人事評価制度は、それらをすべて変えた感じでしょうか?

@ume:大きな方針は何も変わっていません。メルカリ・メルペイ・ソウゾウで事業フェーズや実現の仕方に違いはあれど、優秀な人材を大胆に評価で報いていく軸は以前のものと同じです。

@into新人事評価制度での一番大きな変更点は、グレードを軸に据えた点です。グレードは、メルカリグループとして「どんな貢献を期待しているか」を明確化したもの。そのため、期待される成果とバリュー発揮行動を分けてグレードを定義しています。これは評価や昇格を議論するときの軸になりますし、成長の道標としても活用できます。

井上友幸(メルカリHR Planningチーム、@into)

@momoko:今までの人事評価制度は、メルカリのカルチャーに合わせてつくり、少しずつ改善・肉付けされながら運用してきました。そのなかにグレードもありましたが、給与水準を加味して決定したものでした。新人事評価制度では改めてグレード内容を見直し、評価時の軸になるように再定義した感じですね。

ーグレードという明確な軸ができたことで、新人事評価制度はどんな内容になったんですか?

@ume:具体的には、以下のような内容になります。

@ume:新人事評価制度では「グレード」を基軸に、各個人の成果・行動の2つの観点から評価。成果に対しては「該当するグレードで期待されている成果を達成できたかどうか」、行動に対しては「メルカリグループが定めるバリューを発揮し、実践できたかどうか」を問います。成果が評価されればボーナスに、成果・行動ともに評価されれば昇給につながります。

変更の理由は「暗黙知が増えて納得感が低下」「組織の多様化」

ーやはり聞いておきたいのは「なぜ人事評価制度を変えることにしたのか」です。このあたりはどうですか?

@ume:率直に言ってしまうと、単純に組織が大きくなってきたからです。今までは、経営陣とマネージャー間で評価をすり合わせる「キャリブレーション」の時間を長く確保できていました。「ここはどう評価しよう?」と迷うことも少なく、暗黙知レベルでも納得感高く各メンバーの評価を決められていたんです。

しかし、組織が拡大するにつれてメンバーも増え、当然ながらマネージャーたちがキャリブレーションを行う時間は多くなる。本当は「成長のためにどんなチャレンジをするのか」を話し合う時間を多くとりたいのに、効率良く行わなければならないために「給料をどうするか」の議論がメインになりつつありました。

梅澤 亮(メルペイTalent & Cultureチーム、@ume)

ー確かに、メンバーが増えればマネージャーの評価対象は増えますし、チームが増えれば経営陣と話し合うことも多くなるわけで…。

@ume:そうなんです。評価で一番重要なのはメンバーの納得度。以前の制度でも社内メンバーの8割程度は納得感がある状態でしたが、実際のところ、経営陣はメンバーのことを「なんとなく知っている」レベルになっていた。逆にメンバーは、経営陣からどう評価されているかが見えづらくなってきていたように思います。

@into:組織が拡大・多様化していくにつれて、ハイコンテクストなものを減らし、全メンバーに伝わるように言語化していく必要もありました。100人規模の会社で発揮するGo Boldと、1,000人規模の会社で発揮するGo Boldは質も範囲も影響力も違うので。

@maya:海外出身のメンバーの評価でも、議論が生まれたこともありましたよね。私は翻訳・通訳メンバーとしてメルカリへ入社しています。当時、マネージャーは「『これをやってほしい』『期待してる』って言ったよね」、メンバーは「そんなの聞いてない」…みたいなやりとりもあって。組織の多様性に通用するものをつくらなければいけないフェーズでもありました。

田中マヤ(メルペイHRBP、@maya)

@ume:総合すると、以前までの人事評価制度では、さまざまなところで整合性がとれなくなってきていたわけです。当初はマイナーアップデートする話もありました。でも、それだと結局また同じ課題にぶつかってしまう。そこで「これはもう、経営陣の想いに立ち返って決めよう」とメジャーアップデートすることにしたんです。

@into:ここで強調しておきたいのは、今までの人事評価制度が決して悪かったわけではないということです!以前の人事評価制度は当時のメルカリグループの“らしさ”を体現していましたし、市場価値に合うように大胆に報いる制度は、会社のフェーズにも合っていました。あくまでも大方針は変わっておらず、フェーズに合わせて手段を変えただけなんですよね。

成果だけでなく「バリューにともなった行動」が評価されるシステム

ー新人事評価制度で気になるのが「成果主義になりすぎないか」という点です。メルカリグループ以外の企業でもよくあるのが、目立つ成果を出した人が評価され、目立たないけれど成果にコミットした「調整役」的なメンバーが評価されにくいパターンです。このあたりは、どうやって回避しようと考えていますか?

@ume:わかります、そういった事態はよくありますよね。今回の新人事評価制度では「成果・行動の2つの観点から評価していく」とお伝えしましたが、なかでも「行動」が重視される仕組みにしています。そもそも「バリューが高ければ成果は上がる」が前提ですからね。僕はメルカリで何千人もの評価を見てきましたが、バリューが高いメンバーは成果を出している。アウトプットも大事なのですが、行動指針でもあるバリューが高くないとグレードは上がらないわけです。

@maya:ここは、すごくメルカリらしいところですよね。評価するうえで、成果よりも「バリューを発揮して行動していたか」のほうが大事。いくら成果が出ていても、バリューが低い人の評価は低いままだし、逆にバリューが高いメンバーは評価が高くなる。

ー評価が偏らないようにしているんですね。

@ume:評価において大事なのは、次の成長につなげること。その要が、キャリブレーションです。新人事評価制度の導入後は、「メルカリでの評価はこういう感じだから」とハイコンテクストなやりとりはなくなっていくはず。そうすれば、メンバーの納得度は上がり、評価に値する「バリューが高い行動」につながると考えているんです。

キャリブレーションのなかで話されたことが、翌月には実現している。メルカリの非連続的な成長を実現させているのは、まさにこの部分です。「行動」を重視することで、定期的な昇給ではなく、より大胆に処遇されて活躍するメンバーが生まれていくはずです。

でも、キャリブレーションって、めちゃめちゃ疲れるんですよね。多くのマネージャーが、終了時にはぐったりしている(笑)。でも、僕は一番好きな時間かもしれません。メンバーに対して、マネージャーや経営陣が真剣に議論して、ぶつかり合う。時間にしたら10分ぐらいかもしれないけれど、かなり濃密に話し合っている。すごくいい時間ですよ。

@momoko:そうそう。「じゃあ今度はこういうアサインに」とか「こういう育成、キャリア支援をしていきたいね」とか。すごくいいやりとりですよね。

江本桃子(メルカリHR Planningチーム、@momoko)

メルカリグループの「非連続な成長」を支えるために立ち上がったプロジェクト

ーこの新人事評価制度をつくるために立ち上がったプロジェクトが「PJ-Excite」です。そのメンバーがみなさんというわけですが、プロジェクトはどのように進めていたんですか?

@into:PJ-Exciteが立ち上がったのは2019年12月、翌年1月中旬から本格スタートしました。「今後いろいろなフェーズの会社が増えていくから、それに対応できる人事評価制度にしたほうがいいね」と、そのころにすり合わせた記憶があります。

@ume:当初から決めていたのは、グレードを定義するうえで「バリューに伴う行動かどうか」を軸にしていくこと。ここは議論の余地がなかったですね。我々がバリューを大事にしないわけがないし!

@into:ですね。そして経営陣と連携しながら制度内容を決めていくわけですが…。当初は「事業フェーズが変わっているのであれば、バリューもゼロベースで見直してもいいんじゃないか」と経営陣から投げかけられたこともありました。でも、PJ-Excite内では「今は変える必要はない」という結論になり、バリューを軸にしていくことにしたんです。結局、経営会議には30回ぐらい持っていきましたよね?

@maya:思い返せば、30回も議論にコミットした経営陣と、それに挑んだプロジェクトメンバーはなかなかすごかったんじゃ(笑)。

@momoko:経営陣だけでなく、メンバーにも「こんな人事評価制度にしようと思うんだけどどうですか?」と広く意見をもらう場を設けていきましたよね。

ー全メンバーにヒアリングしていた?

@ume:そうです。人事評価制度はトップダウンでつくることが多いなかで、メンバーの意見を聞いてブラッシュアップして…という進め方をしている点もメルカリらしいですよね。もちろん、時間もかかりましたけど(笑)。特に大変だったのは、@intoさんと@momokoさんです。正直「もう何回オープンドアをやったんだ?」と思うくらい開催していたような?

@into:僕としても、このプロジェクトで一番濃かったのはそこです(笑)。報酬制度の社内投票もしましたからね。その対話も@tatsuoさん(メルカリCHRO、木下達夫)が重視して、直接リードしていたのも特徴的でした。

@momoko:もちろん、投票で選ばれたものがそのまま反映されるわけではありません。メンバーのインサイトを拾い、それを踏まえて経営陣にインプットすることが目的でした。「メンバーはこういう考えですよ」と伝えていくなかで、ふと我に返り、本当に全員で制度をつくっているんだなと実感。「この会社、すごいな」と思いました(笑)。

メンバーの納得度を得るため、欠かすことができないD&I

@ume:もう1つ「メルカリらしくていいな」と思ったのは、新たにD&I(Diversity&Inclusion)を軸に据えていくことにした点です。バリューはいわゆる行動評価みたいな意味合いですが、D&Iはどちらかというと倫理観に近い。だから、当初は入れるべきか議論していました。経営会議で「D&Iを軸に据えるか」と聞いたら、「そりゃ、入れるべきだろう」と即答。会社を良くするためのアイデアはマジョリティの意見だけではなく、いろいろなメンバーの意見を聞くことで生まれる前提で、D&Iも重要な要素になっていきました。

@maya:D&I観点では「メンバーが全員日本人であるわけではないのに、定義文の基本が日本語とはどうなのか?」という疑問がありました。日本語のバリュー定義は数名が一言一句こだわってつくっていたことに対して、英語は1〜2名が翻訳しただけ。もちろん、翻訳したメンバーが悪いわけではないのですが…やはり「日本語がメイン」では、日本語話者じゃない身から見ると疑問に思います。

新人事評価制度に関しては、社内のいろいろな部署から英語話者を集め、すでに出来上がっている翻訳への意見を求めました。そこで話し合った内容をPJ-Excite内に持ち帰り、反映。英語だけでなく日本語を「こう変えない?」と提案することもありました。人事以外のメンバーから意見を聞きながらつくることで、現場での納得感を上げていく。「どちらかの言語がメイン」という決め方を避けられたのは、とてもよかったと思っています。

ーそして、無事に新人事評価制度ができましたね。

@ume:新人事評価制度になったことで、マネージャーたちはメンバーの新しいグレードを決めるところからスタート。新しいグレードを定義すれば「この人、実は今より上のグレードじゃん」というメンバーも出てくるはず。つまり、今までハイコンテクストで正しく評価されていなかったメンバーが、ちゃんと評価される流れがより強まると考えているんです。すでに一部のマネージャーがメンバーに対して「この要件をすべて満たしているよね」「このメンバーはこのグレードが合っているよね」と自信を持って言えるようになっている点は、すごくポジティブですね。

@momoko:システマチックに、旧グレードから新グレードへスライドすることも可能でした。でも、そうしなかったのは、マネージャーやメンバーの納得度を優先したかったから。それは、本プロジェクトのキモでしたね。メルカリグループが最も大事にしている「人に投資する」を体現した人事評価制度として、「納得度があるもの」にするためのコストは一切削減しませんでした。

@into:人事制度のアップデートは、組織課題を解決するためのプロジェクトでもありました。議論の機会をなくすのではなく、ロジックに落とせるものは落とし込み、議論すべきことにきちんと時間を使えるようになったはずです。キャリブレーションが報酬の話だけになってしまい、成長の機会を適切に議論できなくなってしまったら個人・組織としても問題。メンバーにとってわかりやすくなっただけでなく、マネージャーにとってもキャリブレーションに投資した時間に対する効果は上がるはずです。

「完璧な人事評価制度はつくれないから」

ー新人事評価制度が完成し、導入された今、みなさんはようやく一安心?

@ume:制度全般に言えることですが、どんなに優れた制度でも使いこなすメンバーの成熟度が必要不可欠。ずっと追い求めていかなければいけない部分だと思います。そのため、一安心している場合でもないですね(笑)。

@into:制度に正解はありません。運用していくなかでブレることはあると思うので、そのたびに「本来の意図はここなんです」とちゃんと伝えていく。それが、これからのチャレンジだと思います。

@ume:特にD&Iは今、会社全体として推進していかなきゃいけないフェーズであり、グレードによって差もあります。しかし、もっと推進されれば当たり前の状態になる。あえて定義に入れなくてもいいフェーズがくるかもしれないという意味では、可変性があるかもしれません。完璧な制度はつくれないので、評価するマネージャーの育成や制度の浸透にかかってくるのではないでしょうか。

@maya:そこが今後のポイントだと思っているんですよね。グレードの定義はつくれたものの、それを日々の業務や目標設定に落とし込む方法をメンバーやマネージャーに伝授していく必要があります。完璧な制度は存在しないので、メルカリらしく現場の意見を吸い上げ、随時改善していきたいですね。

@momoko:そうですね。マネージャーにとって評価時の武器は増えたと思うので、ここからは使いこなせるようになるための支援していきたいですね。人事からも積極的にインプットし、使いながらより良い制度にしていきたいです!

@ume:同感です。そして最後にお伝えしたいのが、今回の新人事評価制度も、フェーズや状況にあわせて再び変更する可能性があること。なぜなら、人事評価制度はあくまでも「会社をより成長させるための手段」だからです。人事を担当する僕らは、引き続き気を抜けません。

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