博士号取得者はメルカリでどう活きる?当事者と語り合う「 社会人博士課程のリアルな実情」

メルカリでは、博士課程への進学を希望するメルカリグループで働くメンバーを対象に学費や研究時間の確保を支援する新制度「mercari R4D PhD Support Program」を導入することを2022年1月末にお知らせしました。

この記事では、本制度の応募開始にともない開催した社内トークイベントの様子をお届けします。イベントでは博士号(Ph.D)を取得している・博士課程在籍中のメンバーをゲストに迎えて、「Ph.Dを取得するメリット」「仕事とどう両立するのか?」など語っていただきました。

この記事に登場する人


  • @keiny

    研究および研究知見を活用したコンサルティングに従事。同時に社会人博士として慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科にて博士後期課程を修了 博士(SDM学)。2018年11月にUXリサーチャーの1人目としてメルペイに入社し、UXリサーチを活用したサービスデザインに取り組む。


  • @kenjikun

    修士(人間・環境学)。 専門は多層Dirac電子系における輸送現象の理論。2017年大和証券株式会社入社。自己勘定取引部門において機械学習を用いた自動売買の取引モデルの開発を行う。2018年9月より現職。大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻博士課程在学中。


  • @tago(モデレーター)

    弁理士資格を取得後、法律事務所での知財の権利化・係争案件の経験を経て、2018年に株式会社メルカリの知財チームに入社。2019年よりR4D兼務となり、2020年より、R4D Operations Managerとして、R4Dの研究企画・運営管理に携わる。2022年よりR4D Manager。


Ph.D取得のメリットは?

@tago:今日はよろしくお願いします! まずは簡単に自己紹介をお願いします。

@kenjikun:こんにちは。研究開発組織「mercari R4D」に所属している@kenjikunです。同時に博士課程3年目でもあり、量子アルゴリズムを金融市場に応用することを研究しています。

@keiny:こんにちは、@keinyです。前職では研究所に勤めていまして、インタラクティブシステムをどうデザインしていくかについて、人間中心の考えを用いた方法論を研究していました。現在はMerpayのUXリサーチチームに所属しています。

@tago:ではさっそく本題に。Ph.D取得のメリットを教えてください。実務に活きていることなど具体的にお聞きしたいです。

@kenjikun:Ph.D取得を現在目指している身として…。研究を進めるにあたって、自分で問題設定をして調査して、さらに自身のアイデアを乗っけて論文にするというプロセスを何度も踏むんですよね。論文を読んで正しい結果であると誰もが納得できるよう、どのような筋書きを描けばいいかを考えるのですが、この論理的なプロセスの経験は実務で役立つと思います。

@tago:仕事でリサーチャーのみなさんと話をすることが多いのですが、みなさん非常に論理的で本質的な点を突いてきますよね。これは博士課程で培われた問題解決能力なんだなと納得しました。

@keiny:私も同じですね。先行研究から学んで新たな問いを立てて、自分のアイデアで解決を導き、その解決に妥当性を持たせるプロセスは非常に汎用性が高いと思います。

@tago:@keinyさんは現在研究職ではありませんが、Ph.D取得が現在の実務に生きていると実感されますか?

@keiny:足の裏の米粒にたとえられますよね。取得しないと気になるけど、取得したところで大したことないような(笑)。ただ、さきほど申し上げたように、プロジェクトのプロセスを考えたり、問いのないものに向き合ったりする姿勢は、Ph.D取得の経験が生かされていると思います。

博士課程の日々

@tago:お2人とも「働きながら研究する」ことをしてきた、あるいはしていると思うのですが、大変だったこと・意識したことなどをお聞かせください。

@kenjikun:研究を進めていくなかで「結果を得られた」という感触をつかむのは非常に難しいんですよね。新たな問いを立てても上手くいかなくて、を何度も繰り返すことが多いです。

ただ、振り返ってみると、寄り道したことで問題構造の理解に繋がっていると気づくことがあります。同じような構造を持つ他の問題が出てきたときに、過去経験を生かしてショートカットでその問題に挑むことができるな、と。

うまくいかないことが多くてしんどいんですけど、なにかに繋がっていると信じてやっていますね。

@keiny:研究は不確実性が高くて、上手くいかないことがほとんど。だからこそ、上手くいかなかったことから何が学べるかを考えることが大事ですね。あとは、自分が面白いかどうか、も大切。モチベーションや自分自身への報酬がないと、どうしてもね(笑)。

@tago:途中でこのテーマやってられない…変えたい…という時はありますか?

@keiny:研究計画は立ててますが、途中でピボットすることはありますね。

@kenjikun:僕も当初の計画と少し異なる部分はありますね。進める中で、「この方針は無理そうだな」となっていくので、方向性がどんどん定まっていく感じがします。

@tago:さきほどモチベーションを維持するための報酬の話がありましたが、上手くいかない時などはどのようにリフレッシュしてるんですか?

@kenjikun:僕の場合は、違う分野の勉強をするととても楽しくてリフレッシュになりますね。勉強はやればやるほど理解が進むので、逃避行動としてオススメです。アスリートが筋トレをやるのと同じかと(笑)。

「仕事」と「研究」の両立

@tago:今の話に近いのですが、「仕事と研究」を両立することについて、意識していた、あるいは工夫していた点などがあれば教えてください。

@keiny:頭のモード切り替えが非常に大変でした。研究はなにが本質なのかを突き詰めていくもので、これを実務に持ち込むと大変。実務だと限られた時間で前に進めることが必要なので、本質を追求しすぎると時間がなくなってしまいますし…。

一方で、実務モードで研究してしまうと本質を突き詰めにくくなるので、モードの切り替えが重要ですね。

家庭を持っている方はさらに、仕事・研究・家庭の3つのモードをコントロールする必要があります。

@tago:ちなみに仕事と研究の時間配分はどうでしたか?

@keiny:研究7割、仕事3割くらいでした。

@tago:@kenjikunはどうですか?

@kenjikun:mercari R4Dと博士課程の研究テーマが同じなので、僕の場合、両立はしやすいかなと。同じ研究室に社会人博士の方がいらっしゃるのですが、仕事と研究が一見関係なさそうに見えても、アイデアの転換がおこるような相乗効果を見い出せている気がしますね。

@tago:単純な疑問ですが、社会人になってから博士課程にいきたいと決心したきっかけってなんでしょうか?

@keiny:2つありますね。ひとつはお金がないから一度就職する必要があったということです。修士取得したあとも研究を続けたかったのですが、お金を稼いでからPh.Dに進学しようかなと。

もうひとつは、キャリアを積む上で専門性を示したくなり、ヒューマンコンピューターインタラクション×デザイン方法の分野でPh.Dを取得したくなったことがきっかけです。

@kenjikun:僕も似たような理由です。大学修士を出たあとに理論物理の博士課程に進みましたが、お金がなくて。研究することを諦めて、一旦就職することにしました。もう一度チャレンジしたいと思い、現在はmercari R4Dに所属しているという経緯です。

@tago:博士課程の入学を目指すにあたり、なにかアドバイスがあればお願いします。

@keiny:博士課程は指導教員とのコミュニケーションをしっかりとって、自身が進めたい研究とその研究室が得意としていることが重なる部分を探るといいと思います。まずは、いくつかの研究室を訪問してみるところから始めてみることをおすすめします!

制度は始まったばかり!

イベントではトークセッションの他に、応募希望者向けに制度の概要を説明したり、個別の質問に応えたりなど、本制度を利用して博士過程入学を希望されている方々としっかり向き合う時間を設けました。

この制度は始まったばかりです。個々人のキャリアの可能性を拓くべく、また、イノベーションを起こしうる人材育成を強化すべく、ステークホルダーのみなさんと一緒によりよい制度に仕上げていきたいと思っています。

mercari R4Dについて気になる方は、ぜひサイトをチェックしてみてください!

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