CEO時代にぶち当たった「スケールの壁」をメルカリで越えたい──経営戦略チームメンバーの本音

実は今、メルカリManagement Strategy(以下、経営戦略)チームには、元起業家・経営者がメンバーとして集まりつつあります。

経営戦略チームとはその名のとおり、メルカリが掲げる「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションの達成に向け、ロードマップ作成やM&A戦略などを考え、実行するチーム。

しかし、現場でプロダクトづくりに関わるほか、メルカリではない会社を立ち上げることも選択肢にあったはずです。なぜメルカリ経営戦略チームなのか?その意思決定の背景をメルカリ経営戦略チーム・Directorの原田大作(@daisaku)、メンバーである浅枝大志(@asaeda)、太田麻未(@asami)に聞きました。

※撮影時のみマスクを外しています

この記事に登場する人


  • 太田麻未(Asami Ota、@asami)

    早稲田大学理工学部卒業。新卒で楽天株式会社に入社し、楽天市場や楽天EdyのエンジニアやPMを経験。その後、株式会社リクルートライフスタイルに就職し、ID決済事業の事業立ち上げを経験。2015年にEmotion Intelligence株式会社に営業として入社。2016年に同社の代表取締役CEOに就任。2019年に台湾本社のAppier.incに会社を売却。2020年にSHOWROOM株式会社にて新規事業立ち上げ後、2021年株式会社メルカリ経営戦略チームに参画。インド映画とフレンチブルドッグをこよなく愛する。twitterは@asamiota

  • 浅枝大志(Hiroshi Asaeda、@asaeda)

    1983年生まれ。青山学院大学卒。デジタルハリウッド大学院修了。2005年に美容室を創業、2006年に仮想空間を専業とした株式会社メルティングドッツを創業。2011年12月、友達同士で音楽を聴かせ合うソーシャル音楽サービス「Beatrobo」をリリース、CEOに就任。2014年3月にローソンHMVエンタテイメントと業務提携を行い、110万ドルの資金調達を実施。イヤホンプラグガジェット「PlugAir」事業を開始し、LINKIN PARK、TMNETWORKなどのアーティストにデジタルハードウェアも提供していた。2021年7月からは、メルカリ経営戦略チームへ参画。著書に『ウェブ仮想社会「セカンドライフ」ネットビジネスの新大陸』など。

  • 原田大作(Daisaku Harada、@daisaku)

    ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社などでのモバイル・ソーシャルゲーム領域の新規事業立ち上げを経て、2011年にザワット株式会社を創業、代表取締役に就任。ブランド品フリマアプリの「スマオク」等のC2Cサービスをグローバルに展開。2017年2月、株式会社ザワットを株式会社メルカリにM&Aにより売却。メルカリの新規事業を行う株式会社ソウゾウの執行役員として、ブランド査定付きフリマアプリ「メルカリ メゾンズ」等、新規事業領域を担当。2018年4月2代目ソウゾウ代表取締役社長に就任。2019年7月、株式会社メルカリのHead of Product – Newbiz、半年間の育児休暇を経て、2021年1月、メルカリ経営戦略チームDirector(現職)。兼、起業家コミュニティ千葉道場ファンド・フェロー。


入社を決めたのは「最速で自分の夢を実現できると思ったから」

──@daisakuさんと@asamiさん、@asaedaさんは、元起業家であり経営者でした。なぜメルカリの経営戦略チームへ参画することにしたんですか?

@asaeda:僕は学生時代に会社を立ち上げ、メイドヘアサロン「moesham(モエシャン)」を秋葉原にオープンしたり、メタバース黎明期の仮想空間サービスセカンドライフを展開するメルティングドッツ(Meltingdots)を立ち上げたり、友だち同士で音楽を聴かせ合うソーシャル音楽サービス「Beatrobo」をアメリカで創業したり…ずっと起業家・経営者としてのキャリアを歩んできました。

そのなかで、僕が一貫して実現したかったのは「日本から世界的なプロダクト、体験をつくること」。しかし、自分が社長として取り組んできたものでは理想にたどり着けませんでした。独学ながら今まで何とか生き延びられた経験から、これから起業する人たちに「何とか生き延びられるよ」と言えるキャラにはなれたかもしれませんが(笑)。

浅枝大志(@asaeda)

@asaeda:新たに起業する選択肢もありましたが、組織づくりやマネジメント、資金調達など、きっとぶつかる壁はこれまでと同じ。自身の失敗要因を分析して弱点を改善しないことには、同じ壁で同じ失敗をくり返す気がしました。

そこで貢献もでき、成長もできる環境を求め、ミラティブを経てメルカリへ入社しました。メルカリはグローバル展開へさらに本腰を入れていくタイミングだったこともあり、「日本から世界的なプロダクト、体験をつくる」という自分の夢と合致すると思ったんです。今から自分の夢を最速で実現する方法は「メルカリを大きくする=グローバルで勝てる企業にすること」だと思い、メルカリ経営戦略チームに参画しました。

──@asamiさんは?

@asami:私は以前経営していた会社を売却したことで、周りからは「おめでとう」と成功体験のように言われることがあります。でも、自分の中ではずっと違和感があったんです。会社を売却することで世の中に生み出せたインパクトは、正直言ってそこまで大きくない。そういった経験からなのか、純粋に事業で世の中にインパクトのある価値を提供したいと思うようになりました。それもできればより大きなインパクトを与えたい。その点、メルカリはインパクトのある事業になりつつあり、かつ今が完成形ではない。さらに成長していくフェーズだった部分も、私にはぴったりだと思いました。

本音を言うと、具体的にメルカリの話を聞くまでは「メルカリはもうほぼ完成している、成功しているもの」というイメージがあったんですよね。しかし蓋をあけてみると、まだまだ未整備なところも多かった(笑)。私としては、会社全体の課題やコアな部分を理解したうえで重要な課題に取り組みたい想いが強く、そういう意味でメルカリ経営戦略チームが良いのではないかと思いました。

太田麻未(@asami)

@asami:また、入社を決める際には、経営者がリスペクトできるかどうかも重要なポイントでした。進太郎さん(メルカリ代表取締役CEO、山田進太郎)の考え方や佇まいに惹かれた部分も大きかったので、いろいろな選択肢を考えたんですが、最終的には違和感なくメルカリ経営戦略チームへの参画を決めました。

現場ではなく、なぜ「経営戦略チーム」?

── 一方で@daisakuさんは2017年にザワットがM&Aされるとともにメルカリへ参画。その後、2代目ソウゾウの代表も務めていました。現場ではなく「メルカリ経営戦略チーム」を選んだ理由は何だったんですか?

@daisaku:メルカリ経営戦略チームに参画を決めたきっかけは、2020年7月から半年ほど取得していた「育休」での経験が大きいです。せっかくの育休なので、家族としっかり向き合おうと思い、仕事をしないようにしていました。その時間自体はすごく幸せだったのですが、やっぱりどうしても手を動かしてしまうんですよね…。そうした経験をして、仕事を通じて人の役に立つことこそ、自分の人生において幸せの大きな部分を占めるとわかったんです。

復帰するときに、育休以前にリードしていた新規事業の本格的な立ち上げか、それともほかの役職を選ぶことになりました。「個人的には浦島太郎状態の自分が完全に権限移譲したチームに戻って事業をリードしたり、もう一度何かしらの代表になるのはイケてないと考えている」と経営陣に話しました。ぶっちゃけ、このときはメルカリを辞めて起業する道も考えていたんです。

そんなとき、@Shuji(上級執行役員 SVP Strategy、河野秀治)と話しました。@Shujiは「経営者としてレベルアップしているから、起業すれば相当いいものがつくれると思う。ただ、それはいつでもできる。今のメルカリでなければ見れない世界がある。もう一度、Go Boldな思考を社内に取り戻していくにあたって、@daisakuのような人物が活躍できる」と言ってくれたんです。

メルカリに残るか、それとも起業するか。起業においては、M&Aを選択したあと、株主や経営陣との方向性がズレて心が折れてしまい、再度起業するという選択肢をとらざるを得ないケースも見てきました。幸いなことに、僕の場合は2011年に夢描いて起業し、追い続けてきたビジョンが「メルカリという大きな舞台」を通じて日々現実化に近づいている途中です。10年前と変わらない想いで、今も仕事できています。ならば、起業じゃなくてメルカリで夢を追い続けたほうがいい。

原田大作(@daisaku)

@daisaku:では、ビジョン達成への加速度をさらに上げるために僕がメルカリでできることは何か?会社のロードマップや戦略をまとめ、どの方向へ進めていくかを決めていくメルカリ経営戦略チームなら、起業家としての経験が活きると思いました。何より、メルカリのような企業がよりスケールするというおもしろい状況のなかで、さまざまな戦略を具体化する役割を担えるチャンスはほかにない。そんな考えのもと、メルカリ経営戦略チームに参画することを決めたのです。

──@asamiさんと@asaedaさんが「現場」ではなく「経営戦略」を選んだ理由は?

@asami:本音を言うと、私は現場でプレーヤーとして事業をつくったり、営業したりするほうが好みだったりします(笑)。ただ、それでは出せるインパクトが限られている。プレイヤーとして全力で走ってきた期間があるからこそ、自分のプレイヤーとしての最大値を理解しています。よりインパクトがあることをしようと考えると、これまでの経験も活かしながら自分にとって難易度の高いことに挑戦していきたいと思ったんですよね。

裏方でありながらも攻めの立ち位置で新しいことに取り組めるメルカリ経営戦略チームはおもしろいと思いましたし、なおかつ国際戦略などをゼロイチをセットでやれる場はここ以外にない。これまでの経験も活かせるし、新しいチャレンジもできると考え、メルカリ経営戦略チームで働く道を選びました。

そして個人的なことなのですが…。「CEO」の肩書きは何でもできるように聞こえますが、言い換えると「何でもやらなければならない分、プロフェッショナリズムが足りない」と個人的に感じるところがありました。なので、いざ肩書きが外れたら一体何ができるのだろうかと考えることもあったんです。メルカリ経営戦略チームにおける私は「CEOではなく、ただの太田麻未」です。この領域で、自分の新たな強みも育てていきたい。これも、決め手の1つでした。

@asaeda:僕はやはり、世界的なプロダクト・体験をつくりたい。メルカリ経営戦略チームなら、毎日の仕事がその思いの実現に繋がっていくと思ったんです。とはいえ、メルカリ経営戦略チームは机上での作業のみではありません。そのすべてに実働がともないます。経営者目線で戦略を練りつつ、プレイヤーとしての働きを求められるところも魅力でした。

国際展開、事業化スキーム構築サポート、経営陣の生産性向上…

──経営戦略…というと、多種多様すぎる仕事内容なイメージです。今、みなさんはどんな仕事をしているんですか?

@daisaku:メルカリグループには全社戦略の方向性を示すロードマップがあり、その内容に関するディスカッションを経営陣と実施しています。最近では、もともとロードマップに描かれていた国際展開を早める意思決定を行いました。メルカリ経営戦略チームには、このようなプロジェクトをリードする役割もあるんです。

そのほか、国内戦略も推進しています。具体的には、メルカリの研究開発組織 「mercari R4D」が共同研究パートナーと研究開発を行っている新しい電動モビリティ「poimo(POrtable and Inflatable MObility)」をどう社会実装し、ビジネス化するのか。事業化するとなったら、メルカリからスピンアウトさせるのか、それとも新規事業として社内で立ち上げるのかといったように、事業化する際のスキーム構築のサポートもしています。

@daisaku:また、メルカリには3年先の大きな技術的な変化、トレンドをリサーチして対応できるようにするAdvanced Tech Teamもあります。彼らのグローバルなリサーチャーネットワークを使って一部の国際戦略のリサーチや最新の技術事例、新規事業、海外スタートアップの発掘・情報発信などもしていますね。今後3年でメルカリが10倍に成長をしていくために注力すべきことは何か、そのテーマも探しているところです。イノベーションを実現する重要な鍵は人材だと考え、社内外からメルカリにイノベーションを起こせる人材を発掘・登用していくミッションもあります。

@asami:あと、取締役会で社外取締役にアジェンダをあげて経営について議論したり、毎週のエグゼクティブミーティングの企画進行したり、役員会議の運用もやっています。ただ会議をまわすだけでなく、質とレベルを向上していこうとかなり工夫しているんです。経営陣によるさまざまな意見が飛び交うなか、意見を言ったり軌道修正する場合はなかなか強い気持ちが必要ですが(笑)。

@daisaku:表に出ない大きめな事業提携の話やM&A案件もあります。「経営陣の生産性を高める」もメルカリ経営戦略チームのミッションの1つなので、進太郎さんや直樹さん(メルペイ代表取締役CEO、青柳直樹)の秘書メンバーもメルカリ経営戦略チームに所属しているんです。

──何でもやる感じなんですね。

@asaeda:そのニュアンスはあながち間違っていないかもしれませんね。「苦手だけど、何とかしておきます」みたいな(笑)。

@asami:ですね。そもそもメルカリ経営戦略チームには、「できません」を言わずにこれまで走ってきたメンバーが集まっている気がします。

メルカリ経営戦略チームで得たのは「本質的に考えられる時間」

──今話してもらったことは、起業してもできるんじゃないかと思ったりするんです。そういった業務をメルカリ経営戦略チームでするメリットは?

@asami:スタートアップの経営の醍醐味が、何もないところから戦うことにあるとすると、メルカリはすでに一定の武器がある状態で勝ちにいこうとしています。そこが大きく違う部分であり、醍醐味でもあります。

そういう意味では、メルカリ経営戦略チームでの仕事に取り組むマインドはCEO時代とあまり変わっていないですね。あえて違いを挙げるならば、「余裕を持てているかどうか」。CEO時代を思い返すと、目の前に「今すぐやらなければならないこと」が無限に振ってきて、常にその対応に追われていたんですよね…。

@asaeda:同感です。緊急度と重要度のマトリクスにおいて、経営者は緊急じゃないけど重要なことにリソースを割くべき。とは言え、経営をしていると「緊急だけど重要じゃないこと」もたくさんある。実際には、リソースの50%くらいは「緊急だけど重要じゃないこと」にとられてしまいます。メルカリ経営戦略チームの場合、「緊急だけど重要じゃないこと」に使う時間が少ない。その分、しっかりと「この方向性なら勝てるはず」と戦略を考えられる時間の割合を増やせている実感があります。

@asami:ですよね!スタートアップの経営者はフルスタックに何でも打ち返さなければいけないけど、少しでも意思決定を間違えたら死ぬという綱渡り感がありました。それはそれでおもしろいのですが、精神的に余裕を保ち続けるのは難しい。その結果、本当に重要なこと・取り組みたいことに、時間も余裕も十分に確保できていませんでした。一つひとつの案件に腰を据えて、より本質的に考えられる環境が、メルカリ経営戦略チームにはありますね。

@daisaku:たしかに、起業家・経営者だったころは「緊急だけど重要じゃないこと」に追われる毎日でした。今この規模の成長企業の経営を日々間近に見て、ようやくプロとしての経営が少しだけ理解できてきたのかもしれません。経営のフルスタックな知識を持ち、その上で、課題解決に向き合いたい人は活躍しやすい環境だと思います。@asamiさんと@asaedaさんがメルカリ経営戦略チームの仕事をこなせているのは、あらゆる球を自然に打ち返せる能力が染み付いているからでもありますよね(笑)。

海外展開に関しては「ほぼスタートアップ創業期のような状態」

──メルカリ経営戦略チームをどうしていきたいですか?

@asami:メルカリは今後さらに、2倍、3倍、どころか10倍…と成長していく必要がありますし、それができる会社だと信じています。メルカリ経営戦略チームはそれを実現に導くために、極端に言えば「なんでもやる」チームである必要があると思います。やるべきことの領域もそれぞれ異なるので、いろいろな領域のプロフェッショナル、多様なバックグラウンドを持つ人によるチームにしていきたいですね。

@asaeda:僕はグローバル展開を進めていきたいですね。決算発表でも言及されたように、メルカリはこれからさらにグローバルへ展開していきます。全世界のお客さまへメルカリを広めていくには、ミッションに賛同する仲間が必要です。今、メルカリは日本とアメリカのみで展開しています。これをそのまま他の国へ展開していけばいいわけではなく、当然ながらさまざまな工夫が必要です。この領域はほぼスタートアップ創業期のような状態で、戦略部分に深く関われるところでもあります。未整備なところも多いですが、そんな状況を楽しめるメンバーとメルカリを急拡大させていけるとうれしいです。

@asami:ふと思い出したのですが、私がメルカリへ入社して驚いたことの1つに「全方位で人が足りない!」だったんですよね。優秀な人材が多く集まっているイメージだったのですが、今以上に拡大していくとなると十分というわけではなかったのです。2021年7月にはメルカリShopsもリリースされるなど、骨太な新規事業が何本も動いています。それだけ事業も組織も拡大し続けていて、同時にチャンスも課題もたくさんある状態なんですよね。

@daisaku:ですね。そして最後にこれだけ言いたいのですが!メルカリ経営戦略チームは意図的に元起業家・経営者を採用しているわけではないです。よく勘違いされるのですが(笑)。いろんな人に応募していただいたなかで、メルカリ経営戦略チームの仕事にスキルがマッチした人を採用しています。

採用において、メルカリはフラットに「何ができるのか」「どういう結果を出すのか」という部分しか見ていません。だから、変な期待値がかかっていない。そういう面ではすごくフェアな環境です。変化を恐れず柔軟に課題に向きあって結果を残してきた人、国際感覚に優れ世界標準な仕事ができる人がいたら、ぜひチャレンジしてほしいです。

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