新規事業の立ち上げにデータアナリストは必要だったのか?本人が自ら振り返る #メルカリShops奮闘記

はじめまして。ソウゾウでデータアナリストをしています、@takebockleこと、サタニタケホと申します。

#メルカリShops奮闘記 も今回で9回目。普段一緒に働いている仲間たちの「ああ!これがこの人の原動力になっていたんだ!」という発見がたくさんあって、僕自身も楽しみにしているこの連載も、いよいよ終盤にさしかかってまいりました。

引き続き、お付き合いいただければ幸いです。

※撮影時のみマスクを外しています

この記事を書いた人


    • サタニタケホ(Takeho Satani @takebockle)

      前職までにクレジットカードやスーパーマーケット、大型商業施設、大手飲料メーカーといった業界の顧客データを扱ったコンサルティングを経て2019年、メルペイに入社。Data Analystとして後払いサービスのグロースやチームマネージャーを経て、2021年1月よりソウゾウにジョイン。地図によるデータの可視化が好物。


「新規事業の立ち上げ」×「データアナリスト」という矛盾

さて、今回のテーマは「データアナリスト“も”新規事業を立ち上げたお話」です。
ちょっと日本語が変ですね。

「新規事業の立ち上げ」ときいて、どんな職種を思い浮かべるでしょうか?

あるいは「データアナリスト」ときいて、どんな仕事を思い浮かべるでしょうか?

当然といえば当然なのですが、サービスのローンチ前はデータそのものが存在しないので、基本的にこの2つの組み合わせって相容れないことが多く、新規事業を立ち上げる上でデータアナリストは基本的に必要ないとされることが多いと思います。

なので、敢えてデータアナリスト「も」新規事業を立ち上げたという書き方にしました。
気持ちとしては「母さん!父さん!僕だってみんなと一緒に新規事業立ち上げたんだよ!見て見て!」という感じを精一杯込めてみています。

今回は、そんな一人のデータアナリストがはじめての新規事業にどーんとぶつかってみた結果、どんなことが起きたのか? その軌跡をまとめたお話です。

プレオープンまでの道のり(の前に)

先ほども申し上げたとおり、サービスのプレオープン前はまだサービスのデータは存在していません。それだけを聞くと、「やることないのでは?」という状態なのですが、結論からいうとめちゃ分析しました。

その中には「もはやそれって分析なの?」とか「それって別にデータ必要ないじゃん」とか「別にデータアナリストがやんなくてもいいじゃん」とか、他から見たら突っ込まれるようなものもたくさんあると思います。

が、いいんです。新規事業なんで。
人、少ないんで。みんな、めちゃ忙しいんで。

あ〜今この文章を書いていてパキッとわかったのですが、これは、「事業を成功させたい!」「1%でも成功確率を上げたい!」と思ったときに、「自分というリソースを何にどう突っ込むべきなのか」と自問し続けた自分の記録でしかないです。

「新規事業に向き合うデータアナリストとは斯(か)くあるべき!」みたいな偉そうなものではありません。正直、そんな綺麗事を語れる余裕は一切ございませんでした。すみません。

ただただこの世の中で一人のデータアナリストが一つの新規事業に向き合ったという一つの現実として、どなたかの参考になれば、うれしいなと思います。

また前置きになってしまいましたが、ここから気を取り直してお話しさせてください。

プレオープンまでの道のり(改めて)

「誰に何を届けるのか。そしてその届けられている状態をどう測るのか。」

プレオープン前にやっていたことは、この言葉に集約されると思います。
そのためにやったことは、大きく4つありました。

①お客さまの定義

②インタビュー調査

③Value Propositionの言語化とMinimum Valuable Productの定義

④KPIへの落とし込み

一つひとつ解説していきます。

①お客さまの定義

ソウゾウにジョインしてまずやったことは、ECサービスを取り巻くお客さま像の整理でした。例えば、以下のようなシーンを描き、お客さまの解像度を高めていきました。

・自社でECサイトを持っているメーカーさん

・既にECサイトを持っているお店

・リアル店舗で商売をしていてECサイトの導入にハードルを感じているお店

・副業的に自分で作ったものの販売をはじめてみたい個人
etc…

誰に届けたいサービスなのか。

「メルカリアプリ上でBtoCの取引をできるようにする」という構想から始まったメルカリShopsですが、具体的なお客さま像についてメンバーが数人だった頃は意思の疎通も図れていても、どんどんと新しい仲間がジョインする状況下では、スムーズに共通のお客さま理解を持つことが大切です。

お客さまの規模/ECプラットフォームの使いこなし度/CtoCメルカリの利用有無/法人・個人などといった軸で整理して、それぞれのお客さまの「特徴/メルカリShopsを利用するモチベーション/メルカリShopsを利用する上でのブロッカー」を明文化していきました。

できあがったその図を見ながら、自分たちのサービスは主に誰に向けて提供するのか。提供できる便益はなんなのか。という議論を重ねてお客さま像をブラッシュアップ。全員が、とことん「誰に届けたいサービスなのか」を突き詰めていきました。

え? データですか? このステップではまだ登場しません。
ですが、普段データ分析を行う上で「お客さまのデータをどのように切り分けて見るか」という設計は、実際にデータを引っ張り出して可視化する作業以上に重要になることが多く、ソウゾウにおいてはこういった作業はデータアナリストが引き受けていける領域でした。

※実際にお客さま像を整理する際に使った資料

②インタビュー調査

さて、①のステップでお客さま像の整理をしましたが、実際にECサイトを既に持っている/これから出してみたいというお客さまが実際にどのようなモチベーションをもっていらっしゃるのか、これについては社内のメンバーと議論しているだけでは仮説の域を出ることはありません。

自分たちがサービスを届けたいと思っている相手は本当に必要としてくれるのか。

それを知るために次に僕たちがやったことはインタビュー調査です。

その様子はプロダクトデザイナーであるpeachさんの奮闘記にも詳しく書かれているのでそちらも併せてご覧いただければと思いますが、お客さまインタビューはインタビューそのものはもちろん、インタビュー前の準備、インタビュー後のサマライズも含めて非常に労力を要します。僕がデータアナリストとして特に注力したのは実際にインタビューさせていただく候補者選定フェーズでした。

ひとつは、事前アンケートの設計。①のステップで整理したお客さまセグメント。アンケートに回答いただいた方がどのセグメントに属しているのか分かるような内容を質問項目に織り込みました。

もうひとつは、メルカリのアプリを通してアンケートさせていただいたので、お客さまのメルカリの使い方を参考にしてお送りする対象を絞り込みました。

この2つの取り組みによってインタビューさせていただくお客さまと僕たちのマッチングの精度を上げることでき、不幸なマッチングを減らすことができました。

そうして臨んだインタビュー。自分たちが想定していた以上にメルカリShopsに期待するお声をいただくことも多く、「はやく、形にしてお客さまに届けたい…!」という気持ちが募っていく日々を過ごしました。お客さまの声を聞けば聞くほど、自分たちの士気も高まっていったことを覚えています。

※インタビュー中のSlackでのやり取り。UXRはUser eXperiment Researchの略。beyondはメルカリShopsプロジェクトの社内コードネーム。

③Value Propositionの言語化とMinimum Valuable Productの定義

もともと、メルカリShopsを企画した段階から「メルカリShopsだからこそお届けできる価値(=Value Proposition)」の仮説はありましたが、お客さまとの対話を通じて改めて「何を届けるべきか」の輪郭がよりハッキリ見えてきました。

「かんたん」で「売れる」体験を通じて、お客さまがメルカリShopsでの売上をすばやく立ち上げることができる

その背景の詳細はCEOのmazeのnoteに詳しく書いてあるので譲りますが、この価値によってはじめてECサイトを開設するお客さまは販売活動を軌道に乗せることができますし、これまでECサイトを運営してきたお客さまはさらなる売上向上を見込むことができると考えたのです。

ここまでの取り組みで「誰にどんな価値を届けるべきか」をできる限り見極めようとしてきました。その過程を受けてどんな状態を僕たちのサービスのMVP(=Minimum Valuable Product)と定義してローンチを迎えるのか?最速でValue Propositionを発揮できる状態はいつなのか?

完璧なものを求めていてはいつまで経ってもリリースすることはできない。とはいえ、不完全なものを出してしまってはお客さまにがっかりな体験をさせてしまって、もう二度と使いたくないと思われてしまうかもしれない。

何度もこの問いについてメンバーと議論を重ね、リリースプランを練りました。

④KPIへの落とし込み

おお、KPI。KPIです。やっとデータアナリストっぽい響きになってきました。

メルカリShopsは売り手と買い手の取引が成立するとGMV(=商品の売上合計額)が発生しますが、そこだけがソウゾウ社としての収益の源泉になるので、事業活動は短期的/中長期的な差はあれど基本的にはGMVの向上を目指すことになります。

ですが、目標とするGMVの規模さえ達成できればよいのか?というとそうではありません。極端な例で言えば、月間で100億円のGMVを目標としたときに10億円売り上げる会社10社で達成するのと、1万円売り上げる会社100万社で達成するのでは取るべき戦略が全く異なります。

そこで、ここまでの過程で議論を積み上げてきた「我々は誰に何を届けるのか」という思想を登り方にこだわって指標化することで、会社として向かっていく方向をよりシャープにしていきました。それを「数字に会社としての意思を込める」という表現でよく会話していたのを憶えています。

そんな意思を込めた指標の一つをご紹介すると、メルカリShopsに登録いただいた事業者さまのうち、月間でどれだけの事業者さまの売上が上がっているか、という指標です。
仮に月間の目標GMVが達成できても、この数字が低すぎる状態(=限られた一部の事業者さまのみ売上が上がっている状態)であれば、僕たちの届けたい価値が届けたい人に届いていないよね。とみんなで確認し合える重要な指標として位置づけました。

※実際にKPIを決める上で主要な指標を整理する際に使った資料(初版)

「お客さまの定義」「インタビュー調査」「Value Propositionの言語化とMinimum Valuable Productの定義」、そして「KPIへの落とし込み」。この4つのステップを着実に踏むことで、「誰に何を届けるのか。そしてその届けられている状態をどう測るのか」が明確になり、無事にサービスのプレオープンにいたったというわけです。

プレオープン、そして今

メルカリShopsは7/28にプレオープンという形で機能と出店者を限定してローンチしました。

オープン当日は、メルカリShopsの公式Twitterアカウントからサービス開始のお知らせをツイートしたり、自分がつくったダッシュボードに出店申込みの件数や売上の数字が刻一刻と積み上がっていく様子を見守ったりと、心が震えるような瞬間がたくさんありました。

そこから2ヶ月間はあっという間でした。

毎週毎週新しい機能をリリースして、新しいお客さま体験が生まれていく。当然、データも生まれつづける。ソウゾウ単体だけでなくて、メルカリやメルペイとのコラボレーションもしていく。

そんな中、データアナリストとして僕は、プロダクト、マーケティング、コーポレートプランニングといった領域のメンバーと一緒に、準備してきた計画値と日々更新されていく実績値を照らし合わせて、自分たちなりの登り方に反映させていく日々を送っています。

※会社全体が同じ目標/同じ実績値を追いかけてお互いがお互いの力を最大限発揮しあえるように改善を重ねているトラッキングのフォーマット

ソウゾウはそれぞれの職域にプロフェッショナルなメンバーが揃っている組織です。そんな組織がどれだけ早く成長できるかはメンバーたちがPDCAのサイクルをどれだけ早く回せるかに懸かっていると思います。PDCAに関わる意思決定はデータで示されるファクトなしには得がたいことがほとんどなため、データアナリストがボトルネックにならないように、「データがないので意思決定ができない!」という状況を生み出さないように、質にも量にもこだわってアウトプットしていく毎日です。

今はまだ僕一人のデータアナリストチームですが、ソウゾウが、メルカリShopsが、もっと速く、もっともっと高い山に登れるように、会社の仲間と一緒に登り方を考えながら、事業に強い推進力をもたらすことのできる仲間を募集しています。

例えば、マーケティング施策ひとつとっても、データの力を使ってやれることはまだまだまだまだたくさんあります。会社のみんながもっと簡単にデータを深堀りできる環境だってもっと整えていかなければなりませんし、正直お隣のメルカリやメルペイを見たらやれていないことだらけです。ただ、逆にソウゾウというスモールな組織だからこそできるチャレンジがあると思っています。

ソウゾウでご一緒できること、今からとても楽しみにしています!

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